近年, 日本における食生活の洋風化, 運動量の不足並びにエネルギーの摂取過剰などによる小児期の肥満, 更に小児成人病またはその予備群の増加が憂慮されている。本報では, 中国遼寧省の収容施設 (1日3食) 及び通園施設 (昼・夕食の1日2食) における2~7歳児の食物摂取状況を調査し, 日本の現状と比較することにより, 近い将来中国が対面するであろうと考えられる小児成人病の予防に期することを目的とした。
1) 身長, 体重などの体位は日本における標準値と差はなかった。肥満指数で肥満度をみると, 肥満傾向は収容施設5.3%, 通園施設4.6%で, やせの傾向は収容施設27.2%, 通園施設37.6%といずれも多かった。
2) 収容施設のエネルギー摂取量は充足されていたが, たん白質, カルシウム, 鉄, ビタミンB
1, B
2, Cの摂取不足がみられた。通園施設でのエネルギー・給与量は1日の55.8%で, 不足分を朝食で補足することには無理もあり, エネルギーの摂取不足が憂慮された。
3) 穀類エネルギー比は52~64%であった。米類に比べ小麦粉類の摂取が多く, 砂糖類の摂取量は日本の1.5倍であった。動物性たん白質比は38~41%と低かった。アミノ酸価は52と低く, 制限アミノ酸はリジンであった。
4) 脂質エネルギー比は25%と望ましかったが, コレステロールの摂取量が多く, P/S比は低く, 脂質の摂取に問題が多かった。
5) 血圧は日本の幼児に比して高い傾向がみられ, 肥満指数と正相関がみられた。
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