和歌山県民の栄養摂取状況の実態を把握するため, 1991年11月に国民栄養調査に準じて県民栄養調査を実施した。調査対象世帯数は, 都市近郊223世帯, 平地農村177世帯, 農山村181世帯, 漁村193世帯の計774世帯である。得られた成績は以下のとおりである。
1) 県全体でみた県民1人1日当たりの栄養素等摂取量を, 前回の1986年調査と比較すると, 脂肪エネルギー比及び動物性たんぱく質比に有意の増加がみられた一方, 穀類エネルギー比に有意の減少がみられた。地域別にみた場合, 今回の調査では, 農山村で動物性たんぱく質, 脂肪及び動物性脂肪の摂取が少なく, 平地農村と農山村ではビタミンAの摂取が少なかった。また, 農山村では穀類エネルギー比が高く, 脂肪エネルギー比が低かった。1986年調査との比較を地域別に検討した結果, 有意差がみられたものは, 平地農村での炭水化物の減少, 穀類エネルギー比の低下と脂肪エネルギー比の増加であり, 更に農山村での穀類エネルギー比の低下であった。
2) 栄養素等摂取の充足状況をみると, 県全体ではカルシウムと鉄が充足されていなかった。地域別にみると, 平地農村でのカルシウムの不足, 農山村でのカルシウムと鉄の不足が目立った。
3) 県民1人1日当たりの食品群別摂取量を, 1986年調査と比較して有意に増加していたものは, 小麦類, いも類, 海草類, 魚介類, 卵類及び乳・乳製品であった。一方, 米類は有意に減少していた。地域別にみると, 都市近郊では小麦類, 乳・乳製品が多く, 平地農村ではその他の野菜類が多く, 農山村では米類, 豆類が多く, 漁村では小麦類, 果実類, 魚介類の摂取が多かった。1986年調査との比較を地域別に検討したところ, 有意差がみられたものは, 平地農村及び農山村における米類摂取の減少と農山村における小麦類の増加であった。また, 都市近郊, 平地農村及び農山村における乳・乳製品の増加であった。
4) 以上の結果より, 県民の食生活に地域差がみられること, 伝統型食習慣が維持されている農山村においても, 徐々にではあるが食生活の欧風化が進んでいることが明らかになった。
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