我々は, ビフィズス菌発酵乳の飲用による高齢者の排便回数の改善効果を明らかにするための調査を行った。対象者は, 老健施設に入居している高齢者で, 男性7人 (平均年齢80.0歳), 女性30人 (平均年齢83.7歳) であった。まず始めに, 最初の3か月間における対象者の排便回数を調べた。次の1か月間では, 3.6×10
10個のビフィズス菌を含む発酵乳を毎日100m
l飲用させた。そして, 飲用中及び飲用を中止した後の1か月間における排便回数を調査した。調査対象者において, 日常生活動作能力(ADL) が完全である者, 緩下剤常用者, 脳循環異常者, 運動系疾患, 心・血液循環疾患の重複を含め, 人数は, 7人, 26人, 23人, 15人, 12人であった。結果は次のとおりである。
1) 平均排便回数は, 最初の期間では0.56回/日 (標準偏差0.33), 飲用中では0.77回/日 (標準偏差0.42), 飲用中止後では0.76回/日 (標準偏差0.53) であった。ビフィズス菌発酵乳の飲用中における排便回数は, 有意に増加した (対応のある
t検定,
p<0.001)。
2) ビフィズス菌発酵乳の飲用によって, 排便の改善がみられた者の割合は59%であった。また, 飲用を中止しても, 対象者の24%において, 排便改善を持続していた。
3) 緩下剤非常用群での排便回数は, たとえ不完全自立者であっても, 飲用によって有意に増加した (
p<0.05)。緩下剤常用群でかつ自立・半自立者の場合も, 排便回数は有意に増加したが, 飲用を中止すると元に戻った。更に, 緩下剤常用者で寝たきり者においては, ビフィズス菌発酵乳の飲用による有意な改善効果は認められなかった。
4) ビフィズス菌発酵乳の飲用は, 何らかの疾患をもつ患者の約50%において改善を認めた。また, ビフィズス菌発酵乳の飲用を中止しても, 改善効果は持続していた。
5) 全対象者の約73%において, ビフィズス菌発酵乳飲用による排便改善効果を認めた。
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