栄養学雑誌
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72 巻, 3 号
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原著
  • ─小学5年生及び中学2年生における横断的・縦断的検討─
    衛藤 久美, 中西 明美, 武見 ゆかり
    2014 年 72 巻 3 号 p. 113-125
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/19
    ジャーナル フリー
    【目的】小学5年生及び中学2年生の家族との夕食共食頻度及び食事中の自発的コミュニケーションと,中学2年生時の食態度,食行動,QOLとの関連を明らかにすること。
    【方法】2006年度に埼玉県坂戸市内全13小学校5年生,及び3年後に全中学2年生を対象に行われた2回の質問紙調査データがマッチングでき,有効回答が得られた598名(男子303名,女子295名)を対象とした。夕食共食頻度及び自発的コミュニケーション(以下,自発的)を用いて,共食≧週4日で自発的が多いA群,共食≧週4日で自発的が少ないB群,共食≦週3日で自発的が多いC群,共食≦週3日で自発的が少ないD群の4群に分け,小5の4群と中2の食態度,食行動,QOLの関連(縦断的研究),中2の4群と同時期の食態度,食行動,QOLの関連(横断的研究)を検討し,さらに共分散構造分析を行った。
    【結果】小5の4群と中2の食態度,食行動,QOLとの関連は一部のみで見られた。中2の4群は中2の食態度,食行動,QOLの多くの項目と関連が見られた。A群はB群やD群に比べ,食態度が積極的で,食行動の実践頻度が高く,QOLが高かった。共分散構造分析の結果,小5ではなく中2の夕食共食頻度と自発的コミュニケーションが中2のQOLの各変数に影響していた。
    【結論】中学2年生の食態度,食行動,QOLは,小学5年生よりも同時期の共食頻度や自発的コミュニケーションの関連が多いことが示唆された。
  • 千須和 直美, 北辺 悠希, 春木 敏
    2014 年 72 巻 3 号 p. 126-136
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/19
    ジャーナル フリー
    【目的】中学生の朝食摂取頻度,朝食・夕食の共食頻度,夕食時の会話頻度,楽しさと,ボディイメージ,ダイエット行動,家族・全般のセルフエスティーム(以下SE)に関する調査を実施し関連を検討した。
    【方法】2011年10~12月,大阪府下公立中学校2校の2年生444名(男子224名,女子220名),私立中学校1校の1年生140名(男子55名,女子85名)計584名を対象に無記名自記式の質問紙調査を行った。有効回答485名(男子233名,女子252名)を対象に,各項目の性別比較,および朝食摂取頻度,朝食・夕食の共食頻度,夕食時の会話頻度,楽しさ別にみたボディイメージ,ダイエット行動,SEの解析を行った。
    【結果】朝食共食頻度が高い群は,ほとんどない群より男女とも家族SEが高く,女子では全般SEが高く良好なボディイメージを持っていた。女子の夕食共食頻度が高い群に体型をふつうと認識する者,やせ願望を持たない者が多く,家族SEが高かった。男女ともに夕食時の会話頻度,楽しさが良好な群では,家族SE,全般SEが高く,女子の夕食を楽しいと思う群でダイエット経験が少なかった。
    【結論】朝食を毎日摂り共食を心がけ,家族で会話のある楽しい夕食の時間を過ごすことが,女子では良好なボディイメージやダイエット行動の予防,男女ともに高いSEと関連することが示唆された。本研究により家庭での食生活とボディイメージの視点を取り入れた思春期へ向けた栄養教育の必要性が示唆された。
実践報告
  • 酒井 香江, 山下 剛範, 紀平 佐保子, 堀田 千津子
    2014 年 72 巻 3 号 p. 137-146
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/19
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢化社会が進み,生涯にわたり骨の健康を維持することは重要である。若年期女性における,食習慣や生活習慣をはじめとする骨量に関連する因子を検討することで,将来の骨粗鬆症予防やQOLの維持向上のための栄養教育活動に繋げることを目的とした。
    【方法】高校生と大学生の女性を対象に,音響的骨評価値(OSI)測定および,体型,体型意識,食習慣,運動習慣に関するアンケート調査を行った。高校生と大学生それぞれにおいて,骨量の低値群と高値群に分け,連続変数の平均値の差はt検定,カテゴリー変数はχ2 検定により解析を行った。
    【結果】大学生の平均BMIは,骨量低値群 19.5±1.9 kg/m2,高値群 21.1±2.9 kg/m2 であり高値群が有意に高かった。また,高校生の73.0%,大学生の79.2%がやせ願望を持っていたが,実際に肥満の者はいずれも10%以下であった。高校生ではOSIと過去の運動(r=0.296,p<0.01),および現在の運動習慣(r=0.282,p<0.01)に有意な相関が認められた。大学生ではOSIとBMI(r=0.327,p<0.01)に相関が認められ,さらに,朝食の欠食がない者ほど,OSIが高値(r=0.171,p<0.05)を示した。
    【結論】若年期女性の骨量維持向上のためには,体型に関する正しい認識を持ち適切な体重維持を行うこと,さらに継続した運動習慣,朝食の摂取に着目した栄養教育が重要であることが示唆された。
資料
  • 大澤 絵里, 石川 みどり, 曽根 智史
    2014 年 72 巻 3 号 p. 147-155
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/19
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,子どもに対する高脂肪・糖分・塩分(High in Fat, Sugar or Salt (HFSS))食品・飲料のマーケティング規制政策の国際的動向を把握し,子どもたちが健康的な食習慣を身につけるための政策開発の今後の課題を提示することである。
    【方法】WHO, Consumer International, International Association for the Study of Obesityの報告書に記載された各国の子どもに対するHFSS食品・飲料のマーケティング規制の政策を整理し,法的規制,政府のガイドライン,自主規制の3分類の一覧を作成した。法的規制政策を展開しているイギリス,韓国,および企業の自主規制が特徴的であるアメリカについて,上記報告書の引用文献を参考に,情報を収集し,規制主体,規制主体の権限,“子ども”の定義,規制内容,HFSS食品・飲料の定義について,3か国で比較検討した。
    【結果】12歳未満が,3カ国の共通するマーケティング規制対象の子どもの年齢であった。キャラクター使用や無料おまけの使用禁止や使用基準の作成,子どもの視聴が多い時間帯では,放送時間および広告内容の規制,規約の実施が明らかとなった。しかし,HFSS食品・飲料の定義については,3カ国で異なるものであった。
    【結論】12歳未満に対しては,購買意欲を抑えることが,規制政策の鍵となることが明らかとなった。HFSS食品・飲料の定義は各国で異なり,政策の子どもの食習慣への影響評価の早期実施,および健康増進等の他政策を考慮した検討が必要となる。
  • 濱嵜 朋子, 酒井 理恵, 出分 菜々衣, 山田 志麻, 二摩 結子, 巴 美樹, 安細 敏弘
    2014 年 72 巻 3 号 p. 156-165
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/19
    ジャーナル フリー
    【目的】栄養状態と口腔内因子の関連については,多くの報告がみられる。これまでの報告は口腔機能との関連について検討したものが多い。本研究では舌の状態など,器質的な口腔内因子に着目し,栄養状態との関連について明らかにすることを目的とした。
    【方法】対象者は通所高齢者82名とした(男性29名,女性53名,年齢81.5±7.2歳(平均±標準偏差))。栄養状態,生活および食習慣の状況,栄養素等摂取量,食事摂取時状況および口腔内の状況について調査を行い,口腔内状況と栄養状態評価との関連について比較検討を行った。
    【結果】栄養状態と関連のあった口腔内因子は,“食事中の食べこぼし”と“舌苔の厚み”であった。食習慣では,“間食としてパンを摂取する”,“加工食品を使用する”,“大豆製品摂取頻度が少ない”および“漬け物摂取頻度が少ない”もので,いくつかの口腔内因子との関連がみられた。“食べこぼし有り”の者は,“たんぱく質エネルギー比率”が低いという特徴がみられた。
    【結論】食事状況や器質的な口腔内因子が栄養状態,食習慣さらには摂取栄養素と関連が認められた。そのため,食習慣についての把握,食事状況や口腔についての十分な観察,食事介助の改善および口腔ケアの実施に取り組むことの重要性が示唆された。
  • 岩部 万衣子, 岩岡 未佳, 吉池 信男
    2014 年 72 巻 3 号 p. 166-179
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/19
    ジャーナル フリー
    【目的】我が国では,CONSORT声明(2001)に基づき作成された栄養・食生活に関わる介入研究の報告の質を判断するチェックリスト(川崎ら,2011)(以下,リスト)がある。本研究では,このリストを2010年改訂の同声明に基づき改編し,(1)小児の野菜摂取を促す食教育に関する論文の報告の質に違いがあるか,(2)このリストは川崎らの先行研究で分析の対象とされていなかった同分野の論文((1)の対象論文)の報告の質を判断する際にも適用可能かを検討した。
    【方法】データベース(医学中央雑誌,CiNii,PubMed)検索とハンドサーチ(栄養・食・小児に関する17誌)により,2003~2012年刊行の目的に合致した論文を採択した。川崎らのリスト34項目を39項目の構成に改編し,記述が必要と考えられる項目がどの程度各論文に記述されているかを得点化し,研究デザイン別,雑誌区分別に比較した。
    【結果】採択論文29件中,非無作為化比較試験(non-RCT)6件,前後比較研究17件,ケースシリーズ5件,複数のデザインを含む研究1件であり,査読のある雑誌20件,それ以外9件であった。全29論文では,リスト39項目(計47点)の項目記述数得点24.0(範囲10~40)点であった。研究デザイン別ではnon-RCT,前後比較研究,ケースシリーズの順に,雑誌区分別では査読のある雑誌で項目記述数得点は高かった。
    【結論】リストは,小児の食教育に関する論文にも適用可能であり,研究デザインや雑誌区分によって報告の質が異なることを数値として示すことができた。
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