栄養学雑誌
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78 巻, 5 号
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原著
  • 柄澤 美季, 玉浦 有紀, 藤原 恵子, 西村 一弘, 酒井 雅司, 赤松 利恵
    原稿種別: 原著
    2020 年 78 巻 5 号 p. 179-187
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2020/11/09
    ジャーナル フリー

    【目的】地域活動参加頻度,参加する活動の種類数を用いた地域活動参加状況と主観的健康感の組合せを用い,介護予防事業参加高齢者の特徴を把握すること。

    【方法】2018年6~12月,東京都東村山市の介護予防事業参加者に自記式質問紙調査を実施した。解析対象は153人であった。質問紙では,地域活動参加状況,主観的健康感,ソーシャルサポート種類数・満足度,属性,地域活動に関するセルフ・エフィカシーをたずねた。地域活動参加状況と主観的健康感の組合せごとに,参加者の特徴をχ2 検定,Kruskal-Wallis検定で比較した。

    【結果】頻度・種類数の少なくとも一方が高い者を参加高群,いずれも低い者を参加低群としたとき,参加高・健康群は106人(69.3%)が該当した。参加低・健康群(28人,18.3%)は,一人暮らしが多く(p=0.024),参加高・健康群に比べ,ソーシャルサポート種類数は少ないが(p<0.001),その満足度には差はなかった。参加高・不健康群(9人,5.9%)は,参加高・健康群に比べ,地域活動に関するセルフ・エフィカシー得点が低かった(p=0.001)。

    【結論】地域活動への参加が多い者は,参加が少ない者に比べ,主観的健康感が高い者が多かったが,地域活動への参加が少ない者でも健康だと感じる者が存在し,地域活動参加状況と主観的健康感の組合せで特徴が異なった。

  • 長幡 友実, 中村 美詠子, 三浦 綾子, 上田 規江, 岡田 栄作, 柴田 陽介, 尾島 俊之
    原稿種別: 原著
    2020 年 78 巻 5 号 p. 188-197
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2020/11/09
    ジャーナル フリー

    【目的】勤労者を対象とし,食費に関わる指標として等価食費とエネルギーコストを用い,これらの指標と栄養素等摂取量,食品群別摂取量,調理形態別料理摂取頻度との関連を検討した。

    【方法】静岡県西部にある事業所の従業員3,083名に自記式質問調査票および食物摂取頻度調査票を配布し,2,382名から回答が得られた(回収率77.3%)。性・年齢および食物摂取頻度調査票が有効であった2,160名を解析対象とした。等価食費(円/月)とエネルギーコスト(円/1,000 kcal)を三分位で分け,栄養素等摂取量との関連を共分散分析,食品群別摂取量との関連をKruskal-Wallis検定,調理形態別料理摂取頻度との関連をχ2 検定を用いて検討した。

    【結果】等価食費低群と比較して高群では,たんぱく質やビタミン,ミネラル類,食物繊維摂取量が多かった。また,穀類摂取量は少なく,野菜類,魚介類等の摂取量は多かった。エネルギーコスト低群と比較して高群では,炭水化物摂取量が少なく,一方,銅以外の栄養素等摂取量は多かった。また,穀類摂取量は,高群ほど少なく,その他すべての食品群別摂取量は,高群で多かった。また,両指標とも,白飯摂取頻度は高群で少なかった。

    【結論】勤労者において等価食費やエネルギーコストが高い者は,穀類摂取量や白飯摂取頻度が少なく,野菜類や魚介類摂取量が多いことが示唆された。

  • 南 里佳子, 玉浦 有紀, 赤松 利恵, 藤原 恵子, 酒井 雅司, 西村 一弘, 角田 伸代, 酒井 徹
    原稿種別: 原著
    2020 年 78 巻 5 号 p. 198-209
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2020/11/09
    ジャーナル フリー

    【目的】維持血液透析患者の食事・水分管理アドヒアランス改善に向けて,関連する信念を評価する尺度を作成し,その信頼性と基準関連妥当性を検討する。

    【方法】3都市4施設で外来維持血液透析を受療中の患者378人を対象に,質問紙調査を実施し,食事・水分管理の信念に関する40項目と,主観的指標による食事・水分管理アドヒアランス状況をたずねた。同時にカルテから,属性とドライウエイト,透析間体重増加率,生化学検査データを収集した。探索的・確証的因子分析により,信念尺度の因子構造を検討した後,抽出された下位尺度の信頼性(クロンバックα)と基準関連妥当性(客観的/主観的指標によるアドヒアランス状況との関連)を確認した。

    【結果】尺度作成の結果,食事・水分管理の実施に関する信念として「食事管理の障害」「食事に対する懸念」「環境からの影響」「楽観性」の4下位尺度17項目,動機に関する信念として「重要性」の1下位尺度8項目が得られた。クロンバックαは0.531~0.830と概ね良好な値だった。また,各下位尺度の得点は,客観的または主観的指標によるアドヒアランス状況(良好群・不良群)と妥当な結果がみられ,基準関連妥当性が確認された。

    【結論】維持血液透析患者の食事・水分管理に関する信念尺度として,実施と動機に関する信念の2つの尺度の信頼性と基準関連妥当性を確認した。

  • 信田 幸大, 前田 泰宏, 曽根 智子, 衛藤 久美
    原稿種別: 原著
    2020 年 78 巻 5 号 p. 210-222
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2020/11/09
    ジャーナル フリー

    【目的】勤労者に対し,管理栄養士によるセミナーと野菜飲料提供による環境サポートを組み合わせた栄養教育プログラムを実施することで,野菜摂取量及び野菜摂取に関する行動変容ステージに及ぼす影響を検証した。

    【方法】勤労者男女を研究対象者とし,層別化無作為比較試験を実施した。解析対象者は194名(介入群100名,対照群94名,平均年齢43歳)であった。栄養教育プログラムは介入群のみに実施した。主評価項目は,行動変容ステージ及び野菜摂取量とし,副次評価項目として野菜摂取に関する意識や行動の変化が生じる要因とした。

    【結果】野菜摂取量の変化量については,プログラム終了直後では対照群に対して介入群で有意に高かったが,終了6週間後の調査では有意な差は認められなかった。一方,行動変容ステージの事前から終了直後の変化量は,対照群に対して介入群で有意に高く,終了6週間後でも同様に群間差が見られた。また,本プログラムは,野菜摂取に関する意識や行動の変化が生じる要因のうち,健康に対する利益や関心,セルフエフィカシー,所属する組織や地域からの環境サポートといった因子に対して働きかけていたことが示唆された。

    【結論】管理栄養士によるセミナーと野菜飲料提供による環境サポートとを組み合わせた栄養教育プログラムを実施することで,勤労者の野菜摂取に関する意識や行動が変化し,野菜摂取量が増加することが示唆された。

  • ─若年女性における検討─
    鈴木 麻希, 宮田 采実, 和田 有史, 武藤 孝子, 小谷 和彦, 永井 成美
    原稿種別: 実践活動報告
    2020 年 78 巻 5 号 p. 223-231
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2020/11/09
    ジャーナル フリー

    【目的】食品に付したエネルギー情報の違いが,摂食者の心理・生理的応答に与える影響を若年女性において検討すること。

    【方法】ランダム化クロスオーバー試験として実施した。試験食は,466 kcalのフレンチトーストに,500 kcal表示または 1,000 kcal表示のカードを付した2種類とした。異なる2日間の9時前後に,前夜から絶食した若年女性12名にランダムな順序でいずれかを負荷した。官能評価と摂食への抵抗感,唾液中のα–アミラーゼ濃度を摂食前後に測定した。食欲感覚と呼気ガス(エネルギー消費量)は摂食前と摂食90分後まで測定した。呼気ガス測定値より食事誘発性熱産生を算出した。

    【結果】心理的指標では,甘さ,脂っぽさ,摂食への後ろめたさは,摂食前後ともに 1,000 kcal表示が 500 kcal表示よりも有意に高かったが,美味しさ,摂食への嬉しさ,食欲感覚(空腹感,満腹感)は,摂食前後ともに試験食による差はなかった。生理的指標では,唾液α–アミラーゼ濃度は,1,000 kcal表示のみ食後に有意に上昇したが,食事誘発性熱産生は,両試行で有意な差はなかった。

    【結論】本結果より,食品に付した高エネルギー情報は,若年女性摂食者の満腹感や食事誘発性熱産生を高めなかったが,甘さと脂っぽさを強く感じさせるとともに,摂食への抵抗感とストレスを高めることが示唆された。

実践活動報告
  • ─「にいがた減塩ルネサンス運動」10年間の取組とその成果─
    小島 美世, 小川 佳子, 中川 圭子, 草野 亮子, 関 芳美, 波田野 智穂, 磯部 澄枝, 栃倉 恵理, 石田 絵美, 山﨑 理, 堀 ...
    原稿種別: 実践活動報告
    2020 年 78 巻 5 号 p. 232-242
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2020/11/09
    ジャーナル フリー

    【目的】新潟県では,1965年代から脳血管疾患対策として様々な減塩運動を展開してきた。しかし,脳血管疾患年齢調整死亡率は全国平均より高く,食塩摂取量も全国平均を上回る結果だった。そこで2009年度から新たな減塩運動「にいがた減塩ルネサンス運動」に10年間取り組んだ。その取組をとおし栄養・食生活分野におけるPDCAサイクルに基づく成果の見える栄養施策の展開を試みた。

    【方法】実態把握から優先順位の高い健康課題の抽出と,その背景となる栄養・食生活の要因を分析し,その要因が改善されるよう施策を整理し目標達成を目指した。また,各々の施策の事業効果が目標達成にどう影響を及ぼしているかが見える化できるよう評価枠組を整理した。評価枠組は各施策の事業効果が質的,量的にどう影響を及ぼすかが明確になるよう結果評価,影響評価,経過評価に分け,目標達成に影響を及ぼす施策とその成果が分かるよう施策を展開した。

    【結果】経過評価に位置付けた,市町村や関係機関での取組が増加した。影響評価に位置づけた,県民の高食塩摂取量に関連する食行動が有意に改善した。結果評価に位置づけた食塩摂取量や収縮期血圧値や脳血管疾患死亡数及び虚血性心疾患死亡数が減少した。

    【結論】PDCAサイクルに基づく展開と,目標達成につながる評価枠組を整理し枠組順に客観的に評価したことで,施策が目標達成にどのように影響を及ぼしたのかその関連性を見える化することができた。

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