栄養学雑誌
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79 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • ─横断研究─
    五味 達之祐, 上岡 洋晴
    原稿種別: 原著
    2021 年 79 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    【目的】地域レベルの介護予防の推進のために,中山間地域における近隣食環境とたんぱく質摂取量との関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】本研究は中山間地域在住高齢者942名を対象とした横断研究である。地理情報システムによって自宅からスーパーとコンビニまでの最短距離を算出し,簡易型自記式食事歴法質問票にて調査したたんぱく質摂取量が低いこととの関連性を多変量回帰分析にて調べた。生活内の移動に関する環境要因として鉄道駅とバス停のアクセスについても検討した。副次アウトカムとして主なたんぱく質供給源である食品群別摂取量とスーパーとコンビニまでの距離との関連を調べた。

    【結果】スーパーまでの距離とたんぱく質摂取量との有意な関連はなかったが,コンビニが遠いほどたんぱく質摂取量が少なくなる有意な傾向性がみられた。バス停が 400 m圏内にないことが,少ないたんぱく質摂取量と有意に関連した。スーパーとコンビニそれぞれまでの距離と主なたんぱく質供給源の摂取量との有意な関連はみられなかった。

    【結論】スーパーまでの最短距離とたんぱく質摂取量には有意な関連はなかったが,コンビニが遠いこと,バス停までのアクセスが悪いことが少ないたんぱく質摂取量と有意に関連した。中山間地域におけるたんぱく質摂取の促進のための食生活改善アプローチには,コンビニやバス停へのアクセシビリティに配慮した支援策が必要であることが示唆された。

資料
  • 越田 詠美子, 岡田 知佳, 岡田 恵美子, 松本 麻衣, 瀧本 秀美
    原稿種別: 資料
    2021 年 79 巻 1 号 p. 14-26
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,今後の日本での食事摂取基準の策定における参考資料となるよう,日本と諸外国の策定状況とその活用目的を比較検討することを目的とした。

    【方法】食事摂取基準に関する情報は,各国の策定機関のホームページ等から収集した。調査対象国は日本,アメリカ/カナダ,イギリス,オーストラリア/ニュージーランド,European Unionとし,調査項目は,策定機関,改定の周期と対象,摂取量の指標,基準値が策定されている栄養素,活用目的とした。

    【結果】食事摂取基準は,各国の政府や公的機関等が主導して策定をしていた。改定の周期は,日本は全栄養素を対象に5年ごと,日本以外の国は栄養素ごとに,必要に応じて不定期に行っていた。摂取量の指標は,日本とおおよそ同様の指標が諸外国でも用いられており,さらに,イギリスでは推定平均必要量から2標準偏差を差し引いた値である下限栄養素摂取基準値も定められていた。基準値が策定されている栄養素数は,アメリカ/カナダが最多であった。活用目的は各国共通で,栄養・食事管理,栄養指導,食事ガイドライン/フードガイドの策定,栄養表示に用いられていた。その他,日本以外のすべての国で軍隊に対する活用がされていた。

    【結論】本研究により日本と諸外国における食事摂取基準の相違点が明らかとなり,今後の日本での策定において参考になるとともに,日本の課題も浮き彫りとなった。

  • 吉田 心, 佐藤 慎太郎, 川俣 恵利華, 川俣 幸一
    原稿種別: 資料
    2021 年 79 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,保護者自身への食塩摂取意識と子どもへ向けられる意識との関係を明らかとし,効果的な食育活動に繋がる保護者側の因子を探ることであった。

    【方法】対象は宮城県の子育て広場に通う103人の幼児とその保護者であった(親の平均年齢34.6歳,子どもの平均年齢2.7歳)。親自身の食塩量に関する意識を問う14項目,それと対になる子どもへの食塩量に関する意識を問う14項目のアンケート調査を実施した。結果は単純集計後,二項ロジスティック回帰分析を実施するために因子分析にて総合数値を求めた。

    【結果】子どもへの食塩量の意識と,親自身の食塩量の意識を比較したところ,14項目中12項目で意識の違いが見られた。因子分析後に実施した保護者と子どもの年齢,保護者の性別,アンケート13項目とで調整した二項ロジスティック回帰分析の結果では,味の付いたご飯,ルーのかかったご飯,スナック菓子の食塩量について有意な回帰式が得られた(それぞれp=0.024,p=0.044,p=0.011)。

    【結論】子どもへ向けられる食塩摂取量の意識と親自身の食塩摂取量の意識については全ての項目で有意な正の相関を示し,殆どの項目で子どもに向けられた意識の方が親自身の意識よりも有意に高かった。また多変量解析の結果,子育てのための食塩指導を親向けに開催する場合,味の付いたご飯,ルーのかかったご飯,スナック菓子の食塩量について指導することが,効果的な食育活動の一つとなることが示唆された。

  • ─第1回更新事業者を対象とした調査結果─
    赤松 利恵, 串田 修, 高橋 希, 黒谷 佳代, 武見 ゆかり
    原稿種別: 資料
    2021 年 79 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    【目的】「健康な食事・食環境」認証制度における外食・中食部門の応募促進と継続支援に向けて,スマートミールの提供状況と事業者が抱える課題を整理すること。

    【方法】2018年度に認証され,2020年更新対象となった外食55,中食24計79事業者を対象とした。2020年1~2月,Webフォームを用いて,更新意向の他に,スマートミールの提供状況と課題をたずねた。他に,認証時の情報から,応募部門,認証回,店舗の場所,星の数の情報を用いた。量的データの結果は,度数分布で示し,自由記述の回答は,コード化の後,類似する内容をまとめ,カテゴリ化した。

    【結果】79事業者を解析対象とした(解析対象率100%)。70.9%(n=56)の事業者が,更新すると回答した。項目に回答した49の更新事業者の63.3%(n=31)が【メニューに対する肯定的な評価】など,顧客からの反応が「あった」と回答した。また,71.4%(n=35)の事業者が認証前後の売上げに「変化なし」と回答したが,81.6%(n=40)の事業者が認証のメリットがあったと回答した。40.8%(n=20)の事業者が【メニューに関する課題】などを感じていた。

    【結論】外食・中食事業者の認証制度への応募促進と認証継続の支援には,メニュー開発やコスト削減に関する課題と,スマートミールの認知度向上など普及啓発に関する課題の解決が必要だと示唆された。

  • 頓所 希望, 赤松 利恵, 齋木 美果, 小松 美穂乃, 井邉 有未, 渡邉 紗矢
    原稿種別: 資料
    2021 年 79 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    【目的】外食産業の食品ロスは食品産業で最も多く,およそ半分が食べ残しである。本研究は,健康的な食環境整備と食べ残し削減の取組を促進するため,外食事業者の食べ残し記録の取組状況と提供量や食べ残しに対する態度を検討した。

    【方法】2019年5月に実施した外食事業者を対象としたインターネット調査で得た398人のデータを利用した。「食べ残し記録」の取組は「計測・記録」群,「目測・記録」群,「目測のみ」群,「把握なし」群の4群とした。属性,食べ残しの有無,食品ロス削減の取組状況,提供量と食べ残しに対する態度を「食べ残し記録」の取組4群で比較した。態度は,「提供量は食べる量に影響する」などの7項目を質問し,「肯定」「否定」の2群とした。各質問項目の群別比較は,χ2 検定を用いた(有意水準5%未満)。

    【結果】「計測・記録」群11人(2.8%),「目測・記録」群52人(13.1%),「目測のみ」群232人(58.3%),「把握なし」群103人(25.9%)であった。4群間で属性などを比較した結果,「計測・記録」群は,従事年数が長く(p=0.009),食品ロス削減の取組を行い(p<0.001),量より味を重視する態度をもっていた。

    【結論】食べ残しを計測し記録している外食事業者は5%未満であり,その事業者は従事年数が長く,食品ロス削減の取組を行っており,適量提供に対して望ましい態度をもつことが示唆された。

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