栄養学雑誌
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80 巻, 3 号
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原著
  • 木林 悦子, 中出 麻紀子, 諸岡 歩
    原稿種別: 原著
    2022 年 80 巻 3 号 p. 149-157
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    【目的】バランスの良い食事,朝食習慣,野菜摂取を含む健康な食事の習慣に関わる要因を包括的に明らかにする。

    【方法】平成28年度ひょうご食生活実態調査に回答した20~40歳代の720名(男性46%)を対象とした。健康な食事を構成する変数として,バランスの良い食事が1日2回以上,朝食習慣,1日の野菜料理の皿数を設定し,これに関わる要因として,生活習慣病予防のための食態度(エネルギー摂取量の調整,塩分制限,脂肪摂取量の調整,糖分を取り過ぎない,野菜をたくさん食べる,果物を食べる),健康維持の姿勢(適正体重の心がけ,栄養成分表示の活用),外食頻度を用いた仮説モデルを立て,共分散構造分析を行った。

    【結果】本仮説モデルにおいて,許容範囲の適合度が得られた(χ2=153.015,df=86,GFI=0.967,AGFI=0.940,CFI=0.974,RMSEA=0.033,AIC=293.015)。健康な食事の習慣には,生活習慣病予防のための食態度からの直接的な影響が示されず,健康維持の姿勢を経由して影響を及ぼし,標準化総合効果は,男性が0.40,女性0.41であった。また,男性では,外食頻度から健康な食事への標準化推定値が-0.17(p=0.021)の有意な負のパスが示された。

    【結論】健康な食事の習慣には,生活習慣病予防のための食態度に健康維持の姿勢が介在し,加えて男性では,外食頻度が悪影響を及ぼす可能性が示唆された。

  • 木村 宣哉, 小林 道, 杉村 留美子
    原稿種別: 原著
    2022 年 80 巻 3 号 p. 158-168
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,地域住民におけるヘルスリテラシーと食品群別摂取量及び栄養素等摂取量の関連を明らかにすることである。

    【方法】研究の参加者は,2018年7~8月に北海道江別市在住の20~74歳の成人である。ヘルスリテラシーは相互作用的・批判的ヘルスリテラシー尺度を用いた。食品群別摂取量及び栄養素等摂取量は,妥当性が確認された簡易型食事歴質問票(BDHQ)を用いて評価した。研究の対象として合計1,607名(男性708名,女性899名)が選ばれた。参加者はヘルスリテラシースコアに基づいて四分位群に分類した。ヘルスリテラシーと食品群別摂取量及び栄養素等摂取量との関連は,共分散分析(ANCOVA)によって確認した。

    【結果】ヘルスリテラシーの高い参加者は,低い参加者に比べて,その他の野菜類摂取量が高く,Na/K比が低い傾向がみられた。加えて,男性では,ヘルスリテラシーが高い者は低い者に比べて総エネルギーと銅の摂取量が高かった。女性では,ヘルスリテラシーが高い者は低い者に比べて緑黄色野菜類,嗜好飲料類,カリウム,カルシウム,マグネシウム,鉄,亜鉛,ビタミンB1,ビタミンB2,ナイアシン,ビタミンB6,葉酸,ビタミンCの摂取量が高かった。

    【結論】ヘルスリテラシーの高さは,野菜類や複数の栄養素等摂取量と関連があることが示された。地域住民のヘルスリテラシーを向上させることは,野菜類摂取量の増加につながる可能性が示された。

研究ノート
  • ─健康な食事を売れないと考える経営者の特徴─
    頓所 希望, 赤松 利恵, 小松 美穂乃
    原稿種別: 研究ノート
    2022 年 80 巻 3 号 p. 169-176
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,飲食店における健康な食環境整備の推進を目指し,健康な食事は売れないと考える飲食店経営者の特徴および健康な食事提供に対する障壁と健康な食事に対する信念を検討した。

    【方法】2019年5月に外食事業者を対象にインターネット調査から得た387人のデータを用いた。健康な食事は「売れる」「売れない」の2群とし,対象者および店舗の属性の比較にはχ2 検定,健康な食事の提供に対する障壁と健康な食事に対する信念はMann-WhitneyのU検定,障壁と信念の関係はSpearmanの順位相関係数を用いて検討した(有意水準5%未満)。

    【結果】「売れる」群240人(62.0%),「売れない」群147人(38.0%)であった。「売れない」群は,「売れる」群に比べ,利用客の8割以上が勤務者の店舗(p=0.037),利用客に男性の方が多い店舗が多く(p=0.001),健康な食事提供は「商品単価が上がる」「味が落ちる」「作業効率が悪い」「ボリューム感がなくなる」と考える得点が高かった。健康な食事に対する信念は,「低エネルギー・低脂質・減塩」の得点が高かった(p<0.001)。

    【結論】健康な食事を売れないと考える飲食店経営者は,健康な食事に対して不合理な信念をもち,これらの信念は,各飲食店の顧客の特徴に影響されている可能性が示唆された。

実践活動報告
  • 新保 みさ, 尾関 彩, 草間 かおる, 中澤 弥子, 笠原 賀子
    原稿種別: 実践活動報告
    2022 年 80 巻 3 号 p. 177-184
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    【目的】本報告の目的は,管理栄養士養成課程におけるオンラインによる海外プログラムについて報告し,その評価を行うこととした。

    【活動内容】長野県立大学健康発達学部食健康学科の2年生30名に10日間のオンラインによる海外プログラムを実施した。研修先はニュージーランド(以下,NZ)で,プログラムの内容は英語,専門分野(Nutrition 1:NZの伝統菓子の講義・調理実演や調理実習,Nutrition 2:NZの管理栄養士とのセッション,Nutrition 3:栄養の基礎知識・NZの食文化や食生活指針等に関する講義),その他(学生交流など)などだった。プログラム終了後,目標達成度,国際的な視野の向上,NZの栄養・食の課題を説明できるか,海外プログラムの満足度を調査した。

    【活動成果】全日程に出席した者は27名(90%)だった。調査の回答者は26名(87%)で「海外の栄養士・管理栄養士の活動の現状を説明できる」という目標を達成できた・ほぼ達成できたと回答した者は23名(88%),オンラインによる海外プログラムに満足した・少し満足したと回答した者は23名(88%)だった。満足度に影響したことには現地の学生等との交流や調理実習や試食等の体験をあげた者が多かった。

    【今後の課題】今回実施したオンラインによる海外プログラムでは,機材や人員,時差,通信のトラブル等の課題があったが,プログラムの目標達成度や満足度は高かった。

資料
  • 赤松 利恵
    原稿種別: 資料
    2022 年 80 巻 3 号 p. 185-193
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    【目的】飲食店と連携した食環境整備の推進を目指し,飲食店経営者を対象に,健康日本21の認知度および活用,目標「適切な量と質の食事をとる者の増加」に関する取組の実施状況を検討した。

    【方法】2019年5月インターネット調査会社のモニターである飲食店経営者412人を対象に,健康日本21の認知度および活用,健康日本21(第二次)の「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事をとる者の増加」「食塩摂取量の減少」「野菜と果物の摂取量の増加」の目標の取組の実施状況を調べた。実施状況は得点化し,Mann–WhitneyのU検定,Kruskal-Wallis検定を用い,対象者,店舗の属性,「健康日本21の認知度と活用」の回答で,得点を比較した。

    【結果】ハレの日の食事としての利用が多い店舗経営者25人を除いた387人(解析対象率93.9%)を対象とした。61.2%(237人)が健康日本21を「聞いたことがない」と回答し,これらの者の取組の実施状況の得点は低かった(p<0.001)。また,ファストフード店や小規模企業者の得点も低かった(各々p=0.002,p=0.007)。

    【結論】飲食店経営者の「健康日本21」の認知度は低く,認知度が低い飲食店経営者の店舗では,健康日本21(第二次)の目標に関する取組の実施も低かった。「健康日本21」の認知度を高め,外食産業と協働して進めていく方法の検討が必要である。

  • 吉村 亮二, 野村 秀一
    原稿種別: 資料
    2022 年 80 巻 3 号 p. 194-200
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】脂質栄養において脂質の吸収,輸送過程とリポたんぱく質の機能を理解,学修することは,食事療法の計画,治療食品の選択,さらに脂質異常症や動脈硬化の病態理解などのために極めて重要である。そこで本研究では,長鎖脂肪酸を多く含有する大豆油と中鎖脂肪酸を多く含有するカプリル酸-カプリン酸トリグリセライド(CCT)を用いて脂質の吸収,輸送経路とリポたんぱく質の機能について考察,学修できる学生実験の条件を明らかにすることを目的とした。

    【方法】7週齢の雄性Wistarラットへ45%エネルギー脂肪含有高脂肪食を与え,摂食量,飼料組成及び大豆油の比重から大豆油摂取相当量(ml)を算出した。その摂取量を参考に 1 ml/100 g体重の割合で水道水,大豆油あるいはCCTを経口ゾンデにより摂取させ,3時間後に採血し,血漿を調製した。血漿の性状を確認し,トリグリセライド(TG)測定,セルロースアセテート膜電気泳動によるリポたんぱく質の検出を行った。

    【結果】水道水,CCT群の血漿は透明であったが,大豆油群は白濁した乳び血漿であった。大豆油群は血漿中TG濃度の上昇,およびリポたんぱく質のカイロミクロンの増加が確認されたが,CCT群では観察されなかった。

    【結論】本研究により,長鎖脂肪酸を多く含有する大豆油および中鎖脂肪酸を多く含有するCCTの吸収,輸送過程とリポたんぱく質の機能を目で見て学修できる実験条件が明らかとなった。

  • ─ウェブサイトに公開された自治体の取組─
    頓所 希望, 赤松 利恵, 外園 海稀, 江田 真純, 井邉 有未, 柄澤 美季
    原稿種別: 資料
    2022 年 80 巻 3 号 p. 201-209
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    【目的】食品ロス削減のために,飲食店で適量を超えた提供で食べきりを促進すると,客の過剰摂取により健康課題につながる可能性がある。本研究は,飲食店に着目し,健康も考慮した食品ロス削減に取り組む自治体の実態と具体的な取組内容を整理することを目的とした。

    【方法】2020年9月~2021年10月に都道府県,保健所設置市及び特別区の計155自治体を対象に,各自治体のウェブサイトで「食品ロス」を検索語としてウェブ検索を行った。得られたコードをカテゴリ化し,自治体の取組の有無を割合で算出した。

    【結果】1,918コード抽出された。取組は【地域住民】と【飲食店】の大カテゴリに分かれた。155自治体のうち,【地域住民】に対しては90.3%,【飲食店】に対しては64.5%の自治体で取組が確認された一方,両方に対する取組が確認できた自治体は59.4%であった。中カテゴリの[食べきりの取組]が確認された自治体は【地域住民】で131自治体,【飲食店】で64自治体であり,そのうち[適量摂取のための取組]も確認できた自治体は,各々93.1%,95.3%,[食べきりの取組]のみの自治体は各々6.1%,3.1%であった。

    【結論】食べきりの取組が確認された自治体のうち,適量摂取のための取組も確認できた自治体は9割以上であった。飲食店での食品ロス削減の取組は,地球環境のみならず健康な食環境整備の推進につながる可能性がある。

  • 新杉 知沙, 瀧本 秀美
    原稿種別: 資料
    2022 年 80 巻 3 号 p. 210-217
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    【目的】新型コロナウイルス感染拡大の影響による行動制限が長引く昨今の状況に鑑み,非対面式で実施可能な,妊産婦の健康的な食生活を促すオンラインツールを用いた介入研究について文献を整理した。

    【方法】文献データベース(PubMed)上で公表された論文のうち,「妊婦,インターネット介入,食生活」により作成した検索式を用いて文献検索を行った。

    【結果】包含基準により文献の精査を行ったところ,最終的に4件を採択した。研究対象者は健康的な単胎妊婦や,妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群の既往歴のある女性であった。アウトカム指標により介入時期が異なり,妊娠中の体重増加量過剰割合の減少を目的とした研究では妊娠初期・中期に,産後の体重維持を目的とした研究では妊娠後期や産後に実施されていた。介入内容としては,健康的な生活習慣を促進することを目的とした個別のオンライン教育プログラム,公的機関等による情報提供,専門職からの食事指導,さらに参加者同士の交流が実施されていた。オンラインツールを用いた介入により,産後の体重減少,産後のウエスト周囲径の減少,健康な食事に対する自己効力感の向上がみられた。

    【結論】妊産婦を対象とした食生活に関するオンラインツールを用いた介入により母体転帰との関連が示唆された。一般向けにわかりやすく正確な情報が集約されたオンラインツールの拡充やそれらの効果検証を含めたさらなるエビデンスの蓄積が求められる。

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