E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
ISSN-L : 1880-8107
20 巻, 2 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
調査報告
  • 末永 芽久
    2025 年20 巻2 号 p. 270-282
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,自給的なキノコ採集の慣行がみられる岐阜県中津川市付知町を対象とし,キノコの生育環境や獲得環境の特徴,さらに獲得戦略において実態を明らかにするとともに,獲得戦略とその成立条件から周囲の自然環境,社会環境との関連性を考察した.結果として,キノコの発生時期や生育環境に関する認識,採集競合者との関係,個人の生活時間や経験が採集者の行動戦略に影響を与え,人びとは動態的に変化する環境の中で,状況に応じた戦略を立てていることが明らかになった.本稿で対象とした野生キノコの採集活動は,金銭的価値の追求ではなく,むしろ不確定なものへと自ら挑むという主体的な姿勢であり,自然と人間との多様な関わりを見出すことができる.非木材林産物の利用,特に持続的な森林との関わり方を考える上で,こうした主体的な関わりを伴う資源利用に注目する必要性が示唆される.

  • 楊 楠
    2025 年20 巻2 号 p. 283-301
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    本稿は,SNSを活用したインバウンド観光促進と地域経済活性化の実態を,中国市場を中心に分析したものである.近年,SNSは観光地情報の発信手段として重要な役割を果たしており,特に中国人観光客の旅行先選択に大きな影響を与えている.本研究では,鳥取県を事例として,微博や微信などのSNSを通じた観光プロモーション戦略を調査した.鳥取県は他の主要観光地と比較して訪日外国人観光客数が少ない中,SNSを活用して地域ブランドの確立に成功している.さらに,SNS活用の地域差を分析した結果,地方圏でも積極的にSNSを活用することで観光振興に効果的な影響を与えていることが明らかになった.

  • 岩佐 佳哉, 鶴成 悦久, 三﨑 貴弘, 山本 健太郎, 福田 昌代
    2025 年20 巻2 号 p. 302-312
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    本稿では,大分県において行った地理空間情報を活用した災害対応支援について,2023年および2024年の災害を事例として報告するとともに,災害対応支援において地理空間情報や地理学が果たす役割について検討した.2023年の災害では,大雨に伴う斜面崩壊により行方不明者が生じた.これに対して,航空レーザ測量およびドローンレーザ測量に基づく高解像度地形データを活用することによって土砂堆積量の分布を可視化し,捜索位置を提案した.2024年の災害では,大雨に伴う河川氾濫による浸水被害に対して,SNSに投稿された画像やドローン空撮映像を活用することで浸水推定図を作成し,被害状況の迅速かつ直感的な把握に資する情報を提供した.本稿で報告した災害対応支援は地理学に関わる者にとって基本的な考え方に基づくものであるとともに,地理学的知見と異分野の知見を総合することで,迅速かつ安全な災害対応支援につながると考えられる.

  • 澤田 康徳
    2025 年20 巻2 号 p. 313-326
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,暑熱対策に関し,先進自治体熊谷市全部署の行政実務者を対象に,他自治体(市区町村)に対する意識の全体的傾向と関心程度による実務者の特徴を把握した.全体的に他自治体に対する関心程度は高い一方,知識保有程度は低いと意識されている.具体的関心理由に,他自治体に対しては既得知識が主に関わる.関心程度が高い場合,先進自治体である遠方自治体に関心が高く,施策変化の未経過および経過で,関心理由となる知識が最高気温記録および政策や課題と異なる.先進自治体において,対策の枠組みが整備された次段階として部署ごとで対策に取り組む必要性が想定される状況下,実務者の施策変化の経過状況や関心を踏まえた自治体間連携への関わりは,知識や関心の高まりに寄与しうる.さらに,施策変化を経過した場合,業務や関心の変化の意識を有し,経過の実務者を含んだ連携は取り組みや人材育成などの長期的見通しに示唆を与える可能性をもつ.

  • 細渕 有斗, 森島 済
    2025 年20 巻2 号 p. 327-337
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    佐渡島大佐渡山地北西斜面の風衝地に分布する高山帯の景観に類似した植生を調査し,積雪の時空間的不均一性が植物の棲み分けへ及ぼす影響を,冬季の地温変化および夏季の土壌水分量の違いから検討した.対象地域はスギ–ブナ林の中に位置し,矮小低木林,草地,裸地が広がる.夏季の土壌水分は草地で高く,矮小低木林で低い傾向がみられたが,この結果は積雪の時空間的不均一性に起因するとは言い難く,植物の棲み分けに直接影響を及ぼす要因と考えることは困難である.一方で,冬季の地温は草地において氷点下となる期間が長く,矮小低木林で短い.このことは積雪期間の短い草地において,寒冷な季節風に曝される期間が長期におよび,低温と乾燥の影響を強く受けやすい一方で,矮小低木林では積雪がこの影響を小さくする傾向にあり,積雪の時空間的不均一性が草本と木本の棲み分けに影響を及ぼす可能性を示唆している.

  • 岩間 信之, 中島 美那子, 駒木 伸比古
    2025 年20 巻2 号 p. 338-358
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    外国人散在地域では,地域住民や行政による認知度が低く,エスニック・コミュニティの形成も困難であるため,外国人住民は地域社会から孤立しやすい.このような状況は,外国にルーツのある子どもたちの成育環境に悪影響を及ぼす可能性がある.本研究では,外国人散在地域A市を事例に,住民構成を把握した上で,就学前の子どもたちの成育環境を定性的に分析し,問題改善に向けた方策を検討した.A市はアジア系の若年層住民が多く,社会的統合度は多様であった.子どもたちの一部は,偏食や言語習得の遅れといった生活および健康問題を有していた.こうした問題の背景には,保護者の地域社会からの孤立や,専門機関による支援の困難性が指摘できる.こうした傾向は社会的統合度低群のなかでも保護者の日本語力が低い世帯において顕著であるため,保護者を支援するピア・サポーターの育成や教育・保育施設による積極的なアウトリーチが有効な方策と考えられる.

  • 田中 耕市
    2025 年20 巻2 号 p. 359-372
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では,能登半島を中心に建物の倒壊や火災,斜面崩壊,津波等のさまざまな災害が発生した.本稿は,能登半島9市町を対象地域として,最短1分間隔で測定されるスマートフォンのGPSによるポイント型人流データを用いて,ミクロな時空間的スケールにおける被災者の行動パターンを把握した.地震が発生した16時台に被災者の活動量は急激に増大し,その後は徐々に減少していった.地震後の被災者の行動は地域によって大きく異なり,特に通行不能箇所が多かった奥能登地域では,長距離移動がほとんどみられなかった.同地域における被災者の行動は,「避難所等に避難」,「自宅等に向かう」,「通行不能箇所に遭遇」,「周囲を動きまわる」,「外出せず」の五つに分類された.地震直後の混乱期において,被災者は避難するのみならず,さまざまな行動をとったことが明らかになった.

  • 小倉 拓郎, 山内 啓之, 濵野 清, 𠮷水 裕也, 小口 高
    2025 年20 巻2 号 p. 373-382
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    本研究は,2023年度現在,高等学校教諭一種免許状(地理歴史科)の教員養成課程を設置している国立大学46校を対象に,地理学関連科目の開講状況と担当教員の配置を整理し,教員養成課程における地理学教育の現状と課題を明らかにした.大学のウェブサイトおよびシラバスに基づき,科目を自然地理学,人文地理学,地誌学,地図学に分類し,科目数・単位数・担当教員の雇用形態を集計した.その結果,自然地理学を担当できる教職専任教員を2名以上配置する大学は35%にとどまり,人材不足が顕著であった.概論科目は制度上必要最小限を満たしているものの,演習・実習は人文地理学に偏重し,自然地理学の実践的な学習機会は限定的であった.また,高等学校地理総合の大項目であるGISや防災を体系的に扱う科目はごく少数であった.さらに,教職専任教員の地域偏在により,非常勤講師への依存が常態化し,大学教員の教育負担が大きくなっていた.今後,GISや防災などの高等学校地理総合の項目構成を視野に入れた概論科目の設計など,大学教員が高等学校の科目の内容を理解した対応を行い,教員養成課程の地理学教育と高等学校の地理教育のギャップを縮減することが必要である.

  • 森田 匡俊, 小池 則満, 大呂 興平, 石川 慶一郎, 服部 亜由未, 岡本 耕平
    2025 年20 巻2 号 p. 383-391
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,大分県別府市中心部の津波想定浸水エリア内に立地する宿泊施設を対象に,津波避難対策に関するアンケート調査を実施し,各施設の特性と実施されている対策との関連性について分析を行った.その結果,施設規模や人員体制,宿泊者属性などの施設特性に応じて,津波避難対策の実施状況には多様性がみられることが明らかとなった.施設の特性と対策との関連性について分析・考察した結果から,今後,津波避難対策の実効性を高めるためには,各宿泊施設の特性に応じた柔軟な対応策の導入や,実践的な避難訓練の実施が必要と考えられた.また,近年の外国人宿泊者の増加に伴う,多言語対応や誘導時の工夫なども今後の重要な課題として取り組む必要があることが示唆された.

地理教育総説記事
  • 渡邉 巧, 阪上 弘彬, 岡田 了祐
    2025 年20 巻2 号 p. 392-404
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    小学校社会科では,子どもの身近な地域に関する学習が行われる.小学校教師たちは,各地域の実情を踏まえて,授業を行っている.しかしながら,小学校教師の授業づくりの背景は明らかにされていない.そこで本稿では,社会科地域学習における小学校教師の授業づくりの特質およびその背景を明らかにする.研究方法としては,小学校教師5名にインタビューをし,その内容を質的に分析した.その結果,教師ごとに5つから7つのテーマが明らかになり,授業づくりの考え方に違いがみられた.また,教師の目的・目標に注目すると,(1)子どもが地域を理解することを重視したもの,および(2)子どもが地域社会へ参加することを重視したものに分けられた.このことは,教員志望学生または教師が,地域学習の授業づくりをするための知見となりうる.

  • 村山 朝子
    2025 年20 巻2 号 p. 405-421
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/09
    ジャーナル フリー

    グローバル化が加速し,世界情勢が激しく変動する現代,持続可能な未来を築く子どもたちが地球的視野を育み,世界像の基礎を早期に形成することが不可欠である.そのためには,小学校段階で「世界」に触れる機会を増やし,関心と共感を喚起するとともに,世界についての基礎的な知識と空間的視点を身につけることが重要となる.本稿は,小学校社会科における「世界の地理学習」のカリキュラム改善を提案する.まず,学習指導要領の変遷と研究動向を概観し,現行学習指導要領の問題点を明確化する.その上で,児童の学習意識・世界認識に関して行った調査結果等を分析し,次期改訂に向けた具体的な改善策を提示する.最後に,社会科における地理学習の構造的課題に触れ,抜本的改革への展望を示す.

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