学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
3 巻, 3 号
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目次
原著
  • 池内 智之, 山本 絵理, 津田 徹, 元田 弘敏
    2021 年 3 巻 3 号 p. 124-137
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    【目的】慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;以下,COPDと略)患者に対する呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハと略)においては,栄養管理を含めた包括的な介入が必要とされている.本研究では,新たなエネルギー消費量の算出方法と高負荷運動療法の効果を検討する.【対象および方法】4週間の入院呼吸リハを行ったCOPD患者32名を対象とした.食事調査によるエネルギー摂取量と活動量計や換算式によるエネルギー消費量を毎日記録しながら,身体組成の変化や呼吸リハの効果と合わせて検討した.【結果】体重推移とエネルギー出納が相関していたことで,COPD入院患者の運動介入症例におけるエネルギー消費量の算出方法は妥当と推定できる.また,高負荷運動により,体重を落とさずに身体機能,自覚症状が改善した.【結論】COPD患者に対する新しいエネルギー消費量の算出方法の妥当性と高負荷運動療法の有効性が示された.この結果は,COPD患者の呼吸リハ中に起こり得る低栄養リスク対策として有用である.

  • 森 茂雄, 金神 有里, 中島 里奈, 鈴木 祥子, 櫻井 英俊, 中本 加純, 伊藤 浩一, 土居 ひかる, 久留宮 康恵, 橋本 賢
    2021 年 3 巻 3 号 p. 138-146
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    【目的】管理栄養士を中心として,摂食嚥下障害チームと協働のうえで実施された肺炎患者に対する粘度調整水を用いた早期の栄養サポートが治療経過に及ぼす効果について検討した.【対象と方法】肺炎で入院し,静脈栄養が施行された絶食患者を対象として嚥下機能検査を行い,経口摂取可能な水分の粘度を決定のうえ,早期からの経口補水を取り入れた多職種連携型の栄養管理計画を実施した.総症例数34例のうち,調査期間内において退院もしくは転院した10例,死亡1例,検査未実施9例を除外した14例を対象とし,介入あり群6例,介入なし群8例に分け,比較評価を実施した.【結果】介入あり群において経口摂取エネルギー量および必要水分量に対する水分経口摂取率は有意に増加し,介入期間における静脈栄養や抗菌薬に関わる薬価を抑制することができた.【結論】肺炎患者に対して,管理栄養士を中心として粘度調整水を用いた早期の栄養サポートを実施した結果,治療効果や医療経済に貢献できるだけでなく,主治医の業務負担軽減につながる可能性が示唆された.

  • 鈴木 壱知, 山本 幸司, 五関 謹秀
    2021 年 3 巻 3 号 p. 147-157
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    【目的】Prognostic nutritional index(以下,PNIと略)は,血清アルブミン(以下,Albと略)値と末梢血総リンパ球数にて求められる予後予測指標であるが,Alb値の測定法の変更にともなうPNIの問題点について,慢性肝疾患患者を対象に検討を行った.【方法】2018年3月から10月に当院消化器内科に通院中の慢性肝疾患患者144名を対象とした.健康対照群は2017年1月から2018年7月に当院検診センターの受診者364名を用いた.Alb値の測定は電気泳動法と改良型Bromocresol purple法にて行った.【結果】Alb値,PNIともに改良型BCP法と比較して電気泳動法で有意に高値であった.病態の進行にともないその差は大きくなる傾向がみられた.【結論】PNIは優れた予後予測指標であるが,Alb値の測定法により値が異なるので,その評価には留意する必要がある.

  • 矢田 光絵, 山根 泰子, 森本 都, 笠井 香織, 隈元 理香, 菊池 篤志, 本告 正明, 藤谷 和正, 岩瀬 和裕
    2021 年 3 巻 3 号 p. 158-164
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    【目的】胃がん手術患者は年々高齢化しており,嚥下障害は術後の経口摂取ひいては合併症に係る重要な問題である.そこで,術前・術後経口摂取開始前の舌圧,嚥下内視鏡による客観的な嚥下機能評価と誤嚥性肺炎合併症の関連について検討した.【対象および方法】呼吸器合併症の既往がない,胃がんと診断され手術療法を実施した70歳以上の患者54例を対象とした.術後に肺炎の合併ありA群6例と,肺炎の合併なしB群48例に分けて,手術時年齢,病期,術式,手術時間,出血量,術後呼吸器合併症,舌圧,嚥下内視鏡のスコア評価を両群間で比較した.【結果】嚥下内視鏡評価は,術前・術後ともにA群で有意に高かった.一方,舌圧と誤嚥性肺炎との間に有意な相関は認めなかった.【結論】術前・術後の嚥下障害は誤嚥性肺炎発症に関連しており,その合併を予防するためには,早期に嚥下リハビリテーション介入が望ましいと考えられた.

  • 飯島 正平, 谷 美由紀, 黒田 晃功
    2021 年 3 巻 3 号 p. 165-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    【目的】透析患者の周術期栄養管理は手術成績に影響を及ぼす重要な課題であるが,その実態は明らかではない.我々は医療データベースを用いて透析患者の消化器術後栄養管理を後ろ向きに調査した.【方法】2009年~2018年に消化器切除術を受けた透析患者を栄養投与経路別に集計し,経口・経腸栄養未実施患者の経静脈的なエネルギー,アミノ酸,脂肪の処方量を日ごとに算出,術後7日目の『透析患者の食事療法基準』(エネルギー≥30 kcal/kg,アミノ酸≥0.9 g/kg)に対する達成患者割合を算出した.【結果】対象1,471名.経口栄養患者の割合は術後7日目に80%に達した.経口・経腸栄養未実施患者の経静脈的栄養基準達成割合は,エネルギー13.4%,アミノ酸7.7%に過ぎず,脂肪処方割合も23.2%に留まった.【結論】経口・経腸栄養未実施透析患者への術後静脈栄養処方の現状は不足傾向にあり,エネルギーとアミノ酸の処方量の増加と脂肪乳剤の併用が望まれる.

臨床経験
  • 三橋 直樹, 國見 友恵, 髙﨑 美幸, 鈴木 龍太, 中村 健太郎, 芦田 欣也, 三宅 理江子
    2021 年 3 巻 3 号 p. 175-182
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    【目的】療養病床の経腸栄養患者における基礎代謝実測値と推定値の乖離,および基礎代謝量に影響を与える因子を解析した.【対象および方法】対象は療養病床の経腸栄養患者31名.基礎代謝の実測は間接熱量計を用い,信頼性の高い実測値が得られた20名のデータを採用し,実測値と推定値の差,遷延性意識障害の有無による実測値の差,および実測値と年齢・身体組成(身長・体重・除脂肪体重)の相関を解析した.【結果】実測値は18.0kcal/kg/日,推定値は23.3kcal/kg/日であり,実測値が有意に低かった(p<0.01).また,「遷延性意識障害あり」の実測値は13.6kcal/kg/日,「遷延性意識障害なし」の実測値は19.5kcal/kg/日であり「遷延性意識障害あり」が有意に低かった(p<0.01).実測値と年齢・身体組成においては有意な相関はなかった.【結論】対象の基礎代謝は推定値との乖離が大きく,脳の損傷を考慮する必要がある.

症例報告
  • 靍久士 保利, 金田 聡, 飯田 明彦, 内藤 哲也, 池田 理恵, 中澤 保子, 若林 由紀子, 山崎 明, 山本 俊文
    2021 年 3 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    症例は2カ月男児.腸回転異常症・中腸軸捻転で,回盲部は残存するが残存小腸が30cmの短腸症候群となった.馴化期に入った後も,連日10回以上の排便,夜間に2~3時間ごとの排便があった.患児は体重増加が停滞し,頻便によるおむつ皮膚炎が増悪した.また,家人も頻回のおむつ交換で睡眠時間が確保できず,QOLが低下したため,以下の栄養管理の工夫を行った.①グァーガム分解物(partially hydrolyzed guar gum;以下,PHGGと略)の投与,②経管栄養剤や投与方法の検討,③五苓散の使用である.今回これらの3つの工夫を含めて5期に分類し,排便回数および夜間排便回数を比較検討したところ,probioticsとPHGGの併用,成分栄養剤とPHGGの混合液の持続投与に五苓散,離乳食を併用することで便性の改善と良好な体重増加が得られた.特に夜間排便回数が減少したことは,患児・家人のQOL改善につながったと考えられた.

  • 山村 亮太, 森永 裕子, 柴田 智隆, 伊東 弘樹
    2021 年 3 巻 3 号 p. 188-193
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    37歳男性.抗NMDA受容体脳炎のため入院加療中のところ,痙攣様症状ならびに不穏症状があったため,バルプロ酸ナトリウム(以下,VPAと略)を十二指腸カテーテルより投与開始した.不穏症状が持続していたためVPAの最低血中濃度(以下,トラフ値と略)を測定したところ17.8 µg/mLと低値であり,TDMに基づき2,100 mg/日まで増量したが,VPAのトラフ値は治療域以下であった.そこで経腸栄養剤とVPAの投与タイミングを検討するとともに,栄養カテーテルの自己抜去にともない,先端の留置部位を胃内に変更したこともあり, VPAのトラフ値は61.2 µg/mLへ上昇した.VPAと経腸栄養剤の投与間隔を30分あけることによりVPAの吸収に対する経腸栄養剤の影響を軽減したことに加え,栄養カテーテル先端位置が胃内となり,胃や十二指腸から吸収されるようになったことで,血中濃度が上昇したと考えられた症例であった.

  • 眞田 雄市
    2021 年 3 巻 3 号 p. 194-200
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    今回我々は,異なる臨床経過をたどった十二指腸縫合不全による重症病態を経験した.症例1は88歳,女性.胆嚢十二指腸瘻に対する胆嚢摘出術,大網被覆術,胃空腸吻合術施行後の患者で,術後2病日より十二指腸皮膚瘻および腹腔内膿瘍を併発したが,術後60病日まで経腸栄養を開始できず,呼吸不全や感染症の治療に難渋した.経腸栄養開始後も,下痢や胃内停滞などの理由により十分に投与量を増やすことができず,人工呼吸器を離脱できないまま施設転所となった.症例2は82歳,男性.十二指腸潰瘍穿孔による汎発性腹膜炎で,穿孔部の硬化のため縫合閉鎖が行えず,大網被覆術,胃空腸吻合術に加え,上部空腸に経空腸栄養カテーテルを留置した.術後に胃排泄遅延を生じたが,早期より経腸栄養を開始,術後17病日に抜管し,62病日に自宅退院となった.難治性瘻孔などの局所的消化管合併症が懸念され,経口摂取が困難であると予想される症例には,空腸からの栄養投与経路を確保し,術後の経腸栄養を安全に施行することが望ましいと考えられた.

  • 国島 正義, 竹田 明希子, 岩﨑 泰昌
    2021 年 3 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル フリー

    【はじめに】左上大静脈遺残(以下,PLSVCと略)は偶然発見されることが多い血管異常である.今回,PLSVCを有する患者へPICC留置を行った症例を報告する.【症例】86歳女性.胃がんの術前栄養強化目的で左上腕からPICCを挿入した.ガイドワイヤーを透視下で進め,縦隔の左側を走行したため,以前に撮影したCTで血管を確認したところ,PLSVCがあることがわかった.そのため,冠状静脈洞と右心房の接合部にカテーテル先端が位置するよう留置した.PICC挿入後のCTにて,カテーテル先端は右心房内に位置していたが,入院経過で合併症はみられなかった.【考察】PLSVCに対するPICCの留置は,PLSVCが右心房に流入する限り禁忌ではないが,PICC先端の理想的な位置に関する報告はない.PLSVCは冠状静脈洞を通して右心房に流入することが多く,冠状静脈洞内での留置は合併症を引き起こす可能性がある.本症例におけるカテーテル先端は右心房内に留置され,明らかな合併症は認められなかったが,適切なカテーテル先端位置については今後検討が必要である.

編集後記
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