電気泳動
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61 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
第55回児玉賞受賞者論文
総説
  • 佐藤 雄一
    2017 年 61 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    自己抗体は様々な自己免疫疾患患者の血清中に見出される抗体である.自己抗体は様々な悪性腫瘍患者の血清中にも認められ,しかも腫瘍関連抗原が検出されるより以前に,さらに症状が出現する5年前からも検出可能であるとの報告もあり,多くの研究者が腫瘍の早期診断ツールとしての自己抗体に注目してきた.この総説では,当研究室で行っている肺癌や膀胱癌を対象とした,二次元電気泳動法と免疫ブロットを組み合わせた二次元免疫ブロット法を用い,患者血清中の自己抗体を一次抗体として利用した早期の腫瘍特異的,化学療法感受性予測,患者の予後予測マーカー獲得について,当研究室の成果を中心に報告する.

第11回国際交流奨励賞(橋本賞)受賞者論文
技術
  • 木村 弥生, 戸田 年総, 平野 久
    2017 年 61 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    タンパク質は,翻訳後修飾(PTM)を受けて,その性質を多様に変化させる.そのため,タ ンパク質の機能を理解する上で,質量分析装置を用いた網羅的な解析によって取得できるPTM情報が重要になる.しかし,このような解析によって取得できるタンパク質のPTM情報の大部分は有効活用することができない.そこで,私たちは,PTM情報を統合し,管理するためのシステムを構築し,さらには,タンパク質のPTM情報を集めた独自データベース,ModProt(Post-Translational Modification Map of Proteome)を作成した.今後,ModProtは,PTM研究を推進するための重要なツールとして,また,PTMを標的とした個別化医療実現に向けた強力なツールとして,様々な研究に応用されることが期待される.

第10回国際交流奨励賞(橋本賞)受賞者論文
技術
  • 木下 英司, 木下 恵美子, 小池 透
    2017 年 61 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,MAPK情報伝達系に属するMEK1に注目し,細胞内におけるMEK1のリン酸化状態をPhos-tag SDS-PAGEを用いて解析した.既に明らかにされデータベースに登録されているMEK1の12箇所のリン酸化部位をアラニン置換した変異体を作製し,Phos-tag SDS-PAGEによるそれらの分離パターンを野生型のそれと比較解析を行った.これにより,MEK1においてはThr-292,Ser-298,Thr-386,Thr-388の4つの主なアミノ酸が恒常的にリン酸化し,それらのリン酸化残基の組み合わせによって少なくとも6つのリン酸化種が細胞内において恒常的に存在することが明らかとなった.さらには,MEK1活性化・脱活性化の過程において,上記4つのアミノ酸のリン酸化レベルは変動し,それに伴って生じる6つのリン酸化種の存在比も大きく変動することが証明された.

第67回総会シンポジウム:電気泳動を基盤とした研究の現状と今後の展望
総説
  • 近藤 格
    2017 年 61 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    プロテオーム解析による早期診断のバイオマーカー開発は盛んに行われてきた.しかし,臨床的な有用性が証明されて病院で使用されているものは未だ存在しない.それは,研究室でのバイオマーカー開発の限界に起因する.研究室では,常に同数に近いがん患者と非がん患者(あるいは健常者)のサンプルが比較される.しかし,通常の健康診断であれば,圧倒的にがん患者の方が少ない.そのため,実験室の条件では感度・特異度の高い早期診断バイオマーカーであっても,現実の世界ではたくさんの間違った検査結果を導くことになる.同数に近い数で発生する事象を検出ないし予測するバイオマーカーを研究対象として設定することが,現実的である.例えば,予後,再発,治療抵抗性を予測するバイオマーカーである.病態や罹患数など検査での運用を想定した臨床的な視点からバイオマーカー開発を捉えることが,成功するバイオマーカー開発のポイントではないだろうか.

一般論文
  • 栁田 憲吾, 萩生田 大介, 朽津 有紀, 鈴木 杏奈, 井上 航, 松本 梨沙, 龍華 慎一郎, 三枝 信, 村雲 芳樹, 長塩 亮, 鉢 ...
    2017 年 61 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    肺癌の血清診断マーカーを開発するため表面タンパク質を標識,回収後,shotgun analysisによって同定した.3つの肺癌細胞株の表面タンパク質をビオチン化し,回収した.ビオチン化タンパク質はshotgun analysisによって同定した.4つの組織型の異なる肺癌細胞株と培養上清を用いて同定されたタンパク質の発現レベルを免疫ブロット法および免疫染色法により確認した.さらに,肺癌患者血清(268例)および健常者血清(100例)を用いてreverse-phase protein array法により血清中のCD109レベルを測定した.血清中のCD109レベルは健常者に比して腺癌(AC)および扁平上皮癌(SCC)患者において有意に高値を示した(p < 0.0001).健常者を対照群,ACとSCC患者を判別群としたReceiver-operating characteristic curve解析を行った結果,Area under the curveは0.93であり,最適カットオフ値を1.13に設定した時,感度は84%,特異度は88%であった.さらに,CD109はstage Iでも検出されたことから,CD109は肺癌の早期血清診断マーカーである可能性が示唆された.

総合論文
  • 杉山 康憲, 亀下 勇
    2017 年 61 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    様々な細胞内イベントはプロテインキナーゼを介したタンパク質リン酸化によって制御されている.これらプロテインキナーゼは多くの疾病の発症に関与することが知られている.これまでにヒトゲノムから518種類のプロテインキナーゼが同定されているが,様々な状況下において,どのキナーゼがどのくらい発現・活性化しているかについては不明な点が多く残されている.このような背景の中,我々は様々な生物種の多様なプロテインキナーゼを認識するモノクローナル抗体としてマルチPK抗体を作製した.マルチPK抗体にはセリン・スレオニンキナーゼを認識するM1C,M8C抗体と,チロシンキナーゼに対するYK34抗体が存在する.これまでに,これらマルチPK抗体を用いた新規解析手法として,プロテインキナーゼの発現プロファイル法,二次元電気泳動法と臭化シアン分解法を組み合わせたプロテインキナーゼ同定法,細胞内プロテインキナーゼのリン酸化状態解析手法,が開発されている.加えて,マルチPK抗体を用いた研究例として,エピジェネティクス,2型糖尿病の糖毒性,潰瘍性大腸炎の発症に関わるプロテインキナーゼの同定と解析が行われている.本稿では,キノミクス(包括的キナーゼ研究)における強力なツールであるマルチPK抗体を用いた最近の技術に焦点を当てて紹介する.

総説
  • 長谷川 綾那, 曽川 一幸, 高橋 友里亜, 佐藤 守, 野村 文夫, 下条 直樹
    2017 年 61 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    牛乳アレルギーは,幼少期の最も一般的な食物アレルギーの一つである.症状は皮膚症状,粘膜症状,消化器症状など多岐にわたり,特に蕁麻疹,紅斑,湿疹などの皮膚症状が極めて多く認められる.短時間で急激な症状が現れるアナフィラキシーの誘発リスクも高く,また呼吸器症状やショック症状など,生命を危機的な状況に陥らせることも少なくない.牛乳は栄養価が高い食品であるが,アレルギー原因食物の一つである.牛乳アレルゲンタンのなかでもカゼインとβ-ラクトグロブリンは抗原性が高く主要アレルゲンとして報告されている.本稿では,ブロメラインによる牛乳主要アレルゲンの低減化を試みた.

  • 長塩 亮, 萩生田 大介, 朽津 有紀, 栁田 憲吾, 鉢村 和男, 佐藤 雄一
    2017 年 61 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    癌の予後や治療抵抗性に関わる因子として癌幹細胞との関連性が知られているが,癌組織中に存在する癌幹細胞はごく少数であり,様々な検討を行うのは難しい.我々は予後や治療感受性に関連する癌幹細胞マーカーの獲得を目的として,微小乳頭肺腺癌細胞株に対し,iPS化の技術を応用して山中4因子を導入することで癌幹細胞様の細胞株(MPPAC-4F)を樹立した.本稿では,このMPPAC-4F細胞の樹立とそのMPPAC-4F細胞株と親株であるMPPAC細胞を用いた免疫染色や両者のタンパク質発現パターンを二次元電気泳動(2-DE)法により比較した結果について紹介する.

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