電気泳動
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64 巻 , 1 号
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第58 回日本電気泳動学会学会賞(児玉賞)受賞者論文
総合論文
  • 木村 弥生
    2020 年 64 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル フリー

    タンパク質の翻訳後修飾(PTM)は,タンパク質の多様性の創出に寄与し,様々な生物学的プロセスの調節において重要な役割を果たしている.そのため,タンパク質の機能を理解するためにはPTM解析が重要になる.本稿では,著者らのタンパク質PTM解析に関する3つのトピックについて紹介した.1. 2-DEや質量分析を用いて酵母プロテアソーム構成サブユニットのN末端修飾を同定すると共に,変異体解析により各サブユニットのN末端修飾がプロテアソームの機能に影響を及ぼすことを示した.2. Phos-tag 2-DEを用いたPTM解析により,hnRNPKは複数のタンパク質フォームとして細胞内で発現し,各フォームは外部刺激に対して異なる反応を示すことがわかった.3. PTMに関する独自MSデータを統合および管理するオリジナルデータベースModProtを構築した.

  • 安井 寛
    2020 年 64 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル フリー

    電気泳動法は蛋白質や核酸の分離に優れ,とくにモノクロナリティを特徴とする悪性腫瘍由来の分子を同定するのに有用であり,とくに後述するように分子腫瘍マーカーの同定に応用されてきた.本稿で述べる造血器悪性腫瘍には白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫などあり,いずれも致死的で予後不良な疾患とされてきたが,2000年以降,電気泳動法を基盤とした分子遺伝学的な病態解析の進歩を通して,診断,治療へと結びつき,大幅な予後改善につながるものも出てきた.本稿では,慢性骨髄性白血病と多発性骨髄腫を事例に,造血器悪性腫瘍の臨床および研究における電気泳動法の現状と今後の展望について述べる.

第13 回日本電気泳動学会国際交流奨励賞(橋本賞)受賞者論文
総説
  • 前田 浩人, 石毛 崇之, 渡辺 俊文, 曽川 一幸
    2020 年 64 巻 1 号 p. 11-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル フリー

    ネコの下部尿路疾患の2–10%の症例において細菌感染が認められる.rapid BACpro及びMALDI Sepsityper Kitの前処理キットを用い,MALDI-BioTyper Systemによりネコの尿における直接菌種同定を試み,時間の短縮について検討を行った.2015年8月10日から2016年3月31日の間に前田獣医科医院に受診し,細菌性膀胱炎と診されたネコ43匹の尿を検体とした.16S rRNA遣伝子のシークエンス解析による同定を基準とし,MALDI Sepsityper Kitで前処理とした質量分析計による細菌の同定率は,グラム陰性菌で62.3%,グラム陽性球菌で42.7%であり,rapid BACproで前処理とした質量分析計による細菌の同定率は,グラム陰性菌で96.3%,グラム陽性球菌で78.5%であり,検体採取後30分で同定可能であった.本法は,尿中細菌同定分析を短時間で同定が可能な方法である.

第70 回日本電気泳動学会総会シンポジウム:新規開発の電気泳動技術1『革新的な電気泳動が拓く未来』
総説
  • 中野 道彦, 稲葉 優文, 末廣 純也
    2020 年 64 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル フリー

    本論文は,誘電泳動とそのライフサイエンス分野での応用についての概要を述べる.誘電泳動は,不平等電界中に置かれた誘電体物質の分極によって生じる現象で,微小空間での誘電体粒子などの操作に用いられている.細胞やDNAなどを含む多くの生体関連物質は誘電体であり,誘電泳動によって操作が可能である.誘電泳動の概要を述べると共に,生体関連物質の操作に用いる際の注意点と,電気泳動との違いについて説明した.誘電泳動のライフサイエンス分野への応用の例として,私達が取り組んでいる簡便・迅速な細菌検出法(DEPIM法)とDNA検出法について述べた.

  • 赤木 貴則
    2020 年 64 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル フリー

    本稿では,ナノ粒子のゼータ電位を測定する電気泳動装置について概説するとともに,細胞外小胞のゼータ電位の測定例について紹介する.粒子のゼータ電位を測定する電気泳動装置は,電気泳動セルと検出システムに特長がある.すなわち,電気泳動セルの材料および流路のサイズや形状,粒子の速度を評価する検出システムを測定目的に応じて選択する.

    細胞外小胞は,細胞から細胞へと遺伝物質を運ぶメッセンジャーとして近年医療分野で注目を集めるナノ粒子である.ところが,標的細胞へのターゲッティングを担う表面分子の情報について,粒子ごとに分析できる技術が十分でないことが課題となっている.そこで,電気浸透流が栓流となる両端開放型マイクロ流路を備えた電気泳動セルと,暗視野顕微鏡法を組み合わせた電気泳動装置を開発し,抗体結合によるゼータ電位変化により細胞外小胞の表面分子を評価した方法について紹介する.

第70 回日本電気泳動学会総会シンポジウム:新規開発の電気泳動技術2『キャピラリー電気泳動によるバイオ分析の諸相』
総合論文
  • 川井 隆之
    2020 年 64 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル フリー

    複雑な生命システムを解明するためには,微量生体試料の網羅解析技術が必要である.そこで本研究ではキャピラリー電気泳動(CE)に注目し,試料を最大2000倍濃縮できるlarge-volume dual preconcentration by isotachophoresis and stacking(LDIS)法を新規開発し,各種オミックス分析を微量で実現可能かを検証した.CE-蛍光検出を用いたグライコーム解析においては,LDIS法により従来法より約2000倍高感度な350 fM(420 zmol)の検出下限を実現し,3種類の細胞株における糖鎖プロファイルを見分けることに成功した.CE-質量分析を用いたメタボローム解析においても従来法より最大で800倍の高感度化な450 fM(540 zmol)の検出下限を実現し,HeLa細胞を対象とした一細胞分析では20種類のアミノ酸の定量および40種類の代謝物の同定に成功した.

総説
第70 回日本電気泳動学会総会シンポジウム:どげんかせんといかん,Phos-tag!
技術
  • 木下 恵美子, 木下 英司, 小池 透
    2020 年 64 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル フリー

    バクテリアにおけるタンパク質のリン酸化を介した情報伝達様式の1つにヒスチジン(His)とアスパラギン酸(Asp)のリン酸化反応がある.これは,環境変化に応答する機構として発達したもので,2成分伝達系とよばれる.外部の環境変化に応じて細胞膜上のヒスチジンキナーゼがHisを自己リン酸化し,即座にそのリン酸基をペアであるレスポンスレギュレーターのAspへと転移させる.このHisからAspへのリン酸基転移反応を通じて的確な環境応答が行われる.この系は様々な環境応答に汎用され,1つの菌体内に複数種存在することが知られる.しかしながら,HisやAspのリン酸基の化学的不安定さのため,これらのリン酸化反応を定量的に解析する方法は限られ,よって,未解明な反応制御機能は多い.本稿では,独自に開発したPhos-tag技術を用いたこの2成分伝達系のリン酸化反応の定量解析法をいくつかの実施例を示しながら紹介する.

総合論文
  • 片山 将一
    2020 年 64 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル フリー

    Cyclin-dependent kinase-like 5(CDKL5)は脳に豊富に発現するSer/Thrプロテインキナーゼであり,その遺伝子はX染色体上に存在する.CDKL5遺伝子の片方のアリルにおける変異は,精神発達の遅延やてんかんを症状とするCDKL5欠乏症(CDKL5 deficiency disorder; CDD)を引き起こす.CDDを引き起こすミスセンス変異はCDKL5の触媒領域をコードする領域に存在する場合が多い.そのため,CDKL5変異に伴う触媒活性の変化が疾患発症の直接的な原因になると考えられる.しかしながら,これまでの研究においてCDKL5変異体の活性が解析された例は少ない.簡便なCDKL5の活性検出法が開発されれば,CDKL5変異が真に疾患惹起性であるかを評価するために非常に有用である.本稿では,筆者らのグループが開発したPhos-tag SDS-PAGEを利用した簡便なCDKL5の活性検出法を紹介する.また,実際のCDDの患者さんに見られるCDKL5変異体の活性を測定したことについて概説する.

  • 田中 智大, 周 越, 櫻井 宏明
    2020 年 64 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/07
    ジャーナル フリー

    Phos-tagバンドシフトアッセイを用いることで,タンパク質リン酸化を簡単に解析することが可能である.この方法を用いて,EGFによるEGFR活性化を解析したところ,定型的なEGFRチロシン自己リン酸化はごくわずかしか起こっていないにも関わらず,発現しているほぼすべてのEGFRがp38によって非定型的なリン酸化を受けていることがわかった.EGFRの細胞内輸送機構を詳細に解析したところ,EGFによるEGFRのエンドサイトーシスは,定型的なリガンド結合型と非定型的なリガンド非結合型のものがほぼ同時に起こっており,前者はリソソーム経路へ,後者はリサイクリング経路へと運ばれていることがわかった.また,リガンド濃度が高いと定型的エンドサイトーシスが多くなるためリソソーム経路へ,逆にリガンド濃度が低い場合は非定型的エンドサイトーシスが多くなるためリサイクリング経路が優位になることがわかった.

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