電気泳動
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66 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
第72回日本電気泳動学会総会
第60回日本電気泳動学会学会賞(児玉賞)受賞者論文
論文種目:総合論文
第15回日本電気泳動学会国際交流奨励賞(橋本賞)受賞者論文
論文種目:総合論文
  • 長塩 亮, 朽津 有紀
    2022 年66 巻1 号 p. 9-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    がん組織中のがん幹細胞は抗がん剤や放射線療法に抵抗性を示すことが知られているが,存在量がごく少数であり,様々な研究に用いるのは困難である.我々はiPS化の技術を応用し,がん幹細胞様の肺腺がん細胞を樹立した.がん幹細胞様細胞を用いたプロテオーム解析により,がんの浸潤や予後との関連が示唆されるタンパク質が多数同定され,その一つであるNAP1L1に着目した.NAP1L1の診断的有用性を評価するため,193例の肺がん組織を用いた免疫染色を行った.腺がんにおけるNAP1L1発現は分化度,腫瘍径,病理学的ステージ,N因子,リンパ管浸潤,血管浸潤と有意に相関しており,またNAP1L1高発現群は低発現群に比して有意に予後不良であった.さらに,多変量解析の結果からNAP1L1の染色スコアは独立した予後不良因子であることが分かった.樹立したがん幹細胞様細胞を用いることで様々な検討が可能となり,今後のがん幹細胞研究の有効なツールとなることが期待される.

論文種目:技術
  • 新関 紀康
    2022 年66 巻1 号 p. 13-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    電気泳動は,分離分析などの研究に欠かせず,遺伝子解析,シーケンシングにおいても電気泳動法は重要な手法のひとつである.

    キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)でα2分画に検出された異常ピークに関して詳細に解析し,造影剤の影響であることがわかった.既報もあったが,その造影剤の同定に関する報告やこのアーチファクトの除去方法に対する報告はない.

    今回造影剤の特性を理解し,様々な基礎的検討を実施し,遠心タイプの限外濾過を使用することでアーチファクトの除去に成功した.このことは微量なmonoclonal様ピークが検出された際には本研究で確立した除去手法を実施し,M蛋白と造影剤によるアーチファクトとを区別することのみならず,その影響を除外した臨床データを報告することが可能である.

第22回日本電気泳動学会奨励賞(服部賞)受賞者論文
論文種目:総合論文
  • 川井 隆之
    2022 年66 巻1 号 p. 19-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    複雑な生命システムを理解するためには,その最小単位である細胞一個から解析可能な超高感度かつ網羅的な分析法が必要である.このためには,生体試料の網羅解析に適した質量分析の高感度化は極めて重要な課題である.そこでまず,MSの前段でキャピラリー電気泳動による生体分子の分離を行い,イオンサプレッションを回避することを着想した.試料ロスを避けるための新規オンライン試料濃縮法や高効率イオン化プローブを開発することで,サブamolレベルの感度を実現し,単一HeLa細胞のメタボローム分析を世界で初めて実現した.またインフュージョン分析であっても,単一細胞の細胞質のみを採取してそこに含まれる薬剤を解析することで,細胞内濃度や細胞膜浸透性を正確に評価できることを示した.超高感度質量分析技術は未だ発展途上であるが,今後基礎的な生命科学研究から創薬応用研究に至るまで幅広く利用されるものと期待される.

  • 松本 俊英, 川島 祐介, 紺野 亮, 小寺 義男, 三枝 信
    2022 年66 巻1 号 p. 23-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    卵巣癌は婦人科腫瘍の中で最も予後不良な癌種として知られており,特に卵巣明細胞癌(OCCCa)は抗癌剤低感受性であるため,再発癌・進行癌における予後は極めて不良である.我々はOCCCaの診断や分子標的となるような新規バイオマーカー探索に着手した.Lefty(Left-right determinant factor)は,卵巣癌の中でもOCCCaで有意に高発現であり,TGF-β/Akt/Snailシグナル系を介した上皮間葉転換やがん幹細胞化の誘導に関与していることを見出した.EBP50(Ezrin-radixin-moesin binding phosphoprotein 50)は,アポトーシス制御とDNA修復酵素であるPARP1の活性化維持に関与することにより,OCCCaの化学療法耐性能獲得及び予後不良に寄与することが示唆された.上記結果はともに,病理検体から高率にタンパク質の抽出,さらには感度および再現性の高い質量分析計による解析が起点となった成果である.

第72回日本電気泳動学会総会特別講演:バイオバンクの現状と展望
論文種目:総説
  • 菊田 一貴, 近藤 格, 吉松 有紀, 仲谷 博安, 佐々木 里奈, 中野 公子, 吉田 祐甫, 尾澤 巖
    2022 年66 巻1 号 p. 27-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    昭和61年に開設された栃木県立がんセンターは,都道府県がん連携拠点病院として多くのがん患者の診療を行ってきた.近年の科学技術革新に伴うがん診断治療法の急速な変化・発展に対応するためバイオバンクやデータベース構築の重要性が増している.バイオバンクやデータベースを活用することで,分子情報をもとに個々の症例に最適な治療法を選択したり,少数の症例からは得ることができない普遍的な情報を得たり,希少がんや難治性がんの研究を行ったりすることも可能になる.そこで,栃木県立がんセンターではがんゲノム検査をはじめとする患者組織を用いた検査に備えることと,がんの基礎研究および新規治療法開発のためのトランスレーショナルリサーチを推進することを目的に2021年4月に栃木キャンサーバイオバンクを開設した.当院で開設したバイオバンクの目的や特徴について紹介する.

第72回日本電気泳動学会総会特別講演:逆相タンパクアレイ基盤のがん精密医療への応用
論文種目:総説
  • 増田 万里
    2022 年66 巻1 号 p. 31-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    次世代シークエンサーの飛躍的技術革新によって,国内においても遺伝子パネル検査によるゲノム医療が本格始動し,一般医療においても身近なものとなってきた.しかしながら,既存治療薬が投与可能な遺伝子変異を持つ症例は,がん患者全体の10%に至らず,ゲノム医療の有効性は未だ証明されていない.今後は,ゲノム解析,トランスクリプトーム解析,プロテオーム解析,エピゲノム解析によるデータの統合・補完により,病態の詳細をより正確に把握し治療戦略を提示する高精度医療が必要になると予測される.逆相タンパクアレイ法(Reverse Phase Protein Array:RPPA)は微量検体においても半定量的に正確かつhigh throughputに,シグナルプロファイリングが実施できるプロテオーム技術である.本稿では,RPPA技術のがん高精度医療への応用例と現状,今後のゲノム高精度医療への有用性について紹介する.

第72回日本電気泳動学会総会シンポジウム:Phos-tagが拓く生命科学
論文種目:総説
  • 久永 眞市, Ambika Krishnankutty, 木村 妙子
    2022 年66 巻1 号 p. 35-41
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    リン酸化はシグナル伝達,細胞増殖,細胞運動,遺伝子発現など多くの細胞機能を調節するタンパク質の翻訳後修飾である.これまでにリン酸化の制御と機能を明らかにしようと多くの研究が行われてきた.最近はin vivoのリン酸化部位は質量分析法で同定され,リン酸化の動態はリン酸化部位抗体を用いたウェスタンブロットで調べられている.しかし,そのような方法でも目的とするタンパク質のリン酸化の全体像を把握することは容易ではない.特に複数の部位でリン酸化されている場合には,リン酸化の組み合わせや特定部位のリン酸化の定量は難しい.我々はリン酸化アフィニティーSDS-PAGEであるPhos-tag法を用いて,いくつものタンパク質のリン酸化の解析をしてきた.本稿では,タウとその主要キナーゼであるGSK3βを例にして,in vivoリン酸化解析におけるPhos-tag SDS-PAGEの有用性を示したい.

第72回日本電気泳動学会総会シンポジウム:臨床検体を用いたバイオマーカー研究
論文種目:総説
  • 小林 信, 杉本 幸太郎, 千葉 英樹
    2022 年66 巻1 号 p. 43-46
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    自己抗体は自身のタンパク質に反応する異常抗体で,がん患者の血清中においても腫瘍関連抗原に対する自己抗体が存在することが知られている.自己抗体は腫瘍関連抗原よりも早期に患者血清中から検出できることから,がんの早期診断マーカーとして期待されている.一方,これまで主にプロテオミクスを活用する戦略により新規自己抗体の同定が試みられてきたが,臨床応用に至ったのはごく少数に留まり,より高い検出力や特異性を合わせ持つ新規抗体の同定が切望されている.本総説ではまず腫瘍関連自己抗体の探索するための基本原理として,電気泳動法と質量分析法ならびに合成タンパク質マイクロアレイ法について概説し,続いて最近の研究成果を紹介すると共に将来の腫瘍関連自己抗体研究の展望を述べる.

第72回日本電気泳動学会総会シンポジウム:プロテオーム:色々な角度から
論文種目:技術
  • 野口 玲, 近藤 格
    2022 年66 巻1 号 p. 47-51
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    キナーゼによるタンパク質リン酸化反応は,細胞内での様々な生命現象に関与している.がんにおいてもキナーゼの異常ががんの発生・進行に重要な役目を担っている.キナーゼの異常はがんの薬物療法である分子標的薬の治療標的であり,沢山のキナーゼ阻害薬が開発されている.キナーゼの異常の原因として,キナーゼをコードする遺伝子の遺伝子変異やコピー数の異常などの遺伝子異常が知られている.しかし,遺伝子異常を伴わないキナーゼの活性異常が多く存在する.そのため,キナーゼの活性を調べることが必須である.キナーゼの活性を検出する法として,様々な手法が存在するが,その中でも微量の生検検体でも網羅的にキナーゼの活性を測定できる三次元ペプチドアレイによる網羅的キナーゼ活性解析システムは予後予測バイオマーカーの探索や治療標的の同定に有用である.

第72回日本電気泳動学会総会シンポジウム:Top-down proteomics and peptidomics
論文種目:技術
第72回日本電気泳動学会総会シンポジウム:電気泳動法を用いた生体分子解析の新技術
論文種目:一般論文
  • 大石 正道, 渡邊 沙巴羅, 松本 開夢
    2022 年66 巻1 号 p. 59-62
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    SDS-PAGEは,タンパク質を見かけの分子量で分離するための有用な手法であるが,SDSがタンパク質の複合体を解離させるだけでなくタンパク質の立体構造を壊すため,タンパク質の熱変性に伴う立体構造の変化を調べるには向いていない.そこで,我々はタンパク質抽出液に含まれるSDS濃度を低下させることによって,牛肉または魚肉を用いて加熱変性によるタンパク質アグリゲートの形成過程をとらえる手法を開発した.牛肉の場合,加熱した肉を0% または0.1% SDSを含む抽出液中でホモジェナイズし,6,200 rpmで低速遠心後の上清をSDS-PAGEにかけた.40℃ではミオシン重鎖,60℃ではコラーゲン,70℃ではトロポミオシン,80℃ではアクチンが,それぞれ凝集体を形成して沈殿し,ゲル中から失われていった.魚肉では,ミオシン重鎖は4℃でも抽出されにくく,50℃でアクチンとトロポミオシンが失われた.ドットブロット法で,非変性の魚卵タンパク質と強く反応するアレルギー患者の血清を用いたが,0.05% SDSを含む抽出液で魚卵タンパク質を変性させただけで,ウエスタンブロット法では全く反応が見られなかった.

第72回日本電気泳動学会総会シンポジウム:がん予防研究と今後の展開
論文種目:総説
  • 藏滿 保宏, 武藤 倫弘, 寺崎 将, 岡田 太
    2022 年66 巻1 号 p. 63-65
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/08
    ジャーナル フリー

    がん治療法の発展に伴い,以前よりは不治の病の印象が薄くなったとは言え,がんは死因第一位の座から降りて来そうにはありません.ピロリ菌による胃がん,肝炎ウイルスによる肝細胞がん,パピローマウイルスによる子宮頸がんなどいくつかのがんは予防が可能になって来ました.これからはさらにがん予防を推進していけばもっとがん罹患率をさげていけるかもしれません.このシンポジウムでは(1)実験的炎症発がんモデルを用いたがん予防の方策(2)大腸がん予防に対しての化学予防(3)ワカメ等の褐藻類に含まれているフコキサンチンによる大腸がんの予防のテーマで,がん予防の今後の展開を議論させて頂きました.

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