電気泳動
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66 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
第71回日本電気泳動学会シンポジウム:電気泳動で何をしよう【医学】
論文種目:技術
  • 井坂 栄作, 杉浦 貴則, 橋本 和彦, 菊田 一貴, 穴澤 卯圭, 野村 武史, 亀山 昭彦
    2022 年66 巻2 号 p. 67-70
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    唾液腺悪性腫瘍の約30%を占める粘表皮癌はムチンを多く含む事が報告されており,診断に苦慮することがある.ムチンの中でもMUC1は,診断および予後を判断する腫瘍マーカーとして研究がなされてきた.さらに,ムチンは分子量の50%以上が糖鎖で構成されており,その糖鎖も悪性化に伴い変化が報告されている.我々は,粘表皮癌および正常唾液腺のムチンを構成する糖鎖を分析し,新しい診断マーカーを発見すべく研究を行なった.粘表皮癌,正常唾液腺の検体より分子マトリックス電気泳動を用いてムチンを分離し,糖鎖を遊離し質量分析を行なった.粘表皮癌ではMUC1に結合するシアル酸化されたコア2型タイプの糖鎖が多く検出し,中でも(Hex)2(HexNAc)2(NeuAc)1および(Hex)2(HexNAc)2(NeuAc)2が豊富に検出した.粘表皮癌が発現するMUC1は糖鎖に特徴を持った腫瘍関連MUC1であると考えられ新たな診断マーカーの開発に向けて今後さらに研究を進めていきたい.

第71回日本電気泳動学会シンポジウム:電気泳動で何をしよう【薬学】
論文種目:総合論文
  • 木下 恵美子, 木下 英司, 小池 透
    2022 年66 巻2 号 p. 71-79
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    外来タンパク質を発現には,細胞あるいは無細胞系のタンパク質発現系を利用できる.目的のタンパク質がリン酸化などの翻訳後修飾を要する場合には系の選択が重要である.私たちは,ヒトSrcファミリーキナーゼ(SFKs) 8種類を,2種類の細胞ベースのタンパク質発現系と4種類の無細胞タンパク質発現系で合成し,それらのリン酸化状態をリン酸基親和性電気泳動法Phos-tag SDS-PAGEで解析した.真核細胞由来の系では,発現したキナーゼに翻訳後修飾に基づく複数のリン酸化状態が存在した.それぞれのキナーゼのリン酸化状態は,発現系によって明らかに異なった.キナーゼ活性の有無は,キナーゼと発現系の両方の特性に依存していた.これらの結果は,無細胞タンパク質合成系を利用したプロテオーム解析,特に翻訳後修飾を必要とするタンパク質の解析に対して重要な情報である.

論文種目:技術
  • 伊藤 弦太
    2022 年66 巻2 号 p. 81-86
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病(PD)は運動機能障害を主症状とする進行性の神経変性疾患であり,現在のところ根本治療法は存在しない.家族性PDの原因タンパク質であり,孤発性PDの発症にも重要と考えられているleucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)は,GTP結合能とキナーゼ活性をあわせもつユニークなタンパク質である.近年の研究から,LRRK2は低分子量GTPaseであるRabをリン酸化することで,細胞内小胞輸送の制御に関与することが明らかになった.非変性PAGEにおける泳動度をもとに,LRRK2はホモ2量体を形成することが信じられてきたが,私は,非変性PAGEをはじめとする種々の生化学的解析をもとに,LRRK2は主に単量体として存在することを報告した.本稿では,その過程で行われた非変性PAGEを用いた生化学実験について紹介する.

論文種目:総合論文
  • 小松 徹
    2022 年66 巻2 号 p. 87-90
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    生体内には常に数千種類を超える酵素が発現しており,特定の酵素のはたらきの異常が病気の進行と関連する例が数多く報告されている.特定の疾患と関わる酵素の機能を理解することは,病気の診断,薬の開発に直結する非常に重要なものであるが,その機能は生体内の種々の要因によって動的に制御されており,いまだに,疾患との関わりが見出されていない酵素も数多く存在している.

    著者らは,酵素の有する活性に着目し,生体内の様々な酵素の活性を網羅的に評価する研究手法と,見出された活性の責任タンパク質を非変性電気泳動を用いた活性評価によりプロテオーム中から高精度に発見する研究手法(diced electrophoresis gel法)を組み合わせることで,生体内の様々な酵素の機能異常を活性レベルの解析から発見し,新たな創薬標的,バイオマーカーの候補タンパク質を見出す方法論(enzymeのomics = enzymomics法)の開発を進めてきた.本論文では,酵素の活性を高感度に検出する蛍光性分子を用いた解析を中心として,その方法論と展望について紹介させていただく.

第71回日本電気泳動学会シンポジウム:電気泳動で何をしよう【農学】
論文種目:総合論文
  • 若山 正隆
    2022 年66 巻2 号 p. 91-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    様々な物質を一斉に分析するメタボローム解析のうち,極性低分子(アミノ酸類,有機酸類,核酸類)についてはキャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)法がしばしば用いられる.食品・農産物は多種多様であり,分析ターゲットなる極性低分子は呈味性,栄養・機能性等に関与することも多く,品質の維持,向上に重要な役割を持っている.しかしながら多種多様の材料を安定的に測定するには適切な前処理および分析の工夫が必要である.本報では生材料に対して固定溶媒添加および未添加条件下での破砕,および凍結乾燥材料の安定的な破砕および抽出手法を紹介し,さらにCEにおいてキャリーオーバーが少なく,電流降下が少ない試料導入並びに検量性の高い質量分析法を用いたメタボローム手法を紹介する.これらの安定的な分析手法を用いて食品,農産物に対しての品質の維持,向上に貢献できうる実験系の提示と将来像について考察する.

論文種目:一般論文
  • 黒木 勝久, 秋山 克樹, 榊原 陽一
    2022 年66 巻2 号 p. 97-102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    黒毛和牛やブランド豚肉を始めとした高付加価値食肉は系統種の交配と飼育条件の工夫により開発される.食肉偽装などの問題もあり,遺伝的・環境的要因を一度に解析できる手法を確立することで,効率的な優良育種とブランド肉の偽装鑑定への応用に期待できる.その一つとして,我々はプロテオミクス基盤技術を活用した解析を行っている.本稿では,豚肉に焦点を当てブランド肉鑑定および優良種豚選抜法への可能性を二次元電気泳動と質量分析計を用いて検討した結果を報告する.プロテオーム解析の結果,ブランド豚肉では解糖系に関するタンパク発現が大きく変動しており,環境要因が糖代謝に与える影響を見出すことが出来たと共に,ブランド豚肉を判別できるマーカータンパク質・ペプチドの候補を見出すことが出来た.さらに,優良育種に用いられるデュロック種と大ヨークシャー種の血清サンプルを用いた解析より,従来の系統的な選抜方法とは異なる新たな個体識別方法への可能性が示された.

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