幼若ラット膵の器官培養を試み, ブドウ糖1mg/mlを含む modified Eagle's medium に chick embryo extract および仔牛血清をそれぞれ10%の割合に加えた培養液を用いて, 97%O
2-3%CO
2なる混合ガスを通気した場合6-9日間はその機能を維持しうることを形態学的に観察した.ついで諸種薬剤あるいはhormoneを培養液に加えて3日間培養し, 形態学的に観察するとともに培養液中に放出されるimmunoreactive insulinを測定して諸種物質の培養膵組織の形態およびinsulin放出におよぼす影響について検討した.
生後14日前後のラット膵をブドウ糖1mg/mlを含むmodied Eagle's mediumに CEE および仔牛血清をそれぞれ10%の割合に加えた培養液を用いて, 97%O
2-3%CO
2なる気相下で器官培養を行ない, まず形態学的に観察した結果, 少なくとも培養6-9日間はその機能を維持しうると推定した.ついで諸種物質を培養液に加えて3日間培養し, 形態学的に観察するとともに培養液中に放出されるIRIを測定した.
その結果, 培養液中にブドウ糖5mg/mlを加えた場合にはA-F染色でβ顆粒が減少, 抗insulin血清を用いた螢光抗体法で螢光の輝度および強さが弱減, 培養液中にinsulin放出が増加した.xylitol 1mg/mlをブドウ糖の代りに用いた場合には, 対照に比し形態学的にはとくに差異を認められなかつたが, 培養液中IRIの減少がみられた.CEEを培養液から除いた場合にはβ顆粒の減少と螢光の減弱を, 培養液中IRIは減少した.Alloxan5または10μg/mlではβ細胞に退行変性像, 顆粒の減少および螢光の減弱を示すものが多く, IRIはいちじるしく減少した.Tolbutamide-Na 100μg/mlではβ顆粒の減少, 螢光の減弱およびIRIの著増を, dimethylbiguanide-HCl 100μg/mlでは形態学的にも, またinsulin放出についても対照と差異がみられなかつた.
ついで, それぞれ10μg/mlの各種hormoneを培養液に加えてその影響を観察したが, 培養3日間に関する限り, 形態学的にはとくに対照と差異がみられなかつた.一方, IRIについては天然ACTHおよびglucagon添加で増加が, 塩化acetylcholine添加でやや増加の傾向がみられ, 合成ACTH,
l-thyroxine-Na添加ではほとんど影響がみられなかつた.しかし, cortisone, 塩酸epinephrine添加では減少し, 牛growth hormoneに関してはブドウ糖1mg/mlを含む培養液に添加した場合やや減少の傾向が, またブドウ糖5mg/mlを含む培養液に添加した場合にはブドウ糖5mg/mlのみを含む場合に比し減少がみられた.
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