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沿岸海洋研究
Online ISSN : 2434-4036
Print ISSN : 1342-2758
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漂流ゴミ流入量に対する逆推定手法の東京湾への適用性と 推定結果の水平拡散係数依存性
片岡 智哉, 日向 博文
2012 年 49 巻 2 号 p. 113-126
発行日: 2012年
公開日: 2020/02/12
DOI
https://doi.org/10.32142/engankaiyo.49.2_113
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短波海洋レーダによる観測結果を用いた中立粒子実験に基づき,東シナ海を対象として開発された双方向粒子追跡法とラグランジュ未定乗数法による逆推定法の東京湾への適用性を確認した.特に水平拡散係数が流入源と流入量の推定精度に及ぼす影響について詳細に検討した.その結果,流入源位置の推定精度が10km 以内,流入量の推定精度は0.9から1.6倍程度であることが明らかとなり,これら推定方法の東京湾への適用性が確認できた.真値に対して過大な水平拡散係数を計算に使用すると中立粒子の拡散スケールが実際よりも大きくなるため間違った流入源位置を特定する可能性が高くなる.流入量についても真値に対して過大な水平拡散係数を与えると同様な理由から流入量は過大に推定される.しかしながら,その影響の度合いは線形ではなく,真値に対して2倍程度の水平拡散係数を計算に用いれば推定精度は1.6倍程度,真値に対して1オーダー大きい水平拡散係数を用いた場合でも推定精度は6から7倍程度である.
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(2164K)
富山湾奥部における表層水中の栄養塩と 植物プランクトン現存量の季節変動
辻本 良
2012 年 49 巻 2 号 p. 127-137
発行日: 2012年
公開日: 2020/02/12
DOI
https://doi.org/10.32142/engankaiyo.49.2_127
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富山湾奥部における栄養塩や植物プランクトン現存量の季節変化を把握するために,2006年4月から2008年2月にかけて調査を実施した.富山湾奥部における水質は,河川水の影響を強く受けていた.クロロフィルa 濃度では夏季にピークが見られたが,栄養塩濃度には明瞭な季節変化が認められなかった.流量の多かった2006年においてクロロフィルa濃度が高く,またその継続期間も長かった.淡水供給量が多く,成層強度が強まったことがその要因と考えられる.神通川河口に近い定点では絶えず河川から栄養塩が供給されるため,DIN,DIP およびDSi ともに植物プランクトンの増殖を制限する下限濃度を下回ることがなく,栄養塩濃度によって植物プランクトンの増殖は制限されていなかったと推定される.一方,沖側の定点では,2006年の夏季と秋季には窒素制限,2007年にはリン制限と推定され,制限栄養塩は年によって異なった.低塩分域では栄養塩濃度は実質的に制限になっていないことや沖側では制限要因が窒素とリンで変化したことから,富山湾奥部におけるCOD の環境基準を達成するためには,窒素とリンの負荷量をともに削減することが必要であると考えられる.
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(1191K)
漂流・漂着ゴミと海洋学 -海ゴミプロジェクトの成果と展開-
磯辺 篤彦, 日向 博文, 清野 聡子, 馬込 伸哉, 加古 真一郎, 中島 悦子, 小島 あずさ, 金子 博
2012 年 49 巻 2 号 p. 139-151
発行日: 2012年
公開日: 2020/02/12
DOI
https://doi.org/10.32142/engankaiyo.49.2_139
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人工的な海岸漂着物(海ゴミ)に関する既往研究を概説するとともに,海ゴミ漂着量のウェブカメラを用いたモニタリ ング技術や,発生源の逆推定技術の開発に取り組んだ研究プロジェクトについて紹介する.また,効率のよい海ゴミ回収 事業や,海洋学研究者の海ゴミ問題への積極的な関与を提案する.
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(2146K)
日本と韓国における複式干拓堤防建設後の底生動物相変化の比較 -諫早湾への海水導入後に何が起こるか?
佐藤 慎一
2012 年 49 巻 2 号 p. 153-159
発行日: 2012年
公開日: 2020/02/12
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https://doi.org/10.32142/engankaiyo.49.2_153
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日本と韓国で施工された複式干拓堤防建設後の底生動物相の変化について,その共通点や相違点を明らかにして,今後の諫早湾への海水導入後の底生動物相変化を予測した.諫早湾干拓調整池では,潮止め1カ月後にホトトギスガイが一時的に増加した後,潮止め4カ月後には二枚貝類のヒラタヌマコダキガイとヨコエビ類のタイリクドロクダムシだけが見られるようになり,最終的に2006年以降は大型の底生動物は見られなくなった.一方,韓国のセマングム干拓予定海域内側では,2006年4月の防潮堤完成前後に,諫早湾と同様にヒラタヌマコダキガイとドロクダムシ類が増加したが,2008年7月以降はこれらの種も減少し,替わりに2009年からはホトトギスガイが急増している.また,韓国北西部の始華湖干拓でも同様に,潮止め後にヌマコダキガイ類とタイリクドロクダムシが増加した.これらの結果を基に予測すると,諫早湾への海水導入後は,数ヶ月程度でヒラタヌマコダキガイとタイリクドロクダムシが増え,その後,これらの種の活動により 堆積物中の酸化が促進されることで底質が改善され,他の底生動物も生息できるようになると考えられる.
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(698K)
海底底上げによる有明海環境改善策に関する一提案
柳 哲雄, 塚本 秀史
2012 年 49 巻 2 号 p. 161-164
発行日: 2012年
公開日: 2020/02/12
DOI
https://doi.org/10.32142/engankaiyo.49.2_161
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赤潮や貧酸素水塊の多発に悩まされる現在の有明海の環境改善のために,有明海の海底を人工的に浅くして,潮汐振 幅・潮流振幅を増加させ,赤潮や貧酸素水塊が発生しにくい海洋環境に変える方法を提案する.
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(872K)
有明海奥部における大規模な赤潮の発生とその発生メカニズムと原因
堤 裕昭
2012 年 49 巻 2 号 p. 165-174
発行日: 2012年
公開日: 2020/02/12
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https://doi.org/10.32142/engankaiyo.49.2_165
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有明海では1990年代後半より赤潮が頻発し,奥部海域では1998年より秋季~初冬に発生する赤潮が急に大規模化した.赤潮の頻発や大規模化は,海底への有機物負荷量の大幅な増大につながり,夏季の貧酸素水発生の主要な原因となる.そこで,有明海奥部における赤潮の発生のメカニズムと原因について,近年の水質,潮流,海底環境などに関する調査・研究の成果をレビューした.赤潮の頻発や大規模化は,陸域からの栄養塩負荷量の増加を伴わない条件下で起きていた.実際には,塩分成層が形成された時に,低塩分・高栄養塩濃度化した表層で赤潮が発生していた.したがって,赤潮の頻発や大規模化は,塩分成層が形成される頻度や継続期間に依存すると考えられる.塩分成層が形成されやすくなる原因としては,潮汐振幅の減少を通したことによる水柱の鉛直混合エネルギーの減少では説明がむずかしく,むしろ潮流自体の変化によって生じた可能性が指摘される.
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(1389K)
開門による水底質への影響予測
佐々木 克之
2012 年 49 巻 2 号 p. 175-180
発行日: 2012年
公開日: 2020/02/12
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https://doi.org/10.32142/engankaiyo.49.2_175
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福岡高裁で諫早湾水門の開門が確定したので,開門による諫早湾と有明海奥部の水底質の変化について検討した.有明海の海面漁業漁獲量はとくに諫早湾奥部の干潟域を締め切った後に減少した.減少の主要な原因は赤潮の多発に伴う貧酸素水の形成と考えられる.赤潮の多発の要因は,締め切りによる諫早湾の潮流の弱まりと堤防締め切りによってできた調整池の悪化した水の諫早湾への放流である.諫早湾の潮流の弱まりは底質の泥化も促進した.2002年に実施された短期開門調査結果を用いて検討した結果,開門によって調整池の水質は急速に改善され,開門に伴う海水導入によって諫早湾内の流動が強まることと相まって,諫早湾内の赤潮・貧酸素の減少と泥化の改善が進み,諫早湾内漁業の改善が期待されることと,諫早湾水底質の改善が有明海奥部の水底質の改善につながる可能性を指摘した.
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