沿岸海洋研究
Online ISSN : 2434-4036
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53 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 磯辺 篤彦, 吉江 直樹
    2016 年 53 巻 2 号 p. 115
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
  • 宮尾 泰幸, 磯辺 篤彦, 油布 圭
    2016 年 53 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    サーモグラフィカメラを搭載したバルーンを観測船から揚げて,海面の熱赤外画像を撮影する空撮技術を用いて,夏季 の沿岸域に形成される沿岸海洋前線周辺の海表面水温の低高度観測を実施した.空撮された熱赤外画像の各ピクセルを直交座標上に再配列する処理を施すことで,前線の正確な位置や海表面水温データを取得した.この幾何補正処理のため,サーモカメラに取り付けた姿勢センサで連続計測したピッチ角とロール角と,そして画像に映り込んだ2つのGPS 付ブイの位置情報によって計算された方位角が用いられた.空撮した熱赤外画像を見ると,画像の中心から同心円状に高温領域が広がる様相を呈していた.これは,レンズに入射する赤外放射エネルギーの収差によると考えられる.そこで,観測された水温を,三次元楕円体を仮定した二次関数に最小二乗法で近似し,楕円体からの空間偏差を求めることで海表面水温の空間偏差分布を求めた.
  • 伊藤 進一, 有馬 正和, 市川 雅明, 青木 茂, 奥西 武, 筧 茂穂, 長谷川 大介, 和川 拓, 安田 一郎, 田中 雄大, 黒田 ...
    2016 年 53 巻 2 号 p. 125-133
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    自走能力を持ち,水深1,000m までの観測が可能な水中グライダーは,国内でも徐々に導入されつつある.その観測実 績から,沖合域での観測展望と沿岸域への展開の可能性について議論する.水中グライダーは,水平観測間隔が数キロメートル以下の高解像度観測が可能である一方,その巡航速度の限界から,単独機による観測よりも複数機あるいは係留系などと組み合わせた観測システムの一部として用いることが有効であると考えられる.また,漁業活動が盛んな日本の沿岸域への展開を考えると,水中グライダーの小型化が必要である.国内で開発されつつある水中グライダーの技術要素を結集し,沿岸域に特化した水中グライダーを開発することが望まれる.
  • 堤 英輔, 松野 健
    2016 年 53 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    乱流混合過程の研究が沿岸海洋研究の進展に寄与する可能性を,有明海において実施した微細構造プロファイラによる 乱流運動エネルギー散逸率の観測結果をもとに考察した.有明海のように浮力供給が潮流による混合と拮抗するような海域では,成層があることで海底摩擦に起因する乱れは抑制されると同時に内部波過程を介して密度躍層付近で乱れが発生する.またその結果達成される鉛直混合の状態が潮流構造に影響を及ぼす.このような成層と流れ場が相互作用して複雑に変動する沿岸海洋の現象を理解するためには,より幅広い乱流混合過程の研究が必要であると考えられる.
  • 藤井 智史
    2016 年 53 巻 2 号 p. 141-150
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    沿岸海洋研究に活用されつつある海洋レーダについて,導入の経緯と現状についてまとめた.国際的に海洋レーダの導 入が進み,約400機の海洋レーダが稼働し,米国をはじめ各国でネットワーク化されつつある.日本と米国の提案によ り,海洋レーダの周波数割り当てとその条件がITU-R WRC-12にて決定し,それに従い国内の技術基準が制定された.これにより海洋レーダが実用局として免許される環境が整った.これに伴って新たに課せられた条件とそれを満たすための方法考察した.免許方針に対して海洋レーダの利用周波数帯の拡大や免許条件の緩和の要望を推し進めることと,レーダ間干渉に対するユーザ間の運用調整の両面から海洋レーダコミュニティの組織化が必要であろう.
  • 渡慶次 力, 林田 秀一, 福田 博文, 清水 学, 市川 忠史
    2016 年 53 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    漁船計測手法は,沿岸域の海面下を含む水温や流況を細かい時空間スケールで観測可能であり,他海域への展開が期待されている.本報では,宮崎水試が運用している漁船情報を主に利用した日向灘の表層海況日報を提供するシステムを紹介し,漁船計測による海況データの収集手法が安定運用できた要因を考察する.本手法は,漁業者の作業負担がなく,安価な初期費用・維持管理費で運用できる.また,各海域での漁業形態を基に海況データの使用目的を明確にし,迅速に海況情報が漁業者へ還元される仕組みを構築することができれば,他海域においても普及する可能性が高いと考える.
  • 山崎 秀勝, 増永 英治, Herminio Foloni-Neto, Scott Gallager
    2016 年 53 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    植物プランクトン,凝集体及び動物プランクトンの微細な分布構造を計測するためにさまざまな計測器を開発してき た.本稿はこれらの測器の総説である.さらに現在,沿岸域のプランクトンの多様性を調べることを目的としたCREST プロジェクトで開発しているケーブルオブザバトリと自律型無人潜水機について紹介する.
  • 吉江 直樹, 眞野 能, 藤井 直紀, 宮下 和士, 富安 信
    2016 年 53 巻 2 号 p. 165-167
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    近年,これまで沿岸域での運用が難しかった計量魚群探知機を用いた海洋生物のモニタリングが機器の小型化・低価格 化により可能となってきた.そこで本稿では,瀬戸内海における計量魚群探知機を用いた海洋生物のモニタリングについ て解説する.具体的には,豊後水道の法華津湾におけるミズクラゲ(Aurelia aurita)の時空間分布に関する研究と豊予海 峡周辺海域におけるタチウオ(Trichiurus japonicus)の時空間分布に関する研究を紹介する.
  • 宮下 和士
    2016 年 53 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    海洋生物の行動を計測するためのバイオロギング手法について解説する.また,最新のJST・CREST プロジェクト「デ ータ高回収率を実現するバイオ・ロギングシステムの構築~魚類の個体群・群集ダイナミクス解明に挑む~」について も紹介する.
  • 源 利文, 山本 哲史, 笠井 亮秀, 近藤 倫生
    2016 年 53 巻 2 号 p. 173-178
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    環境DNA を用いて水中の生物分布を明らかにする手法が近年急速に発展している.環境DNA を用いた生物分布の推定手法は,種特異的な検出系を用いた特定の種の在不在を調べる方法と,メタバーコーディングを用いた生息種の網羅的検出の手法に大別できる.本稿では,これまでに報告されている研究例をあげながら,このような手法について概説する.海洋における環境DNA 分析手法の実施例はまだ報告例が少ないが,ここでは著者らの研究チームが実施した環境DNA 定量によるマアジ(Trachurus japonicus)の相対バイオマス推定の予備的な解析結果についても報告し,海域における環境DNA 分析手法の現時点での到達点について述べる.マアジの環境DNA 分析の結果は,海域においても環境DNAを用いたバイオマス推定が可能である事を示唆している.今後,環境DNA 分析によって沿岸域における魚類の生息状況や生態の把握はいっそう進むと期待され,本手法は水産学,魚類学,生態学など様々な分野に貢献することができるだろう.
  • 加賀 敏樹, 小熊 幸子, 春日井 潔, 東屋 知範, 門谷 茂, 荒内 勉, 福若 雅章
    2016 年 53 巻 2 号 p. 179-191
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    春季~夏季の北海道東部根室湾において,動物プランクトンの群集構造と時空間分布を明らかにするとともに,その変動要因を調べた.根室湾で採集された動物プランクトンは水温と水深の影響により,1)低水温(8.8℃未満)・水深の深い沖合(水深10.5m 以上)に出現する群集型(クラスター1),2)低水温(8.8℃未満)・水深の浅い沿岸(水深10.5m未満)に出現する群集型(クラスター2),および3)高水温期(8.8℃以上)に出現する群集型(クラスター3)の3つの群集型に類型化された.クラスター1の指標種は,中・大型カイアシ類のAcartia tumida とCalanus glacialis によって代表され,知床半島東側からのオホーツク表層水の湾内への流入により出現したものと推測された.クラスター2は,汽水性カイアシ類のEurytemora herdmani によって代表され,低温・低塩環境(汽水域)で優占するクラスターと考えられた.クラスター3は,水温躍層が顕著に発達する6月中旬以降に多く出現し,枝角類のPodon leuckarti によって代表され,高水温かつ再生生産的な環境において成長・繁殖するのに適した群集型と推測された.この様な動物プランクトン群集の遷移からサケ稚魚の餌料環境を評価した結果,根室湾ではサケ稚魚の成長に重要な中・大型餌料生物(クラスター1)の出現期間が短く,湾外からの海流輸送による大型の冷水性外洋性種(カイアシ類Neocalanus など)の補給も少ないことから,本湾の餌料環境は成長し体サイズが増加したサケ稚魚の成長・生残に必ずしも良好ではない可能性が示唆された
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