こころの科学とエピステモロジー
Online ISSN : 2436-2131
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目次
論説
原著論文
  • ─「私なくして」の領野における「私」の所在─
    横洲 有咲, 宮田 裕光
    原稿種別: 原著論文
    2026 年8 巻1 号 p. 16-34
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/15
    研究報告書・技術報告書 フリー
    離人感・現実感喪失症 (DPD) では,自己自身や身体,外部世界から切り離されたような体験としての症状がみられると同時に,自己と対象との境界が溶け合い,一体感を伴う側面も存在するという,矛盾的な特徴があるとされる。本稿では,離人症における自己同一性の問題を論ずるにあたって,東洋的な自己観,特に仏教や京都学派に属する思想を参照する。そこで,「私は,私ならずして,私である」という命題を軸に,自己は固定的な実体ではなく,自己の解体と再構築という動的なプロセスによって成立するものであることを論じる。具体的には,日常で自明とされる「私 (A = A)」が,その内在する不確定性や「私ではない」側面 (i.e., A ≠ not A,さらにはA = ∞) を露呈し,いったん解体されることで,新たな自己が創出されるというモデルを提示する。このような動的な自己生成のプロセスは,人間存在の根源的な流動性や非連続性を示すものであり,離人症における同一律の変容体験の中で顕在化するものといえる。「私が私である」という静的な自己同一性の枠組みを越え出て,「私は誰でもなくて誰でもあり,その意味で私である」という普遍的な意識の層から離人症を捉え直すことは,離人症における体験の意味づけや理解に新たな視座を与えるものである。
  • ―日本人の事例を中心にー
    佐藤 大和
    原稿種別: 原著論文(特集「人文死生学」)
    2026 年8 巻1 号 p. 35-48
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/15
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿は、臨死体験及びそれに関連した事象に見られる人生回顧について、日本人の体験者本人の語りを提示することを通して、様々なタイプの人生回顧の体験が存在することを明確化する。今日では、生理学的な意味で臨死(瀕死)ではない人にも心理的危機によって恐死体験が起こることも知られ、実際に死が差し迫っているかどうかに関わらず引き起こされる臨死様体験も臨死研究におけるカテゴリーの一つになっている。一方で、臨死体験の深まりの中で体験される人生回顧には、恐死体験における人生回顧とは質的に異なる体験内容が含まれることが体験者の語りからも窺える。このように多岐に渡る体験の解釈として、それぞれのタイプの体験を説明する上で有効な説明を考え、結論として、人生回顧の体験についての理解が死に逝く時の意識体験を理解する秘鑰となりうることを示す。
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