日本生態学会大会講演要旨集
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  • 山口 幸, 尾崎 有紀, 遊佐 陽一, 高橋 智
    セッションID: B108
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     エボシガイ類には、1.全個体が雌雄同体である種、2.大型の雌雄同体に矮雄がつく種、3.大型の雌に矮雄がつく種、の3つの性表現がみられる。矮雄は種によって、生涯を通して成長するものとほとんどしないものがある。例えば、ミョウガガイの矮雄は消化器官がなく、成長しない。では、種による矮雄の生活史の違いは、何から生じるのだろうか?これを説明するために、以下の数理モデルを作成した。 矮雄は、大型個体に定着する段階で、成長や繁殖に使える資源を持ち合わせていると考える。この資源をどのように使っていくかが、生涯の繁殖成功の度合いを決める大きな鍵となる。そこで、矮雄の生活史戦略パラメータを2つ導入する。1つは、各時刻における成長と繁殖への資源の分配比率である。もう1つは、各時刻における資源の放出速度である。早めに資源を使い切ってしまうのがよいか、あるいは寿命まで徐々に資源を使っていくのがよいかは、矮雄にとって重要な戦略となる。 矮雄の繁殖成功度については、大型個体1匹につき、数個体の矮雄が定着しているので、雄間競争を考慮した。大型個体が雌雄同体の場合には、矮雄間の競争だけでなく、雄役の雌雄同体と矮雄との競争も存在する。 矮雄の大型個体への定着時期が、全ての個体で同じ場合と個体によって異なる場合について、ポントリャーギンの最大原理を用いて、矮雄の生涯の繁殖成功度を最大にする最適な生活史戦略を求めた。定着時期や矮雄の成長率や寿命などのパラメータおよび大型の雌雄同体個体の有無により、最適な生活史戦略がどのように変化するかを調べた。
  • 宮下 直, 島崎 彩
    セッションID: B109
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     クモ類の生息環境は地中,リター層,樹皮下,樹間,草間など実に多様である.こうした多様な環境へ生息地を拡大した進化プロセスの詳細はよくわかっていないが,大まかな傾向として,暗環境から明環境へ進出してきたと考えられている.明環境は造網性クモにとって日中常に直射日光に曝される過酷な環境である.このような過酷な環境に進出するメリットは何だったのだろうか? 我々の調査により,草地では森林に比べて飛翔昆虫量が多いこと,その傾向は大型の昆虫で特に顕著なこと,それらの多くは植食者であること,が判明した(Shimazaki & Miyashita 2005).円網グモ類の餌条件も草地で良好であり,特に大型種でその傾向が顕著であった.我々は,餌の依存度を生食連鎖昆虫へシフトさせたことで,円網グモ類が大型化できたという仮説を検証するため,9種のクモを対象に餌獲得量や餌の内容,クモの体サイズなどを調べた.その結果,生食連鎖への依存度は成長速度や成体の体サイズと正の相関があること,またこの関係性は系統の効果を除去しても成り立つことが明らかになった.これらのことから,円網グモ類の明環境への進出とそれに伴う生食連鎖昆虫の利用度の増大は,体サイズの大型化を可能にした重要な要因であると考えられる.
  • 木村 恵, 陶山 佳久, 清和 研二, Woeste Keith
    セッションID: B110
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    オニグルミは風媒の雌雄異花同株植物で、同一個体群内に雌性先熟・雄性先熟個体を持つヘテロダイコガミーである。これまでの研究によって、花粉流動には開花フェノロジーが強く影響を及ぼすことがわかっている。開花開始時期は気温に左右されるため、開花フェノロジーは年によって異なり、その違いが個体間の送粉距離や送粉量の違いとして表れると予測される。本研究では同一個体群で2年間の花粉流動パターンを調べ、開花フェノロジーが花粉流動に及ぼす影響を調べた。宮城県鬼首に200×300mの調査区を設置し、その中で雄花を開花させたオニグルミ76個体を花粉親候補とした。2001年に調査区内の中心部に生育する21母樹から計670種子を採取し、マイクロサテライト分析による父性解析を行った。使用した5遺伝子座の平均対立遺伝子数は15.8、父性排斥率は0.999と高い値を示した。父性解析の結果、解析した種子の65.4%の花粉親が特定された。そのうち、開花フェノロジーから期待される2つの開花タイプ間の相補的な交配によって生産された種子は88.3%であり、2000年の97.8%と同様に高い値を示した。また送粉距離の平均値は24.3m、全体の36.1%は20m未満であり、前年同様に近距離の花粉流動が多くみられた。一方、母樹ごとにみると花粉親数の増減など年度間で異なる花粉流動パターンがみられた。また、2000年にはみられなかった自殖種子が3母樹6種子で確認された。2001年の開花期間は前年に比べ10日ほど長かったことから、このようなフェノロジーの違いが母樹ごとの花粉流動パターンに影響したと考えられる。
  • 金子 有子, 清水 良訓, 井鷺 裕司
    セッションID: B111
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    琵琶湖の本湖および内湖に分布する19集団のヨシ(Phragmites australis)について、5遺伝子座についてのマイクロサテライトマーカー(Saltonstall, 2003)を用いた遺伝分析を行い、各地域集団におけるクローン構造や遺伝的多様性、各集団の遺伝的距離について解析を行った。各集団について約30 ラメットを分析したところ、genet数は3から15と大きく異なり、genet数をramet数で割ったG/Nは0.10から0.52であった。また, Simpson’Dは0.43から0.93, Fager’sEは0.24から0.92、多型を持つ遺伝子座の割合は0.24から0.59の値を示した。これらの結果から、各地域集団のクローン構造や遺伝的多様性は集団間で大きく異なっていることが明らかになり、各集団における生育環境や火入れ・刈り取り等の人為的攪乱、倍数性の違いに伴う成長・繁殖特性の違い等を反映しているものと考えられた。19種のクローナル植物で報告された結果と比較すると、G/NおよびSimpson’Dについては19種の平均値よりも若干高い値、Fager’sEについてはほぼ同じ値であった。また、遺伝構造については、遺伝的距離に基づくUPGMA法によるクラスター分析の結果、琵琶湖集団内に明瞭な遺伝構造は認められなかった。地域集団間の地理的距離と遺伝的距離の関係から、Isolation-by-distanceは認められなかった。さらに、AMOVA解析の結果、琵琶湖地域の全遺伝的変異のうち98.1%は個体群内、1.9%は集団間で保持されていることが明らかになった。これらの結果から、琵琶湖地域におけるヨシ集団間の遺伝的分化度は小さく、花粉や種子等を介した集団間のジーンフローが非常に大きい、または大きかったことが示唆された。
  • 西脇 亜也, 水口 亜樹
    セッションID: B112
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    日本列島にはチガヤ属(Imperata)の開花時期の異なる2タイプ(ケナシ,フシゲ)が分布しており,この2タイプのチガヤは開花時期のずれや生育立地の違いによってニッチ分化することで同所的に共存可能であることを報告してきた。今回はこの2タイプそれぞれの遺伝的多様性とタイプ間の遺伝的交流の程度を検討することでチガヤにおける遺伝的分化の実態について報告する。
    北海道から琉球列島及び台北の12地域,19集団のチガヤ集団についてアロザイム分析(7酵素7遺伝子座13対立遺伝子)による集団遺伝学的な解析を行った結果,同一地域に分布する2タイプのチガヤ間の遺伝的交流はほとんど無いことが示された。チガヤ2タイプ間の遺伝的分化の程度を示すFstの値は,宮崎,高知,羽島,土浦の4地域では高いのに対し,仙台,秋田では比較的低かった。このことは,東北地方では2タイプ間の遺伝子流動が進み,分化の程度が低くなっていることを示している。このことから,系統を反映した2分類群(種)が存在しているが,一部の地域では種間の交雑が生じていることが明らかとなった。
    ケナシ型では南の集団ほど遺伝子多様度が高い地理的勾配が認められた(P=0.018)。フシゲ型でも同様に南の集団ほど遺伝子多様度が高くなる地理的傾向が存在した。北方に隔離されたフシゲ型の集団からケナシ型の集団が分化したとする種分化の推定シナリオでは説明が困難である。
    人工交配実験により,2タイプ間の交配は可能であり,得られたF1個体間での交配も可能であることが明らかであった。このことはチガヤ2タイプ間の生殖隔離は生殖後隔離ではなく生殖前隔離であることを意味している。
  • 大谷 剛
    セッションID: C101
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     「ミツバチは尻振りダンスで距離と方向の情報を仲間に伝えている」ということは「事実」とされていて、「ダンス言語」という人もあるが、言語といっても語彙は音声を補助に加えても「距離」と「方向」しかない。しかも、類別される「ダンス様行動」は6種類もあるのに(「シェイキング」「パイピング」「トレンブリング・ダンス」「円ダンス」「移行型ダンス」「尻振りダンス」)、完全な「言語」情報は「尻振りダンス」にしかない。実際に餌場への誘導をしてみると、外勤経験の豊富な一部の個体しか誘導されず、その個体の特殊な経験が大きく左右しているように思える。また、Wenner & Wells(1990) が主張する「匂い説」には信憑性がありそうに見えるが、実験設定には「匂い」情報をゼロにできないので、圧倒的に「ダンス言語説」が優勢とはいえ、どちらの説が「真実」なのか、結論は出されていない。 演者が今まで行ってきた餌場誘導実験の結果を「ダンス実現率」(=[6種類のダンスのどれかを演じた外出数] / [その個体のすべての外出数])で表現してみると、実演率が低いときはどうやら個体間の相互反応が関わり、6種類のダンスも個体間相互作用の影響の受けやすさに違いがあるようにみえる。もっとも影響を受けやすいのが「尻振りダンス」で、観察巣箱では実験設定がないときは結構観察されるのに、実験設定の中ではなかなか実演してくれない。ミツバチ個体間の相互作用だけでなく、人為的な環境の影響も受けやすいかもしれない。季節については、花がたくさん咲いている春から初夏にかけて餌場誘導実験がうまくいかないのは、von Frischも記述している。現時点ではデータが少ないので、あまり結論めいたことはいえないが、ダンスの実態と憶測を紹介する。
  • 矢野 修一, 刑部 正博
    セッションID: C102
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    これまでは、カブリダニは加害された植物の出す匂いを手掛りにしてハダニを探すと考えられてきた。しかし、カブリダニが加害葉の匂いを感知できるハダニの密度が葉当たり数十匹以上(雌成虫)とされるのに対し、野外でのハダニのコロニーサイズは葉当たり1匹ないし5匹以下の場合がほとんどだった。それにも関わらず、野外のハダニを餌としてカブリダニが存続している事実は、他の探索手掛りがあることを示唆する。そこで、カブリダニ(チリ/ケナガ/ミヤコカブリダニ)がハダニ(ナミ/カンザワハダニ)の歩行跡をたどれるかどうか、という代替仮説を検証したところ、いずれの組み合わせにおいてもこの仮説が支持された。特にケナガカブリダニは、わずか1匹のナミハダニの歩行跡をたどれることが確認された。以上の結果は、カブリダニの餌探索に関する定説を覆すものと考える。
  • 熊野 了州
    セッションID: C103
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     アリやミツバチ・スズメバチといった社会性昆虫のワーカーは普通は母巣に留まり血縁者の世話をする。半倍数性性決定遺伝システムを持つ膜翅目昆虫ではメス間で高い血縁度が期待されることから、利他行動の進化において血縁度が重要な役割を果していると考えられてきた。しかし、近年社会性昆虫の研究により養育行動は必ずしも近い血縁者に向けられるわけではないということが明らかになっており、利他行動の可塑性に関する研究が増えつつある。本研究では個体間の血縁関係がワーカーが行う養育行動に与える影響を明らかにするため、ワーカーに血縁あるいは非血縁の幼虫を与え、利他行動の有無を調査した。その結果、血縁の幼虫を与えた場合にはワーカーは血縁関係とは独立に幼虫を選択し養育するのに対して、非血縁の幼虫を与えた場合には非血縁幼虫をより好んで選択し養育した。いずれの場合にも、シーズンの経過に応じて利他行動の対象である個体の好みは変化し、特にシーズン前半に非血縁幼虫への選択的な養育が行うことが明らかになった。シーズン前半の幼虫は羽化後ワーカーになると予測されることから、ワーカーは幼虫の運命に応じて養育行動の対象や程度を変化させていると推測される。
  • 廣田 忠雄
    セッションID: C104
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     性特異的な分散は、多くの分類群で観察されている。その進化要因についてHirota(2004)は、メスが分散前に交尾する場合、変動環境下ではメス特異的な分散が進化しやすいことを証明した(J. Anim. Ecol. 73:1115-1120)。これは、メスはリスク分散のために複数の生息地で繁殖せねばならないが、オスは交尾相手が自分の子孫を複数の生息地で産んでくれるので、自ら分散する必要がないために生じる現象だった。ただし、この効果はメスが分散後に再交尾する場合には働きにくいことが予想される。そこで、メスが2回交尾する場合を仮定して新たな解析を行った。 メスが分散直後に再交尾する場合、最初に交尾したオスの精子が使われる割合が減少する。そのため、オスも自ら分散して、複数の生息地で交尾する必要性が生じる。しかし鱗翅目などでは、再交尾のタイミングは必ずしも分散と一致していない。そこで、再交尾のタイミングが分散と一致している条件と、分散とは独立している条件の2つを試した。 また、Last-male sperm precedence(LMSP)が生じている場合にも、最初に交尾したスの精子が分散後に使われる割合が減少するので、分散前交尾によって分散にそれほど大きな性差が生じなさそうである。しかし、種によってはRandom fertilization(RM)が生じていると見なせるものもいる。そこで、LMSPとRMの2つの条件を試した。 結果、高い交尾によってメス特異的な分散を抑制されるものの、再交尾が分散と連動していない場合や、RMの場合には、中程度の性差は進化した。そのため、メスが多回交尾する場合でも、条件次第では、分散前交尾によってメス特異的な分散が促されることが分かった。
  • 武山 智博, 柳澤 康信
    セッションID: C105
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    どちらの性にどの程度の強さの性淘汰がはたらくのかを予想する実効性比は,個体群全体で求められてきた.しかし,個体群中に複数のサイズクラスがあり,さらにサイズ同類交配が見られる場合,実効性比はサイズクラスごとに求められるべきである.本研究では,雄が口内保育を行うテンジクダイ科魚類を材料に,2つのサイズクラス(年齢群)を含む野外個体群において,実効性比の偏りと同性間闘争の強さの関係,また実効性比の変動させる要因について,サイズクラス(若齢・老齢群)ごとに検討した.実効性比は繁殖期内で変動し,両年齢群とも繁殖期中期に雌偏りに,それ以外は雄偏りであった.産卵直前に一時的に形成されるペアとそれに接近する個体との相互作用の観察の結果,両年齢群とも,繁殖期中期で雌同士の攻撃行動が顕著であったが,それ以外の時期は同性間闘争に両性間で違いはなかった.中期に実効性比を雌に偏らせた要因はそれぞれの年齢群で異なっていた.若齢群では性比はほぼ1:1であったが,雌の産卵間隔が雄の保護期間を含む繁殖間隔よりも短いことが,この時期の実効性比の偏りもたらしていた.逆に,老齢群では繁殖間隔に性差はなかったが,雌偏りの性比が実効性比を雌へ偏らせた要因であった.従って同一個体群内で実効性比が雌偏りになる傾向は同じであっても,年齢群ごとで実効性比の偏りをもたらす要因がどうはたらくのかが異なることが明らかになった.またこれらの結果は,実効性比が個体群中の年齢やサイズの分布に敏感に反応するという予想を初めて明らかにした実証的研究であると考えられる.さらに,同一個体群の継続調査より,個体群の年齢・サイズ構成は毎年大きく変動することから,数年の寿命を持つ本種が経験する性淘汰の強さは,毎年変化することが推察された.
  • 牧野 良美, 武山 智博, 渡辺 勝敏, 宗原 弘幸, 幸田 正典, 安房田 智司
    セッションID: C106
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    近年,メスによる子の父性操作が,昆虫や鳥類などの体内受精を行う動物で報告されている.体外受精を行う魚類では,2オスと1メスが共同繁殖を行うカワスズメ科魚類において,メスによる子の父性操作の可能性が示唆されている.しかし,その詳細は全く分かっていない.本研究では,共同繁殖を行う基質産卵型のカワスズメ科魚類Julidochromis transcriptusを用いて,水槽実験により,メスによる子の父性操作を検証することを試みた.野外観察から,この魚はクサビ形の巣で繁殖し,協同的一妻多夫の小オスは巣幅の狭い奥で,大オスは巣幅の広い入り口付近で放精するようである.このことから,メスは産卵する位置,つまり産卵位置の巣幅を変化させることで,メスが父性操作をしている可能性が考えられる.そこで,まずクサビ形の巣を作成し,大オス・小オス・メス(トリオ)で飼育・繁殖させて,産卵位置とそれぞれのオスの受精割合について検討したところ,巣幅の狭い位置で産卵した場合は,小オスの受精させた子どもの数が多かった.これにより,メスは産卵位置を選ぶことで父性操作が可能であると考えられる.さらに,産卵位置の巣幅が狭い場合に,小オスの保護行動の頻度が増加したことから,メスは小オスに受精させることで,小オスから保護の手伝いをより多く受けていることが示唆された.また,ペアでも同様に飼育・繁殖させると,ペア飼育で得られた卵塊はコンパクトに産まれているのに対し,トリオ飼育の卵塊は幅広く産まれていた.このことから,トリオのメスは2オスが受精できるように産卵位置や分布を操作しているようである.以上のことから,J. transcriptusのメスは受精を操作している可能性が高いと考えられる.
  • 藤井 恒
    セッションID: C107
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    アサギマダラParantica sitaは東アジアに分布する大型のマダラチョウである。1980年頃から始められたマーキング調査によって、長距離の移動をすることがわかってきた。演者はアサギマダラの移動調査ネットワーク「アサギネット」を通じて、1997年以降、アサギマダラの移動調査に関わってきた。日本各地や台湾の多くの方々の努力によって、台湾と本州・九州相互間の移動が確認されるなど、アサギマダラが2000kmを越える長距離移動をすることは確実になった。しかし、主要な越冬地は台湾かそれ以南の地域であろうと推定はされているものの、まだ特定には至っていない。また、日本国内における冬のアサギマダラの生活についてもまだ不明な点が多いし、春の北上についてはごく少数の移動例しか確認されていない。これに対し、アサギマダラの夏から秋にかけての動態については、非常に多くの標識・再捕獲記録が報告されており、アサギマダラの南下の概要はほぼわかってきたと言える。今回は、夏から秋に報告されている標識・再捕獲・移動データのうち、1地点で多数の個体のマーキングが行われている福島・群馬・長野・愛知・三重・滋賀・和歌山・高知・鹿児島などのデータを解析した結果に基づいて、日本におけるアサギマダラがの夏_から_晩秋にかけての動態について考察する。また、アサギマダラの調査において成功しているインターネットの利用例についても紹介する。
  • 江崎 保男, 田悟 和巳
    セッションID: C109
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    四国の吉野川下流域では,周年にわたって魚食性の猛禽であるミサゴがみられる.1998年から2000年にかけて,河口から上流へ30kmまでの区間の,河川沿いあるいは周辺の見晴らしのよい38地点に調査員を配置し,ミサゴの行動調査および繁殖調査をおこなった.4月から8月にかけての繁殖期に周辺の山林を探索したところ,1999年には4つがい4巣,2000年には6つがい6巣を発見できたが,1999年の巣のすべてが2000年も使用された.巣間距離は近いもので400m以下,多くが4km以下に存在し,調査地域のなかでは比較的集中する傾向がみられた.一方,採餌については,吉野川流域には旧吉野川やため池などの比較的小さな水域も存在するが,ミサゴの探餌行動は吉野川本川に集中していた.また,1999年の4巣のつがいの採餌場所を巣から連続追跡した結果,餌場はつがい間でほとんど重複しており,河口から15kmに位置する第十堰の直下流に集中していた.この第十堰直下流への集中傾向は採餌行動を示したすべてのミサゴのデータからも明らかであった.また,非繁殖期については,第十堰直下流と河口周辺が狩りの集中地域となっていた.河口堰である第十堰は魚類の遡上が十分に保障される構造になっておらず,堰直下流に遡上できない魚類が滞留している可能性があり,このことが,ミサゴの餌場の集中の原因であると推測される.本研究の実施に際しご協力をいただいた,国土交通省徳島河川国道事務所に感謝する.
  • 畑瀬 英男, 佐藤 克文, 塚本 勝巳, 山口 真名美, 高橋 小太郎
    セッションID: C110
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】従来、アオウミガメは産卵期が終わると、浅海で主に海藻を食べていると考えられてきた。しかし最近の衛星追跡の結果、外洋にも回遊することがわかってきた。外洋では未成熟期のように主に浮遊生物を食べていると予想される。これらのことは、アカウミガメ同様、雌アオウミガメにも生活史多型が存在することを示唆する。本研究では、卵黄の炭素・窒素安定同位体(δ13C, δ15N)分析から、小笠原諸島で産卵するアオウミガメの餌生物を推定することを目的とした。また衛星追跡から回遊経路を明らかし、アオウミガメ雌成体の摂餌域利用の実態を検討した。
    【方法】2003及び2004年の5月から7月に、小笠原諸島父島及び母島で産卵を行った89個体の標準直甲長を測定し、卵を採取した。卵黄のδ13C, δ15Nを、質量分析計で測定した。産卵期末の8月中旬に、小笠原海洋センターイケスで人工孵化増殖用の卵採取のために畜養されていた4頭に衛星用電波発信器を装着して放流し、回遊行動を追跡した。
    【結果及び考察】卵黄と餌生物のδ13C, δ15Nの比較から、小笠原で産卵する個体の66%が浅海を、34%が外洋を摂餌域としているものと推察された。体サイズと卵黄のδ13C, δ15Nに相関がなかったので、アオウミガメ雌成体には、アカウミガメでみられたような体サイズによって摂餌域利用が異なる現象は存在しないものと考えられる。衛星追跡期間は30から41日であった。同位体分析から浅海を摂餌域としていると推察された2頭からの発信は、伊豆諸島近辺で途絶えた。また外洋を摂餌域としている2頭のうち、1頭からの発信は外洋で、もう1頭からの発信は九州南岸で途絶えた。追跡期間が短かったため、同位体分析と衛星追跡の結果は完全には一致しなかった。
  • 白井 洋一
    セッションID: D101
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    2004年2月に生物多様性条約カルタヘナ議定書を担保する法律(カルタヘナ国内法)が施行され、遺伝子組換え植物は野外での栽培にあたり、事前に環境・生態系への安全性審査を受けることとなった。審査ではまず、(1)導入した遺伝子が安定して発現しているかを確認し、次に環境・生態系への影響として、(2)近縁野生植物との交雑性、(3)競合における優位性(例:新たに導入された形質によって、組換え作物が周辺環境に分布拡大し雑草化)、(4)有害物質の産出性(非標的の野生動植物への直接・間接的影響)について審査される。これらの審査で、野生動植物の種または地域個体群を駆逐または消滅させるおそれがない場合にのみ、野外での栽培が承認される。言い換えれば、導入遺伝子が安定して発現しない系統や近縁野生植物との交雑が高頻度で起こると予想される系統・作物では、野外栽培は承認されないことになり、野外環境に放出されることはあり得ない。2005年3月までに10回の生物多様性影響評価総合検討会(公開)が開催され、トウモロコシ、ワタ、イネ、ダイズ、カーネーション、クリーピングベントグラス等の作物で生態系への安全性が審査された。外来種・侵入生物問題とともに遺伝子組換え生物も生態学研究者にとって話題性の高いテーマであるが、この一年間の審査状況や公表された検討会資料・議事録を基に、生態学から見た遺伝子組換え植物との関わり方を考え、これから必要な研究、実行可能な研究について整理する。
  • 酒井 一彦, 中嶋 康裕, 森本 直子, 桑村 哲生
    セッションID: D102
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    地球温暖化により1998年には沖縄を含む世界のサンゴ礁で水温が上昇し、サンゴが共生する褐虫藻を失う白化死亡が大規模に起こった。沖縄島周辺のサンゴ礁では、この大規模白化のためにサンゴの被度が80%程度減少した。一方、沖縄島の西40 kmにある慶良間列島では、サンゴの死亡はわずかに見られたのみであった。サンゴの白化には、以下のような特徴がある。1)夏季の最高水温が、平年よりも2℃上昇するだけで大規模な白化が起こる、2)白化のしやすさと白化による死亡率は、種によって大きく異なる、3)沖縄島と慶良間のように隣接する地域で、白化の頻度と白化に引き続くサンゴの死亡率が大きく異なる。ここでは1)と3)について、進化生態学的視点から検証可能な仮説を提示する。褐虫藻には形態的な変異はないものの、遺伝的には多様なクレードがあることが知られており、クレードによって共生するサンゴの高温耐性が異なることも明らかとなってきた。そこで、褐虫藻の高温耐性と非高温時の光合成効率がトレードオフとなっていると考えれば、1)を説明できる。またサンゴの白化は、高水温と強光となった際に褐虫藻の光合成暗反応が阻害され、活性酸素が放出されることによって起こるという仮説が提唱されており、一方、栄養塩を添加した海水中でサンゴを飼育すれば、褐虫藻の密度が増加するという実験例がある。褐虫藻密度が増加すれば、高水温強光となった時に放出される活性酸素量も増加すると考えられ、富栄養化したサンゴ礁ではサンゴの白化がより強く起こると予想され、3)を部分的に説明できる。サンゴ礁における保全生態学的研究には進化生態学的思考がほとんど取り入れられていない。進化生態学的な考え方を取り入れることによって、サンゴ礁保全生態学を変革していきたい。
  • 名村 謙吾, 鎌田 直人
    セッションID: D103
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ホタルは日本人になじみの深かった昆虫だが、近年はその姿があまり見られなくなってきている。この原因として、化学農薬の使用、水田の減少のほかにも、河川や用水路のコンクリート化(河川の護岸工、3面工用水路の増加)が関係しているのではないかと推測されている。そこで本研究では、ゲンジボタルとヘイケボタルが生息できるランドスケープレベルでの環境の保全と創出の指針を示すことを目標に、金沢市内の5つの用水路とその周辺でホタルの生息調査と環境調査を行った。
    その結果、用水路ごとにホタル成虫の発生消長に差が認められ、発生が最も早い用水と、最も遅い用水では、両種とも約3週間の開きがみられた。用水路ごとの発生順序は、両種ともに同様の傾向が認められたため、幼虫発育期の水温が関係している可能性が考えられた。各用水の水温をデータロガーで60分間隔で記録し解析した結果、発生が最も早い用水の水温は他の用水の水温より高く、発生の最も遅い用水の水温は他の用水の水温より低いという傾向が見られ、最も発生の早い用水の水温と最も発生の遅い用水の水温の温度差は平均で約2℃であった。各用水において両種の幼虫をサンプリングし、体サイズを調べた。水温と幼虫の体サイズの関係を解析した結果、水温の高い用水でサンプリングされた幼虫は水温の低い用水からサンプリングされた幼虫よりも体サイズが大きい傾向が認められた。これらのことから、各用水路におけるホタル成虫の発生消長の違いは、水温による発育速度の違いを反映した結果であると考えられた。
  • 北島 淳也, 藤本 泰文, 進東 健太郎, 森 誠一
    セッションID: D104
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    演者らはこれまで,環境省絶滅危惧_I_Bに指定されているゼニタナゴAcheilognathus typus生息地の保全活動とその前提となる調査,研究活動を行って来た.2004年10月,岩手県のある生息地(以下生息地A)において産卵基質となっているドブガイAnodonta (Sinanodonta) woodiana (Lea) の大量斃死が観察され,斃死したドブガイを解剖したところほぼ全てのドブガイ軟体部に多数のゼニタナゴの卵および仔魚が見られた.そこで,ゼニタナゴの産卵によるドブガイへの影響とドブガイの生息数に注目して調査を行った.大量斃死が見られた生息地Aと大量斃死が確認されていない生息地(以下生息地B)で1_m2_あたりのドブガイの個体数を比較すると,生息地Aでは0_から_1個体,生息地Bでは4_から_12個体であった.ゼニタナゴの1_m2_あたりの個体数は生息地Aでは標識再捕により8.3個体と推定され,トラップあたり24.2個体が採集されたが,生息地Bではトラップあたり0.4個体しか採集されず,再捕は出来なかったが,1_m2_あたりの個体数は生息地Aに比較して少ないと考えられた.また,ゼニタナゴ卵,仔魚によるドブガイの利用率は生息地Aでは約11%であったが,生息地Bでは約95%であった.採集されたドブガイ斃死個体を解剖した結果,鰓上腔が残っているもののうち90%以上で鰓上腔にゼニタナゴ卵,及びハッチ直後の仔魚がみられると同時に鰓葉先端にも多数の前期仔魚が確認され,1個体のドブガイへの複数回産卵が示唆された.一方,生存していたドブガイではこれらが同時に見られたのは1個体のみだった.以上の事から生息地Aではドブガイ個体数が比較的少数であるためゼニタナゴの産卵が少数のドブガイに集中し,その結果ドブガイが窒息死していると考えられた.調査期間(10月末_から_11月末)に確認されたドブガイの斃死個体は100個体以上にのぼり,また,生息地Aにおけるドブガイの推定個体数は約150個体であることからこのの事例は今後の生息地管理にとってきわめて重要であると考えられた.
  • 白井 康子, 張 志保子, 津郷 雅之, 隅田 真由, 池田 滋, 田島 茂行
    セッションID: D105
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    ニッポンバラタナゴ(Rhodeus ocellatus kurumeus)は、コイ科タナゴ亜科に属する淡水魚で、成熟したオスは繁殖期に美しい婚姻色を示す。かつて西日本の淡水域に広く分布していた日本固有種であるが、生息環境の劣化、外来種による補食等のほか、タイリクバラタナゴ(R. o. ocellatus)との交雑により、生息数が減少している。環境省のレッドデータブックで絶滅危惧IA類(CR)に指定されており、香川県東讃地区や、大阪府および北九州の一部でのみ生息が確認されている。香川県はニッポンバラタナゴの希少な生息地であるが,県西部の財田川に放流されたアユの稚魚にタイリクバラタナゴが混じって移入されたといわれており、現在では、県中央部の香東川までタイリクバラタナゴが侵入している。ニッポンバラタナゴの保護対策が円滑に実施されるためには、ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴの正確な判別が不可欠である。しかし、両亜種は形態学的に差異が少なく、外見では判別が困難なため、これまではアイソザイム分析やPCR-RFLP分析によって判別が行われてきた。そこで、マイクロサテライトを用いた迅速で正確な亜種識別法の確立をめざし研究を始めた。今回開発したマイクロサテライトマーカーRKU236およびRKU238を用いて、香川県内10ヶ所のため池より採集されたニッポンバラタナゴ112個体を比較したところ、PCR増幅産物はすべて同じ電気泳動バンドパターンを示し、変異は認められなかった。それらのバンドパターンは香川県及び岡山県産のタイリクバラタナゴとは異なっていたことから、いずれのマイクロサテライトマーカーも亜種識別が容易なマーカーであると考えられた。
  • 松崎  慎一郎, 西川 潮, 高村 典子, 鷲谷 いづみ
    セッションID: D106
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    コイ(Cyprinus carpio)は,長寿命かつ雑食性の底生魚で,遊泳や探餌行動の際に底泥を直接巻き上げて,泥の中の栄養塩や懸濁物質を水中へ回帰させたり(底泥攪乱),直接水中へ栄養塩を排泄したりすることを通じて水質の悪化や水草の減少を招く.また水草を直接捕食する.そのためコイは,IUCN侵略的外来種ワースト100の一種として世界的に問題になっている.日本では様々な水域で見られる在来種であるが,その分布の拡大は放流や養殖など国内移入によるものである.しかしながら,野外操作実験を用いてコイが他の生物群集,特に沈水植物に与える影響を検証した研究例は少ない.本研究は,隔離水界を用いて,コイによる底泥の攪乱および栄養塩の排出が沈水植物と微小動物群集(プランクトン・ベントス)に及ぼす影響を明らかにした.2004年7月,霞ヶ浦に面する国土交通省の実験池(木原)に,隔離水界(2m×2m×水深60~80cm)を設置し,野外操作実験を行った.実験処理区はコイの有無,底泥へのアクセスの可否の2要因からなる4処理区(繰り返し4,合計16隔離水界)にした.コイの底泥へのアクセスは,ネット(2cm格子)を水中に設置することによって遮断した.また実験開始前にすべての隔離水界に沈水植物(リュウノヒゲモ)を植栽し,コイ導入区には15~18cmのコイを各水界に1匹投入した.2ヶ月間の実験の結果(合計3回のサンプリング),底泥へのアクセスの可否にかかわらず,コイがいるだけで水草は著しく減少した.その水草減少のメカニズムは底泥の攪乱だけではなく,栄養塩の排出もその一因であると考えられた.本発表では,コイによる沈水植物の減少のメカニズムを,物理化学的要因(主に栄養塩)や他の生物群集の応答をもとに,総合的に考察する.
  • 南山 依里, 佐藤 喜和
    セッションID: D107
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    1990年代以降、北海道東部ではエゾシ(Cervus nippon yesoensis)の個体数が爆発的に増加した。エゾシカの個体数増加は農林業被害や林床植生への影響という点で大きな社会問題となってきたが、その対策として行なわれてきた狩猟や駆除による個体数調整で発生する残滓も、野生動物がそれを採食することで問題となっている。大型ワシ類の鉛中毒症がはその顕著な例である。野生動物への影響を軽減するため、北海道は2000年秋からエゾシカ猟での鉛弾の使用を禁止し、釧路支庁は4つの町で狩猟残滓回収ボックスを設置した。また環境省は2003年4月から狩猟残滓の放置を禁止した。今後も野生動物への影響を軽減する対策を立てるうえで、実際に山林に捨てられている狩猟残滓の現状を知る必要がある。そこで2002年から3年間、融雪時期に、道東の浦幌町、音別町、白糠町の河川沿いにおいて、ベルトトランセクト法により、シカ死体の数、死因、動物による利用などについて調べた。その結果、182体の死体を発見した。このうち130体が狩猟残滓であり、自然死死体数の5.7倍になった。また110体で哺乳類・鳥類による利用が確認された。年間狩猟数が2,000_から_4,000頭の白糠町では残滓数が7.7_から_12体/kmであり、狩猟数が1,000頭未満の音別町、浦幌町では残滓数が3体以下/kmであった。狩猟数の多い地域の方が、狩猟数の少ない地域より残滓が多かった。以上の結果から自然状態よりかなり多い数のシカ死体が、野生動物への人工的な餌として供給されていることがわかった。本調査は,浦幌ヒグマ調査会が受けた北海道委託「野生動物による残滓利用状況調査」の一部であり、浦幌ヒグマ調査会および北大ヒグマ研究グループの協同調査として行なった。
  • 矢敷 彩子, 山口 正士
    セッションID: D108
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    沖縄本島沿岸の砂浜には潮干狩りの対象となる主な二枚貝として、イソハマグリ(Atactodea striata)、リュウキュウナミノコ(Donax faba)、ナミノコガイ(D. cuneatus) の3種が分布している。1980年代までは、貝を掘る潮干狩りの人々で砂浜にぎわっていたが、それ以降その姿をほとんどみかけなくなった。本研究では砂浜に生息する食用二枚貝について、全島的に貝塚から出土した貝類のデータを基本情報とし、それを現生貝類の分布量と比較して資源量の変遷を考察した。貝塚データと比較するために貝塚に近い砂浜を40箇所選出し、1998年から1999年に現生貝類調査を行った。現生貝類の砂浜における「単位掘り出し時間当たりの個体数」を種類ごとに求め、「多」、「普通」、「少」、「無」にランクわけした。貝塚出土の貝類データについても現生貝類と同様、相対的にランクわけした。その結果、沖縄本島では貝塚の出土状況から資源量が大きかったとみなされた砂浜の多くで、現生の貝類分布では潮干狩り可能な状態の生息密度に及ばず、明らかに資源量は減少したと考えられた。また金武湾沿岸部などの貝塚から出土し、沖縄において食用資源として過去に生息が推測されたハマグリ類 (Meretrix spp.) は、今回の調査では確認されなかった。砂浜貝類集団の生息分布には時空間的な変動が激しく、自然変動で増減することがよく知られており、貝塚時代に比べ現在の資源量が少ないことを単に環境変化の影響と言い切ることはできない。しかし埋立や護岸整備などによる砂浜の消失が各地に見られ、ハマグリ類 (Meretrix spp.) の地域絶滅の可能性もあることから、砂浜における食用貝類資源が乏しくなっている現状が推察された。
  • 上田 哲行, 村島 和男, 橋本 岩夫, 田野 信博, 皆巳 幸也, 滝本 裕士, 丸山 利輔
    セッションID: D109
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     地域の自然環境が住民の自然観形成にどのような影響を及ぼしているかを明らかにする研究の一環として,住民が用水から思い浮かべる動植物の多様性を,立地条件や機能が異なる用水で比較した。農村型用水としては,石川県の手取川扇状地を潅漑する七ヶ用水と金沢市大桑地区を流れる大桑用水を,都市型用水としては金沢市内を流れる3本の用水(辰巳・鞍月・大野庄用水)を取り上げ,それぞれの周辺住民に対してアンケート調査を行った。ここでは「あなたが用水から思い浮かべる動植物は何ですか」という質問に対する回答のうち,動物についての分析結果を報告する。
     七ヶ用水地域からは66種,金沢地域から52種,大桑地区から33種が記録された。それぞれの種の回答者数を出現個体数と見なして種多様度を求めたところ,大桑>金沢>七ヶ用水の順に低くなった。金沢ではホタルの出現頻度が突出しており,そのことが均等度を低下させ,多様度を低くした大きな原因と考えられた。七ヶ用水は,魚類を除けば出現種数そのものは金沢に比べて特に多いというわけではなく,これは樹林地に乏しい田園環境に立地するため考えられた。大桑地区はサンプル数が小さいため出現種数そのものは少ないが,いわゆる水辺の動物以外の種も多く出現するなど多様性が高かった。これは集落が丘陵部に接しているという立地条件や用水が集落内を流れているため身近であることなどを反映したものであろう。対象地域が広い七ヶ用水地域について,集落間の空間的距離と心意の動物群集の類似度の関係を見たところ負の相関があり,距離が離れるほど類似度が低下した。このような結果から,住民の心意の中に成立する動物群集は,それぞれの地域の実際の動物群集と無関係ではなく,ある程度それを反映したものであると考えられた。
  • 奥田 昇, 濱岡 秀樹, 福元 亨, 宮坂 仁, 大森 浩二
    セッションID: D110
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    人口の集中する都市部沿岸域では、陸域からの有機物負荷や水産資源の過剰収奪による生物多様性の消失や生態系機能の低下が問題となっている。さらに近年、地球温暖化に伴う海洋構造の変化が沿岸生態系の生産性に与える影響も強く懸念されている。しかし、沿岸生態系に与えるこれらの人為的影響を網羅的かつ定量的に調査した研究は極めて少ないのが現状である。本研究は、愛媛県宇和海沿岸の主要な漁獲対象であり、底性生物群集中で優占する高次消費者ホタルジャコの炭素・窒素安定同位体比の変動パターンに着目することによって、人為的環境攪乱下における食物網を介した物質循環過程の変遷を長期的にモニタリングする手法を確立することを目的とした。2002年10月より月例採集によって得られたホタルジャコの食性を解析するとともに、本魚とその餌生物の安定同位体分析を行った。解析の結果、有光層下の生物が表層の植物プランクトン生産物によって賄われるという従来の定説「表層_--_底層カップリング」に反して、水深60mに生息するホタルジャコを中心とした底性生物群集の炭素供給源が浅海の付着藻類であることが判った。春のブルーム(藻類大発生)に伴って、表層由来の餌生物への一時的なシフトが見られるものの、その相対的重要性は低かった。このような生産構造の歪みは、当海域で大量発生する赤潮原因藻類の渦鞭毛藻を摂食する一次消費者の不在によって、食物網を介した高次栄養段階への物質移送が停滞するためであると推察された。この時期、三次消費者であるホタルジャコが一次消費者である橈脚類を頻繁に摂食することによって、窒素同位体比の顕著な低下が認められた。宇和海の主要な二次消費者であるカタクチイワシ仔稚魚の資源量減少により、食物網構造が不安定化している可能性が示唆された。
  • 中嶋 康裕, 酒井 一彦, 桑村 哲生
    セッションID: D111
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    地球温暖化に伴う海水温の上昇によって引き起こされる白化(共生藻の離脱)現象や、オニヒトデによる食害によって世界各地のサンゴ礁は衰退の一途をたどっている。日本でも、沖縄島周辺では1998年の白化によってサンゴが大規模に死滅した。慶良間諸島では白化は起こらなかったが、その後のオニヒトデの大発生によりサンゴの被度が減少し続けている。また、かつてはオニヒトデによる食害を受けても、その後すみやかにサンゴ群集が回復した(たとえば、1970年代の沖縄島)のに対し、回復の兆しが見えないのが近年の特徴となっている。一方、サンゴの死滅後にどんな群集が優占するのか、どんな条件があればそれが再びサンゴ群集に置き換わるのかなどに関する研究は充分ではない。この発表では、陸上生態系との比較によって、サンゴ礁生態系に固有の遷移の特徴を明らかにするとともに、サンゴ群集回復への鍵となる3つの条件について「水門モデル」を用いて考察する。陸上生態系では山火事や伐採などの撹乱があっても、そのまま放置すれば元の植生に回復することがふつうなのに対し、サンゴ礁生態系では撹乱の後に元に復帰しないことがよくある。これは、陸上生態系では当事者どうしの直接的な競争によって遷移が進行するのに対し、サンゴ礁生態系では第三者の介在によって遷移が進行するためだと考えられる。この第三者とは、サンゴを覆う藻類を食べる藻食魚や、その藻類を食べるウニの個対数を抑えるウニ食魚であるとされている。さらに、栄養塩濃度も植物プランクトン量の増加を通じてオニヒトデの発生量などに大きな影響を与えるとされている。この2つに加えて、サンゴの幼生供給(定着)量を加えた3つの要因をうまく制御することによって初めてサンゴ群集の回復/維持が可能になると考えられる。
  • 佐伯 いく代
    セッションID: D112
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ハナノキは、日本固有のカエデ科の木本植物で、本州中部でのみ自生が確認されている絶滅危惧植物である。本研究では、ハナノキの保全に関する知見を得るため、(1)生育地の地理的分布、(2)生育環境、(3)植物群落の構造と種組成について調査を行った。生育地の分布については、文献調査、地域住民からの聞き取り調査、地上調査、セスナ機を使った上空からの調査を行った。その結果、長野県、岐阜県、愛知県、及び滋賀県において、52箇所の生育地を確認し、うち半数が、まだ広く認識されていない生育地であった。また、これらの生育地においてハナノキの個体数を数えたところ、レッドデータブックによる推計値500個体を大きく上回るハナノキが生育していることが明らかにされた。しかし、生育地の面積は小規模で、自生地として確認された47箇所のうち、33箇所(70%)が0.5ha以下であった。大部分の生育地では、周囲が水田、宅地、道路、針葉樹植林などに囲まれ、生育地の孤立化・分断化が著しいことがわかった。生育環境については、分布調査で明らかにされた生育地の地形及び土壌の特性を調査した。ハナノキの自生地は全て湿地で、これらは、湧水地、小河川の氾濫原、湿原、湿った岩地の4タイプに分けられた。中でも、湧水地タイプが圧倒的に多く、全体の約8割以上を占めた。植物群落の構造と種組成については、高木層ではハナノキの優占度が高く、ハンノキなどの湿地性の木本植物とともに生育していた。低木層及び草本層では、多様な植物相が見られた。また、シデコブシやヘビノボラズ、カザグルマといった希少種や固有種が高い頻度で出現しており、地域の生物多様性を保全する上で重要な植物群落であることが明らかにされた。
  • 野嵜 玲児, 岸本 陽子, 清川 真理子, 櫻井 利恵
    セッションID: D113
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     兵庫県東播磨南部の禿山地帯は,環境庁のレッドデータブックで絶滅危惧II類とされるイネ科のウンヌケとウンヌケモドキを多産する(野嵜ほか1997).環境庁(2000)によると,この両種の全国推定個体数はウンヌケが約7000個体,ウンヌケモドキが約1000個体とあるが,この時点では東播磨の個体群は認識されていなかった.そこで演者らは,今後の保護・保全のための基礎資料を得るために,東播磨南部におけるこの両種の個体数推計を試みた.
     まず空中写真から,ウンヌケ属の生育地である禿山を「草原型」,「草原・低木型」,「露岩型」,「低木型」の4タイプに区分して面積を測定した.個体数調査は,ウンヌケ属の主生育地である「草原型」および「草原・低木型」の禿山各一カ所において,コドラート法を用いて行った.なお,個体数は開花個体の最小サイズである株元の直径3cm以上のものを数えた.「露岩型」と「低木型」の禿山では,現地での観察から適当な個体数密度を設定した.両種の総個体数は,禿山タイプ毎の個体数密度に面積をかけて求めた.
     ウンヌケの個体数密度は「草原型」6.7個体/m2,「草原・低木型」1.5個体/m2,同じくウンヌケモドキは「草原型」2.0個体/m2,「草原・低木型」0.1個体/m2であった.また,「露岩型」と「低木型」の禿山における個体数密度は,ウンヌケでそれぞれ0.1個体/m2と0.01個体/m2,ウンヌケモドキで0.05個体/m2と0.007個体/m2に設定した.このデータから推計した東播磨における総個体数は,ウンヌケが約280万個体,ウンヌケモドキが約40万個体となり,ともに環境庁(2000)の全国推計値の約400倍に相当した.当地域にウンヌケ属が多産する主要因は,全国平均の約50倍の頻度で起こる山火事が禿山景観を持続させているためであると考えられる.
  • 西野 麻知子, 丹羽 信彰
    セッションID: E101
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    2000年前後から西日本各地の河川や湖沼で中国、韓国産と思われるカワリヌマエビ属(Neocaridina denticulata subspecies complex:ツノナガカワリヌマエビ亜種群とよぶ)が見つかっている。発見のきっかけは、中国にしか分布しない共生動物ヒルミミズ(Holtodrilus truncatus)が、2003年兵庫県夢前川水系のミナミヌマエビ(N. denticulata denticulata?)から大量に見つかったことによる。その後、中国、韓国に分布する近縁亜種シナヌマエビ(N. denticulata sinensis)が琵琶湖から見つかったことから、外来のツノナガカワリヌマエビ亜種群が日本に侵入していることが明らかになった。20年ほど前から韓国、中国から生きた淡水エビが釣り餌用に大量に輸入され、また最近ではアクアリウムの鑑賞用にインターネット販売もされており、その一部が野外に逃げ出し、繁殖するようになったと考えられる。しかし、中国および韓国には、シナヌマエビも含め、日本産のミナミヌマエビと形態的に判別不能なツノナガカワリヌマエビ亜種群が広く生息している。このため、形態だけでは外来個体群かどうか区別できないのが現状である。また形態的に酷似していることから、在来のミナミヌマエビと外来のツノナガカワリヌマエビ亜種群間で交雑が生じる可能性が高く、純系の在来ミナミヌマエビ個体群の消滅が危惧される。今後、ツノナガカワリヌマエビ亜種群の分類学的位置づけも含め、詳細な検討が必要である。さらに、もう1種の共生動物であるエビヤドリツノムシ(Scutariella japonica)も琵琶湖や夢前川の問題のエビに付着しているのが確認されている。本種もまた、日本と中国とで同種が生息しているとされており、本種についても外来個体群が侵入している可能性が極めて高い。
  • 戸田 光彦, 中川 直美, 鋤柄 直純
    セッションID: E102
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     北米原産の外来種グリーンアノールAnolis carolinensisはイグアナ科に属する全長20cm程度のトカゲで、1960年代に小笠原に持ち込まれ、現在は父島と母島に生息している。近年、両島では本種の密度がきわめて高くなっており、本種の捕食によりオガサワラシジミや固有のトンボ類をはじめ多くの在来昆虫が絶滅かそれに近い状態となっていることが知られている。しかし、導入されたトカゲ類が在来昆虫を絶滅させた例はこれまでに知られておらず、小笠原諸島における本種は、小型トカゲ類が侵略的外来種となった数少ない例といえる。本種の防除に資する基礎資料を得るため、演者らは父島、清瀬における二次林に40×40mの調査区を設定し、標識再捕法を用いて個体群構造の解明を試みた。 2004年9月から11月にかけて合計21日間にわたりセンサスを行い、合計180個体を標識した。生息密度は高く、1,000個体/haを越えていた。再捕率は比較的高く、標識された個体の平均捕獲回数は3.7回であった。幼体よりも成体が多く、成体の性比は雄に偏り、かつ雌の方が発見率が低いことが示唆された。体サイズの性的二型が認められ、雄の方がずっと大型であることが示された。幼体と成体の間で、生息場所の微環境が異なっていることが示された。今後、本種の防除を実施するためには、発見率の低い雌を効率よく捕獲することが重要と考えられる。
  • 山田 文雄, 杉村 乾, 阿部 慎太郎
    セッションID: E103
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    マングースが奄美大島(名瀬市)に導入されたのは1979年頃であるが,アマミノクロウサギ(以下,クロウサギという)の主要な生息地の森林に侵入したのは1990年代初期前後と考えられる.マングース侵入後のクロウサギの分布変化やマングース駆除(2000年以降)の効果に関して自動カメラ法と糞粒法で検討した.自動カメラ法(2001-2004年調査)でみると,クロウサギの撮影頻度はマングースの侵入時期の古い高密度地域(A)で低く,マングースの侵入の新しい低密度地域や未侵入地域(B)で高かった.一方,マングースの撮影頻度は,Aで最も多く,クロウサギの撮影頻度の高いBにおいても低頻度で認められた.糞粒法(2000-2003年調査)においても同様の傾向を示した.今回のクロウサギの糞粒数調査結果をマングース侵入前の1993-1994年の調査結果と比較すると,クロウサギの分布域の東北部,北部,東西部で消失や減少が起き,クロウサギの幼獣糞はマングース侵入後に減少し,特にマングース高密度地域で減少したことが明らかになった.環境省によるこの4年間(2000-2004年)の全島的なマングース駆除事業によって,マングースの生息数は全体的には減少しているが,分布域の拡大を抑制できず,分布辺縁部で密度の高いことが捕獲情報から明らかになった.駆除しやすい場所でマングースの生息数を減少させたが,駆除しにくい場所(クロウサギなどの住む森林など)でマングースの生息数が増えており,これらの地域や新たな侵入地域で,クロウサギの消失や減少がさらに起きることは確実である.今後の徹底したマングースの駆除対策が必要である.
  • 長谷川 功, 前川 光司
    セッションID: E104
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ある生物種の生息域に同じギルド内の生物種が移殖された場合、その地域に生息する種が在来種から外来種へ置換することがある。同じギルド内の2種が同所的に生息すると資源を巡る強い種間競争が生じることから、これまでギルド内での在来種から外来種への置換メカニズムとして種間競争が注目されてきた。
     サケ科魚類は古くから移殖が盛んに行われ、世界中の多くの地域で在来種と外来種が同所的に生息している。また、サケ科魚類は在来種から外来種への置換メカニズムとして種間競争(特に干渉型競争)が挙げられている典型例である。これまで在来種と外来種の種間競争の研究は、河川棲のサケ科魚類を中心に行われ、河川内では在来種が外来種に好適な生息場所を奪われた結果、成長率や生存率が低下することがわかってきた。しかし、サケ科魚類は同種内でも体サイズや生活場所の異なる降海型と陸封型といった生活史多型を示す種が多い。したがって、置換メカニズムを解明するためには、河川内での種間競争のみに注目するのではなく、在来種と外来種の生活史を比較することも必要である。
     北海道では近年、在来種アメマスから外来種ブラウントラウトへの置換が報告されている。本年度行った野外調査と先行研究を比較検討した結果、降海型が遡上するアメマス個体群よりも陸封型のアメマス個体群の方がブラウントラウトへの置換が生じ易いことが推測された。その原因として種間競争以外にも、陸封型のアメマスは降海型と比べて成魚、特に成熟メスの体サイズが小さいために抱卵数が少ないなど、大型になるブラウントラウトよりも繁殖において不利であることが考えられた。
  • 西原 昇吾, 鷲谷 いづみ
    セッションID: E105
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    世界的にみても特に侵略性の高い外来魚オオクチバスは,今では意図的導入により国内各地の池沼,湖に生息する.伝統的な維持・管理が行われてきたため池は水生生物の生息場所として重要であるが,農業の近代化に伴う管理放棄に加え,オオクチバスの侵入が大きな脅威となっている.これまで,各地でオオクチバス駆除が行われてきたが,生物多様性の高い地域への侵入直後の影響を評価した研究は少ない.
    本研究では,現在でも国内で最も良好な水生昆虫相が残存する奥能登平野部の約200ヶ所のため池でオオクチバスの分布と水生生物群集の調査を行った.オオクチバスは,ダム湖2ヶ所と,道路,集落に近く水を抜かなくなった4ヶ所の池で確認された.オオクチバスが侵入したすべての池で2003_から_04年に地元の有志,研究者,行政が協力して,水抜き,寄せ網,刺し網,釣り,流出防止網による駆除を実施した.各池での捕獲数は23匹_から_167匹であり,完全に水の抜ける池ではほぼ完全に駆除できた.その際にフナやコイなどの他の魚類の幼魚は見られなかった.2004年にはオオクチバス223匹の胃内容から,絶滅危惧種を含む各種の水生昆虫,モクズガニ,ヨシノボリ,オオクチバス,イモリ,アマガエル,ネズミ類などが確認されたが,前年に確認されたヌマエビは確認されなかった.駆除直前の各池の水生生物相との対比では,コサナエ,センブリなどの体長2cm程の底生の水生昆虫の捕食が際立った.侵入後1年の1つの池では大型のヤゴ類,ゲンゴロウ類幼虫が減少し,侵入後3_から_4年の3つの池では大型ゲンゴロウ類はほとんど確認できないなど,水生昆虫相の変化が著しかった.
    以上より,オオクチバスがため池の水生昆虫相に大きな影響を与えていること,駆除には伝統的なため池の水管理が有効であることが示された.水生生物を保全するためには,地元主体の協働によるため池の維持・管理の復活が急務である.
  • 大西 文秀
    セッションID: E106
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     近年、集水域や森林についての学際研究に期待が高まり、成果の社会還元が急務となりつつある。本研究では、ヒトの生活の場であり、ハビタットとしての集水域におけるヒトと自然の定量的な関係の解明を進め、持続可能な社会を目指すための新たなライフスタイルや環境計画手法の実現に向けた環境情報とシステムの創造を目標とした。 具体的には、ヒトの活動の集積と自然がもつ潜在的な抱擁力の関係をはかる指標として、集水域を系とした流域環境容量の概念を設定することにより、数理モデルと地理情報システム(GIS)を用い、生活空間としての首都圏、近畿圏、中部圏の3大都市圏における集水域の環境容量を試算した。また、集水域の階層構造をはじめ、環境要素が持つ環境性と資源性の関連や環境容量の変動構造の解明を進め、学際的な流域管理モデルを試行した。 流域環境容量は、自然環境量の関数、科学的な関数、また、一人当り負荷量の関数などの3関数により構成した。試算モデルは、CO2固定容量、クーリング容量、生活容量、水資源容量、木材資源容量の5指標を設定し、環境情報と科学知識の活用と統合により構築した。  本研究により、ヒトのハビタットとしての集水域の環境特性や容量の定量的把握が進められ、集水域の上流と下流、また支流域などの階層的関係や、河川の連続性による影響圏の予測、そして、環境改善により期待される効果、さらに、環境計画などの諸活動やライフスタイルの新しいあり方について、ヒトと自然の関係という視点から学際的な認識と検討が可能になると考えられる。これらの成果により、エコロジカルプランニングを目指す環境計画において、情報管理、環境評価、ミチゲーション、また合意形成や環境教育等を向上させるためのシステム構築の一助になるものと考えられる。
  • 宮地 謙一, 村上 克介, 土井 正
    セッションID: E107
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     大阪府は,‘ひったくり’犯罪件数の全国ワースト記録を現在保持しており,その‘ひったくり,犯罪の半数以上が夜間に発生している。本研究では,大阪府南部地域(堺市ほか4市1町)での“街路照明(防犯灯)設置域環境と夜間照度状況”に関する照明学会関西支部による調査・観測に基づき,マクロ調査域(区域:主要駅付近)における,各単位調査域‘スパン(防犯灯器具直下を両端とする道路上の夜間照度の調査・観測域)’を夜間時の明るさによって類別し,防犯灯設置域での環境要因を夜間照度[とくに,‘スパン’内水平面での修正算術平均照度(EhAm,lx)]に関係づけて詳細に評価した。 夜間時における明るさによって,調査区域の‘スパン’は,6グループ一大変明るい[型:L(G-II)],明るい[L(G-I)],やや暗い[L(D)],やや明るい[D(L)],暗い[D(G-II)],大変暗い[D(G-I)]一‘スパン’に類別できた。それら6類別スパンでのEhAmの度数分布は対数正規分布に適合し,.したがって,それらの平均EhAm値が幾何平均によってえられた。L(G-II)型スパンの平均EhAmは,防犯灯の設置主要光源である高圧水銀ランプと‘広告照明’によって非常に高い値(15.60 lx)に,いっぽう,D(G-I)型スパンでのその値は,‘防犯灯(主要光源20W蛍光ランプ)の保守管理不良’と‘街路・庭の高木’によって非常に低値(1.43 lx)になった。‘防犯灯の保守管鐘不良’が改善すれば,D(G-II)型スパンはL(G-I)型にもなりうることが判明した。L(D),D(L)型スパンはほぼ同じ防犯灯設置域光環境下にあり,それら環境要因(‘屋外照明’,‘街路・庭の高木’,‘駐車車両’など)によって夜間時でのスパン内明るさに‘不均斉’が多く生じた。この‘不均斉’の定量的解明時,今後の課題となろう。
  • 小林 悟志, 川本 祥子, 水田 洋子, ムリアディ ヘンドリー, 出宮スウェン ミノル, 白井 康之, 荒木 次郎, 伊藤 武彦, 阿部 ...
    セッションID: E108
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    情報化社会にあって、生物学の専門用語はマスメディアでも多く使われているが、その多くは高等学校で学ぶ機会がなく、一般には用語の意味が正しく理解されていない懸念がある。さらに最近の社会現象として理科離れが問題になっており、その効果的な打開策の策定は緊急の課題である。 本研究開発で構築を進めているWEBサイト、バイオポータルでは、専門家と一般社会との相互理解の架け橋となり、日本の科学コミュニケーションの向上を目的としている。このWEBサイトは一般向けと専門家向けの2つのコンセプトで構成されており、一般向けには専門用語の解説を中心としたより深い生物学の知識提供、専門家向けには利便性に富むゲノム情報や文献検索等の提供を行う。具体的には、一般向けとして「用語辞書」と「コラム」の2つのメニュを設けており、前者では専門用語を分かりやすく解説し、後者は新聞等で話題になった研究について、さらに詳しく解説し研究の面白みが分かるように編集されている。また、専門家向けには、遺伝子情報が閲覧できる「遺伝子百科」、ゲノム情報の閲覧などができる「バイオインフォマティクス道具箱」、さらに、目的とする学術論文を迅速かつ的確に検索できる「文献検索」の3つのメニュがある。教育現場では、これら5つのメニュを学力レベルに合わせて使い分けて活用することにより、生物学の教材および資料として利用できる。本研究で開発したWEBサイトは、下記のURLで試験公開している(http://www.bioportal.jp/)。
  • 冨澤 奏子, 鈴木 邦雄
    セッションID: E109
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     近年、エコツーリズムがツーリズムの一形態として台頭してきているが、未だ概念は統一されていない。しかし、その目的として必ず生態および環境の保全、環境教育が挙げられており、この点が他のツーリズムとの差別化となっている。本報告では、エコツーリズムの一部でもあり、野生生物保全を目的に持ち、環境教育施設としての役割を果たしている動物園に注目し、その変遷をエコツーリズムの視点から検討すると共に、現状における問題を考察するものである。 動物園は、象徴的権力として造られたメナージュリとして始まったとされている。その後一般公開を原則とした近代動物園が18世紀に発足し、動物学や博物学との結びつきを深めた。20世紀初頭には自然保護との関係が問われるようになり、今日では生物多様性や野生生物の保全センターとしての機能が組み込まれている。すなわち動物園は生息地外保全の役割を担っているのである。 また、都市住民の生活において自然が非日常的なものとなっている現在、動物園は、来園者の周囲には生息しないめずらしい動物を見せる場所から、自国の動物を飼育し、園内外の保全活動にも積極的に参加をする地域の自然に密着した場所へとその役割とニーズが変化しており、それに伴ってこれまでの系統分類学的展示配列から生態学的展示配列(ランドスケープイマージョン)へと質的変化が生じている。
  • 矢部 徹, 吉田 友彦, 石井 裕一, 古賀 庸憲, 宇田川 弘勝, 佐竹 潔, 広木 幹也, 野原 精一
    セッションID: E110
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 藻場は水の流動を緩和し有機物や底質をトラップするため、動物ベントスおよび稚魚、稚貝の供給源として機能するとされ、近年では沿岸漁獲および生物多様性回復の目的で、埋め立て等で失われた藻場の回復事業が浅海域においてなされている。
     浅海域藻場に隣接する干潟にはかつて海草藻場が分布していたことが聞き込み調査や漁場に関する古い資料調査から明らかとなった。水産の近代化に伴い多くの干潟はアサリ類の養殖などで「海の畑」に変貌し、船外機や収穫用器具の障害となる海草類は干潟内から除去されてきた。近年では好気環境形成目的で耕耘による底質改善事業もなされている。単純化された現在の干潟生態系では、漁業もいよいよ養殖から蓄養へと変貌しつつある。このような矛盾を改善するには干潟内海草藻場の生態系機能を明らかにすることが重要である。本講演では、干潟内の海草藻場の生態系機能を、底質の安定化機能、特にトラップ効果、地縛り効果、地固め効果、を中心に、これまでの研究経過を併せて報告する。

    【方法と結果】 野外調査は主に千葉県富津干潟および沖縄県西表島の古見干潟、干立干潟で行った。底質はPVCコアを用い干出直後にサンプリングを行った。重量含水率、底質密度、粒度分析、強熱減量、可給態窒素、可給態リン等を実験室にて計測した。現場では、酸化還元電位、電気伝導度、地温の垂直分布を測定した。植物のバイオマスは地上部および地下部の分布を計測した。藻場のトラップ効果は小型セディメントトラップを用いて沈降フラックスを算出した。藻場の地縛り効果は蛍光砂を底質内に設置しその分散を追跡して評価した。藻場の地固め効果は貫入抵抗値を測定した。
     これらの結果、干潟内海草藻場の根圏では、裸地と比較して有機物が多く、還元的でアンモニア態窒素が多いことが確認された。藻場内では底質の巻き上げと移動が少なかったが、海草類の切れ葉や枯死部は藻場内に留まることが確認され、海草藻場による底質の安定化機能を確認することができた。
  • 渡辺 学
    セッションID: E111
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     合成開口レーダ(SAR)は、天候に関係なく航空機や衛星からデータを取得することが可能である。このうち、波長が約23cm程度のLバンドSARでは、電波が森林内にある程度侵入することから、バイオマス量が少ない森林において、後方散乱された電波強度と地上部バイオマス量の間に相関関係があることが知られている。本講演では、2002年から2004年にかけて、北海道苫小牧国有林で行われてきた航空機搭載LバンドSAR観測で得られたデータと、同時に行われた毎木調査で得られた結果について報告を行う。毎木調査は、2002年秋に混交が進んだスタンド、2003年夏にアカエゾマツ、2004年夏にはトドマツのスタンドを中心にして行われた。そして、この3回の調査で計6000本程度の樹木について、樹高と胸高直径のデータを採取した。採取されたデータから、断面積合計、樹高、地上部バイオマスを算出し、それぞれについて電波強度との相関を調べた。その結果、地上部バイオマスと断面積合計の2つのパラメータで、良い相関を示していることが確認された。また、毎木調査を行ったスタンドの中で、同一樹種でほぼ同じ樹齢のサイトのデータのみを選んで相関関係を調べたところ、それ以外のケースに比べ、相関係数の大幅な改善が見られた。バイオマスと電波強度の関係を近似式で表したところ、データのばらつきは(最もよい場合で)5%となった。これらのデータをもとに、LバンドSARデータを利用した、森林地上部バイオマス取得の可能性についての考察を行う。
  • 松井 哲哉, 八木橋 勉, 中谷 友樹, 垰田 宏, 吉永 秀一郎, 大丸 裕武, 田中 信行
    セッションID: E112
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    2090年代の気候変化シナリオ条件下におけるブナ林の分布可能域を樹形モデル(Tree-Based Models: TMs)を用いて予測し、ブナ林の温暖化に対する脆弱性と感受性を評価した。TMs構築にあたり、5つの土地的変量(大地形、表層地質、土壌型、斜面方位と傾斜)を、国土数値情報から抽出、加工して4気候変量(夏期降水量(PRS), 冬期降水量(PRW), 最寒月最低気温(TMC), 暖かさの指数(WI))に加え、9変量を説明変量とした。作成したTMsに将来の気候値を当てはめた結果、分布確率0.5以上の地域は2090年代には91%減少することが予測された。九州、四国、本州太平洋側、北海道南西部のブナ林の多くは2090年代にはWIの増加により非常に脆弱な状態になることが示唆された。北海道南部、本州北部日本海側のブナ林は、分布確率の減少幅が大きいことが予測され、温暖化に対する負の感受性が高かった。北海道のブナ林分布可能域は北へ拡大するが、高温・乾燥の石狩低地帯がブナ林の北上を妨げる要因になると考えられた。
  • 沖津 進
    セッションID: F101
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     ヤエガワカンバ(Betula davurica Pallas)は,日本では北海道東部の一部および本州中部の内陸域に点在するのみで,分布量は少ない.いっぽう,北東アジア大陸部には広く分布し,大陸陸型落葉広葉樹林の主要な構成要素となっている.この林は,植生地理的には,朝鮮半島中部に分布する,アカシデを主体とするシデ類優占型落葉広葉樹林と接続している. 2004年7月,短い期間ではあったが,極東ロシア沿海地方最南部を訪れ,ヤエガワカンバを含む森林を2,3観察する機会を得た.本報告では,その結果に基づき,モンゴリナラ_-_ヤエガワカンバ林の構造を紹介した後,この林の植生変遷史上の意義を考察する. ヤエガワカンバ林の樹種構成をみると,モンゴリナラが優占し,シナノキ類,エゾイタヤがそれにつぎ,イヌエンジュ,キハダなどが伴う.さらに,ヤエガワカンバ,チョウセンミネバリが混成する.こうした組成は,現在北海道に分布する落葉広葉樹林のものと近い.北海道の落葉広葉樹林は,大陸型のモンゴリナラ_-_ヤエガワカンバ林からヤエガワカンバが欠落したものである.ヤエガワカンバは最大胸高直径50 cm近くに達し,主要構成種となっている.この樹種は,直径10 cm以下の個体はわずかであるが,直径20 cmまでの個体が5割を占め,更新がほぼ継続していることがわかる.ヤエガワカンバは,山火事後,林分の発達とともに優占性を増加させていた. 以上のように,ヤエガワカンバは,大陸型落葉広葉樹林の極相樹種で,現在は二次林要素と考えられているシデ類優占型落葉広葉樹林をも含めた,大陸型落葉広葉樹林の日本列島における最終氷期以来の変遷を理解する重要な存在である.
  • 大橋 雄気, 増沢 武弘
    セッションID: F102
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    北アルプス白馬岳に生育するウルップソウ(Lagotis glauca)がどのような生育特性によって個体群を維持しているかを明らかにするために個体群調査を行った。ウルップソウは高山の砂礫地に個体群を形成する多年生草本である。多くの高山植物が種子繁殖と栄養繁殖を組み合わせて繁殖を行うのに対し、ウルップソウは種子繁殖のみを行う。
    白馬岳稜線の西側斜面(標高約2720m)に3m×9mの調査区を設置した。調査は2002年から2004年まで行い、調査区内に生育する個体の位置と根生葉数、花茎の有無を記録した。本研究では根生葉数を生育段階のパラメータとし、Seedling(実生)、1L(根生葉1枚)、2L、3L、4L、5L以上(根生葉5枚以上)の6つのステージを設置した。データの解析は推移行列モデルを作成して行った。
    推移行列から以下の結果が得られた。Seedlingから1Lへの推移確率は19.2%であり、80%以上は翌年までに枯死した。1Lから2Lへの推移確率は5.0%だったが、翌年も1Lに残る確率は30.8%であり、同様にSeedlingを除くステージでも翌年も同じステージに残る確率が最も高かった。また、生存率はSeedlingで19.2%、1Lで35.7%であったが、2L以上の個体の生存率は80%以上であり、根生葉数が増加するほど高くなった。推移行列から推定される平均余命はSeedlingで1.40年、1Lで2.07年であったが、2Lでは7.25年と著しく増加し、5L以上では14.45年であった。これらの結果は、ほとんどの個体はSeedlingや1Lで死亡するが、2Lまで生き残った個体は何年間も生存し、その生涯に多くの種子を生産することで高山環境に安定した個体群を維持していることを示唆している。
  • 島田 和則, 村上 亘, 野宮 治人, 坂本 知己
    セッションID: F103
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     渓畔林は,水流による直接的・間接的な影響により成立し維持されている。特に増水時の冠水等による攪乱の影響は大きいが,攪乱の頻度と規模は地形と密接に関わっている。そのため,「場」の整理としての地形区分は,攪乱等の影響を評価する上で有効であると考えられる。そこで本研究では,まず地形と植生の研究でよく使われている田村(1996)の微地形区分をベースに,測量,現地踏査,成長錐による一部の個体の樹齢測定により,河床域について極微地形スケールで下位区分を行った。その結果,河床域は100年スケールで離水している高位河床面,毎年のように冠水する低位河床面(下),その中間の低位河床面(上)の3つに区分すると,既存の研究とうまく対応させながら有効な区分ができた。 さらに,岩手県雫石町東ノ又沢において,この地形区分ごとにパッチサンプリング法により,木本群落の調査を行い,地形区分と木本群落両者の関係を論じた。その結果,優占型,種組成を地形区分ごとに比較すると,高位河床面ではケヤキ,トチノキなど長命の樹種を中心に出現したが,低位河床面(上)ではヤナギ,サワグルミ,ヤマハンノキなど比較的短命な種が中心であった。低位河床面(下)では木本種はほとんど見られず,わずかに見られた実生も当年生で,木本の定着が難しい面と考えられた。また,群落構造も地形区分ごとに異なることがわかった。これらの地形区分ごとの違いは,攪乱体制の違いと関連づけて説明することができた。
  • 岩松 佳代
    セッションID: F104
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     土壌構造の違いがオンタデのサイズ分布に与える影響を明らかにするために,富士山高山帯において大礫地と小礫地に生育するオンタデの個体数,平均直径,花序数を測定した. オンタデのサイズ分布は大礫地で大型個体の割合が多く,実生はほとんど生育していなかった.一方,小礫地では実生クラスの小型個体が大半を占めた.花序総数には,調査地間で差は見られなかった.土壌構造は,大礫地では深部にまで礫層が発達していたが,小礫地の礫層は表層のみであった. サイズ分布に差が生じた原因として,両調査地間の土壌構造の違いが考えられる.実生が定着するには,礫に比べて水分保持能力の高い砂層まで根を伸長させなければならない.したがって,仮に発芽しても実生段階に達する割合は,厚い礫層をもつ大礫地の方が小礫地よりもはるかに少ない.一方,定着後の小型個体は表層礫の移動により損傷を受け,死亡率が高まることが予想される.溶岩が露出するような大礫地ではこのような攪乱は生じにくい.したがって,定着後の死亡率は小礫地の方が高いといえる.これらのことから,大礫地では大型個体中心,小礫地では小型個体中心の個体群構造が成立したものと考えられる. このように死亡率が高い場合,個体群の衰退が予想されることが多い.しかし,花序総数すなわち種子供給能力に差は見られず,またオンタデの大型個体は地下部が発達し礫移動に強い抵抗性をもつことが知られている.したがって,その年に定着できる個体がたとえ1個体でも,それが毎年続くことにより,その個体群の個体数は累積されていくことになる.以上のことから,両調査地に生育するオンタデは今後もそれぞれのサイズ分布を変化させることなく,個体群を維持していくものと考えられる.
  • 国武 陽子, 樋口 広芳, 宮下 直
    セッションID: F105
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    個体当たりの種子生産が低下するアリー型密度効果は、遺伝的浮動や近交弱勢などとともに、小集団を衰退させるプロセスの1つであると考えられている。植物個体群においても個体密度が高いと、種子生産はプラスの効果をうけることが多い。しかしながら、過去の研究においては、個体密度や個体群サイズと種子生産の関係には変異性がみられ、相関関係がない、あるいは、負の相関が示されてきた。このような密度依存性の状況依存性を明らかにするためには、複数の環境で複数年にわたって種子生産における密度依存性の強さを明らかにする必要がある。本研究では、ユリ科ギボウシ属オオバギボウシHosta sieboldianaを材料に、種子生産に密度依存性が生じる機構を明らかにすることを目的とし、局所個体群の個体密度と種子生産の関係について、2ヵ所の個体群を3年間にわたり調査した。その結果、パッチサイズが大きいと、結実の程度が高くなるアリー型密度依存性が示され、その関係性は個体群や年によって有意に変化することはなかった。パッチサイズと種子生産の正の相関関係は、花粉媒介者の1株当たりの訪問頻度がパッチサイズに伴って増加することによって生じていることが特定された。そして、種子生産におけるアリーが他密度依存性に年や個体群による変異性が生じなかったことは、以下のことよりもたらされていることが明らかになった。1つは、花粉媒介のプロセスが、種子生産のパッチ間変異の大部分を説明する要因であり、その傾向が年や個体群で大きく変化しないこと。2つ目は、パッチサイズと訪問頻度の関係が年や個体群によって変動しないことである。
  • 宮本 和樹, 谷口 真吾
    セッションID: F106
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    樹木個体間の競争は個体の生存・成長などの個体レベルから、森林の更新過程・種組成などといった群集レベルまで、さまざまな特性に影響を及ぼすと考えられる重要な要素である。地上部における光をめぐる競争にくらべ、地下部の資源をめぐる競争が個体の特性に及ぼす影響は十分に明らかにされていない。本研究では樹木個体間の競争が個体の成長に及ぼす影響を明らかにするため、異なる光条件(寒冷遮)および個体どうしを地下部(塩ビ板)で仕切り、個体間の相互作用を制限する処理を施した苗畑試験地で、光要求性が高く旺盛な初期成長を示すミズメの実生から稚樹への成長過程を2年間追跡した。 個体の成長や葉の特性について、1年目では光環境の効果のみが顕著であったが、2年目の直径成長では光環境に加えて地下部の競争の有無について有意な効果がみとめられた。さらに、単位細根重あたりの葉の窒素含有量(細根の養分吸収効率の指標)や葉の窒素濃度についても、2年目では光環境と地下部の競争の有無に関して有意な効果がみとめられた。これは個体の成長にともない土壌中の窒素などの栄養塩類が不足しはじめ、資源をめぐる競争が顕在化したことが原因であると考えられる。特に明条件では地下部の競争が緩和されると窒素の吸収効率が増加し、直径成長が促進される傾向が示された。 ミズメ個体の成長に影響をおよぼす主要因は光環境であるが、光条件が良好なサイトで生育する個体間においては、地下部の資源をめぐる競争もその後の成長に影響をおよぼす要因として重要であることが示唆された。
  • 箱山 洋
    セッションID: F107
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    空間的な構造が絶滅に与える影響は保全生態学において重要な問題である。保護区を設定する時に、大きな単一の保護区と、いくつかの小さな保護区のどちらがいいのかについては1970年代から議論されてきた(SLOSS, Single Large Or Several Small)。メタ個体群の絶滅の観点からSLOSS問題を考える場合、全体の絶滅リスクは、それぞれの保護区における局所的な絶滅のリスクや、保護区間の環境相関・移動率の影響を受ける。保護区全体の面積Aが一定という制約のもとでは、ある保護区のサイズを大きくすれば局所的な絶滅のリスクは減少するが、制約として保護区の数は減らさなければならないので、全体の絶滅リスクは必ずしも減少しないかもしれない。本講演では、地域集団のダイナミクスを確率微分方程式の確率過程モデルとして導くことから始めて、地域集団間の移動、地域集団間の環境相関を考慮したメタ個体群モデルに拡張し、最善の保護区分割について議論する。 棲息地の分割を考えるときに最も大切な要素は個体群変動の変動係数であることが今回あきらかになった。個体群変動の大きさに応じて、最善の棲息地分割は大きく影響を受ける。最も単純な場合として、それぞれの保護区の環境変動の相関が0で移動もない場合、従来までの研究では小さな保護区を多く設定したほうが、絶滅リスクが小さいと言われていた。しかしながら、現実的な個体群変動の変動係数においては、単一の大きな保護区において絶滅リスクが小さいことを示すことができる。さらに、現実的な場合として、保護区の間で環境に違いがある場合や、保護区間に移動がある場合について、その影響を議論する。
  • 永野 正弘, 水俣照葉樹林 調査グループ
    セッションID: F108
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     水俣の37年の胸高直径データをより信頼性の高める目的で個体別に時間トレンドを調べた。飛び離れた値や大きく増減するものが混在する。原因には,単なる偶然変動,測定者が未熟,測定位置にコブがあるなど樹木の形状によるもの,目盛りの読み間違い,記録者の値の聞き間違い,個体番号の間違い,などが考えられる。
     はずれデータを検出し,細かな変動を消してなめらかな曲線を描くように回帰曲線(平滑化スプライン曲線)を求めた。ギャップが開いての急成長にも追随でき,偶然誤差の影響を受けないことを基準に,「凸凹ペナルティ」は2とした(時間は年単位,直径はcm単位)。 水俣IBP特別研究地域のP1の大径木(DBH>4.5cm)で5回以上測定されているものすべてのデータを使った。AIC(赤池の情報量基準)を基準に,各個体の測定値を増減し,あるいは適切な補正値を仮定して最適データセットを求めた。なお除外の結果,データ数が5未満となった個体は検討からはずす。
     600を超える個体のおよそ10400の測定値を検討した結果,約9000のデータが除外されずに残った。残った測定値については,実測値の推定値からのはずれ(偏差)の最大値は3.3mm,平均0mm,標準偏差0.475mmであった。除外されたデータも含めると,それぞれ94.9mm,0.2mm,1.86mmで,補正やはずれデータの除外によって精度が高い曲線がえられたことになる。補正だけの場合は,9.9mm,0mm,0.98mm。
     問題も残るが詳細は当日発表する。
  • 横山 寿, 石樋 由香, 玉置 昭夫, 原田 和幸, 下田 勝政, 小山 一騎
    セッションID: F109
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    炭素・窒素安定同位体比分析法を食物網の解析に用いるとき,1栄養段階ごとに炭素値は0から1‰,窒素値は3から4‰上昇することが一般的に受け入れられている.本研究では,干潟の底生無脊椎動物4種(二枚貝アサリ・シオフキ,十脚甲殻類ニホンスナモグリ・ハルマンスナモグリ)の幼稚体を材料とし,餌料ム動物組織間における炭素・窒素安定同位体比濃縮係数を室内飼育実験により求めた.餌料として安定同位体比値が一定の微細藻を与えた.飼育期間内に動物の体重増加は7倍を越え,餌料と同位体比平衡に達した.二枚貝2種の軟体部組織の濃縮係数は炭素で0.6から0.9‰,窒素で3.4から3.6‰であり,上記一般値の範囲内にあった.スナモグリ類2種について測定対象とした組織は,それぞれ酸処理・非処理の体全体・筋肉・外骨格であった.その結果,(1) 非処理外骨格のd13C値は変異が大きい,(2) 酸処理すると外骨格のd13C値 が3.5から6.2‰減る,(3) 体全体の炭素濃縮係数は種間で有意に異なる,(4) 筋肉の炭素・窒素濃縮係数に対する酸処理・非処理の差はわずかである(0.3‰以下),(5) 筋肉の炭素濃縮係数は種間で有意差はなく,2.0から2.2‰であり,一般値の範囲からはずれている,(5) 筋肉の窒素濃縮係数は種間で有意差はなく,3.6から4.0‰であり,一般値の範囲内にある,(6) 体全体の窒素濃縮係数(2.3から3.0‰)は筋肉のそれよりも小さく,外骨格における負値(-3.0から-1.9‰)を反映している,ことが明らかになった.これらの知見は,甲殻類の安定同位体比分析において,外骨格の炭酸カルシウムを酸で除くべきこと,筋肉が最も適切な対象組織であることを示唆している.本研究結果は,濃縮係数は動物の種および組織特異的であり,一般値は普遍的には適用できないことを示している.
  • 古野 弘典
    セッションID: F111
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    Vannote et al.(1980)による河川連続体仮説(RCC)は、河川生態系を理解する枠組としては広く認知されている(Ward 1992、Allan 1995、谷田 1998)。自然河川において水温、川幅、流量などの環境要因は、上流から下流へと連続的に変化する。物質、エネルギーそして生態影響も、基本的には上流から下流へ向かう。その中で水生昆虫は、有機物や栄養塩の滞留と生態的循環の機能を持ち、河道内における物質やエネルギーの滞留時間を延ばしている。ヒゲナガカワトビケラ(Stenopsyche marmorata)は世界的に最も大型の濾過摂食者で、日本の河川において密度が高い。幼虫は、その捕獲網によって中型(1-0.125mm)から微細(0.125mm以下)の流下有機物(POM)を取り込むと思われ、いっぽうアンモニアの形で窒素(N)を排泄し、呼吸により炭素(C)を排出する。すなわち、この大型で密度の高い濾過摂食者のヒゲナガカワトビケラは、流下有機物を含めた河川水質に大きな影響を与えていると考えられる。そこで演者らは、ヒゲナガカワトビケラ幼虫を飼育する循環式流水水槽を開発し、自然河川から採集した流下有機物を餌として与え、「有機物?ヒゲナガカワトビケラ系」の代謝について室内実験を行なった。ヒゲナガカワトビケラの成長量について測定を行うとともに、水槽内における流下有機物量、水槽内環境(pH,EC,Wt,DO)、アンモニア態窒素濃度について分析を行った。
  • 杉本 敦子, 内藤 太輔, Trofim C. Maximov
    セッションID: F112
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    東シベリア永久凍土帯に広がるタイガ林は落葉性針葉樹であるカラマツから成る森林で、年平均降水量がわずか213mmほどの内陸性の極めて乾燥した気候帯に成立している森林である。広大な面積を占めるため、地球規模の炭素・水の循環に重要な役割を果たしていると考えられる。針葉樹でありながら落葉性というカラマツの森林は、ヨーロッパや北米の常緑針葉樹であるトウヒの森林とは、フェノロジー(植物季節性)および年々変動でも、大きな違いが予想される。本研究では、カラマツの光合成活性、土壌水分等の季節変化の年々変動の観測を行い、ある年の降水が1年以上の遅れをもって植生の活性に影響を及ぼす効果が明らかにした。
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