日本生態学会大会講演要旨集
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  • VYAS Poonam, 舟山(野口) 幸子, 矢野 覚士, 宮沢 真一, 半場(富田) 祐子, 寺島 一郎
    セッションID: G101
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    4倍体化が葉の光合成におよぼす影響を解析するために,Phlox drummondii(ハナシノブ科クサキョウチクトウ属)の茎頂をコルヒチン処理し,同質4倍体(autotetraploids)を新規に作成した(C0)。同様にして作成し11代にわたって継代した植物(C11)と,4倍体のもととなった2倍体(D)とを対照として用いた。 4倍体の葉は,2倍体の葉に比べて大きく厚かった。葉面積あたりの葉肉の体積,細胞のサイズ,細胞あたりの葉緑体数,葉肉表面積(細胞間隙に接した葉肉表面積積算値/葉面積),および葉緑体表面積は,C11>C0>Dの順であった。これらの諸要因によって4倍体,特にC11は,葉面積あたりの光合成諸機能が高くなっていた。一方,葉肉細胞壁の厚さは4倍体の方が厚かった。ガス交換/安定同位体同時測定法で評価した細胞間隙から葉緑体までの拡散抵抗を葉面積あたりで表すと,2倍体と4倍体との間に大差は無かった。細胞壁が厚いと拡散抵抗は増加するが,葉肉表面積や葉緑体表面積が大きくCO2が溶け込む面積が大きいので,同じ程度の拡散抵抗値となったと考えられる。 C0の中には,Dと比較して光合成機能が高くないものもあった。C11が優れた性質を示したのは,11代にわたる継代の間に適応が進んだためであると考えられる。4倍体植物は光合成の形態学的な制限を解析するためのよいモデルであることも指摘したい。
  • 石田 厚, 矢崎 健一, 石塚 森吉, Diloksumpun Sapit, Ladpala Phanumard, Staporn Duri ...
    セッションID: G102
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    タイの熱帯乾燥季節林では、同じような雨量にも関わらず落葉樹林と常緑樹林が見られる。落葉樹林の土壌は常緑樹林よりも肥沃で、土壌栄養塩の量は、森林のタイプを決める一つの要因になっている。炭素固定、水利用、光阻害回避の特性が落葉樹と常緑樹で異なっているという仮説を検証するため、落葉樹林と常緑樹林の林冠木の葉の光合成速度、気孔コンダクタンス、クロロフィル蛍光の日変化を季節を通じて測定した。
    落葉樹の葉は薄く、より短い生育期間を持ち、葉重当たりの光合成速度や窒素含量はより高く、気孔コンダクタンスもより高かった。また幹の道管直径は、落葉樹で常緑樹よりも大きかった。落葉樹の葉は乾季初期まで葉をつけていた。葉重当たりの光合成速度は、どの樹種も乾季に低下した。雨季と乾季とを比べ、落葉樹の葉の気孔コンダクタンスは乾季でも比較的高かったが、常葉樹では乾季に大きく低下し蒸散による水損失を押さえていた。また光阻害回避の特性に関しては、落葉樹の葉では光化学的な能力やNPQ(過度の光エネルギーの熱放出)の季節変化は小さかったが、常葉樹の葉では乾季で光化学的な能力が大きく低下し、NPQは上昇した。すなわち常葉樹の葉では、光合成能力の低下する乾季には、光合成系IIのdown-regulationによって過度の光エネルギーを積極的に放散させていた。これらのデータから、熱帯乾燥季節林における落葉樹と常緑樹では、異なった炭素固定、水利用、光阻害回避の戦略を持っていると考えられた。
  • 上村 章, 原山 尚徳, 小池 信哉, 石田 厚
    セッションID: G103
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    森林の炭素の吸収特性を明らかにするために、成木樹冠内の葉の特性の垂直的変化、その変化の種による違いを調べることは重要である。本研究では、生育環境下における成木(樹高約14 m)を用いて、遷移後期種のブナとイヌブナと遷移前期種のミズメとで比較を行った。樹冠上部から下部までの葉について、ガス交換特性や形態的特性を層別に分けて測定した。また陽葉と陰葉の代表葉を用いて、葉温と電子伝達速度と光合成速度との関係を測定した。そして良く晴れた日中に、樹冠内の各個葉の電子伝達速度を測定し、上記の電子伝達速度と光合成速度の関係から、樹冠内の葉の光合成速度の垂直分布を推定した。樹冠上部の葉の光合成速度は、ミズメで最も高かった。葉面積指数は、ブナとイヌブナ(5.26 – 5.52)と比べてミズメ(4.50)で低かった。また、ミズメと比べてブナとイヌブナの方が、樹冠上部に葉を集中させていた。個葉の葉面積当たりの葉乾重(LMA)、クロロフィル濃度、クロロフィル:窒素比の樹冠表層葉と下部葉の間の違い(可塑性)は、ミズメが最も小さかった。またミズメは、樹冠内の葉のδ13Cの可塑性が最も小さく、樹冠内部に光が透過して高い光合成を行っていると考えられた。単位地面面積当たりの光合成速度は、ブナで18.1、イヌブナで12.7、ミズメで20.2 µmol m-2 s-1であった。低い葉面積指数を持ち、葉の形態的特性の可塑性が低いミズメでは、樹冠上部の個葉の高い光合成速度と樹冠下部での高いsunflecksの利用により樹冠全体で単位地面面積当たりの高い光合成を達成していた。一方、高い葉面積指数を持ち、葉の生化学的特性の可塑性が高いブナでは、弱光を効率的に利用し樹冠光合成を高めていることが推測された。
  • 韓 慶民, 荒木 眞岳, 千葉 幸弘
    セッションID: G104
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    京都議定書2013年以降に始まる第2約束期間のCO2吸収源の科学的な運用ルールを視野に、森林管理と非人為的要因によるCO2吸収量の効果を判別可能とするCO2収支プロセスモデルを開発することが本研究の目的である。そのために、日本の主要な人工林の一つであるヒノキ林を対象に間伐を行い、モデル開発に不可欠な光合成の生化学パラメタリゼーションを始めた。実験林分は森林総合研究所構内にある平均樹高4.24 m、平均胸高直径6.49 cm、林分密度2778本/haの約10年生ヒノキ林である。2004年5月に、1本おきに間伐を行い、10×9 mの間伐区を設けた。無間伐の対照区と間伐区において、下層、中層および上層から枝を2本ずつ選び、3_-_5本の光センサーを設置し光量子密度の計測を行っている。また、光合成測定装置を用いて、個葉のCO2濃度?光合成速度を定期に測定し、生化学パラメータの最大RuBPカルボキシラーゼ速度(Vcmax)を求めた。光合成測定の後、葉をサンプリングし、葉内窒素量も分析した。無間伐区では樹冠下層の相対光強度(樹冠外に対して、以下同)が7%であったが、間伐区では相対光強度が36%まで増加した。樹冠上層における光条件は処理間で差が認められなかった。間伐によって、葉内窒素量の変化も見られなかった。6月における処理区間のVcmaxの差は下層のみ有意であった。一方、10月には、中間層でもその差は有意であった。葉内窒素量は、6、10月ともにVcmaxとの相関関係が認められた。しかし、回帰式の勾配については、間伐処理の影響は10月のみ認められた。これらの結果から、間伐後1年目に認められた光合成能力の増加は、生化学的順化に起因するのではなく、主に生理的順化によるものと考えられる。
  • 梁 乃申, 藤沼 康実, 井上 元
    セッションID: G105
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    森林炭素循環に関する最も重要なプロセス、すなわち光合成を明解するため、24チャンネル自動開閉チャンバー式光合成自動測定システムを開発した。従来用いられている光合成測定システムと比較して、本システムは枝に設置するチャンバーが常時開いていることから葉に影響を与えず、風雨に関係なく枝レベルの光合成・呼吸の自動連続測定が可能であるなどの特徴がある。苫小牧のカラマツ林に、樹木別、樹冠高度別など多地点にチャンバーを設置し、2003年8月上旬から枝レベルの光合成・呼吸速度の自動連続測定を開始した。24個あるチャンバーのうち測定中のチャンバー(1個)に対しては中の空気を循環させながらCO2アナライザへ送り、測定していないチャンバーに対しては外気を通過されてチャンバー内の環境を外の環境に近づける。各チャンバーの測定時間は150秒に設定し、24個のチャンバーの測定周期は1時間である。夏における林冠部の最大光合成速度は4.5 ± 1.2 µmol m-2 s-1であり、量子収率は0.021であった。または光強度が強いほど光合成速度が高く、光合成速度の日中低下という現象は見られなかった。この結果は微気象学的によるCO2フラックスの観測結果と一致しており、開発したチャンバーは樹木の生理に影響を与えていないことが示唆された。一方、夜間における葉の呼吸速度は0.6 ± 0.4 µmol m-2 s-1であり、呼吸は葉温と指数関係を示し、温度反応係数QCO10 は7.5であった。また、本研究によって得られる高精度・高分解能の光合成データにより、生態系炭素循環モデルの推定精度向上が期待できる。
  • 及川 真平, 彦坂 幸毅, 広瀬 忠樹
    セッションID: G106
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    葉寿命はひとつの種のなかでも環境条件によって大きく変わる。葉は炭素を稼ぐ器官であるから、葉寿命は、植物への葉の貢献(i.e. 生涯に稼ぐ炭素の量)が最大になるように決定されるという仮説が提案されている。一般に葉の光合成能力は展開終了時に高く、時間と共に低下する。植物への葉の貢献は、夜間の呼吸による炭素消費量が日中の光合成による炭素獲得量を上回るまで増加する。上の仮説は、葉は日炭素獲得が0になったときに枯れることを意味する。葉の炭素獲得量の低下は、主に受光量の低下によることが示されている。しかし、窒素(N)の供給量が少ない場合、受光量が多くても葉N含量は低下することがある。これは、新葉生産のN要求を満たすために古葉からのN回収が促進されることによる。この場合、正の炭素獲得が可能でも葉は枯れるかもしれず、上の仮説に合致しない。
    本研究の目的は、以下の疑問に答えることである。(1)葉は日炭素獲得量が0になると枯れるのか?(2)炭素獲得量の低下を引き起こす要因として、光とNのどちらが重要なのか? 単純なモデル系として2つの栄養条件(富栄養; HN, 貧栄養; LN)で生育させた草本群落を用いた。個葉の炭素獲得量は、群落光合成モデルを用いて群落内の光環境と葉N含量から推定した。
    葉の受光量は、群落の葉面積増加に伴い低下した。枯死直前の葉の受光量はHNよりもLNで高かった。葉N含量(Narea)は時間と共に低下した。受光量とNareaの低下により、日炭素獲得量は低下した。枯死直前の日炭素獲得量はHNでは0に近く、LNでは正の値を示していた。感度分析により、日炭素獲得量の低下を引き起こした主な要因は、HNでは受光量の低下、LNではNareaの低下であることが分かった。これらの結果は、葉寿命を決定するメカニズムが栄養条件によって異なることを示唆する。
  • 菊沢 喜八郎
    セッションID: G107
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    葉寿命は植物の葉が出現してから脱落するまでの期間と定義できる。葉はこの期間中つねに光合成を行っているわけではない。たとえば、冷温帯の常緑性低木の場合、冬期間は雪に埋もれ光合成は行っていない。葉の一生涯にわたる光合成生産量を計算しようとするときに、不活動期間を含めることは適切ではない。そこで、葉寿命から不活動の期間を差し引いた長さを、葉が実際に機能している長さと考えて、機能的葉寿命と定義する。不適期間を耐え抜くための葉のコストや耐凍性、耐乾燥性などを議論する場合は葉寿命を、葉の生涯生産量を議論する場合は機能的葉寿命を用いるのがよいだろう。機能的葉寿命の概念を適用すると、2,3の興味深い知見が得られる。例えば、森林の葉現存量と葉寿命との関係に機能的葉寿命の概念を導入すると、熱帯林でも温帯林でも、単位時間当たりの葉生産速度には大きな違いは見いだせない。
  • 李 吉宰, 李 弼宰, 李 成功, 横山 智子, 武久 及川
    セッションID: G108
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    We developed an ecophysiological model, Sim-CYCLE Fine (Simulation model of Carbon cYCle in Land Ecosystems for Fine resolution) by modifying Sim-CYCLE developed by Ito and Oikawa (2002). It is able to simulate not an only single-plant community but also a multi-plant community such as a community composed of coexisting region of C3 and C4 plants which are different functional types. From the validation, the outputs of hourly and daily CO2 / H2O fluxes and monthly biomass/ LAI showed a satisfactory accordance (both r2 values near 0.9) with eddy covariance measurement data (Li et al. 2003) and directly harvested data (Yokoyama and Oikawa, 2000), where the ecophysiological parameters (PCMAX, SLA, and PGC) with seasonal changes of each functional type (C3/C4 plants) of dominant species, have a significant influence on CO2 / H2O fluxes and plant growth, especially during early growing period and senescence period. * PCMAX: the specific maximum photosynthetic rate* SLA: the specific leaf area * PGC : the ground coverage of C3/C4 plants
  • 梅木 清, 清野 達之
    セッションID: G109
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    樹木と同様の構造と機能を持ち、樹木の挙動を再現するコンピュータシミュレーションモデル(Functional-structural tree model)を構築するためには、樹木の基本構成要素であるシュートの発生・成長・枯死が正確に記述でききていなければならない。しかし、シュートの生産・成長に比較して、シュートの枯死に関しては、観察例が少なく、モデル化も進んでいない。演者らは北海道の林縁・林内に自生するシラカンバ稚樹を材料にシュート枯死のパターンを観察し、モデル化した。シラカンバ稚樹25 個体(樹高98-292 cm)を選び、一次枝先端での光強度と一次枝の3次元座標を測定した。また、成長期間終了後に地上部を研究室に持ち帰り、シュート(1年間の伸長分)ごとに芽の有無を観察した。シュートが芽を持たない確率をロジスティック回帰によって解析した結果、この確率は光強度、シュートの齢、シュートの高さなどと有意な関係を持っていることが分かった。また、3年生シュート集団(3年生シュート+子シュート+孫シュート)の観察された枯死確率は、個々のシュートが独立に芽を持たなくなると仮定したときに生じる3年生のシュート集団の枯死確率より高く、互いに連結したシュート群が一斉に枯死することが分かった。また、ロジスティック回帰による解析により、3年生のシュート集団の枯死確率には一次枝レベルの光強度だけでなく個体全体の光強度も影響を与えていることが分かった。
  • 梅津 裕里, 増沢 武弘
    セッションID: G110
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    一般にマメ科植物は根粒菌と共生していることが知られている。根粒菌は空気中の窒素を固定し、宿主に窒素を供給する。そのため、根粒菌と共生することは、特に貧栄養な高山帯の土壌環境において窒素栄養面に有効であると考えられる。また、マメ科植物の固定した窒素は周囲の土壌にも影響を与えることが知られている。しかし、これまでに高山帯におけるマメ科植物の土壌への影響についての報告は少ない。そこで本研究は本州中部以北の高山帯で見られるオヤマノエンドウ(Oxytropis japonica Maxim.)を研究材料とし、マメ科植物による土壌環境への影響について考察することを目的とした。
     調査は八ヶ岳硫黄岳から横岳にかけての西側斜面(標高2760m)で行った。オヤマノエンドウは砂礫地から草地にかけて幅広く分布しており、生育地に対応して形態を変化させていた。土壌窒素含有率はガスクロマトグラフィーを用いて測定を行なった。その結果、オヤマノエンドウのパッチが大きくなるほど、その下部の土壌窒素含有率が高くなることが明らかになった。また、砂礫地に生育するウルップソウやコマクサの周囲の土壌窒素含有率は植物体からの距離と関係なくほぼ一定であった。一方、オヤマノエンドウの個体から0-5cmの距離の土壌は20-25cmの距離の土壌と比較して約33%高かった。オヤマノエンドウが生育する土壌は生育していない土壌よりも窒素含有率が高くなる傾向が認められた。
    オヤマノエンドウは砂礫地と草地の境界に多く分布している。砂礫地にリターを落とし土壌を富栄養化すると同時に、表層の砂礫の移動を阻止することによって土壌の発達を促し、草地の植物が砂礫地に侵出するのを促進していることが推測された。
  • 高橋 さやか, 野渕 正, 岡田 直紀
    セッションID: G111
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     広葉樹には、年輪形成の初期に径の大きな道管をつくりそれ以後小径の道管をつくる環孔材樹種と、比較的小径の道管が年輪内に一様に分布する散孔材樹種とがある。年輪内における道管径の大きさと分布のこのような違いは、水輸送の効率の違いとして、樹種の成長様式と密接に結びついていると考えられる。そこで本研究では、温帯の落葉広葉樹9樹種(環孔材4樹種と散孔材5樹種)について道管形成と開葉の時期を調べ、道管の配列とフェノロジーの関係について検討した。
     京都大学附属芦生研究林で各樹種の幹の成長錐コアと枝を開葉前から2週間ごとに採取した。これらの試料の顕微鏡観察により当年の最初に形成された道管(first vessel)の木化完了時期を調べ、開葉時期との関係を環孔材樹種と散孔材樹種とで比較した。
     その結果、環孔材樹種では開葉とほぼ同時期に幹および枝のfirst vesselの木化が完了した。一方、散孔材樹種では開葉後まもなくまず枝のfirst vesselの木化が完了し、次に開葉後1ヶ月以上してから幹のfirst vesselの木化が完了した。また、環孔材樹種より散孔材樹種の方が全体的に開葉時期は早かった。
     以上の結果から、散孔材樹種では開葉後に枝から幹へ徐々に道管形成を行うのに対して、環孔材樹種では散孔材樹種に遅れて開葉するが、それと同時に散孔材樹種より大きな道管を形成することで、より多くの水輸送を可能とし、その後の成長を有利に進めることができると考えられる。
  • 酒井 敦, 和田 恵次, 高相 徳志郎, 安田 惠子, 三村 徹郎
    セッションID: G112
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    マングローブ林では、カニの存在がマングローブの生育に影響することが、豪州や米国での野外実験から示唆されている。本研究では、マングローブ植物(オヒルギ、 Bruguiera gymnorhiza )とカニ(オキナワハクセンシオマネキ、 Uca perplexa )を長期に亘り実験室内で共存させる系を開発し、カニの存在が土壌の性質やマングローブ植物の成長に及ぼす影響を検討した。高さ約15 cmまで育てたオヒルギ胎生種子を、園芸用の培養土あるいは和歌山県白浜の干潟にて採取した砂泥の入ったプラスチックボックス(容量約75 l)に6本づつ植え、20 - 25℃、14時間明期(30μmol m -2 s -1 )/10時間暗期で培養した。半数の培養ボックスにはカニを15 - 30個体入れ、残りのボックスにはカニを入れずに培養を続け、植物の成長を経時的に測定した。培養土と砂泥いずれを用いた場合にも、マングローブ植物とカニを10ヶ月の長期に亘り共存させながら実験室内で維持することができた。培養土を用いた場合、植物の成長はカニの有無に影響を受けなかったが、砂泥を用いた場合には、培養土の場合に比べ植物の成長が抑制され、特にカニが共存していない場合には、実験期間内に植物体の半数が枯死してしまった。土壌の空隙率や通気性の目安として透水性を測定・比較したところ、培養土は透水性が高いが砂泥は透水性が低いこと、砂泥でもカニが存在する場合には局所的に透水性の高い部分があること、などが分かった。このことから、培養土では元々通気性が高いためカニの有無によって植物の生存率に違いが出なかったのに対し、通気性が低い砂泥ではカニの巣穴により通気性が改善され、植物の生存率に影響を及ぼしたのではないか、と考えられた。
  • 巌佐 庸 , 入江 貴博, 箱山 洋
    セッションID: H101
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     多くの動物は、未成熟の生育段階では異なる生息地に育った個体がともに集まって生活をするにも関わらず、繁殖期に入ると、産まれた生息地にもどる。これはホーミングと呼ばれる。サケなどの母川回帰は有名だが、鳥類、カエルなど多くの移動能力のある動物に幅広く共通した現象である。本講演では、ホーミング現象が進化する条件を、時間空間的に生息地の質が変動する状況に対する適応としてとらえる。 仮定は:繁殖のための生息地がn個ある。それぞれにおける繁殖成功度はw(i,t)で、場所による違いと年度による変動がある。また各個体は子供のときに臭いなどの手がかりを記憶しておき繁殖期になって自らの出生地である繁殖地を探してもどって繁殖することと、それをせずにランダムに選んだ繁殖地で行うことも可能である。 時空間変動w(i,t)の仮定の仕方によってホーミングが進化する条件を明らかにする。一般に、繁殖地によって子の生存率(つまり親の繁殖成功)が異なり、それが親の定着時には明らかでない状況では、ホーミング率は必ず最大値に進化することが証明できる。この結果は、繁殖成功に密度依存性が働いても成り立つ。現実にホーミングが不完全な動物もいる理由は:[1] 生理機構の限界による制約もしくはホーミングにかかるコスト、 [2] すべての繁殖地が完全に埋まっているためにいずれの生息地での成功度も同一になっている、 [3] 環境が時間変動する、などが考えられる。[3]においては、適応度には時間変動成分と場所依存性とが独立でなく、相互作用が強いことが必要である。 以上の結果から、プランクトンや植物の種子のように受動的に分散する幼生をのぞくと、自ら繁殖地を選択できる動物においては、ホーミング行動は非常に一般的な現象と予想される。
  • 田中 嘉成
    セッションID: H102
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    従来,生活史の進化と種間相互作用は別々に研究され,両者の相互作用はあまり研究されてこなかった.しかし,生活史形質の進化は「食うものと食われるものの関係」や競争関係に影響を与え,逆に,これらの種間相互作用によって規定される個体群の人口学的特性が生活史形質の進化を左右すると考えられる.本研究では,ロトカ=ヴォルテラ系において,ロジスティック的な密度依存的増殖を示す被食者の生活史形質の進化と,個体数変動の分岐との相互作用を数理モデルと数値シミュレーションによって研究した.被食者は,密度非依存的な場合に繁殖能力を高める形質(r戦略的形質),密度依存的な場合に繁殖能力を高める形質(K戦略的形質),捕食から逃れる能力を高める形質(対捕食者形質)の3群の量的形質を持つとする.また,個体数変動は種間相互作用だけによってもたらされ,環境変動などは考えないとする.もし,種間相互作用がなければ,被食者個体群は常に環境収容力にあり,r戦略的な形質は進化しない.種間相互作用があっても,K戦略的な形質と対捕食者形質が高い相関を示し,捕食効率が十分に低下すれば同様である.しかし,K戦略的な形質と対捕食者形質に進化的なトレードオフが存在すると,捕食効率の低下が,種内競争能力への選択圧によって妨げられ,個体数の振動が始まる.この状況は,r戦略的な形質の進化を促す.r戦略的な形質とK戦略的な形質の進化は,対捕食者形質とK戦略的形質もしくはr戦略的形質との進化的な相関関係(トレードオフ)によって左右される.ただし,パラメータが連続的に変化しても,2種個体群の非線形な相互作用によって生じる変動の分岐に対応して,両形質の進化も不連続に二元的な分岐を示す.このことは,対捕食者形質との共進化によって,生活史進化が密度非依存的な適応度を最大化する方向と,密度依存的な適応度を最大化する方向のどちらかを選択することを示唆し,古典的なr-K選択説の理論的根拠を与える.
  • 山内 淳, 山村 則男
    セッションID: H103
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     Lotka-Volterra型の1捕食者-2被食者系では、パラメータによって定常解や振動解が現れることが知られている。この系についてはまた、様々な要因がその挙動に与える影響についても研究がなされてきた。例えば、捕食者の摂餌行動について最適化を考慮すると共存が促進されることが示されている。一方、捕食者の摂餌戦略は餌の質の影響を受けるため、餌(被食者)の質と個体群動態の関連に注目した研究もなされている。ただし、それらの研究の多くでは餌の質を固定された値として扱っているが、実際には被食者の質(捕食者にとっての利用しやすさ)は捕食を回避するために進化的に変化するであろう。そこで本研究では、被食者の防衛の進化と捕食者の摂餌行動の最適化が1捕食者-2被食者系の特性にどのような影響を及ぼすのかを調べた。本研究では系の安定性や持続性に注目し、捕食者の最適ダイエット選択を考えて計算機シミュレーションによる解析を行った。ただし2種の被食者については、内的自然増加率や環境収容力などは等しく、補食者による発見効率のみが違うと仮定した。 まず、システムに被食者の対捕食者防衛の進化を導入した場合、より捕食者に発見されやすい被食者の方が防衛をより強めることが示された。それと同時に共存が促進され個体数の振動も抑制された。次に対捕食者防衛の進化に加えて捕食者の最適ダイエット選択を導入した場合には、捕食者の餌の切り替えによる短周期の微細な振動が残るものの、巨視的な振動についてはよりいっそう抑制される傾向があった。また最適ダイエット選択の導入は2種の被食者の個体数を均一化させる傾向があるものの、共存自体の促進については対捕食者防衛の進化のみの導入で見られた効果をより高めるほどの効果はなかった。さらに、対捕食者防衛の進化の速度を変えて同様な解析を行ったところ、進化速度が大きいほど共存および系の安定化がともに促進されることが分かった。
  • 満江 綾子, 高須 夫悟, 重定 南奈子
    セッションID: H104
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    生物の種間相互作用の一つに捕食・寄生関係がある。宿主の体表や体内に卵を産み付け、孵化した幼虫は宿主を食べて栄養分とする寄生者のことを捕食寄生者という。本研究は、捕食・寄生関係の数理モデルであるNicholson-Baileyモデルを拡張し、複数寄生者と宿主の個体群動態を解析する。寄生系の古典ダイナミクスとしてNicholson-Baileyモデルを取り上げる。このモデルは、幼虫などを宿主として見付け産卵する寄生者の生活史を表す離散時間モデルである。しかし、このモデルは常に振動しながら発散する性質を持ち、また、寄生がない状態ではホスト集団が指数的に発散するという欠点がある。そこで本研究では、以下の条件を組み込む事によって、捕食者-被食者の個体数変動の安定性がどのような影響を受けるかを考察する。捕食者-被食者の動態を考える上で、被食者の個体数が増加したときに捕食者がどのような反応を示すかといったfunctional responseとして、捕食者が被食者1匹を捕獲した後、その処理をするために費やす時間handling-timeを組み込み、パラメータの進化が個体群の安定性に与える影響について解析する。古典的なモデルでは寄生者集団の探索効率は全て同じであると考えている。しかし、実際の系では個体間の性質の違いなどの集団内変異が存在すると思われる。本研究では、同一宿主に対し複数寄生者が存在する場合について、探索効率やhandling-timeなど個体群動態のパラメータの進化が個体群動態の安定性・共存条件に及ぼす影響を解析する。
  • 中丸 麻由子, 巌佐 庸
    セッションID: H105
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    格子モデルなど空間構造のある集団では隣接個体との相互作用をしやすいために同じ戦略でかたまる傾向がある。そのためグループセレクションや血縁淘汰が生じやすくなり、血縁関係のない場合でも利他行動は進化しやすくなることが分かっている。一方、相手の適応度を下げるために自らの適応度も下げるスパイト行動の進化も空間構造によって促進されることが分かっている。この逆説を調べるため、非協力者への罰行動(スパイト行動と類似)と協力行動の共進化に関する研究を例に、格子モデル上での得点依存生存率モデルと得点依存増殖率モデルの2つを比較した。得点依存増殖率モデルでは相互作用による利得を増殖率に反映させると仮定している。このモデルの場合、協力による利益が大きく、罰の影響(罰金)が大きいと協力が進化するという結果になった。一方、相互作用による利得を生存率に反映させるモデルである得点依存生存率モデルでは、罰金が大きいと協力は進化するが、協力による利益にはよらない結果となった。生存率や増殖率は適応度に含まれているためこの2つの違いが格子上での進化動態に異なった影響を及ぼすとは考えられていなかったが、本研究では適応度の定義によって進化動態が大きく異なる事を示した。
  • 上原 隆司, 横溝 裕行, 巌佐 庸
    セッションID: H106
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     動物の意志決定に用いられる情報には誤りが含まれる。例えば、資源を巡って争う相手の闘争能力を相手の体サイズや角などから推測したり、配偶者選択において相手の装飾などから配偶者としての質を推測したりする際に、動物は相手の体サイズや装飾品を的確に査定できるだろうか?相手の持つ特徴をもとに能力や質を推測するときには、個体によってこの推測が正しいものでありやすかったり、そうでなかったりという、推測能力の個体差もあると考えられる。動物が得た情報が不正確であるときには、そうでない場合と比べて最適な行動は変わるだろうか?
     この点について調べるために、個体間で推測能力に差があるモデルを立て、動物達にベイズ推定によって最適な意志決定をさせる。推測能力の違いによって、最適な行動に違いはあるだろうか?まず、闘争において闘争能力とそれを推測する能力に個体差がある場合についてのモデルとその解析結果を紹介し、その次に配偶者選択において配偶者の質とそれを推測する能力に個体差がある場合について紹介する。このような場面で、推測能力の発達によって、どのように最適な行動が変わってゆくのかを見ていく。
  • 鈴木 清樹, 佐々木 顕
    セッションID: H107
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     作物の病害に対する適応度は、罹病性検定植物の発病率を基に、個体レベルでの抵抗性/感受性などの遺伝的形質によって大きく支配される。しかしながら、獲得抵抗性に見られるような世代内で一様ではない抵抗性の作用形式が、他の宿主個体間において誘導され得る場合は解釈が異なる。その一例として、エチレンを介したストレス応答に着目した。病害などのストレスを受けた植物は速やかに多量のエチレンを合成し、さらにそのエチレンは防御機構を発動するための植物ホルモンとして考えられている。エチレンはその単純な構造から、種々の生物の代謝によって土壌中に普遍的に存在しており、個体や生物種を超えた他感作用も引き起こすことが知られている。 本研究では、植物個体が病害感染のシグナルを近隣の発病個体から受け取り、感染前に耐病性が誘導されることにより枯死を免れることを想定した格子モデルを構築した。遺伝子型としてシグナル因子の生産型/非生産型(+,-)が存在し、生産型の感染個体(+I)から生成されたシグナル因子が、生産型/非生産型双方の未感染個体(+S,-S)を抵抗性個体(+R,-R)へと誘導する。ただし、シグナル生成のコストを考慮し、+Iの枯死率は-Iよりも高いものとする。また、枯死によって生じた空格子には、+S,-S,+R,-Rから各々の遺伝子型の+S,-Sが繁殖する。その結果、空間構造を考慮した格子モデルにおいて、病害警報シグナル生産型はクラスター構造を成長させることで空間内を優先化した。従って、枯死率の高い遺伝形質であっても、他個体の抵抗性を誘導する利他的戦略を採ることで集団に侵入することができる。
  • 杵崎 のり子, 川崎 廣吉, 高須 夫悟, 重定 南奈子
    セッションID: H108
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     近年の人為的環境撹乱により生物の生息域が分断化され生物にとって好ましくない環境が増えるなど,生物の存続に大きな影響が出ている.そのため本研究では環境の不均質が侵入生物の分布拡大に与える影響について数理モデルを用いて調べ,保全生物学的観点から考察をおこなっていく. 今回,不均質な環境の中でも特に周期的に変化している環境(周期的環境とよぶ)とランダムに変化している環境(非周期的環境とよぶ)において1次元の一般Fisherモデルを用いて数値計算することにより,環境変動が侵入生物の伝播速度や分布拡大パターンに及ぼす影響を調べた. 周期的環境としては,内的自然増加率や拡散係数がsin関数的に変化する環境およびパッチ状環境(侵入生物にとって好適な環境と不適な環境が交互に周期的にあらわれる環境)を考え,振幅や空間周期を変化させることによって伝播速度に与える影響を調べた.その結果,内的自然増加率の振幅を増加させることによって伝播速度は速くなるが,拡散係数に関しては振幅を増加させることによって伝播速度が減少することや,内的自然増加率や拡散係数の空間周期を増加させることによって伝播速度が増加することなどが分かった.また,sin状環境においてもパッチ状環境についても同様の結果が得られた. 非周期的環境としては,sin状環境の場合,その振幅や空間周期をランダムに変化させて,ランダム度合いが伝播速度に及ぼす影響を数値計算によって調べた.その結果,内的自然増加率に関してはランダム度を大きくすることによって伝播速度が速くなるのに対して,拡散係数についてはランダム度を変化させても伝播速度にはほとんど影響がないこと,また,内的自然増加率と拡散係数との変化の位相が逆になっている時伝播速度が速くなることなどが分かった.
  • 甲山 隆司
    セッションID: H109
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    競争関係にある固着性生物の安定共存は、水平空間を平均場近似した一般的な競争方程式ではうまく説明できない現象である。空間ベースで資源が制約される陸上植物の種間競争を考える場合、種間競争係数は自然には1となり、共存条件を満たさない。ここでは、空間の平均場近似を保ったまま、植物個体の生育にともなうサイズ変化を、もっとも単純な2サイズクラスによって表現するサイズ構造を取り込むことによって、種間競争係数を1としたまま、2種間の安定共存がもたらされることを示す。このモデルでは、種間・種内を問わず、個体間の相互作用において上層個体は下層個体の影響を受けず(一方向競争)、上層個体のほうが下層個体より資源要求量が大きい(サイズ非対称競争)ことを仮定する。共存条件は、デモグラフィックな素過程、すなわち繁殖・サイズ成長・死亡の密度依存性の有無との関係で整理できる。死亡が密度依存であるとき、かならず共存解が存在可能である。死亡が密度非依存であるときには、繁殖と成長がともに密度依存で、かつ資源要求量のサイズ非対称性でなければ共存解は存在しない。サイズによるサイズクラス数の増加に伴って、安定共存する種数が増加する傾向も指摘する。今回の結果は、シミュレーションに基づく樹木種間の共存機構に関する森林構造仮説(Kohyama 1993)を裏付けた。さらに、同仮説が、可能な共存機構の一端 (すなわち、繁殖と成長だけが密度依存で、サイズ非対称性がある場合) しか扱っていないことも明らかになった。
  • 岩田 繁英, 今  隆助, 竹内 康博
    セッションID: H110
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    熱帯雨林で多様な種が共存しているのは一般によく知られている.しかし共存の要因は明確でない.本研究では多種の共存の要因として空き地と栄養に注目し,それらの影響を調べる.一般に,攪乱による植物の除去は個体数の減少のみならず,幼生の定着場所(空き地)の提供という側面も有す.そして,植物の幼生個体の生産率は土壌中の栄養に依存している.空き地と栄養の存在は植物の繁殖にとって必要不可欠な要素と言える.そこで,本研究では空き地と栄養が種共存に与える定性的影響を調べるために数理モデルを用いる.我々はChesson and Warner(1981)により提案されたロッタリーモデルを基本とした新たなモデルを提案する.基本ロッタリーモデルでは,繁殖率と死亡率を変動させた場合に多種共存が促され,変動させない場合では死亡率と繁殖率の割合が同じという意味で生理的特徴がよく似た生物のみが共存できるという結果が知られている.この繁殖率と死亡率を変動させない場合での結果は,多種共存はほとんど起こりえないことを意味している.更に,基本ロッタリーモデルでは栄養は十分存在すると仮定しているため,植物は常に幼生を生産でき,攪乱によって生成された空き地は必ずいずれかの種の幼生によって占有されると仮定されている. そこで,我々はChesson and Warner(1981)の提案したロッタリーモデルを改良し,栄養,を考慮したロッタリーモデルを提案する.今回,提案するモデルの解析から空き地と栄養を考慮することによる共存可能性について発表する.
  • 入江 治行, 時田 恵一郎
    セッションID: H111
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    我々は,干潟に棲むベントスの群集形成の特徴とメカニズムを解明することを目的として,古典的に知られる種個体数関係(Species abundance pattern: SAP)と種数面積関係(Species area relationships: SAR)の間に成り立つ関係を再考し,その理論を,観測データに適用してきた.観測結果は,SAPとSARはともにべき分布となることを示しているが,観測データからパラメータを決めたSAPから理論的に導いたSARにおけるべき指数の値は,観測データから求まる指数の値とよく一致することが示されている[3,4,5,6].生物群集の種数面積関係を種個体数分布から理論的に導出している研究では,Preston[1]やMay[2]の研究がある。本研究では,それらとは逆に種数面積関係から種個体数分布を求める一般的方法を提案する.特に,SARがべき,比例,対数といった関数で与えられる場合に,べきや対数正規分布に従うSAPのパラメータに課される条件などについて報告する.[1] Preston, F.W., Ecology, Vol.43, p.410 (1962).[2] May, R.M., in Ecology and Evolution of Communities, ed. Cody, M.L. and Diamond, J.M. (Belknap, Cambridge, 1975), pp.81-120.[3] 入江治行・川上佐知・羽原浩史,ある干潟生態系の個体数・ランク分布,日本物理学会第58回年次大会,29aWE-11(2003.3)[4] 入江治行・時田恵一郎,生態系の種数面積関係と個体数ランク分布,日本物理学会2004年秋季大会 ,12aTC-3(2004.9)[5] 入江治行・時田恵一郎,ベントスの種数時間面積関係,日本数理生物学会2004年年会(2004.9)[6] 入江治行・時田恵一郎,ベントスの個体数分布のデータ解析と数理モデル,情報処理学会 数理モデル化と問題解決研究会 「複雑系の科学とその応用」(2004.10).
  • Toshiyuki Namba, Akari Shikata, Tomoko Harada
    セッションID: A201
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    Predators affect prey not only by directly killing them but also by modifying the behavior of prey individuals. Since the anti-predator behavior reduces the rate of encounters between predators and prey, the predator functional response declines with predator density. On the other hand, consumers that spend long time in avoiding predation risks have to sacrifice feeding efficiency and the consumer functional response also depends on predator density. We study indirect effects of these interaction modifications on stability of tritrophic food chains.
  • Kei Tokita
    セッションID: A202
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    If we investigate the diversity of species and the abundance of each, we can observe universal patterns in a broad range of ecosystems. There has been debate on the mechanism underlying those relative species abundance patterns (SAP) although it will affect vast areas of nature conservation. Various models on SAP have been applied to ecosystem communities where species compete for a niche on a single trophic level [1], but these models have left more complex systems a mystery. Such systems occur on multiple trophic levels and include various types of interspecies interactions, such as prey-predator relationships, mutualism, competition, and detritus food chains. I present an analytic theory of SAP of a random replicator dynamics [2] with ecologically diverse interspecies interactions, which is a general extension of a classical theory on Lotka-Volterra equations [3] to replicator dynamics. It is found that, depending on a single parameter related to homeostasis of population dynamics, the resulting abundance distribution gives the three most widely applied models: the lognormal distribution, Fisher's logseries and MacArthur's broken stick model (exponential dist).[1] Tokeshi, M. (1999) Species Coexistence, Blackwell. [2] Chawanya, T. and Tokita. K. (2002) J. Phys. Soc. Jpn., Vol.71, pp.429-431. [3] Kerner, E.H. (1957) Bull. Math. Biophys., Vol.21, pp.217-255.
  • Seiji Arakaki, Mutsunori Tokeshi
    セッションID: A203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    The structure of a tidepool fish assemblage was investigated on a temperate-subtropical rocky shore of Amakusa, southwestern Japan. The patterns of species occurrence were analysed on different spatio-temporal scales with > 4 years' data. This paper deals with the results from null model analysis on (1) seasonal changes of species richness, (2) species-area relationships and (3) species combinations to explore mechanisms and processes of community organization. Clear seasonality was revealed in the number of fish species which was further affected by tidepool size and tidal height. In the species-area relationship, the slope was well explained by the model that took into account both surface area and tidal height, but not the intercept. With respect to frequency of species combination among four common gobiid species, the single-species state was often observed while multi-species combinations were less frequent in the field than expected by chance.
  • Arndt Telschow, Peter Hammerstein, John H. Werren
    セッションID: A206
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    Wolbachia is a widespread group of intracellular bacteria commonly found in arthropods. In many insect species Wolbachia induce a cytoplasmic mating incompatibility (CI). If different Wolbachia infections occur in the same host species, often bidirectional CI is induced. Bidirectional CI acts as a postzygotic isolation mechanism if parapatric host populations are infected with different Wolbachia strains. Therefore it has been suggested that Wolbachia could promote speciation in their hosts. We investigated theoretically whether Wolbachia-induced bidirectional CI selects for premating isolation and therefore reinforces genetic divergence between parapatric host populations. To achieve this we combined models for Wolbachia dynamics with a well-studied reinforcement model. This new model allows us to compare the effect of bidirectional CI on the evolution of female mating preferences with the situation where postzygotic isolation is caused by recessive nuclear genetic incompatibilities (NI). Our main findings are: (1) bidirectional CI selects for premating isolation with a higher speed and for a wider parameter range than recessive NI; (2) bidirectional CI can stably persist up to migration rates that are two times higher than seen for recessive NI. The latter finding is important because the speed with which mutants at the preference locus spread increases exponentially with the migration rate. In summary, our results show that bidirectional CI selects for rapid premating isolation and so generally support the view that Wolbachia can promote speciation in their hosts.
  • Robert Schlicht, Yoh Iwasa
    セッションID: A207
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    Forest canopy gaps are important for tree regeneration and species diversity. This talk introduces a method to analyze the patterns of forest canopy gaps at different spatial scales.
    The method is applied to forest data and to the patterns of three stochastic lattice models for canopy gaps: [1] a "two state" model with canopy sites and gap sites; [2] a "three state" model with occupied sites, disturbed sites and empty sites, which was originally proposed for the spatial dynamics of mussel beds; and [3] a "propagating wave" model, which is a modified version of the model for wave regeneration in fir forests (Shimagare), without directionality of the wind.
    For all three models, the variance of the fraction of area covered by gaps decreases with the size of the area considered. We developed a method to quantify the deviation from a power law. The gap data from a neotropical forest (BCI; 50 ha plot) is consistent with the two state and three state models, but not with the propagating wave model, the latter showing a characteristic spatial scale.
  • Yuxiang Chen
    セッションID: A208
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    In this study, we estimated grazing effect on biomass and net primary production (NPP) in a Mongolian grassland ecosystem (Kherlen Bayaan-Ulaan) using a new simulation model. It integrated Sim-CYCLE model and a defoliation model to analysis the productivity of the grassland ecosystem and defoliation effects by grazing livestock. Simulated results showed that increased stocking rates decreased below-ground biomass and NPP, increased allocation ratio of NPP to below-ground part, and decreased root turnover rate. These predictions show a satisfactory agreement with a set of field data obtained at Kherlen Bayaan-Ulaan.
  • Hiroaki Ishii
    セッションID: A209
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    When trees are increasing in height, shoots are longer and needles are thicker in the upper part of the crown where there is more light than in the lower part of the crown where there is less light. Although light is considered as the primary factor affecting shoot and needle morphology, hydraulic limitation may affect morphological acclimation to light conditions in tall trees. Limitation on morphological and physiological acclimation was studied in the world's tallest tree species, Sequoia sempervirens. This species is known to reach heights of 100 m or more and shows great plasticity in shoot and needle morphology and physiology from upper to lower crown. We found that in 100-m-tall S. sempervirens trees, the ratio of shoot silhouette area to needle surface area (SSA/NSA) and chlorophyll content of shoots decreased, while needle thickness and shoot mass per area (SMA) increased with increasing height. However, morphological and physiological properties did not change in the top 20 m of the crown despite marked increase in light intensity. Physical limitations imposed by increasing height, such as hydraulic conductivity and turgor maintenance may limit morphological and physiological acclimation to light conditions and define maximum tree height in this species.
  • Yongqiang Zhang, Tang Yanhong
    セッションID: A210
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    The Tibetan Plateau, the highest plateau in the world, is mainly covered by alpine grasslands. The plentiful soil organic matter in the alpine can greatly contribute to terrestrial carbon budget. To examine the impact of climate changes on the carbon dynamics of grasslands in the plateau, we used the CENTURY model (ver. 4.5) to simulate carbon dynamics for about 100 alpine grassland sites from 1960 to 2001. After reaching the equilibrium carbon status of these ecosystems after 4000 years from start of the simulation, the observed meteorological data and grassland conditions were then used to drive the model to simulate carbon dynamics for the alpine grasslands. The aboveground carbon, belowground carbon and soil organic carbon corresponded well with the measured results in most of the observed sites. The result suggests that the current model and parameters are reasonable for estimating the carbon dynamics of these alpine grassland ecosystems. Using the climate scenarios in 2003-2100 by Canadian Climate Centre to drive the model we then examined the impacts of climate change and CO2 elevation on the carbon dynamics of these ecosystems. In most cases, the predicted climate changes increased net primary production and caused soil carbon to decrease overall in the plateau. Most of the resulted changes in plant production are less than 10% during the interested period. Moreover, the conditions combined climate change with elevated CO2 also increased the productivity and reduced the grassland carbon losses, but in a different magnitude. The study suggests the complicate effects of climate changes and CO2 elevation on the carbon dynamics of the highest plateau.
  • Wei WANG
    セッションID: A211
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    An investigation was carried out to estimate root respiration contribution to total soil respiration in a mixed C3 and C4 grassland in Japan. Root biomass showed linear relationships with total soil respiration. Further quantification of the relationship between the two in a regression equation yields a y-intercept value which estimates microbial respiration in the absence of root. We estimated that the contribution of root respiration to total soil respiration in the growing season ranged from 31% to 50%. Microbial biomass, soil organic carbon showed no significant correlation with soil respiration.
  • 高山 美保, 浅見 崇比呂
    セッションID: B201
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    軟体動物の全体で、生殖的隔離のメカニズムはほとんど未知の状態にある。配偶者選別(交尾前隔離)の機構については、先行研究は皆無に等しい。本研究は、カタツムリの近縁な2種を対象として、交配前隔離が種間で異なる性フェロモンの識別によるものか否かをテストする目的で行った。コハクオナジマイマイ(コハク)とオナジマイマイ(オナジ)では、野生集団で浸透交雑が生じている。実験条件下では、相手が選べる場合に、2割程度の種間交尾をのぞき、同種個体間で交尾する。したがって、不完全ではあるが交尾前隔離が進化している。この配偶者選択に空媒性フェロモンが寄与しているか否か、そして寄与している場合には、どのように寄与しているかを知るために、2者の一方を選ばせるオルファクトメータによる行動実験を行った。その結果、2種は共に、空媒性のフェロモンにより同種個体に誘引されることが明らかとなった。雑種F1のフェロモンは、2種を同等に誘引した。しかし、雑種自身は、2種のどちらにも、さらに雑種の他個体にも誘引されなかった。すなわち、2種のゲノムを備える雑種F1は、2種のフェロモン分子を分泌できる一方、フェロモン受容機能が異常になり、フェロモンを感知できなくなる雑種崩壊が生じることが明らかである。性的に成熟する以前の幼貝は、成貝に誘引されず、かつ成貝を誘引しなかった。したがって、本実験で検出した誘引効果は、集合フェロモンではなく、性フェロモンの機能によるものである。
  • 松村 正哉, 徳田 誠
    セッションID: B202
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     フタテンチビヨコバイCicadulina bipunctata (Melichar)は九州中部を北限として熱帯・亜熱帯地域に広く分布する半翅目昆虫で,イネ科雑草に生息する。本種の吸汁によりトウモロコシにワラビー萎縮症と呼ばれる生育抑制の被害が発生する。ワラビー萎縮症にかかると葉脈がこぶ状に隆起してゴール化し,新規の展開葉の成長が著しく抑制されるため,症状が激しい場合には収量が著しく低下する。この被害は,1980年代後半から2000年頃までは熊本県の一部で局地的に発生していたが,2001年頃より被害発生地域が急速に拡大傾向にある。今後,地球温暖化等により発生世代数が増加し発生時期が早期化した場合には,現在は飼料用トウモロコシの二期作目のみでみられる被害が,一期作目や食用コーンなどに拡大する可能性がある。また,本種はイネにも同様の被害をもたらすため,発生時期が早期化すれば今後イネで害虫化する可能性がある。そこで,本種の温度発育反応(16_から_34℃)と温度別の生活史パラメータを明らかにし,温暖化に伴う世代数増加予測を行った。その結果,発育零点(卵,幼虫)は14.0℃,有効積算温量(卵_から_産卵開始)は340.3日度であった。また,本種は34℃においても発育遅延が見られず,高温耐性は極めて強いと考えられた。さらに,本種はヨコバイ類としては比較的長命で,雌の平均成虫寿命は25℃で50.8日であった。内的自然増加率は31℃で最大であり,純増殖率は25℃で最大であった。温暖化に伴う予想増加世代数は,年平均気温が2℃上昇すると仮定した場合1.29世代(熊本:15℃)_から_1.43世代(宮崎:17℃)であった。以上の結果から,長命で高温適応性の高い本種は,今後温暖化傾向が続く場合には発生時期が早期化し発生密度が高くなる可能性があり,イネで害虫化することが懸念される。
  • 立川 賢一, 金子 泰通, 涌坪 敏明
    セッションID: B203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     日本におけるウナギ(Anguilla japonica)の漁獲量は年々減少し続けており、毎年の放流による資源添加があるにもかかわらず、過去30年間で最大漁獲量の約30%にまで減少している。ウナギ資源の主な減少原因として、海洋環境の変動による幼生輸送の失敗、稚魚の乱獲と生活環境の破壊などが指摘されている。とりわけ、汽水域を含む陸水域はウナギが成熟するまでの重要な生育場所であるが、ダム、河口堰、改修、護岸などの人工構造物の建設工事等により生活環境が破壊されたのではないかと議論されている。 青森県小川原湖では、1964年の青森県水産試験場の調査によりシラスウナギの自然加入が確認されており、ウナギが自然分布する北限の水域と言える。年間漁獲量は、1960年代では23.5±7.8トンであったが、1977年から急に91トンの漁獲量が記録された。その後の25年間では急激な変動はなく、平均79.4±8.8トンであった。漁獲統計上は、ウナギの漁獲量が高くて安定した湖沼となっている。 本報告では、日本の主な湖沼におけるウナギの漁獲統計を解析し、漁獲量の減少率等を求める。それらの特性値と湖沼の環境変化(自然度)との関係を調べる。ウナギの生態特性の内、特に成長過程を主な水域間で比較する。以上の結果をもとに、小川原湖のウナギ個体群の変動特性を考察し、日本におけるウナギ資源の回復問題に関する提言も試みる。
  • 岸本 圭子, 市岡 孝朗, 加藤 真, 酒井 章子, 百瀬 邦泰, 永光 輝義, 山根 正気, Hamid Abang Abdul, 井上 ...
    セッションID: B204
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    東南アジア島嶼部では、一斉開花(群集規模で生じる多数の樹種の開花期の同調)が数年間隔で不規則に生じる。本研究の調査地、ボルネオ島ランビル国立公園(以下、ランビル)でも、フタバガキ科を初めとした多くの樹種が断続的に開花するのが観察された。開花期には花粉や花弁などを利用する様々な昆虫を花上で確認することができる。このように不規則で予測性の低い頻度で生じる資源量の変化に対して、訪花性の昆虫がどのように反応するのかは興味深い問題である。フタバガキ科のなかでも種数が多いサラノキ属(Shorea)は多くの樹種が一斉開花に同調する。これまでの研究から、マレ−半島ではサラノキ属数種はアザミウマによって送粉されることがわかっている。ランビルにおける一斉開花期の訪花性昆虫調査によって、ランビルではハムシがそれらのサラノキ属数種に訪花することが明らかにされた。マレー半島のアザミウマでは発育期間が短かく、一斉開花に対応して急激に個体数を増やし、非開花期には他の植物の花に依存することが既に判明している。では、ランビルで観測された訪花性ハムシ類は、一斉開花のような急激な資源量の増加に対してどのように反応するのか?これを明らかにするために、演者らは長期間にわたっておこなわれた灯火採集によって集めたハムシを用い、訪花性ハムシを中心にハムシ科数種の長期的な個体数変動の把握を試みた。その結果、訪花性ハムシ数種では非開花期においても出現が確認され、さらに、そのうち数種が一斉開花に同調しない樹種の花上やサラノキ属の新葉上で観察された。これらにより、そうしたハムシは非一斉開花期においてはそれと無関係に咲く花や新葉などを利用し個体群を維持していると考えられた。
  • 江草 佐和子, 西田 隆義, 藤崎 憲治, 沢田 裕一
    セッションID: B205
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    植食性昆虫の中には花芽や新葉など利用期間や量が限られた資源を利用するものがいる。ヤナギルリハムシの場合、成虫は成熟葉の摂食が物理的に困難であるため、新葉を摂食している。野外では数種のヤナギを利用しているが、個体数の季節変動パターンはヤナギ種間で大きく異なる。これまでの研究により、個体数の季節変動は成虫の移動分散によって規定されることが示唆された。しかし、成熟葉を利用する幼虫のパフォーマンスはいずれのヤナギ種でも季節的にほぼ一定であったことから、これを説明することはできなかった。一方、各ヤナギ種の新葉生産量と成虫の産卵活性の季節変化が一致していたことから、個体数変動を規定している成虫の移動分散は成虫自身の餌資源である新葉の生産量に応じて起こると考えられた。<BR>そこで新葉量が成虫の移動・定着を規定することを検証するために、2つの異なる空間スケールにおいて実験を行った。1つの実験ではハムシの生息場所全体における大空間スケールでの移動・定着過程を両面スクリーントラップにより測定し、これと各寄主株における新葉生産量の相関を解析した。もう1つの実験では、生息場所の一部という小空間スケールにおいて寄主植物の新葉量を直接操作することにより、飛来・定着するハムシ数を測定し、両者の関係を解析した。その結果、成虫は新葉量に応じて移動分散、寄主選択を行うことが両実験において実証され、ヤナギ種に特異的であった個体数の季節変動パターンはヤナギ種間における新葉の生産フェノロジーの違いに起因することが判明した。本種の場合、成虫は逐次産卵を行うため、成虫の最適な採餌を実現することが適応度を向上させる上で重要な課題となるのかもしれない。
  • 佐藤 崇範
    セッションID: B206
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     近年,各地のサンゴ生息域において大規模白化やオニヒトデ・サンゴ食貝の大発生などの影響により,特にミドリイシ類の群体数・被度が低下している.このようなサンゴ群集の回復には,幼生の新規加入とその成長が重要な鍵になると考えられることから,石垣島と沖縄島において,ミドリイシ属の群体サイズと出現頻度を比較し,両島でのサンゴ群集の現状を考察する.またそのような状況を引き起こしている要因についても検討する.
     現地調査は,2002年9月に石垣島の7海域と沖縄島の5海域で行った.各調査海域の外洋側(礁斜面上部)水深4_から_5m付近に等間隔で12個の方形枠(1m×1m)を設置し,枠内を撮影して得られた画像から底質の評価と出現サンゴ種の記載を行った.ミドリイシ属の群体に関しては,長径5cm以上の群体については画像から投影面積とその長径・短径を計測し,長径5cm以下の群体(稚サンゴ)については,同調査地点に別に配置した8個の方形枠(0.5m×0.5m)内で直接目視観察して,長径も計測した.
     調査時におけるサンゴ被度は,石垣島では14_から_57%であり,沖縄島では0.6_から_6.7%であった.石垣島では海域ごとに優占種が異なるもののミドリイシ属の割合は全体的に高く,長径10_から_15cm程の数年前に加入したと思われる群体も多くみられが,沖縄島ではキクメイシ科やハマサンゴ属が主要な出現種となり,ミドリイシ属はほとんどみられなかった.しかし,ミドリイシ属の稚サンゴ数は,石垣島では9.5_から_103.5群体/m2,沖縄島では4.0_から_20.0群体/m2と極端な差はみられず,幼生の供給量よりも新規加入群体の長期的な生存率が大きく異なっている状況が明らかとなった.
  • 六車 秀士, 野田 隆史, 西田 睦, 町田 龍二
    セッションID: B207
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    生息パッチの特性(サイズや孤立度)は、局所個体群の遺伝的多様性に影響すると考えられるが、各パッチ特性の相対的な重要性はメタ個体群間で異なるかもしれない。なぜなら、メタ個体群が成立する景観に依存して生息パッチの特性自体が変化するため、各特性が局所個体群の遺伝的多様性に及ぼす影響力も変化すると考えられるためである。本研究では、生息パッチの特性が局所個体群の遺伝的多様性に及ぼす影響はメタ個体群間でどのように異なるか?について検証した。
    景観全体の調査が容易な生物としてシオダマリミジンコTigriopus japonicusが挙げられる。本種は飛沫帯の露出岩上に点在するタイドプールに生息し、降雨と波浪によってタイドプール間を移動する。本種のメタ個体群は海岸内の露出岩上のタイドプール(=局所個体群)の集合である。局所個体群の遺伝的多様性は、タイドプールの容積、孤立度およびその高さに影響されると予測できる。なぜなら、高さによって降雨に伴う集水量や波浪の強度は大きく変化するためである。
    生息地の空間構造がシオダマリミジンコの局所個体群の遺伝的多様性に及ぼす影響を明らかにするために、北海道南部の9つのメタ個体群からそれぞれ7_から_14個の局所個体群から40_から_43個体を抽出しmtDNAのND2遺伝子の部分配列を決定したのち、局所個体群の遺伝子多様度を算出した。また、測量により各タイドプールの「容積」、「高さ」および「孤立度」(対象のタイドプールが他のタイドプールから輸送される水量を考慮した指標であり、周囲の全タイドプールとの距離と容積の関数)を算出した。得られたデータをもとに統計解析を行い(1)空間構造特性と局所個体群の遺伝的多様性の関連性(2)その関連性におけるメタ個体群間の変異性について議論する。結果については現在解析中であるため本講演にて報告する。
  • 高田 まゆら, 宮下 直
    セッションID: B208
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     チビサラグモは主にスギ林床に生息し、リター上に造網するクモである。本研究は、個体群と局所という2つの階層レベルで生じているプロセスに注目し、チビサラグモの個体群密度の決定機構を明らかにすることを目的とした。まず、野外の15個体群を対象に、局所レベルでの個体数とその制限要因(造網に必要な足場の量、以下足場量)との関係性を調査した。その結果、多くの個体群で局所レベルにおける個体数と足場量との間に正の関係があったが、足場量が多い個体群ほど局所レベルでの足場量当りの個体数が多いことが明らかになった。このシステムでは、以下の2つのプロセスが密度決定に関与していると考えられた。1)足場量が多い個体群では、造網場所移動時の死亡率が低くなることで高密度になる、2)それが局所レベルでの足場をめぐる競争を強め、密度を低下させる。 これらの仮説を検証するため、まず広範囲での足場量を操作したエンクロージャー実験を行った。その結果、足場量が多いエンクロージャーほど、クモの死亡率が低くなることが示された。また以下の2つの野外実験から、足場量が多い個体群ほど、密度依存的な死亡が高くなることが示された。1つめの実験では自然個体群でクモ除去区を設け、除去区への移入率から移動頻度を推定したところ、足場量が多い個体群ほどクモの移動頻度が高いことがわかった。次に、足場量を等しくしたエンクロージャーでクモの移動頻度を操作する実験を行ったところ、高い移動頻度は死亡率を高めることがわかった。以上のことから、個体群レベルでの足場量増加→移動時の死亡率低下による個体群レベルでの高密度化→局所レベルでの高密度化による足場競争の強化→個体群レベルでの密度の低下、という2つの階層間で生じる一連のプロセスにより、個体群密度が決定されていることが示唆された。
  • 小林 慶子, 小池 文人
    セッションID: B209
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    里山の成立には、かつて営まれていた農業を中心とした人々の生活が大きく関わっており、その営みに合わせ固有の生態系が成立していたと言われる。近年では、過去の人の土地利用履歴が地形などの環境条件と共に現在の里山の植物相に影響を及ぼしていることが示されるようになった。そこで、本研究では、(1)種の出現を決める上で土地利用履歴と立地環境(地形要因)はどちらがどれくらい重要であるのか、(2)里山の木本種の出現パターンを決めている生態的な種特性は何かを検討し、人の利用が里山森林群集の動態にどの様に影響を持つのかを明らかにすることを目指す。 長野県埴科郡坂城町の岩井堂山(793m)を中心とした2km×2kmの地域を調査地とした。本地域は岩井堂山を中心とした3集落が利用してきた地域で、現在、山地では一部でマツタケ採取が行われ、平地では果樹園・水田などの農耕地利用が広がる。 まず、調査地を200mメッシュで100サイトに区切り、対象木本種(低木から高木まで43種)の、繁殖・非繁殖個体別の在・不在を記録し、繁殖・非繁殖個体別の樹種別空間分布パターンを把握した。また、過去(1910年)から現在(2003年)にかけての土地利用を地形図と空中写真から判読し、サイト毎に利用履歴を把握した。立地環境(標高・傾斜・日射量・集水面積等)はDEMのデータより算出した。更に、対象種の種特性は、繁殖開始サイズ、耐陰性、最大樹高をそれぞれ測定して特定した。 環境条件と空間分布パターンを比較したところ、調査地の森林群集構成種の分布は立地環境よりも過去の土地利用(特に1950年代以前の山地利用)に強く影響されていることが示された。
  • 菊池 亜希良, 島田 基世, 磯崎 由行, 中越 信和, 永田 智久, 坂村 晃, 山崎 亙
    セッションID: B210
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     都市の発達の傍らで,そのインフラとしてのダム,その水源地域としてのダム水源地域を考えた場合,いわゆる高度成長後の水源地域の景観は急速に変貌している.本発表では,広島県山県郡北広島町を中心とした土師ダム上流域を調査地として,現在の水源地域を対象とし流域景観の構造評価を試みる.そのために,主に生態水文学的な考えから,事例研究を発表する. ある流域の中で,水と土砂の動きが土砂最も激しい部分が河川なら,流域の大部分の地域はそれに付随して土砂と水を供給する装置として捉えることができる.その中で,河川は下流から川,沢,渓流,湧水という様に,連続して大きさと形態を変え,景観も下流から広大な沖積平野,中流域の段丘を伴う台地,山間の盆地,渓谷と各々変化している.この質の景観の変化は,私たちが日常良く知っているものである.このような認識に基づいて,「流域景観」の実態を考える場合,その基礎は恐らく水と土砂の動きが作り出した地形であり,その主体はその構造の中で伝統的に行われ現在に至るひとの生活ならびにそれが環境に働きかけた結果としての景観だろう. 本発表では,ダム湖上流の河川中流域を対象とし,流域景観をこれまで述べた考えの中で事例的に評価する.そのために,_(株)_北海道地図作成の10m格子標高モデルを用いて,水文地形的な地域区分を谷次数に基づいて行った.そして,この地域区分に基づき,土地利用を中心とした景観構造の発達,ならびに河川の水質と水量の関係について解析する.この解析の結果を通して,景観生態学的な流域景観の評価手法について議論してみたい.
  • 吉川 宏和, 島田 基世, 磯崎 由行, 中越 信和, 永田 智久, 坂村 晃, 山崎 亙
    セッションID: B211
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     高度経済成長をエポックとして閉鎖性水域内に対する富栄養化が問題となった。一般に知られたように,その主たる原因は人間の生活活動から河川へ流出する栄養塩類である。富栄養化の問題は水域内の生物にさまざまな影響を与え、しばしば有害生物の発生までも危惧されるようになってきている。広島県安芸高田市八千代町にある土師ダムのダム湖においても、現在富栄養化の問題が深刻化しアオコの発生が慢性化している。ダム湖において気などの対処療法行われているが富栄養化が改善される傾向はあまり見られていない。特に全窒素・全リンは2002年度の公共用水域水質測定でも、年12回の測定のうち全窒素は12回、全リンは11回水質環境基準を超える濃度が測定された。そこで、この研究ではダム湖の上流域からの富栄養化物質の流入量を地理的に評価することを目的とした。最初に富栄養化物質が多量に流出している流域を把握するために、比較的容易に測定できる電気伝導度を水の汚れを示す指標として用い土師ダム上流域において電気伝導度を測定した。次に特に高い電気伝導度を示した広島県千代田町の今田川流域を調査地とした。平水時に調査地点の瞬間流量[m3/sec]を計算するために河川断面形ならびに流速分布を各地点で測定し、同時に電気伝導度・水温を測定し,採水して総無機窒素・総リンを測定した. データは,各地点毎に電気伝導度・総無機窒素・総リンの濃度をそれぞれ流量に乗じ、各地点における電化(ECflux)、総無機窒素・総リンのフローを求めた。これらのデータから河川に対する栄養塩類の流出の原因を調査するため今田川流域の下水道整備状況や農業用水路の詳しい栄養塩類付加量を調査した.その結果を検討する。また、調査流域の平水時の汚濁負荷ポテンシャルマップを作成し排水システムの改善点を調査流域を対象として議論したい。
  • 吉原 佑, 高槻 成紀, badamjavin lhagvasuren
    セッションID: C201
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     近年モンゴルでは人口の増加に伴い家畜頭数が増加し、20世紀の初めには1000万頭未満だったのが、現在では約3000万頭以上になっている。その結果集落周辺部では放牧圧がいっそう大きくなり(重牧地)、集落から離れた放牧圧の小さい場所(軽牧地)とでは放牧圧の違いに応じて群落に違いが生じている。そこで本研究では、放牧圧の違いに応じた草原の状態と家畜(ウシ・ウマ・ヤギ・ヒツジ)の採食行動を比較した。 その結果、重牧地ではゲルと家畜が多いことが確認された。また、それに伴って群落に次のような違いが認められた。数値はいずれも重牧地のもの(軽牧地を100%としたとき相対値)である。植物種数は重牧地で約13種(81%)、被度は重牧地で約38%(80%)、バイオマスは45g/m2(49%)といずれも重牧によって小さい値になっていた。また、イネ科植物の被食率は54%(軽牧地の135%)、糞の出現頻度は79%(119%)、土壌硬度は15.21g/m2(105%)だった。一方、家畜の採食行動は、バイト速度(bite rate)は44.8回/分(軽牧地の90%)と減り、ステップ速度は29.7回/分(113%)、移動距離は夏が408m/h(120%)で冬が720m/h(173%)と増えた。これらは重牧地においては家畜の採食行動の負担が大きくなっていることを示唆する。 このように、重牧地では群落と家畜の採食行動に大きな影響を及ぼすことが示された。
  • 日野 輝明, 藤田 久美子, 伊東 宏樹, 古澤 仁美, 高畑 義啓, 上田 明良
    セッションID: C202
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    大台ヶ原の森林下層部の優占植生であるミヤコザサ(以下ササ)地上部がニホンジカ(以下シカ)による採食に対してどのように対抗しているかを明らかにするために、シカ除去年数(1,2,3,6年)の違う実験区と対照区におけるササの各形質の季節変化の調査を2002年の4月から11月まで行った。シカ除去1年区と対照区における越年生と当年生のササの稈と葉の比較から,シカが当年生のササを選択的に採食していること,群落全体での葉の寿命が約18_から_20ヶ月であること,個葉レベルの寿命は12ヶ月程度であることなどが分かった。当年生の稈と葉の成長は除去1年区と対照区ともに6月で止まり,この時点で有意な差が現れた。これは対照区のササがシカによる採食を受けた結果,季節の早い時点で成長を抑制したことを意味している。それに対して,当年生の稈と葉の数は7-8月まで増加し,シカによる採食の影響は数の増加が止まった9月以降に現れた。7-8月までの当年生の稈と葉の数の増加は前年に出芽した冬芽の数の減少に対応しており,シカ除去の影響を受けなかったと考えられる。冬芽は9月以降に出芽し,その数は対照区で有意に多かった。以上の結果から,対照区のミヤコザサは当年生の稈と葉の長さを抑制し,その代わりに冬芽数を増やすことで次年度の稈数を増やすことにエネルギーを投資することが明らかになった。さらに、シカの除去年数の違う区間での比較から,除去年数が長くなるにつれて,当年生の稈と葉の数が減少する一方で,それらの長さが増加することが分かった。稈あたりの葉数には区間での差がなかったことから,除去年数にともなう葉数の減少は稈数減少の結果であり、これは冬芽の数の減少によってもたらされていた。
  • 今井 長兵衛
    セッションID: C203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    トホシテントウEpilachna admirabilisは植食性のテントウムシで,海外ではミャンマー,台湾等,日本では九州_から_札幌に分布し,大阪,京都,東京,札幌で行われた生態研究で1化性が確認されている.調査が行われた4地域では,通常の越冬態は老熟幼虫であるが,一部は成虫態で2度目の冬を越す.分布北限の札幌では成虫は夏休眠に入らず,羽化後1カ月頃から産卵をはじめ,幼虫は秋に4(終)齢まで発育する.一方,関東や関西では,有効積算温量からは年2化が十分可能であるにもかかわらず,成虫の夏休眠によって年1化の生活史を維持している.この研究では,本種が1化性を維持しなければならない原因の解明のため,温度以外の要因として寄主植物のフェノロジーに着目し,本種の生活史との関連を検討した.調査場所は京都市左京区京都大学理学部付属植物園(寄主:アマチャズルとキカラスウリ)と生駒山西麓東大阪市枚岡(寄主:アマチャズルとカラスウリ)で,4月からほぼ7日間隔で寄主植物の葉の枚数を数え,枚岡では成虫および1齢_から_4(終)齢幼虫の個体数を調べた.葉は大,中,小に3区分して数え,別に測定した大きさ区分ごとの湿重量の平均値を乗じた値を3区分合計して野外における湿重量を推定した.トホシテントウの寄主はいずれもウリ科多年生つる植物であり,葉量は成虫羽化期である5月にはきわめて小さく,成虫による新芽の食害も加わって,6月末までほとんど増加しなかった.葉量は7月から増加に転じ,9月に最大値に達した後,11月から急激に減少した.葉量の増加と期を一にして,8月半ばから1齢幼虫が現れ,10月末には4齢幼虫数がピークに達した.以上から,関東や関西のトホシテントウ個体群は,成虫期に夏休眠に入ることで,寄主である多年生つる植物のフェノロジー(葉量の季節変化)に同調し,年1化の生活史を維持しているものと解釈される.
  • 三浦 和美
    セッションID: C204
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     植食性昆虫が個体レベルの広食性を維持する上で、各植物種を単独で摂食したときよりも、複数の植物種を摂食したときに生存率や体重が増加する混食の効果が重要であると指摘されている。植食性昆虫は質の低い植物に遭遇したとき、摂食量の増加や成長効率の向上といった補償的反応を示す(Simpson and Simpson 1990)。しかし、個体レベルの広食性昆虫が生息地の質の低い植物を利用する際に生じる混食の効果に関連した補償的反応について検討した例は少ない。今回、広食性のキンキフキバッタ5齢雌幼虫を用いて検討した。本幼虫の生息地に生育する植物の中から、タニウツギ、イタドリとヨモギを用いた。5齢雌幼虫にタニウツギ、イタドリ、ヨモギのみを与えた単独区と、タニウツギとイタドリ2種を同時に与えた混合区の合計4処理区で羽化まで飼育した。体重増加量、摂食量、発育期間を計測し、摂食速度(摂食量/発育日数)と成長効率(体重増加量/摂食量)を推定した。
    その結果、タニウツギとイタドリの各単独区では、ヨモギ単独区と比べて、体重は減少し、発育期間は長い傾向が認められた。そして、混合区は単独区と比べて、体重が増加し、発育期間が短い傾向が認められ、ヨモギに匹敵するほどだった。ヨモギと比べて、タニウツギとイタドリは、成長効率が低いことが質の低さの実態であると推測された。そして、混合区は単独区と比べて、摂食速度と成長効率が最低を示した単独区の植物のそれぞれを上回った。混食区ではヨモギよりも成長効率は減少したが、摂食速度が増加したので、摂食速度の向上が混食の効果を生み出すと思われた。
  • 徳永 憲治, 鎌田 直人
    セッションID: C205
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    植物は植食者の食害に対して様々な戦術で防御をしている。葉食性昆虫の食害やゴールの形成によって、タンニンなどのフェノール類の蓄積が増える化学的な誘導防御が起こる。本研究では、タマバエのゴールだけではなく、ゴールが形成された葉の葉身についても物理的・化学的な性質に変化が生じるのかどうか調べた。ブナに形成される数種のタマバエのゴールとその葉身の防御レベルを調べ、ゴール形成者の生活史との関係から種間比較を行った。サンプルは、食害のまったくない当年枝からゴールの形成された葉(以下、「ゴール葉」)、全ての葉にゴールのない別の当年枝から無被害葉(以下、「対照葉」)の2つのカテゴリーを、お互いに近い葉位から採集した。これらを用いて、葉身の物理的性質(LMA)と、葉身とゴールの化学的性質(総フェノール含有率、縮合タンニン含有率)を測定した。ほとんどの種類のゴールにおいて、ゴール葉は対照葉よりもLMAの値が大きく、ゴールが形成された葉は堅くなることが示唆された。これは、ゴール形成者がゴール葉の葉身に物理的な誘導防御を引き起こし、その葉身を葉食者の食害から防いで、ゴール形成者自身の適応度を上げている可能性があると考えた。化学的防御レベルをゴールと葉身で比較した結果、ゴールの種類によってまちまちであったが、葉への着生期間が長いゴールの種類で、化学的防御レベルの高い傾向が認められた。この結果は、長期間葉にとどまるゴールに対して植物が強い防御を行っているという解釈と、長期間葉にとどまるゴール形成者が植物に強い防御反応を起こさせて葉食者から身を守っているという解釈の両方が考えられた。以上のように植食者間には、ブナの葉の誘導防御を介した間接効果が働いている可能性が考えられた。
  • 今井 健介
    セッションID: C206
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    多くの生物は餌に関連した資源競争にさらされている。種内での競争はその個体群動態だけでなく、時間・空間の利用様式やそのほかの行動的形質の進化にも影響を及ぼすと考えられる。しかしながら、植食性昆虫においてはそのような種内資源競争の実証はきわめて限られている。アオキミタマバエは常緑灌木であるアオキの幼果に卵を産み付け、孵化幼虫がこれをゴール化する。本種の成虫寿命は一日程度であるが、羽化が持続的に起こるため、飛翔シーズンは10から15日にわたる。その間、複数の成虫が訪果し、1成虫は1訪果あたり1から3個程度の卵を産下する。最終的に、1つの幼果に産下される卵は数個から数十個に達する。本発表では、タマバエの卵期において未知の要因による死亡が起こること、その死亡が強い密度依存性を持つことを明らかにする。これは本種の卵期において寄主資源に関する種内競争が生じていることを示す。さらに、幼果に産下される卵の数は幼果のサイズに比例し、かつこの比例関係が保たれる限りにおいては卵期死亡率が変化しないことを示す。これは幼果サイズと既産下卵の数に応じて、タマバエが産卵数を調節し、理想自由分布を実現しようとしているためであると考えられる。最後にデータに基づいて、卵期の死亡が本種の密度制御に果たす役割と、種内競争の具体的なメカニズムについて考察を試みる。
  • 安部 哲人
    セッションID: C208
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     海洋島への生物の侵入過程には不明な点が多い.火山島での数少ない研究事例としてクラカタウ島,スルツェイ島,ロング島などがあるだけである.一般に海洋島生態系にはさまざまなシンドロームがあるが,その中の一つに植物の性表現に関してフロラが雌雄異株性に偏っていることがあげられる.この理由については大きく分けて,1.雌雄異株が侵入しやすい,2.侵入してから雌雄異株になった,という2つの対立する仮説がある.しかしながら,実際に誕生して間もない海洋島での生物の侵入過程を観察できる機会は世界的にもほとんどないため,検証することは非常に困難である.その意味でも噴火31年後の小笠原諸島西之島の生物相の現状は興味深い. 2004年7月に調査した結果,西之島のフロラはわずか6種で構成され,前回報告された1978年以降で2種増加したのみであった.種子散布型の内訳は海流散布4種,付着型鳥散布2種であった.このことから,他の火山島での侵入過程と比較しても,西之島の生物相は侵入のごく初期の段階を脱しておらず,海洋島では侵入速度がはるかに遅いことが示された.植生は1978年以降,大きく拡大していたが,溶岩部分には全く植物が侵入できておらず,新たに拡大したのは砂礫が堆積した平地部分のみにとどまっていた.島内ではカツオドリをはじめとする海鳥が高密度で営巣しており,種の侵入や植生に対しても少なからず影響がありそうな反面,植物の果実を食べる山鳥は全くみられず,被食型鳥散布種子が侵入できる確率は非常に低いと考えられた.また,フロラの構成種は全て両性花植物であり,被食型鳥散布種子を持つ種も見られなかったことから,侵入に関して雌雄異株の優位性は認められなかった.一方で,非常に貧弱なフロラであるにもかかわらずハマゴウやスベリヒユなどの花には540分間で複数種の訪花昆虫が観察された.このことは自家和合性のある種でなくても定着が十分可能であることを示唆する.
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