日本生態学会大会講演要旨集
最新号
選択された号の論文の824件中201~250を表示しています
  • 滝 久智, Kevan Peter G.
    セッションID: C209
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     森林などの消失はそこやその周辺に生息する生物に何らかの影響を与えるかもしれない。「生息地の消失が進むと、虫媒花植物の結実率が低下する」(仮説A)場合もある。これまでこの仮説を支持する結果が報告されている一方で、支持しない結果も報告されている。高い結実率を維持する要因として、高い移動能力を持つ送粉者の貢献が指摘されている。ということは、移動能力の高い送粉者に頼らない虫媒花植物は、個体数の減少や絶滅の危険性がより高いかもしれない。そこで「生息地の消失は、移動能力の高い送粉者に依存する虫媒花植物に比べ、移動能力の低い送粉者に依存する虫媒花植物の結実率をより低下させる」という仮説(B)を立てた。 ハナバチ類が訪花する植物一種を多個体群選び、各個体群の結実率を周囲の森林面積という観点から分析することにした。個体群は様々な面積の森林で囲まれるように選抜し、各個体群には処理群と無処理群の2つを設けることにした。処理群の花序は、移動能力が高いと思われる大型の昆虫のみ排除するため、網目(3.2x3.2mm)袋で覆うことにした。結実率と森林面積から回帰を求めることで仮説Aを検証し、直線に有意性が認められた場合、得られた2本(処理群と無処理群)の直線の傾きを比較することで仮説Bの検証を試みることにした。 2004年の春から初夏に掛けて予備調査を行った。調査地域は農地などによって分断された落葉広葉樹林が点在するカナダ・オンタリオ州南部とした。モデル植物としてカタクリ属のErythronium americanumを用い、独立した4個体群を選んだ。それぞれの結実率と森林面積から回帰を求めたところ、仮説Aを支持する直線の有意性は得られなかった。よって仮説Bの検証まで至らなかった。しかしこの結果はサンプルサイズが小さかったことに起因しているかもしれない。
  • 小沼 明弘, 堀崎 敦史, 田中 紀史, 新倉 聡
    セッションID: C210
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    外交配性植物では、その他殖率や種子生産量が集団の大きさや密度によって変化するという現象が観察される。たとえば、個体数の少ない集団あるいは低密度の集団では他殖率や1個体あたりの種子生産量が大きな集団に比べ低いという結果が報告されている。これは集団の大きさや開花個体密度の変化が訪花昆虫の種組成あるいは訪花昆虫の行動様式に影響をあたえ、それによって他家花粉の送粉量が変化するためであると考えられる。よって集団の大きさは短期的には集団の存続可能性を、長期的には自殖性や訪花昆虫との共適応関係等の繁殖形質の進化を左右する。本研究では開花個体密度の他殖率への影響を明らかにするため、Brassica rapa (アブラナ科)の2系統を実験圃場に植栽し、その系統間交配を観察した。約860m2の実験圃場を一区画4.5m×3.6mに分割し、4段階の個体密度区を無作為に配置した。最も個体密度の高い区画(密度区4)には48個体(1系統あたり24個体)、次の密度区画(密度区3)には24個体(同12個体)、次の区画(密度区2)には12個体(同6個体)そして最も低密度の区画(密度区1)には6個体(同3個体)を配置した。材料として採用したB. rapaは、野菜のF1採種系で用いられる自家不和合性を有した近交系統品種である。このような栽培植物を材料とすることの利点は、遺伝的背景をそろえられかつ栽培条件等がよく分かっていること、交配の有無の判定が確実であること、および野生植物を用いる場合に比べそれらが容易である点にある。系統間交配率を測定した結果、それが高かったのは密度区2(系統間交配率0.860)および3(0.874)であり、密度区4(0.755)と密度区1(0.803)では系統間交配率が低かった。密度が低い区画での系統間交配率の低下は個体間距離の増大による他家花粉の持ち込み量減少のためであると考えられる。しかしながら、高密度区画での系統間交配率の低下は低密度区で系統間交配率の低下とは要因が異なるはずである。現在、我々は予備的な観察の結果から、訪花昆虫の行動特性がそれに関わっている可能性が高いと考えている
  • 辻田 香織, 境 慎二郎, 菊沢 喜八郎
    セッションID: C211
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    液果は主に果食性の鳥類に食べられその種子を散布される。液果は赤色と黒色のものが多数を占めており、この二色の優占は鳥による選択圧のもとに進化したと考えられることが多い。しかし、室内実験において鳥は一般に赤色と黒色を好む傾向にあるが、果実の色について多形性を示す植物自然個体群においては形質間で果実の被食率に差が見られないなど、果実の色が鳥による果実の選択に及ぼす影響はまだよく理解されていない。
    本研究では、鳥の野外における色の異なる果実に対する選択とその基準について示す。赤色の果実をつけるウメモドキIlex serrataとその品種で白色の果実をつけるシロウメモドキI. serrata f. leucocarpaを隣り合わせて6地点に植え、1)果実を採食する鳥種及びその採食頻度、2)各鳥種の果実の選択性および3)その選択基準について調査を行った。
    調査2品種の果実の主要な採食者はヒヨドリであり、観察された採食の約9割を占めていた。その果実の選択性は地点によって異なり、果実の色との間に一貫した傾向は見られなかった。ヒヨドリの採食に大きく依存する果実の被食率が果肉の糖分含量とのみ有意に相関していたことから、ヒヨドリの果実の選択基準は糖分であったと考えられた。一方、ヒヨドリ以外の鳥種、メジロ、ジョウビタキ、ルリビタキ、シロハラは赤色果実を選ぶ傾向にあり、色に基づいて果実を選択していたと考えられた。以上の結果から、採食頻度の高い鳥は果実の特質について学習し色ではなくその特質に基づいて採食を行いやすいが、採食頻度の低い鳥は色を基準に赤色や黒色の果実を選択しやすいことが示唆された。
  • 大橋 一晴, Thomson, James D.
    セッションID: C212
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    花粉や蜜を餌とするポリネーターは、複数の「パッチ」の間を渡り歩いて餌を集める。これらの花資源は多くの場合、いったん食いつくされても時間をかけて徐々に更新される。よって、これらのパッチ間をどのように移動するかによって、ポリネーターが出会う餌量と移動のコストは大きく左右される。更新資源をうまく利用するには、パッチへの到着周期をより長く、より一定にすればよいことが、先行研究で理論的に示されている。しかしポリネーターにとっての採餌の成績は、到着周期だけでなく、同じ餌をめぐる他者との競争や、各パッチの餌の更新スケジュールにも影響されるだろう。では、ポリネーターはどのようにパッチ間を移動しながら採餌すればよいのか?
     我々はこの問いに答えるため、コンピュータ・シミュレーションを用いて、複数の更新資源パッチから採餌するポリネーターの空間利用戦術とその採餌成績の関係を調べた。各個体は、実際のポリネーターで観察される4つの代表的な空間利用戦術のうちいずれか1つを採用するものとした。まず、競争個体数やその戦術を変えて採餌成績をくらべたところ、驚くほど広範囲の競争条件下で、トラップライン採餌(一定の順路をくり返す採餌)が非トラップライン採餌(一定の順路をもたない採餌)より高い成績をおさめた。これは、どのパッチも一定の周期で訪れる、順路が広範囲にわたる、というトラップラインの2つの特徴による。一方、各パッチにおける過去の採餌経験を次の行動に反映させる「情報利用型」のトラップライン採餌は、移動コストが余計にかかるため、時・空間的な餌量の変動がある場合をのぞいては、かえって採餌成績を下げることがわかった。講演では、これらの結果について、動物の採餌行動、植物の花粉分散の両面から考察を加えたい。
  • 恩地 実, 松浦 宜弘 , 泉谷 聡一, 米澤 里美
    セッションID: D201
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    都市を流れる川の河川敷は、野生動物にとって都市における唯一の棲息場所となっていることが多く、さらに、コリドーとして機能していると考えられる。その河川敷が、支流の流入や人工物により分断され、移動が妨げられると、コリドーとしての機能が低下する。特に、アカネズミのような、空中分散が不可能な小型哺乳類は、一度孤立し絶滅してしまうと再移入が困難な場合が多い。そのアカネズミは、中型哺乳類、猛禽類、蛇類などの餌となっており、アカネズミの絶滅はそれらの動物の棲息に重要な影響を与える。しかし、流入する支流や人工物がアカネズミの移動にどの程度障害になるか検討が試みられたことはない。そこで、愛知県豊田市の矢作川河川敷の古鼡水辺公園を中心とした約800mの範囲で調査を行った。調査地には移動の障害になると考えられる3つの支流と1つの公園(約200m)があり、それらの障害物の両端の土手から本流までの間に生け捕り罠を仕掛けた。捕獲したネズミは、種類、性、体重などを記録し、マークしたのち捕獲地点で放逐した。調査期間は、2002年4月から2004年5月までで、原則として2夜連続の調査を計9回行った。その結果、3つの支流両岸で捕獲された総個体数は各々27、26、37頭で、そのうち複数回捕獲個体は各々22、22、23頭であった。それら複数回数捕獲個体のうち支流を隔てて移動して捕獲された個体は各々1、5、5頭と少なかった。各支流両岸での平均移動距離は各々7.40m、14.67m、9.42mであった。それぞれの支流の幅は約6.0m、約4.0m、約5.0mと平均移動距離より狭かったが、両岸で捕獲された個体は少なく、支流が移動の障害となっていると考えられる。移動個体の捕獲地点は倒木など両岸の移動を可能にする物の近くに集中しており、支流に移動を可能にする物の必要性が示唆された。
  • 市野 進一郎, 相馬 貴代
    セッションID: D202
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    地域的に孤立している個体群は、病気の発生によって絶滅する危険性が高い。繁殖率の低い哺乳類の個体群では、特に危険性が高いので、病気の原因と個体群に与える影響を明らかにする必要がある。本発表では、マダガスカル南部のベレンティ(Berenty)保護区に生息する昼行性原猿のワオキツネザル(Lemur catta)個体群に発生した脱毛症について報告する。
    ベレンティ保護区は、面積約250haの小規模な保護区で、周囲の森林とはサイザル麻のプランテーションによって分断されている。ここでは、2000年以降に脱毛したワオキツネザルが見られるようになった。脱毛症の原因や個体群動態への影響は明らかになっていない。疥癬ダニによる伝染病が疑われ、寄生虫の調査がおこなわれたが、今のところ脱毛を引き起こす寄生虫は発見されていない。
    保護区内に設定された主調査地域(14.2ha)には、7群約100頭のワオキツネザルが生息しており、1989年以降、個体識別にもとづく長期継続調査がおこなわれている。そのため、1989年以降に生まれた個体の年齢や血縁関係が明らかになっている。そこで、2001年、2003年、2004年の3回にわたり、主調査地域に生息するワオキツネザルの脱毛症の状態を調査した。個体ごとの体毛の状態を6段階に分類し、特に状態が悪い場合を脱毛症と定義した。そして、脱毛症の個体の年齢、群れと血縁集団、死亡率、出産率、出産したアカンボウの生存率を、脱毛症ではない個体と比較した。また、2001年以降の症状の変化についても述べる。
  • 立澤 史郎, 高橋 裕史, 相場 可奈, 小林 律子, 松田 裕之, 常田 邦彦, 矢原 徹一
    セッションID: D203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     大隅諸島屋久島では,林床植生における群落構造の急激な変化が問題となっており,その主要因として,ニホンジカ(ヤクシカ)による採食圧の増加が疑われている.そこで,ヤクシカの全島的な分布調査を行い,分布傾向,約10年前の記録と比較した増減傾向,これらの傾向に関わる可能性のある要因,について検討した. 分布調査はスポットライトセンサス法により,2004年7月14日から29日の間に,総延長203kmの固定ルート(約20区間を各3晩)をのべ約250人・日で走査した. 結果は,総計605頭を目撃し,同一手法で調査した約10年前(1994-1997年調査)の結果と比較して,走査距離あたり発見頭数で2.5倍(約20頭/km),西部地域に限ると最大22倍の発見密度となり,この10年間の増加傾向が示された.一方,南部地域の区画はいずれも発見密度が1頭/km以下であり,生息密度の地域差が激しいことが示された.
  • 石井 励一郎, 堀口 文男, 中西 準子, 谷内 茂雄
    セッションID: D204
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    Chemical pollution is one of the major threats to aquatic ecosystems and their biodiversity and its effective management has become of greater interest. Current methods of chemical risk evaluation are based on individual-level toxicological tests without explicit attention to other environmental threats which might alter the local population dynamics. Here, using a simple discrete population model for coastal benthic species incorporating the effects of co-occuring major anthropological threats, habitat loss and harvesting, we show that the population-level chemical risk would be severely reinforced by the other threats in multiple ways: 1) chemicals and habitat loss synergically reduce the total recruitment rate of species with free-dispersal stage and hence the equilibrium population density; 2) harvesting (together with native Allee-effect) might introduce regime-shift to the population’s response to chemical concentration and the critical concentration would be lowered as these threats grow. We evaluate the total and and relativise the impact of these threats in terms of resilience, the domain of attractions. We claim the necessity of population-level chemical risk assessment by explicit modelling with different impacts to avoid its underestimation particularly for populations of commercially exploited species in developed waters, even if the concentrations seem negligible in laboratory-condition or relatively undeveloped waters.
  • 黒田 啓行, 庄野 宏, 伊藤 智幸, 高橋 紀夫, 平松 一彦, 辻 祥子
    セッションID: D205
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     実は多くの漁業は漁獲量の制限などにより管理されている。漁獲許容量(TAC)は、現在の資源量(魚の量)などから算出されるのが通例である。しかし現実には、データや知見の不足により、資源量などの推定は難しく、さらに将来の環境変動などを予測することも容易でない。このような「不確実性」は、科学の問題だけでなく、合意形成をはかる上でも大きな障害となる。
     ミナミマグロは南半球高緯度に広く分布する回遊魚で、商品価値は非常に高い。日本、オーストラリアなどの漁業国が加盟するミナミマグロ保存委員会(CCSBT)により管理されている。しかし、近年の資源状態については、各国が主張する仮説によって見解が異なり、TACに正式合意できない状況が続いていた。
     この状況を打開するために、CCSBTは2002年より「管理方策」の開発に着手した。管理方策とは、「利用可能なデータからTACを決めるための“事前に定められた“ルール」のことで、環境変動や資源に関する仮説が複数あっても、それら全てに対し、うまく管理できるものが理想的である。そのため、様々な仮説のもとでのテストが事前に必要であるが、実際に海に出て実験することは不可能に近い。そこで、コンピューター上に資源動態を再現し、その「仮想現実モデル」のもとで、複数の管理方策を試し、より頑健なものを選び出すという作業が行われた。このような管理方策の開発は、国際捕鯨委員会(IWC)を除けば、国際漁業管理機関としては世界初の画期的な試みである。実際にCCSBTで管理方策の開発に当たっている者として、開発手順を概説し、問題点及びその解決方法について紹介したい。不確実性を考慮した管理方策の開発は、持続可能な資源の利用を可能にし、魚と漁業に明るい未来をもたらすものと考えている。
  • 福島 路生, 亀山 哲
    セッションID: D207
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    北海道の淡水魚類の生息状況に関するデータベースを約800編の文献をもとに作成し,そのデータを使用して魚種ごとの潜在生息モデルを構築した.これらのモデルから,ダムによる流域分断の影響の度合いやその分布を推定できること,また既存の保全地域の設定状況を評価できること(ギャップ解析)などを紹介したい.一般化加法モデルを採用し,サクラマスとイトウに焦点を当てて潜在生息状況を推定した.その結果,サクラマスの生息確率はダム竣工からの経過年数とともに低下すること,また生息確率が低下した地域が全道にパッチ状に分布することが分かった.またイトウに関してはこれまで採捕の記録がほとんどない地域にも潜在的に生息できる河川流域が分布することが分かった.北海道の水産資源保護法が設定する32の保護水面は,サクラマスの生息適地を的確に保全地域として認識しているのに対して,イトウの保全にはあまり有効ではないことが明らかとなった.
  • 小路 敦, 山本 嘉人, 平野 清, 中西 雄二
    セッションID: D208
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     九州・阿蘇地域では、牧野を利用した畜産の担い手不足等により、古来より維持されてきた草原の植生や地域特有の景観が失われつつある。1905年から1995年にかけての90年間で、阿蘇郡内の草原面積は、約70,000 haから約36,000 haへとほぼ半減した。演者らは、阿蘇地域における草原景観および植生を保全するため、様々な取り組みを実施している((2)および(3)は「阿蘇地域自然再生推進計画調査」の一環として実施。)。(1)利用休止された半自然草原への放牧再開試験 阿蘇・北外輪における利用休止されたススキ型草原に褐毛和種牛を放牧し、植生変遷を5年間追跡した。草本植物の地上部現存量が急速に減少し、植物の出現種数が増大した。一方、木本種の増大を完全に抑制することはできなかった。(2)「モーモー輪地」における植生変遷 牛を重放牧して草量を減少させる「モーモー輪地切り」が、省力的な防火帯創出法として注目されている。実証試験地において刈り取りおよび植生調査を実施した結果、放牧圧の高い試験区においては乾物草量が約200g/m2に抑制され高い防火帯効果が期待されたとともに、植物の出現種数が増大した。(3)「草原内に孤立する不要植林地除去試験地」における植生変遷 草原内に孤立する植林地の存在は、防火帯づくりの距離を増大させるため、草原への火入れを実施する際の労力が極端に増大する。環境省では、管理されていない孤立植林地を試験的に伐採する事業を実施した。伐採後の植生を追跡した結果、ススキをはじめとするイネ科草本植物がすみやかに定着しているものの、灌木類等木本植物の優占度も高まっており、森林の前駆植生とススキ型草原との両面を併せ持つ植生になってきている。植生をススキ型草原に仕向けるためには、火入れの際に灌木類を確実に焼く工夫が不可欠である。
  • 野原 精一, 広木 幹也, 矢部 徹
    セッションID: D209
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    自然再生促進法による事業は、1)過去に失われた自然を積極的に取り戻すことを通じて2)生態系の健全性を回復することを直接の目的として、湿原の回復などを行う。3)その地域の生態系の質を高め、4)その地域の生物多様性を回復していくことに狙いがある。5)湿地生態系の機能を再生させるため、自然再生実験等によって自然の節理を学び、6)湿地生態系の再生及び管理・事業評価を公正に実施する必要がある。 具体的例として霞ヶ浦の事業を評価するに当たり、1)から6)の項目(過去の把握、生態系の健全性、生態系の質、生物多様性、生態系機能、事後評価)の評価を検討した。まず、過去の湿地の状況把握のために古地図・地形図・航空写真・衛星写真・植生・生物調査データ等を収集しどの地域の湿地が失われたかを把握した。次にその主原因(埋立、水位調節、波浪、富栄養化など)を特定し、適切な操作を選定する必要がある。その操作の結果、湿地生態系が回復したかどうかはその地域の動植物の生物多様性(主に種)維持機能や生産、分解など物質循環に関する生態系機能、波浪防止・堆積などの水文地形的な生態系機能の評価実施が欠かせない。 霞ヶ浦工事事務所(当時)が委員会による検討を経て、13ヶ所で粗朶消波堤等の事業を平成13年度に実施した。植生帯に最も影響する高水位維持を堅持、浚渫土による造成と波浪による植生破壊防止のため粗朶消波堤等を設置している。我々の調査の結果、浚渫土による浅瀬の埋立てによる湿地の回復は、湖の一部だけの安易な解決で、重要な主因解消の姿勢がなく、種の増加や貴重種の復活があるものの、生態系機能評価の視点がなく総合的な評価が不十分と判断された。
  • 西廣 淳, 鷲谷 いづみ
    セッションID: D210
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     治水や利水を目的に水位やその季節的変動パターンが改変された湖沼では、湖岸植生帯の規模や種多様性の減少・低下がしばしば報告されている。その一因としては、自然の水位変動パターンに適応した生活史特性を持つ植物の発芽・定着適地が、水深・水分条件、冠水のタイミングや持続期間の変化に応じて減少・消失したことが考えられる。湖岸の植物の発芽・定着適地の広がりとその変化は、植物種ごとの当該生活史段階における環境要求性と、水位変動パターンや湖岸の微地形(比高)の変化から定量的に予測できると考えられる。本研究では、近年、衰退が著しい霞ヶ浦の湖岸の植物を対象に、約50種の発芽・休眠特性と実生定着条件を特に季節選択性と冠水への感受性について把握した。そのデータと1931年以降の水位変動パターン、および1967年と1997年の沿岸帯の測量データを用いて、植物の発芽・定着適地の変化について考察し、水位改変の影響を特に受けやすい種を予測した。 発芽実験の結果に基づき、対象種は、1)発芽期・定着期を通じて非冠水条件を必要とするギルド、2)発芽期(多くの場合は春)には冠水せず定着期には冠水する「季節的冠水条件」を必要とするギルド、3)季節を通じて冠水条件を必要とするギルドに分けられた。一方、水位変動の分析からは、常陸川水門の運用開始(1974年)以前は、3_から_5月に水位が0.8m(YP)程度まで低下していたが、1975年以降は季節を通じて1.0mに、1996年以降は1.1mに維持されるようになったことが示された。また1967年には湖岸はなだらかな勾配を有し、多様な比高の場所が存在したが、1997年の時点で1.0m以下の場所が大幅に失われていたことがわかった。これらの結果から、高く安定した水位と侵食による湖岸微地形の変化が、特に季節的冠水条件を必要とする植物の発芽・定着適地を大幅に減少させたことが結論された。
  • 冨士田 裕子, 佐藤 雅俊
    セッションID: D211
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     湿原環境の悪化や植生変化などが問題視される釧路湿原では、北海道開発局釧路開発建設部が、平成11年から委員会を設置し、「釧路湿原の河川環境保全に関する提言」(2001)を発表した。そして「河川環境の指標であるハンノキ林の急激な増加やヨシ_-_スゲ群落の減少に対し、湿原植生を制御する対策をすべきである」という提言に従い、新釧路川の右岸堤防上に位置する雪裡樋門を平成12年9月から15年5月まで閉め、堤防西側の安原川流域の地下水位を上昇させる実験をおこなった。実験の目的は、湿原で近年増加しているハンノキを地下水位の上昇で制御できるかどうかを検証することだった。しかし湛水面積は200haにものぼり、樋門を開けた後、植生は一変し、開発局が復元目標としている1980年当時とはまったく異なる景観が広域に広がった。開発局はハンノキに関するデータは公表しているが、湛水跡地の植生変化については何のコメントも出していない。そこで実験跡地の植生および湛水区域の特長などを現地調査や衛星データ等から解析し、生態学的視点に欠けた広域実験の問題点を指摘することを本研究の目的とした。 解析の結果、湛水区域は川筋の標高が低い部分に広がり、実験前の植生はヨシ_-_スゲ主体の群落で、実験の目的であったハンノキ林は、一部に分布するにすぎないことが明らかになった。湛水実験後に成立した群落は、タウコギ群落、アキノウナギツカミ群落、ミソソバ群落などの流水辺1年生草本植物群落であった。これらの群落は1980年代まで遡っても、釧路湿原内で大規模な面積を占めることはなかった。景観を一変させ新たな自然再生地を生み出すような大面積の実験が、なぜ安易に容認され、結果の十分な評価が行なわれないのかなど、今後慎重に検討する必要がある。
  • 布和 敖斯尓
    セッションID: D212
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ASTERは可視から熱赤外までの14バンドを有する高性能の光学センサであり、産業、環境、資源など様々分野で利用されている。本研究は北海道のサロベツ湿原を対象に、ASTERデータを用いて、主成分分析、最適指数(OIF)、各種の定量化指数(NDVI, NDSI, NDWI, OWI)などの手法を用いてそれぞれに空間分布を図化し、各結果を比較及び相互連関して考察することにより、湿原環境(植生環境及び水文・土壌・熱などの物理環境)について空間的視点からの特徴を明らかにし、それをもとに環境区分を行い、ASTERを用いた湿原環境評価への実用可能性を示すことができた。さらに、湿原植生を脅かすおそれのあるササ草原の分布及び動態についてASTERを用いて評価できる可能性が得られたとともに、今後の湿原環境評価のための統合的手法の確立に向けた基礎的知見を得た。
  • 藤原 一繪, 宮内 大策, 原田 敦子, 高野 朝子
    セッションID: D213
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    植栽後25-30年を経た環境保全林における種回復動態藤原一繪,原田敦子,宮内大策(横浜国大・院・環境情報),高野朝子(国土環境)都市や埋め立て地における自然林再生のための植林は、さまざまな手法で行われている。とくに、高木種のポット苗幼苗密植による自然林再生が日本列島に広く行われ、25-30年を経た林分もある。幅1-50mとさまざまな面積で再生されてきたこれらの林分は、隣接して種子源がない都市域や埋め立て地では、どの程度の種の回復が見られるのか? 中島他(1988)では、瀬戸内海沿岸の18年生の環境保全林で、植栽当時から種の回復がないことを指摘し、服部ら(2001)は、大阪、三重、福井臨海部の環境保全林においては、低木層と草本層を構成する種群の欠如を指摘している。 また長尾・原田(1998)による、東京湾の人工島における間伐結果でも自然林構成種が回復していない結果を示している。他地域ではどのような種の動態がみられるのであろうか? 特に林床への新入種(newcomer species)に注目して植栽後25-30年を経た林分においてBraun-Blanquet (1964)による植生調査および種リストを記録し比較した。調査地は、新日本製鉄大分製鉄所および名古屋製鉄所、横浜国立大学キャンパスおよび熱海市植物研究園の実験植栽地を対象とした。さらに、1983年に調査された日本全国の植栽地の植生調査データおよび常緑広葉樹林の若齢林と比較した。その結果、1) 面積がある程度まとまっている環境保全林では、量的には少ないが、地域の構成種がもどっている。2)密植効果による成長速度は早いが、面積が狭い環境保全林では、種群の回復が見られない。3)落葉樹との混植による林床植物の増加。4)神奈川県における若齢林との比較では、若齢林(樹高10m)の方が種組成は貧弱である。
  • 堀野 眞一, 野宮 治人, 新山 馨, 田中 浩, 柴田 銃江, 八木橋 勉, 川路 則友, 北原 英治
    セッションID: D214
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ニホンジカが植生に与える影響は,生態学的な興味からも,生態系管理上の必要性からも大きな関心が持たれている.しかし,その分野の研究は既にシカがある程度の密度で生息し続けている地域で実施されることが多く,新たな生息地へシカが侵入したときどのような影響がどのような速度で発生するのかというデータはほとんどない.本研究では,シカの生息しない茨城県北部に建設した大規模実験シカ柵内の密度既知かつ不変の「生息地」において植生への影響について観測したので報告する.シカ柵は1/16 km2(S柵)と1/4 km2(L柵)の2基で,2002年6月にメスジカ各1頭を導入した.密度換算するとそれぞれ16頭/km2(L柵)および4頭/km2(S柵)となる.シカ導入前の2001年10月,柵内の広葉樹林に固定プロットを設け,樹高30cm以上の全樹木をマークして樹高と生枝下高を測定した.その後毎年10月に同じ調査を繰り返し,林内の生葉分布(ある地上高において生葉を持つ樹木の数の垂直分布)の変化を追跡した.その結果,L柵では地上約100cm以下に生葉を持つ樹木が若干減少するに留まったが,S柵では地上約200cm以下の範囲でそのような樹木が大幅に減少した.S柵で見られた現象は,このまま進めばいわゆるdeer lineの形成につながるものと考えられる.この結果について,樹種別の動向,柵内のササの動態や他の林床植物の現存量などとあわせて考察する.
  • 清野 達之, 北山 兼弘, 松島 洋介, ラキム マクラリン
    セッションID: E201
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ボルネオ島では北部のみに局在する火山起源の土壌に成立する混交フタバガキ林の特殊性を明らかにするために,サバ州タワウ丘陵公園の極相林と同州にある堆積岩起源性土壌上の極相林の比較を行なった.ここでは,土壌基質の違いによる森林構造と樹種多様性,生産性の解析結果を報告する.タワウの混交フタバガキ林の土壌は約2万7千年前の火山噴火によって形成され,堆積岩土壌のフタバガキ林よりも土壌風化が進行していない.そのため,土壌中に含まれるリンについては全リン及び可給性リンの濃度がタワウで他のサイトよりも高かった.また,置換性陽イオン濃度も同様にタワウで高かった.タワウの低地混交フタバガキ林はフタバガキ科のShorea johorensis が胸高断面積で60%以上優占し,堆積岩土壌のフタバガキ林と比較して低い樹種多様性を示した.タワウの混交フタバガキ林の森林構造はボルネオ低地林でも高い林冠高と胸高直径を記録したが,地上部現存量は堆積岩土壌のフタバガキ林よりも低くなっていた.また,年間の地上部の木部生産量と落葉落枝量もタワウは低かった.堆積岩土壌のフタバガキ林では高い樹種多様性で樹木の密度が高い森林が構築されるが,タワウの混交フタバガキ林は一種のフタバガキ科樹種が優占し,樹木の個体密度と地上部現存量密度が低い森林が構築される特殊性がみられた.
  • 奥田 敏統, 沼田 真也, 鈴木 万里子, 小熊 宏之, 米 康充, 近藤 俊明, 吉田 圭一郎, 西村 千, 宮作 尚宏, Mazlan ...
    セッションID: E202
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    熱帯林の林冠構造や地上部現存量の変動を高精度かつ長期的に観測できるシステムを構築することを目的として、航空機搭載型レーザープロファイラー(スキャン型レーザーレンジファインダー)を用いてマレーシア半島部の低地熱帯雨林を対象に撮影を行い、林冠高、地上表面高の同時測定を行った。これらのデータをもとに林冠構造の再現をおこない、地上部現存量の推定方法について検討を試みた。調査はネグリセンビラン州パソ保護林内に設置した長期森林観測プロット及び周辺域の択伐林を対象とした。その結果これまで以下のことが明らかになった。レーザ測量によって得られた林冠高データと従来の空中写真による林冠高データ(空中三角測量による三次元構造物の高さ測定)を比較したところ、両者の間に高い相関関係が得られ、レーザー測量により高精度で林冠高が計測できることが分かった。また地上測量によって得られた地面標高データとレーザープロファイラーの最終反射パルス(地表面の高さデータ)も同様に高い精度で一致することが明らかになった。さらにレーザー測量によって得られた林冠高のデータをもとに森林の構造体を再現し、単位面積あたりの構造体の体積と地上測量によって得れた現存量(樹木の直径データをもとに算出)との比較を行ったところ、両者の間にも高い相関が見られることがわかった。また現在、林冠の個々の樹冠抽出を行い、樹冠サイズと樹高をもとにモデルを構築し、これらの体積と樹木の現存量との相関関係についても解析を行っており、発表を行う予定である。今回の調査結果により、閉鎖林冠が特徴的である熱帯雨林においてもレーザー測量による林冠構造の再現が可能であり、継続的な調査を行うことにより樹木の生長や現存量の変化が高い精度で分析可能であることが示唆された。
  • 百瀬 邦泰, 嶋村 鉄也
    セッションID: E203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    スマトラ島東岸のインドネシア、リアウ州の泥炭湿地林にて、根の垂直的すみわけを調べた。60m四方のプロットで5mおきに169点で、深さごとにハンドオーガーで根の採集をした。また各点で地下水面と地表面との距離を測定した。採集した根を洗い出し、外部形態によって、種または属、一部は科レベルで同定し、それぞれの全長を方眼法ないしは直接計測で測定した。 採集個所を中心とした1辺10mのサブコドラート内の幹の胸高断面積合計と、同種(または属、科)の根の全長に相関が認められたものは一部に限られ、多くのグループで根は水平的に広く広がっていることが示唆された。根の水平分布において異なるグループ間で有意に相関がみられることは少なかった。また、魚眼レンズを用いて測定した直接光および間接光と根の分布の間でも、相関はごく一部にしかみられなかった。さらに、地表面の高さと根の水平分布の間でも、相関は一部にしかみられなかった。以上のように根の水平分布に関しては、種間関係や環境との関係はあまり認められなかった。 一方、深さおよび、地下水面との相対的な高さに応じた、各グループの根の全長の垂直分布を調べると、種(または属、科)の間に明瞭な差が認められた。Shorea、Swintoniaなど大木になり、板根を発達させる樹種では、根の分布が地表から浅いところおよび地下水面に対して高いところに集中していた。一方、Ganua、Stemonurosなど中層で優占する樹種で、膝根や棒状根といった呼吸根を発達させた樹種は、根が地表から深いところおよび地下水面に対して低いところに多くみられた。しかし、板根性大木種の根の存在によって、呼吸根をもつ中層木種の根の分布する高さが影響を受けるということはなく、潜在ニッチと実現ニッチが異なるという結果は得られなかった。
  • 安田 泰輔, 塩見 正衛
    セッションID: E204
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    植物種の空間分布は多様であり,時間変化する。空間分布の測定方法は多数あるが,その動態を定量的に扱う方法は少ない。本研究では相互情報量を用いて,空間分布の動態を解析する手法を提案する。
    ここで,4つのセルからなるコドラートが100個並んだベルトトランセクトを想定する。そして種iがこのベルトトランセクトに分布し,時間tからt+1へと変化する状況を想定する。このとき種iは各セルに出現したかしないかとする。各時間で,コドラートごとに種iが出現したセル数X (この場合 X = 0,1,2,3,4)を計算することで,時間ごとの頻度分布FtFt+1が得られる。このとき,各コドラートのXの変化には様々な状態が考えられる。たとえばXが0→1, 1→2と循環的に変化する場合やランダムに変化する場合などである。このような頻度間の推移はこの場合5行5列の推移確率行列Aとして次のように表せる:Ft+1 = AFt
    このAから相互情報量Dを求められる。Dが0のとき,頻度間の推移が等確率で生じたことを示す。これはランダムに種iが移入もしくは死亡した場合を示す。一方,Dが大きい値をとった場合,頻度間の推移が単純で直線的,循環的な傾向があったこと示す。たとえば頻度0のコドラートが頻度1へ,頻度1のコドラートが頻度2へと循環的に変化するような状況である。
    このように頻度間の推移を推移確率行列とし,相互情報量を用いることで,頻度間の推移の傾向を定量化することができる。集中性の指数の変動と合わせて利用することで空間分布の動態を定量的に扱うことができると考えられる。
  • 井藤 宏香, 伊藤 哲
    セッションID: E205
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    微地形は植生パターンを決定する最も重要な要因のひとつである。我々は宮崎大学附属田野演習林の照葉樹二次林において、主要構成種の過去6年間の幹の動態に与える微地形の影響について報告してきた。その結果、生残率や新規加入の微地形に対する依存性はあまり顕著に現れなかった。これは、過去6年間に大きな撹乱イベントが発生していなかったことが理由として考えられる。そこで本研究では、照葉樹二次林において台風による撹乱イベントに関わる2002年から2004年までの2年間の動態と大きな撹乱が起こらなかった2002年までの過去6年間の動態を比較し、台風による撹乱イベントの影響を検討した。また、台風の撹乱イベントの有無によって生残率・撹乱要因の微地形に対する依存性が現れるかを検証するために、微地形間で生残率・撹乱要因の比較を行った。台風による撹乱イベントに関わる2年間と大きな撹乱が起こらなかった6年間の枯死率は(それぞれ1.2%/年、1.0%/年)ほぼ同程度であった。また、全幹数の中で撹乱を受けた幹の割合(以後、撹乱率とする)もほぼ同程度であった。大きな撹乱が起こらなかった過去6年間に斜面上部において枯死率および撹乱率が斜面下部よりも低かったのに対して、台風による撹乱イベントに関わる2年間に斜面上部の枯死率および撹乱率が下部斜面よりも高かった。これは、斜面上部において今回の台風による林冠木の風倒撹乱に関わる撹乱(幹折・傾斜など)の枯死率および撹乱率が斜面下部と比べて高かったためであった。以上の結果から、照葉樹二次林において台風による撹乱イベントの有無によって枯死率や撹乱率に違いはみられなかったが、微地形によって大きな撹乱のない期間の動態とは異なる動きを形成していることが示唆された。
  • 波多野 玄, 吉川 正人, 福嶋 司
    セッションID: E206
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    関東南部には広葉草本が多種生育するブナ林が分布する。そのうち、奥多摩、道志、箱根、富士山のブナ林群落に複数の固定調査区を設け、春季から夏季への種組成の季節変化パタンを比較した。結果、富士山南麓に分布するブナ林群落のみ、夏季までに多くの種が消失し、春季から夏季へ顕著な種組成の入れ替わりを示す独自の種組成の季節変化パタンが認められた。そして、このような種組成の季節変化パタンの違いが他のブナ林群落との種組成の違いと関連していた。
    群落間で種組成の季節変化パタンが異なる要因を明らかにするために、富士山南麓と奥多摩のブナ林群落の固定調査区を対象に、林床環境の季節変化ならびに草本構成種の生態的な特性について調べた。林床環境は春先に明瞭な違いがあり、富士山南麓の調査区の方が奥多摩の調査区に比べて林床が明るく、リター堆積量が少なく、土壌表層の体積含水率が高かった。各調査区に出現した草本種の季節消長を調べ、類型した結果、春緑型、夏緑型、冬緑型、常緑型の4型に類型された。奥多摩の調査区では夏緑型以外は稀であったが、富士山南麓の調査区では全ての季節消長型がみられ、それぞれの種数は多かった。このような構成種の季節消長型構成の違いにより両群落間では種組成の季節変化パタンが異なっていることがわかった。富士山南麓の調査区に多い春緑型、冬緑型、常緑型の種について生態的特性をみると、多くの種が軽種子や浅根性であった。奥多摩の調査区では春緑型、冬緑型、常緑型が稀な理由として、リター堆積量が多く、軽種子の種の実生発生に障害となること、土壌表層の含水率が低く、浅根性の種の生育に不利であること、春季の林床が暗く、春季のみ展葉する春緑型の種の生育に不利であることが考えられた。
  • 永井 真紀子, 小池 文人
    セッションID: E207
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    日本全国の野外における,既存のニホンジカ食痕データを使用し,ニホンジカ(Cervus nippon)が採食する植物の属レベルで,嗜好性を定量化した.
     多くの入れ替わりはあるが,およその傾向は高茎草本,低木と萌芽,ササ,樹皮の順となる.ある地域にニホンジカが侵入した場合は,この順番に消費されてゆくと予想される. また,ニホンジカの採食植物の嗜好性レベルの夏と冬の差は,冷温帯では暖温帯より大きい傾向があった.今後,データが増えるに従い,植物の種レベルでの定量化や,地域による嗜好性の差の検討も可能となる.
  • 長沼 慶拓, 名取 俊樹, 増沢 武弘
    セッションID: E208
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ツツジ科シャクナゲ亜属のキバナシャクナゲとハクサンシャクナゲは最終氷期以降、標高に沿って帯状分布を形成してきたとされている。しかし近年、ハクサンシャクナゲの分布域が上昇し、キバナシャクナゲの分布域が狭まっているという現象が観察される。本研究では八ヶ岳において両種間の光獲得競争を定量的に明らかにし、今後の両種の動態について考察する。
    八ヶ岳連峰硫黄岳の北西斜面(標高2680m)では、両種は斜面中部の幅0.5mの範囲でわずかに混生していた。生産構造図を比較した結果、ハクサンシャクナゲの葉群は、より上層に位置し、シュート、葉ともに、より水平に展開することで光を効率よく吸収できることがわかった。また、ハクサンシャクナゲはC/F比(非光合成器官/光合成器官)が純群落で6.52と高く、混生地においても5.99とほぼ同じであったのに対し、キバナシャクナゲは純群落で2.50と低く、混生地では0.77に低下した。このことから混生地のキバナシャクナゲは、光を十分に獲得できないために非同化器官への投資が減少し、純群落と同じような群落構造を保てないと考えられる。また、混生地における10年間の年輪幅についてみると、キバナシャクナゲは純群落の約1/2程度で、葉数も明らかに少ないが、ハクサンシャクナゲは純群落とほぼ同じ程度を保っていた。このような結果からもハクサンシャクナゲが物質生産において優勢であると言える。
    しかし、春期の調査で、ハクサンシャクナゲの方が群落上層の葉の褐変率が高かったことから、積雪に覆われない当年シュートがダメージを受けていると予想された。今後の分布変化は、平均気温の上昇に加えて、変動が大きくなると予想される積雪量や融雪時期と密接な関係があると考えられる。
  • 藤村 善安, 冨士田 裕子, 加藤 邦彦, 竹中 眞, 柳谷 修自
    セッションID: E209
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     近年大量の土砂の流入と急速なハンノキ林の拡大が報告されている釧路湿原において、ハンノキ林拡大に代表される植生の変化と土砂流入の関係について明らかにするため、現地で植生と立地環境を調査し、また空中写真を用いて植生の変化を解析した。植生調査の結果ヤナギ林1タイプ、ハンノキ林3タイプ、草本群落3タイプが抽出された。植生変化との関係をみると、1974年以降にハンノキ林となった地点、およびハンノキ林が草本群落となった地点はそれぞれ一つの群落に区分された。立地環境をみると、河川の氾濫・土砂の流入は、植生の破壊・埋没および相対的な水位低下をもたらすような影響と、細粒質土砂の流入による栄養状態の変化といった2つの影響に分けて考える必要があることが分かった。ヤナギ林は植生の破壊・埋没および相対的な水位低下をもたらすような氾濫の影響のあった地点に成立し、ハンノキ林と代償植生を除く草本群落はそのような氾濫の影響の小さい地点に成立しており、代償植生はそれらの中間に位置した。草本群落は貧栄養で酸化的な環境に成立しており、ハンノキ林は貧栄養で酸化的な地点から富栄養で還元的な地点まで広く分布していた。しかし近年新しくハンノキ林となった地点は、富栄養で還元的な環境に限って成立していた。このことから細粒質土砂の流入などによってもたらされた富栄養な立地環境が、ハンノキの定着・生長に寄与していると考えられた。
  • 洲崎 燈子
    セッションID: E210
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     かつて薪炭林として利用されてきたコナラ二次林は日本の本州以南に広く分布するが、その林相や成立過程の地域的な特性についてはまだ分かっていないことが多い。愛知県名古屋市の約10km東に位置する豊田市では、三河高原と西三河平野の境界の丘陵上にまとまった面積のコナラ二次林が帯状に残存している。本研究は、このコナラ二次林の成立過程と現況を把握することを目的に行った。 1947年、1974年、2002年に出版された1/25,000地形図と、それぞれの地図の出版年前後に撮影された空中写真から、植生と土地利用の判別を行った。約290km2の全市域を、3次メッシュを4分割した約500×500 mS2のメッシュに分割し、各メッシュ内で最も広い面積を占めていた植生もしくは土地利用を判別した。 森林メッシュの割合は1947年には約49%だったが、2002年には約43%と1割以上減少していた。1947年には森林の8割がアカマツ林だったが、2002年にはコナラ林がその比率を占めるようになっていた。1974年に確認されたコナラ林の7割以上が、1947年にはアカマツ林であり、2002年のコナラ林メッシュの5割近くが1974年にはアカマツ林だった。クロマツ林のうち7割も、1974年から2002年にかけてコナラ林に置き換わった。現在見られるコナラ林のうち、1947年の時点で成林していた林分は5%に満たなかった。マツ林のコナラ林への変化の主な要因は、1947-1974年では薪炭林の管理放棄、1974-2002年ではマツ枯れであると推測された。コナラ林の立地や成立過程と植生の間には、明瞭な関係は認められなかった。
  • 田中 涼子, 小池 文人
    セッションID: E211
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     種プールとなる地域フロラの構成は、群集の種組成に影響を与えるといわれている。しかし、実際に地域フロラにどのような種が生育しているかということが、群集の種組成に影響を与えているかどうかを明らかにした研究は少ない。本研究では、生態的特性を基にフロラの種をPlant Functional Type(PFT)に分け、(1) 種がフロラから群集に入る選択率は2地域で同じ、すなわち、PFTごとに、(群集でのPFT種数/全フロラのPFT種数)が2地域で同じである、(2)フロラのPFT構成比とは無関係に、群集のPFT構成比は2地域で一定である、という仮説を検証することにより、地域フロラが群集の種組成に影響を与えているか否かを検討した。 調査地は、東京都日野市と岩手県江刺市の里地的景観における1km2の範囲内である。それぞれの地域でフロラ調査を行い、フロラの約25%の種を乱数表によって選択し、対象種とした。それぞれの種において、生態的特性(耐陰性、最高植物高、葉・花・実のフェノロジーと期間、寿命、一生における繁殖回数、種子散布距離、地表面における光合成期間の横への広がり、蓄積バイオマス量など)を計測し、それを基に種をPlant Functional Type (PFT)に分類した。それぞれのPFTをどのような比率で含んでいるかによってフロラおよび群集の組成を表現した。上記の仮説の検証は、森林群集、刈り取り草地群集、雑草群集といった相観レベルで行った。
  • 浅枝 隆, 藤野 毅, ダニエル シラ, キアン シオン
    セッションID: E212
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    オーストラリアNSW州に位置するMyall湖は面積68km2、最大水深4mの浅い湖である。湖底は大半をシャジクモ(Chara fibrosa、 Nitella hyalina)で覆われ、その下には2-4mの極めて貧酸素化した腐泥gyttja層が形成している。2003年8月-2004年12月に1-2ヶ月に一度の頻度で、湖内20箇所程度で植物バイオマスのサンプル、gyttjaを採取、さらに、採水を行って分析し、また、植物群落内の照度、gyttja層厚の測定、造卵器、造精器の数の分析を行った。湖内は極めて浅い水域を除き、上記2種のシャジクモの他に、フサモMyriophyllum sulsgineumとイバラモ Najas marinaの2種のみが存在していた。ただし、N.marinaはgyttja上の静穏な水域に存在するものの、M. sulsgineumの生育場所は、岬周辺の、流れが強くgyttja層の薄い場所に限られていた。また、新しく形成した表面には大量に生育した。こうした場所では、M.sulsgineumの群落のために光環境が悪化し、シャジクモの量は減少していた。シャジクモとN.marinaの生育場所は、gyttja層厚にはかかわりなく、それらのバイオマスの量は水深の影響を大きく受けていた。また、シャジクモは、年間を通して存在するのに対し、N.marinaは3-6月(秋)に大増殖し、その群落内ではシャジクモを圧迫するものの、その他の時期にはシャジクモが優占していた。以上のことを総合すると、シャジクモは、gyttjaを生産することでN.marina以外の沈水植物の進入を阻み、種の多様性を著しく減少させ、N.marinaは、増殖した期間には群落内では優占するものの、その期間は限られており、シャジクモ群落が安定に優占し続けていることがわかった。
  • 大橋 瑞江, Finér Leena , Domisch Timo , Risch Anita C., Jurgensen ...
    セッションID: F201
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    亜寒帯林土壌は、低温により大量の有機物を分解せずに蓄積していることから、炭素の貯蔵庫として地球環境の維持に貢献している.しかし近年、地球温暖化によって土壌有機物の分解が進み、これらの土壌から多量の二酸化炭素が放出する危険性が指摘されている.そのため、亜寒帯林土壌における二酸化炭素放出量の推定とその変動要因の解明はきわめて重要な研究課題とされてきた.ヤマアリ(Formica rufa group)は寒冷帯林に広く分布し、マツ等のリターを集積して小山上の大きなアリ塚を作る.アリ塚には数十万から数百万のアリが生活し、多量の有機物と栄養塩類が集積している.そのため、微生物による有機物分解とアリの呼吸によってアリ塚からは多量の二酸化炭素が発生している可能性があるが、これまで亜寒帯林でアリ塚からの二酸化炭素放出量を測定した例はほとんど見られない.そこで本研究では、アリ塚からの二酸化炭素放出量を測定するための専用チャンバーを新しく開発し、1.アリ塚専用チャンバーと市販の土壌呼吸チャンバーの測定精度の比較、2.アリ塚からの二酸化炭素放出量と土壌呼吸量の比較、を目的として、フィンランド亜寒帯林にて実験を行った.その結果、アリ塚専用チャンバーと土壌呼吸チャンバーは、二酸化炭素放出量の測定において同程度の精度を持つことが確認された.そこで塚からの 二酸化炭素 放出量と土壌呼吸量を比較したところ、アリ塚からは森林土壌よりも大量の二酸化炭素が放出していることが明らかとなった.したがって亜寒帯林では、アリ塚は二酸化炭素放出のhot spotとして機能していると考えられた.
  • 里村 多香美, 北山 兼弘
    セッションID: F202
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    環境傾度や土壌の差異は,森林地下部の菌類のバイオマスとどのような関係にあるのだろうか? この問いに答えるため,マレーシア キナバル山の5標高,2つの土壌タイプ(堆積岩,蛇紋岩)の合計10のサイトにおいて,森林地下部の菌類バイオマスを比較した.菌類バイオマスの指標にはエルゴステロールを用いた.両者は比例関係にあり,エルゴステロール量が多ければ菌類バイオマスが多いことを意味する.地下部の菌類の存在場所として根と土壌を区別するため,根中(極細根;直径 < 1mm,細根;1< 直径 < 2 mm)と地下部全体(根と土壌を含む)のエルゴステロール含量を分析し,それらの値から土壌中のエルゴステロール含量を算出した. 土壌中のエルゴステロール量は,土壌間・標高間の違いは顕著ではなかったが,堆積岩の標高1700 mの立地のみが飛びぬけて高い値を示していた.極細根のエルゴステロール量は,堆積岩では標高1700 mの立地で最も高い凸型の分布を示していた.逆に蛇紋岩では標高1700mが最も低い凹型の分布を示していた.細根ではピークの位置がずれ,標高2700mの立地を境に堆積岩では凸型,蛇紋岩では凹型の分布を示していた.存在部位別にみると,いずれのサイトもエルゴステロールの半分以上が土壌中に存在していた.根に含まれるエルゴステロールと土壌に含まれるエルゴステロールには正の比例関係があったが,その傾きは土壌によって異なった.富栄養である堆積岩では根に対して土壌に含まれるエルゴステロールの比が高いのに比べ,貧栄養の蛇紋岩では低い傾向があった.栄養塩の低い土地では,生態系(植物)が生産性を維持するためにはより多くの共生菌類を根に維持しているのかもしれない.
  • 藤田 正雄, 藤山 静雄
    セッションID: F203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    不耕起栽培は、植物残渣をすき込まないため土壌動物や微生物の餌や生息場所となる有機物の集積層が地表面に形成される。このことが、作物の生育・収量、土壌動物群集、土壌の物理化学的性質に及ぼす影響を検討するために、不耕起栽培と耕起栽培の試験区を設け、比較・検討した。[材料および方法]試験圃場は、1998年より、化学肥料を使用せず、有機質肥料で栽培した。2002年には2因子(耕起法、肥料の種類)、2水準、2反復(100m2×8区)の試験設計(L8)で栽培を開始した。さらに03年からは、緑肥間作の有無を加えて、3因子、2水準で栽培を行っている。スイートコーン、エダマメ、ナス、秋ダイコンを栽培した。作物の生育・収量、大型土壌動物群集および土壌の物理化学性について調査した。[結果および考察]収穫時のスイートコーンの地上部重量は、不耕起区は耕起区に比べて02年では72.6%であったが、04年には95.7%に増加した。エダマメでは同87.2%から96.7%に、ナスでは同75.0%から112%に増加した。このように、不耕起栽培の継続によって、耕起区との生育および収量差が減少した。ダイコンの全重は、02、03年は耕起区が高かったが、04年に不耕起区で263%と高かった。秋季の豪雨による湿害が耕起区で顕著にみられたことが原因と考えられる。採集された主な動物群は、ミミズ、クモ、ムカデ、甲虫(オサムシ、コガネムシ、コメツキムシ、ハネカクシなど)であった。耕起区の生息密度は、条間部分と通路部分とも耕起処理後減少し、不耕起区の生息密度は耕起区に比べて常に高かった。不耕起区では捕食性動物の割合が高く、耕起区では植食性動物の割合が高かった。04年の春からミミズの生息密度が増加し、土壌中に生息するフトミミズ属に加えて、堆肥中に生息するシマミミズがみられた。
  • 菅  尚子, 加藤 正吾, 小見山  章
    セッションID: F204
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    森林生態系の炭素固機能を評価するために、生態系純生産量の推定が盛んに行われている。生態系純生産量は土壌呼吸量のうちの動物・微生物の呼吸量と森林の純生産量(樹木の成長量+枯死量+被食量)より推定することができるが、年次変動についての研究報告は少ない。本研究では、過去5年間の生態系純生産量の年次変動とその要因を明らかにすることを目的とし、生態系純生産量を構成する土壌呼吸量、成長量、枯死量と気象要因(降水量、気温、日照時間)との関係を解析した。
    調査地は岐阜県荘川村六厩の110年生の落葉広葉樹林とした。この調査地には1983年に当研究室によって100m×100mの調査区が設けられている。調査区内の25地点で土壌呼吸速度と環境要因(地温、土壌含水率)を測定した。樹木の成長量は2年分の毎木調査結果と相対成長関係式より求めたバイオマス量から、枯死量はリタートラップに入った落葉落枝の量から、それぞれ求めた。気象データ(降水量、気温、日照時間)は、気象庁の観測データを用いた。
    過去5年間の生態系純生産量には、0.51t C/ha/yrの年次差があった。2000年から2004年のデータをもとに、土壌呼吸量、成長量、枯死量と生育期間中(5月_から_9月)の各気象要因との関係をみると、土壌呼吸量と平均気温の間に有意な相関関係がみられた。また、枯死量と平均気温の間には、平均気温の上昇によって枯死量が増加する傾向がみられた。成長量は、各年の気象要因の変化に関係なく変動の幅は小さかった。土壌呼吸量、枯死量は生育期間中の平均気温を要因としてともに増加しているため、生態系純生産量は、マイナスの因子となる土壌呼吸量とプラスの因子となる枯死量によって、ほぼ一定になると考えられる。
  • 衣笠 利彦, 彦坂 幸毅, 広瀬 忠樹
    セッションID: F205
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    高CO2によって一般に光合成速度が促進されるが、その促進は必ずしも繁殖収量(生育終了時の繁殖器官重)の促進に結びつかない。これは繁殖収量が、光合成産物の獲得だけでなく、その繁殖分配や呼吸消費の変化にも影響されるためだと考えられる。そこで高CO2にともなう繁殖収量の変化を、光合成産物の獲得、繁殖分配、呼吸消費の高CO2応答の結果として解析した。
    一年生草本オオオナモミ(Xanthium canadense)を大気CO2濃度(約360ppm)と高CO2濃度(約700ppm)下で生育させ、生育期間中に定期的に刈り取りを行った。刈り取りと同時に各器官の呼吸速度の測定を行い、乾重成長量と呼吸消費量を合算して光合成量を算出した。
    高CO2による個体光合成量の増加は、栄養成長期間中にみられたが繁殖成長期間中にはみられなかった。光合成産物の繁殖分配割合にも高CO2の影響はなかったが、繁殖収量は増加した。これは繁殖器官における光合成産物の呼吸消費割合が、高CO2によって低下したためであった。この呼吸消費割合の低下は維持呼吸量の低下によるものであり、それは高CO2生育個体の繁殖器官の初期成長が低いことと季節にともなう気温低下に起因すると考えられた。これらの結果は、繁殖収量の高CO2応答において、呼吸消費と気温の変化が重要な役割を持つことを示している。
  • 小川 一治, アド ブレドウ ステファン , 横田 岳人, 萩原 秋男
    セッションID: F206
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    葉量の林分発達にともなう変化を明らかにするため、3年生ヒノキ苗を植栽後10年間追跡した。林木個体の葉量はパイプモデル(Shinozaki et al. 1964a, b)を考慮することにより、生枝下高幹断面積を毎月測定することにより、代用した。平均生枝下高幹断面積は飽和型の成長をし、林齢が9年生以降一定値を示した。したがって、9年生以降は個体の平均葉量はパイプモデルから一定であると推測される。平均生枝下高幹断面積をa、林分密度をpとすると、林分生枝下高幹断面積yは次式、y=ap          (1)で示される。毎月のデ-タから作成した林分生枝下高幹断面積yの季節変化は、植栽後数年間は一般的な飽和型の成長曲線を示したが、その後は毎年振動した。このyの振動は毎年の成長期における生枝下高幹断面積の増加と成長休止期における枝の枯れ上がり現象によるものと考えられた。林分生枝下高幹断面積yは林分の発達にともない急激に増加し、林齢が9年生で最大値に達し、その後ゆるやかに減少した。このように、yの林齢にともなう変化に最大値が存在することは、林分葉量の変化に最大値が存在し、林分光合成量が最大に達する林齢が存在することを示唆する。この林分では、植栽後数年で自己間引きが毎年起こっており、(1)式より林分密度pの減少により、yの最大値が存在することが明かとなった。また、平均幹材積vと林分密度pとの間には、v=Kp(1-(p/p0)n)m (2)が成立し、自己間引き指数αの値は1.571となり、3/2に近かった。このことは、本林分では自己間引きの3/2乗則が成立することを示すが、グラフから判断して、林分が十分閉鎖してかなり林齢が経過してから3/2乗則は成立することが分かった。
  • 右田 千春, 千葉 幸弘, 韓 慶民, 毛塚 由佳理, 丹下 健
    セッションID: F208
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    気候変動に伴う陸上生態系の物質生産の変化予測には、光合成など生理機能の環境応答特性の把握が不可欠である。本研究では、コナラ林冠における光合成生産の環境応答の季節変動を明らかにすることを目的として、林冠内の異なる環境条件に配置された個葉の光合成特性の時空間的変動および光合成生産の解析を行った。調査林分は茨城県つくば市にある森林総合研究所構内の27年生コナラ林である。まず、観測用タワー内にある全供試木5個体の樹冠を一辺50cmの立方体に区切って、全葉数をカウントし、葉群の空間分布構造を明らかにした。供試木のうち3個体について、樹冠上層(地上高14m)、樹冠下層(同12m)、樹冠下に着生している後生枝、計3層から測定葉を選定した。03年5月から04年11月までの着葉期間に葉およびシュート伸長等のフェノロジーを観測し、携帯型光合成測定装置(LI-6400, 米国Li-Cor社)を用いて、光強度,二酸化炭素濃度、温度をそれぞれ段階的に変化させて光合成速度を測定し、パラメタリゼーションを行った。林内微気象は、光センサーおよび温度センサーにより林冠上、中、下層の日変化をモニターし、相対湿度は森林総研構内の気象データを用いた。測定葉の光環境は、葉の真上で撮影した全天空写真から開空度を求め、PPFDに変換した。04年には自然状態での環境要因(温度、相対湿度、葉内二酸化炭素濃度)に対応した光合成の日変化も測定した。葉内二酸化炭素濃度と光合成速度の関係(A-Ci曲線)から、光合成パラメータVcmax、Jmax、Rdの2年間の季節変化を明らかにした。また、光合成パラメータと環境要因から個葉光合成速度の日変化をシミュレートし、実測値との比較検討を行った。さらに、葉群構造を用いて林冠光合成生産へのスケーリングを行い、時空間的変動について解析した。
  • 千葉 幸弘, 角張 嘉孝, 西上 愛, 右田 千春
    セッションID: F209
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     森林におけるCOフラックス及び炭素収支を評価する上で、葉群構造、林分密度、個体サイズ分布等は少なからず影響を及ぼす。葉の占める割合が相対的に大きければ、光合成量が呼吸量を大きく上回るであろう。同じ葉量でも、生理的ストレスによって光合成能力が低下する場合もあり得る。また林冠や個体サイズ等の幾何学的構造もCOフラックスを変化させ得る。 森林への炭素吸収量を評価するため、現在、複雑な森林の構造的な特徴と環境要因による光合成や呼吸などの生理的応答を組み込んだ統合的なモデル化を進めている。個体サイズ分布によって変化する、林冠(葉群)構造、非同化器官(枝・幹)の重量や表面積分布の推定方法を提示する。さらに、立木密度を加味した林分成長モデルによって、各器官(葉、枝、幹、根)のバイオマスとその垂直分布構造の推定を行う。こうして得られる林分構造モデルをベースにして、同化器官である葉群を空間配置することができる。 そして群落内部のCOフラックスを規定する光合成および呼吸消費については、Farquhar型プロセスモデルを利用して葉群の光合成・呼吸を推定し、木部呼吸については木部表面積の推定式をもとに森林スケールの呼吸量を推定する。継続的にモニターされている気象データを与えることによって、森林のCO収支について、既存のNPPデータとの比較検討を行い、林分密度の違いが葉群構造に及ぼす影響、それに伴う光合成パラメータの変化等、林分構造と森林動態がCO収支に及ぼす影響を検討する。
  • 伊勢 武史, ムーアクロフト ポール
    セッションID: F210
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    年輪幅の変動には気候などの外的要因との相関に加えて森林動態などによる内的要因に関するさまざまな情報が含まれている。しかし、由来と時間スケールの違うシグナルが重なり合っているためその分析は難しい。この研究では、過去の気候などの補助的なデータを用いずに、気候と森林動態のそれぞれが年輪幅の中期変動(約10年から30年周期)に及ぼす影響を区分することを試みた。カナダ中部の大陸性北方林からクロトウヒ(Picea mariana)が生育する林分を選定し、それぞれの林分に3つのプロットを設定し優占的な個体から年輪試料を採取した。データを波形分析し移動平均の発展形Stand Dynamics Indexを用いることで、エラーに強く森林生態に即した中期変動を抽出した。年輪の中期変動が気候に由来しているなら各プロットの変動には同時性があると仮定し、時間依存性ANOVAでプロットの違いによって説明される分散の割合、つまり森林動態による影響の割合を得た。結果、泥炭地では平均44.9%の分散がプロットの違いによって説明された一方、鉱質土では平均0.0%の分散しか説明されなかった。泥炭地のクロトウヒは気候の中期変動と比較的切り離されていたが、鉱質土のプロット間では年輪幅の中期変動に同時性があることが分かった。生育環境のよい鉱質土では生長率の個体差が大きいこともあり、プロットごとに違う森林動態によって説明される分散は検出されなかった。北方林ではほかの気候帯と比べて温暖化が著しいと予測されるうえに、気候変動によって泥炭の分解が促進され温暖化がさらに進む正のフィードバックが懸念されている。樹木の成長率に及ぼす気候変動の影響の度合いの研究は、現在開発中の北方林の植生・気候・物質循環の統合的モデルの中で活かされる。
  • 西上 愛, 千葉 幸弘
    セッションID: F211
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    近年,森林に対してCO2吸収源としての期待が高まっており,CO2収支の計算に必要な森林の光合成を推定することは重要な課題である。光合成に大きく関わる葉の量や分布など林冠の構造がわかれば,森林レベルの光合成の推定が可能になる。そこで本研究では短時間で広範囲の森林の構造を知ることができる航空レーザースキャナを用いて,ブナ林冠の葉面積分布,葉量分布等を推定することを目的とした。
    研究対象地は岩手県二戸郡安代町に位置する森林総合研究所安比森林気象試験地の冷温帯性落葉広葉樹の二次林である。本試験地は標高825m,平均傾斜5.7ºの緩傾斜地に位置し,気象観測タワー周辺の林分はほとんどブナによって占められている。まず,林分構造を知るために毎木調査を行い,葉重量や葉面積などの推定のために伐倒調査を行った。毎木調査では,固定プロット1(25m×25m)と2(50m×50m)内の胸高直径(地上高1.3mの直径)5cm以上の林木を対象に樹種を記録し胸高直径と樹高を測定した。伐倒調査では,プロット外で10本のブナを伐倒し,高さごとの幹,枝,葉の重量,葉面積を測定した。次に,航空レーザースキャナによる計測システムを用いて,気象観測タワーを中心にした1km×1kmの範囲を対象に,落葉前の9月中旬と落葉後の11月上旬に計測を行った。この計測システムでは,測定機器から地上に向かってレーザーを発信し,葉や枝,地表面などで反射して最初に戻ってくるFirst pulseと最後に戻ってくるLast pulseを受信する。これらの0.5mグリッドデータから林冠表面積,林分の縦断構造を推定した。また,固定プロットの林冠の葉面積分布,葉量分布を推定し,伐倒調査と毎木調査の結果から求めたそれらの値とを比較した結果等を報告する。
  • 北山 兼弘, 清野 達之, 中園 悦子, オン ロバート
    セッションID: F212
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     広域の熱帯雨林のBiomass推定は、地上調査のみでは困難である。そこで衛星からのデータを用いて、熱帯雨林のBiomassを推定する手法について考えた。マレーシア、サバ州の低インパクト伐採林であるデラマコット、従来の方法での伐採林のタンクラップ、原生林、の三種類の森林を対象として、Biomassの推定を行った。
     まず反射スペクトルから指数を作成し、地上調査からのBiomass値と比較したところ、近赤外域光(IR)と中間赤外域光(MIR)を組み合わせた指数(NDSI)が最も適していることがわかった。この指数は葉の水分含有量に関連した値であるとされており、次の式で算出される。
      NDSI=(IR-MIR)/(IR+MIR)
     しかしこの指数は、Biomassが一定値を越えた場合に飽和することがわかった。また、樹冠の状態が似ている低インパクト林と原生林に対し、重度の伐採が行われている林分では、同じ推定式ではBiomassが過剰に推定されることがわかった。
     そこで画素ごとに樹冠の多様度を示す値F(n)を定義した。この値は次のように定義される。
    1:対象画像の植生域に対して教師無し分類を行い、最大256クラスに分類する。
    2:対象画素を中心としたn×n画素の中に幾つの異なるクラスがあるかを数え、その値を  F(n)とする。
     この値を上記の三種類の森林から算出したところ、F(n)の値は原生林、低インパクト林、重度の伐採林、の順に大きくなった。これは、伐採によって樹冠の状態にばらつきが生じていることに対応している結果である、と考えられる。そこでこの値を用いてNDSIによる推定値を補正したところ、より適切なBiomass推定値が得られることがわかった。
  • 東 浩司, 戸部 博
    セッションID: G201
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     花の匂いは被子植物の多様化をもたらした植物と昆虫との相互関係を仲介する重要な要素のひとつである.演者らはすでにアケビA. quinataとミツバアケビA. trifoliataおよびその雑種とされるゴヨウアケビA. x pentaphyllaの花の匂いの化学分析から、アケビは虫媒花的であり、ミツバアケビは風媒花的であること、また、ゴヨウアケビは質・量ともに中間的であることを示してきた.さらに、アケビの花の匂いは、その化学的特性から二つのタイプに分けられることも明らかになった.本研究では、さらにアケビのサンプル数を増やすことで、アケビの花の匂いの二つのタイプがはっきりと区別されるものなのかどうかを検討した.アケビの花の匂いのGC-MS分析を行った結果、22サンプル(個体)中7サンプルはβ-ミルセンが主成分(47%_から_92%)で、かつリモネンがほとんど含まれなかった(<3%)(タイプ1).一方、10サンプルではβ-ミルセン(36_から_53%)とリモネン(33_から_50%)が約1対1の割合(比率0.85_から_1.39)で含まれていた(タイプ2).さらに今回新たに、β-ミルセン(20_から_26%)とリモネン(57%_から_76%)が1対2_から_4(比率0.25_から_0.45)の割合で含まれているタイプが見られた(タイプ3).さらに、アケビ属3種すべてのサンプルの分子系統解析(葉緑体DNA8,800塩基)を行った結果、アケビとミツバアケビはそれぞれ単系統群になり、アケビでは種内変異は見られなかった.ミツバアケビでは種内多型が見られた.ゴヨウアケビでは5個体中3個体がアケビとまったく同じ塩基配列を示し、2個体はミツバアケビのクレード内に位置した.このことから、ゴヨウアケビはアケビとミツバアケビの両方向から雑種を形成していることが示された.
  • 加藤 正吾, 川窪 伸光, 山本 隆史, 細井 和也, 小見山 章
    セッションID: G202
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    「付着根型つる植物」は、林縁にのみ生育する「巻きつる型つる植物」に比べ、林床という暗い光環境下で、発芽・成長し、他の樹木の根元から幹に付着して、登攀し、自ら光環境を変えていく独特の生活型をもっている。つまり、「付着根型つる植物」の成長は、支持樹木への到達前と到達後とでは光屈性が異なる可能性がある。今回は、キヅタの匍匐シュートの伸長様式から、光傾度に対する光屈性の特徴について報告する。
     岐阜市でキヅタ1個体を採取し、節毎に切り分け、挿し木を行った。このキヅタ挿し木苗を用い、実験室内で人工光源(トルーライト)によって光傾度に対する光屈性を調べた。
     人工光源下に移動後、シュートが伸長した個体を対象に伸長様式の傾向をみたところ、匍匐シュートの伸長方向は光傾度に対して、シュートの水平方向への伸長方向の両側面とシュートの鉛直上向きの面・背面、それぞれについてほぼ同一の光環境を保ちながら、暗い方へ向かって成長した。したがって、付着根型つる植物のキヅタ匍匐シュートの成長様式は、水平方向だけではなく、垂直方向においても負の光屈性を持って匍匐・伸長する性質があることがわかった。
  • 鈴木 祐子
    セッションID: G203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    クリンソウ(Primula japonica)はサクラソウ科サクラソウ属の多年生草本で、北海道・本州・四国の山間地の渓流沿いに生息する日本固有種である。日本のサクラソウ属植物の多くは絶滅が危惧されており、クリンソウも開発による湿地の減少や園芸目的の過度の採取により全国各地で個体群が衰退し地域によっては絶滅危惧種に指定されている。しかし本種を対象とした生態的研究例は少なく、保全にとって有効となる基礎的な情報の収集が必要とされている。そこで、クリンソウの開花と結実に関する種の特性を明らかにすることを目的として奈良県の御蓋山と春日山の2つのクリンソウ集団を対象に調査を行い、以下の結果を得た。サクラソウ属植物の多くは自家不和合性を伴った異型花柱性を持つが、調査地の集団では異型花柱性と自家不和合性のどちらも認められなかった。しかし、袋かけ処理をすると生産種子数が自然状態のものよりも有意に減少し、ポリネーターの存在の重要性が示唆された。クリンソウは花茎の下側から段状に花を輪生する。開花期に個々の花の開花期間(花の寿命)を調査し、段によって花数や花の寿命がどう変わるかを検討した。その結果、花の寿命は花数の多い中位置の段で短くなり、花数の少ない上下段で長くなった。この花数と花の寿命の関係は受粉効率と繁殖コストに関連があるのかもしれない。また個体レベルでの開花はサイズの大きな個体から順次始まったが、終花日はサイズと無関係で、多くの個体がほぼ同じ時期に終花を迎えた。個体の繁殖成功は、個体がつける総花数だけでなく、花あたりの成熟種子数にも影響された。ロゼット面積が10倍になると個体あたり総花数は約60倍に、花あたり種子数は約20倍になった。その結果、個体あたり成熟種子数はロゼット面積が10倍になると約1000倍に増えた。
  • 宮城 佳明, 衣笠 利彦, 彦坂 幸毅, 廣瀬 忠樹
    セッションID: G204
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    高CO2条件下では、光合成速度が促進されるため多くの植物で繁殖収量が増加する。しかし、その促進程度には種間差があることが先行研究により指摘されている。オオオナモミでは、高CO2条件下では栄養器官の成長は促進されるが、種子生産は促進されない。これは、種子生産が窒素によって律速されているからだと考えられた (Kinugasa et al.2003 Oecologia 137:1-9)。そこで、我々は窒素の獲得、利用の違いが繁殖収量の高CO2応答に種間差をもたらすと考え、11種類の一年生草本を高CO2条件(700ppm)と大気CO2条件(370ppm)にしたオープントップチャンバー内で育て、各々の種から繁殖収量を得た。繁殖収量を、繁殖期間の長さ、繁殖期間中の成長速度、および繁殖器官への資源転流率の積として表し、繁殖器官の窒素量を、繁殖期間の長さ、繁殖期間中の窒素獲得速度、および繁殖器官への窒素転流率の積として解析した。高CO2処理により有意に繁殖収量が増加したものが7種、変化しなかったものが4種であった。ほとんどの種で、収量の増加は繁殖期間中の成長速度の上昇で説明された。また、その中の多くの種で、繁殖期間中の窒素獲得速度が上昇しており、高CO2条件による獲得窒素の増加量と繁殖収量の増加量の間には正の相関があった。特にマメ科植物の窒素獲得量の高CO2応答は大きく、窒素固定による影響が示唆された。これらのことから、繁殖期間中に獲得、利用できた窒素量が高CO2条件下で高い植物ほど繁殖収量の増加が大きいと結論された。
  • 吉田 丈人
    セッションID: G205
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ある生物において限られた資源が二つ以上の形質に分配されるとき、その形質間にトレードオフが期待される。資源は複数の元素あるいは要素で構成されるという事実にも関わらず、過去のトレードオフのモデルは、単一の通貨(例えば、エネルギー、炭素)を仮定してきた。これらのモデルは、形質間に直線的な負の相関関係をしばしば予測してきた。一方、例えば生物間競争の理論など、トレードオフが重要な働きをする理論的研究の多くは、裏付けとなる生物学的メカニズムを特定せずに、直線的あるいは非線形といった様々なトレードオフ曲線を仮定してきた。これは、実際の生物でトレードオフの形がよくわかっていないことに大きく起因する。
     本研究は、二つの資源構成元素(窒素と炭素)が二つの形質に分配されるトレードオフのモデルを提案し、生態化学量論がトレードオフの形を決める上で重要であることを示す。このモデルのトレードオフ曲線は、資源と形質それぞれの元素組成(stoichiometry)に依存して、様々な形(線形、非線形)を見せる。さらに、資源の元素組成がことなる環境において、各形質への最適な資源分配を予測するために、生態化学量論にもとづくトレードオフと、適応度への各形質の貢献を表した適応度関数を結びつけた新しい理論的枠組みを提案する。このモデルは、適応度関数が一定であるにも関わらず(適応度への各形質あたりの貢献が変わらなくても)、資源と形質の元素組成に依存して、形質の最適な組合せが大きく変化することを示す。本研究は、最適形質を予測する理論が、それらの形質がどれくらい適応度に貢献するかという一面だけでなく、ことなる資源構成元素がどのように形質に分配されるかという"ボトムアップ"の面も考慮に入れる必要があることを示している。
  • 酒井 聡樹, 酒井 暁子, 藤岡 宏太
    セッションID: G206
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    親個体が種子生産に投資できる窒素量と炭素量の比は、親個体によって異なりうる。では、自身の窒素/炭素比に依存して、どのように種子生産をすることが有利なのであろうか? 炭素は呼吸により失われるのに対し、窒素は保持することが出来る。そのため、窒素に比して炭素の少ない個体では、炭素を確保するため、呼吸による炭素の消失を抑えることが有利となるのではないだろうか?この観点から、窒素/炭素比に依存した種子生産戦略を解析した。 調査は、仙台市青葉山に自生するウバユリを対象に行った。77個体について、茎の窒素量と種子の窒素量・乾燥重量(炭素量の指標;以下同様)を測定した。種子生産中に消失した乾燥重量も推定した。 茎の大きさ(炭素量の指標)の影響を取り除いて解析したところ、以下のことがわかった。茎の窒素量が多い個体(窒素に比して炭素の少ない個体)ほど、1) 種子生産中に呼吸により失われる乾燥重量は少なく、2) 生産種子の総乾燥重量は多く、3) 生産種子の総窒素量も多かった。それだけ、呼吸による乾燥重量の消失を抑え、炭素資源を有効に利用したということである。次に、茎の窒素量が、生産種子数・種子あたり乾燥重量・種子あたり窒素量のどれに影響しているのかを解析した。その結果、茎の窒素量が多い個体ほど生産種子数が多いものの、種子あたり乾燥重量と種子あたり窒素量は変化しないことがわかった。さらに、生産種子数が多い個体ほど、呼吸による乾燥重量の消失が少なかった。 これらのことは、茎の窒素量が多い個体は、種子数を増やすことで呼吸による資源消失を抑えていることを示唆する。このように植物は、種子数を調節することで、自身の窒素/炭素比に依存した種子生産を行っていると結論した。
  • 千田 雅章, 名波 哲, 伊東 明, 山倉 拓夫
    セッションID: G207
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ナンキンハゼは単性雌雄同株の落葉樹である。その花は花序を形成し、花序の付け方に2タイプある。そして個体によってそのタイプが決まっている。一方は枝の末端に雄花と雌花から成る花序をつける。このタイプの個体では雌花が咲いてから雄花が咲く(雌性先熟)。他方は枝の末端に雄花のみからなる花序をつけ、その雄花が咲いた後その基部からさらに新しく短いシュートを数本伸ばしその先端に雄花と雌花から成る花序をつける。このタイプの個体では枝の先端にまずつく雄花が咲き、その後短いシュートの雌花、雄花の順に開花する(雄性先熟)。本研究ではナンキンハゼの繁殖に注目し調査を行った。1)開花フェノロジーを見ると雄性先熟個体の雄花と雌性先熟個体の雌花、雄性先熟個体の雌花と雌性先熟個体の雄花の開花期はよく同調しており、個体内での雄花と雌花の開花期の重なりはともに非常に少なかった。2)雄花数と雌花数の比率を雄性先熟個体と雌性先熟個体で比べると、雄性先熟個体の方が雌花数の比率は高かった。3)奈良県御蓋山に生育するナンキンハゼの野生個体群について胸高直径が5cm以上の個体の開花を観察すると、未開花、雄花のみ、雄性先熟、雌性先熟の4タイプの個体が見られた。それぞれのタイプ間で胸高直径を比較すると、未開花個体と雄花のみの個体は雄性先熟個体と雌性先熟個体に比べて有意に小さかった。4)胸高直径に基づき大小2つのクラスに分けると、未開花個体、雄花のみの個体はサイズが大きくなるとその個体数が減少した。また小さいサイズクラスでは雌性先熟個体の方が雄性先熟個体に比べて個体数が有意に多かった。しかし大きいサイズクラスではその偏りがなくなった。雌花の比率が高い雄性先熟個体は雌性先熟個体に比べ繁殖コストが高いと思われる。よって雄性先熟個体として開花できるサイズの閾値が、雌性先熟個体よりも大きいのかもしれない。これが小さいサイズクラスにおいて雌性先熟個体に個体数が偏っている一因になっていると考えられる。
  • 松岡 法明, 長谷川 大輔, 相場 慎一郎
    セッションID: G208
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    屋久島の照葉樹林帯の極相林と皆伐後に再生した二次林において、19年間の動態と地形の違いに伴う森林構造と種組成の変異を調べた。また、斜面崩壊後の初期植生、植林地および植林地伐採後の植生についても調査を行い、撹乱要因の異なる林分の遷移過程について考察した。調査は極相林4か所、二次林7か所、スギ林1か所、スギ植林地を伐採した後に自然再生した森林1か所、崩壊地5か所に設定したプロットで行った。プロットの面積は、崩壊地は100 m2、その他は400 m2である。各々のプロットにおいて成木(胸高直径2 cm以上の木本種)及び稚樹(胸高直径2 cm未満、樹高50 cm以上の木本種)・実生(樹高50 cm未満の木本種)・草本層(高さ2 m以下の維管束植物)の調査を行った。また、土壌分析・土壌中の埋土種子検出も行った。これらのデータを、過去に行われた一部の調査区での成木調査データと合わせて解析した。斜面崩壊後の一次遷移は、埋土種子密度の減少と草本層の発達により、実生の発生が困難と考えられ、先駆種となる落葉樹については、実生発生後の生育が制限される可能性も示唆された。このため、多くの高木層構成種の生育は遅れるが、アブラギリのみは成木段階に達しており、本種が屋久島における一次遷移の有力な先駆種であり、過去の斜面崩壊の履歴を知る上での指標種ともなりうると考えられた。これに対し、人為的な森林伐採後の二次遷移は、繁殖体が残存し、土壌環境も変化が少ないため、森林の回復が非常に速い。しかし、優占種や林冠構成種、森林動態に地形の違いによる変異が見られ、小面積単位でみた二次林の自然再生過程は、地形による物理的条件の違いと、それに伴う撹乱前の植生の違いに影響を受けていると考えられた。また、森林伐採後にスギ植林地へと改変された林分では、森林環境が自然林に比べ顕著に変化することが示唆された。この森林環境の変化が、屋久島のスギ植林地伐採後に自然再生した林分に、アブラギリが純林状に優占する要因の一つと推測された。
  • 米田 健, 水永 博己, 西村 千, 藤井 伸二, ムクタール エリザル, 堀田 満, 荻野 和彦
    セッションID: G209
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    スマトラ中部の熱帯雨林において1981年から2004年までの間に実施した16回の現地調査結果に基づき,1990年代以降に当該地で多発している異常乾燥が森林の動態に及ぼす影響を評価する.林分の基底面積(BA)は,調査前半の10年間においてはほぼ直線的に増大したが,後半10年では一定値を保つ傾向を示した.異常乾燥の発生件数の多少から分けた3期間の間で林木の生長特性(成長速度,枯死速度,新規加入速度)を比較した結果,それら生長特性が異常乾燥に大きく影響されていることを明らかにすることができた.BAの変化は,調査林の主要24属の構成にも大きく影響した.すなわち,肥大成長速度が全体的に高い軟材性の樹種は22年間でBA優占度が高まり,成長速度が低い樹種が多い硬材性樹種の優占度は減少した.これは,異常乾燥により増大した林冠木の枯死・落葉による林内環境の変化が,後継樹間の競争を高めた結果と推察する.後半10年間の林分BAは一定となる傾向を示したが,その構成において軟材性樹種がしだいに優占度を高めていることから,それらの材密度や樹高特性を考慮すると,質量としての生体量はしだいに減少しつつあると評価できる.対象とした調査林は,スマトラの西海岸に近い標高600mの丘陵帯に分布する雨林であるが,同様な現象が東海岸の雨林においても発生していることを確認できた.また,本調査林域内での高標高帯の雨林においても,同様な傾向を示唆する結果を得ている.これらのことは,近年の異常乾燥がスマトラ島のかなり広域な雨林において,熱帯雨林の後退現象を誘発していることを示唆している.
  • 井田秀行 秀行, 加藤 充
    セッションID: G210
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     日本海側の多雪地ブナ林(長野県カヤノ平)において,樹木群集の葉フェノロジーを調べ,その観点からブナが多雪地で優占林分を形成する要因について考察した。
     葉フェノロジーの観察は,1999年と2003 年の両年,春から秋にかけて1ha(2003年は0.5ha)の方形区内の樹木(胸高直径5cm以上,全19種550本;2003年は全17種202本)について約1-4週間間隔で双眼鏡を用いて行った。なお,1999年は春の消雪時期が例年よりも早く(5月上旬),2003年は例年並み(5月下旬)であった。
     2年間の観察の結果,林冠木では樹種間および両年間で葉フェノロジーパターンに顕著な差異はみられなかったが,雪に埋もれる下層木の中では,特にブナが消雪時期に応じた展葉パターンを示していた。例えば,消雪が早かった年,ブナの展葉は他樹種よりも2週間程度遅れていたが,展葉速度(展葉の開始から完了までの期間)は最も速く他樹種とほぼ同時期に展葉が完了した。それに対し,消雪が平年並みの年は,ブナと他樹種の展葉の開始および完了時期はいずれもほぼ同じであった。よって,多雪環境下でのブナの優占林分の形成には,このようなブナ下層木の柔軟な展葉パターンが重要な役割を果たしていることが示唆された。
feedback
Top