日本生態学会大会講演要旨集
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  • 野田 隆史, 北川 弘美, 仲岡 雅裕, 堀 正和, 山本 智子
    セッションID: G211
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    遷移とは「季節的ではない一方向性の種組成の変化」と定義される概念で、一般に陸上植物や水界の固着生物では普遍的に生じるものと認識されている。しかし、そもそも遷移は一般的現象なのか?その生じやすさの時空間特性とその決定機構はどのようなものなのか?については未だ生態学者の共通認識は得られてはいない。
    小さな時空間スケールでも調査可能な岩礁潮間帯固着生物群集は遷移研究のモデルシステムとして数多くの研究が蓄積されてきた。しかしこの系においてすら前述の問いに対する答えは得られてはいない。本講演では、時間的に同一な大量の野外調査データ(1500群集:6地域×5海岸×5岩礁×10潮位)を元に、岩礁潮間帯固着生物群集での遷移(が生じるかどうか)の空間変異特性を解析した結果を紹介する。
    調査は太平洋岸の冷_から_暖温帯に選定した6地域の5海岸に見られる5つの岩礁斜面で行なった。そして各岩礁に縦1m横50cmの「天然区」と、その約50cm横に同じ高さと面積の「遷移区」を設け、遷移区では、2003年7月に一斉に岩表面の生物を剥離したのち焼却し無生物化とした(天然区は無処理)。そして天然区と遷移区をそれぞれで縦10等分した範囲(10×50cm)を単位調査範囲とした(潮位に依存してわずかの高さの違いで群集構造が変化するため)。そして単位調査範囲ごとに固着生物の種別の被度を同年と翌年の10月に測定した。得られた同一岩礁の同じ高さの4データ(2年分の天然区と遷移区)間の相対優占度のBC類似度から、「遷移した群集(群集構造が一方向的に変化した例)」を判別した。現在は「遷移した群集」の空間分布特性、その種組成の特徴、および「遷移の生じやすい環境条件」について解析中であるが講演ではこれらを紹介する。
  • 坂本 健太郎, 山田 義朗, 田村 健, 本間 陽子, 小池 直行, 浅枝 隆
    セッションID: G212
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    信濃川中流域に広がる減水区間において水環境改善のためダム試験放流が実施されている。夏季試験放流期間中に減水区間内で、ダム直下地点に加え下流方向に河床勾配が異なる3地点について付着藻類の成長および放流による藻類の剥離に関する調査を行った。付着藻類の成長は、ダム直下地点では試験放流のたびに剥離するため藻類量がピークとなるまでの期間が最も長くなった。また、水質調査結果から栄養塩濃度も最も高いためピークの藻類量も最大となった。栄養塩濃度は下流にいくにつれ低下し、ダム直下より下流3地点ではほぼ一定となっており、この間で消費されていることが示唆された。次に、ダム直下地点のすぐ下流の河床勾配が大きい地点では、放流によって河床付近の掃流力が最も大きくなるため糸状藻類が剥離した。これらダム直下からの2地点は藻類の初期のまだ糸状藻類が優占していない場合を除いて、ほとんどが剥離した。しかし、下流の2地点では試験放流による藻類の剥離は、糸状藻類が優占している藻類量が大きいとき以外はあまり見られなかった。これは河床勾配が緩くなり、放流水が伝播する途中で水勢が弱まってしまうが、ある程度成長し糸状藻類が優占した状態ならば、水流の抵抗を受けやすいため剥離することを示している。一方、試験放流通過後には、栄養塩濃度が高いダム直下地点では日照時間が短かったとき以外は放流前よりも藻類量が増加したが、栄養塩濃度の低下する下流3地点では増加、減少、停滞と明確な違いは見られなかった。これは、剥離後の成長が光よりも栄養塩濃度の影響を強く受けるためである。したがって、人為的なダム放流によって藻類の剥離効果を検討する場合には、河床付近の掃流力だけでなく放流される栄養塩濃度にも注目することが重要である。
  • 東浦 康友, 山口 博史, 石原 通雄, 小野 菜々子, 時下 進一, 山形 秀夫
    セッションID: H201
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    male-killingは雄の胚や幼虫が死んで雌の子のみになる現象で、鱗翅目では20種で観察されている。私達は北海道美唄市のマイマイガでmale-killingを見つけ、この性質が母性遺伝することを報告した(Higashiura et al. 1999)。ミトコンドリアDNA(mtDNA)も母性遺伝するので、male-killing雌と正常雌のmtDNAを調べたところ、male-killing雌は本州型のハプロタイプで、正常雌の北海道型のハプロタイプとは塩基配列が2_%_も異なっていた。Goldschmidt (1930, 1934) は、子が雌ばかりになる交配を報告している。すなわち、本州の雌に北海道の雄を掛け合わせて得られた雌に北海道の雄を戻し交配すると雄になるべき子は死んで雌のみが得られる。私達も青森産の雌を用いてこの戻し交配の追試を試みたところ雄は1頭も現れず、雌ばかりとなった。対照区とした、2世代目に本州タイプの雄を掛け合わせた場合は性比1:1であった。重要なことは、本州雌と北海道雄を交配した第一世代の性比が1:1であったことである。もし、他のmale-killingで報告されているような細胞質共生細菌が本州雌にいたならば第一世代でmale-killingとなるはずである。さらに、male-killing雌に本州雄を交配すると性比1:1となった。これは抗生物質をもちいないmale-killingの治癒の初めての例と思われる。なお、このmale-killing雌にはWolbachiaなどの細胞質共生微生物はいないことは確認されている。したがって、もはやmale-killingという名称はマイマイガの場合にはふさわしくなく、「単性雌」と呼ぶことにする。性比1:1で子を産む正常雌は「両性雌」と呼ぶ。この単性雌が北海道美唄市の個体群では10_%_程度の頻度で存続している。この単性雌が北海道のマイマイガの進化に与える影響について考察する。なお、山口他(2005:本大会講演)は石狩低地帯以西の北海道のマイマイガは本州型のmtDNAハプロタイプであることを報告している。
  • 山口 博史, 東浦 康友, 石原 通雄, 小野 菜々子, 時下 進一, 山形 秀夫
    セッションID: H202
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     北海道に生息しているマイマイガのミトコンドリアDNA (mtDNA) ハプロタイプは本州のものと 1075 塩基中 17 塩基異なり、約 100 万年前に分岐したと推定されている。しかし、北海道でのみ確認されている雌の子しか残さない単性雌の mtDNA ハプロタイプは、北海道産であるにも関わらず本州型であった。そこで北海道マイマイガの遺伝的構造を明らかにするために、北海道全域のマイマイガ mtDNA を解析および単性雌の分布を調査した。 北海道には遺伝的に異なる2つの系統が存在していた。札幌市付近の石狩低地帯より東の個体群は全て北海道型であったが、低地帯以西の個体群では全て本州型のハプロタイプだった。両系統の分布の境界であると予想される石狩低地帯付近の個体群では、本州型と北海道型とが二次的接触による混生個体群の形成、および単性雌が確認された。Goldschmidt (1934) の理論によると、混生個体群では系統間交雑が起こり、その結果本州型のmtDNAを持つ個体は単性雌として存在していると考えられる。一方、低地帯以西の個体群における mtDNA ハプロタイプは全て本州型であったが、混生個体群ではないので単性雌は一匹も確認することはできなかった。 混生個体群でありながら小金湯の個体群においてのみ、本州型のハプロタイプであるにもかかわらず両性雌である個体が確認された。この違いの原因を解明するために、各個体群で雄の成虫を捕獲し解析を行っている。
  • 高須 夫悟
    セッションID: H203
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    鳥類の育児寄生すなわち托卵には、異なる種へ托卵を行う種間托卵と、托卵相手が同種である種内托卵がある。種内托卵は種間托卵と異なり、托卵を行う個体が別の個体に托卵される可能性がある。托卵相手が同種であるがゆえ卵模様による托卵の有無の判別がフィールドでは困難であるなどの理由により、カッコウなどによる種間托卵ほど実態は明らかにされていない。近年の研究は、想像以上に多くの鳥類が種内托卵を行っていることを示している。ハタオリドリ科Ploceus属の多くの種は種内托卵を行うが、中でも、キタメンガハタオリ Northern Masked Weaverは、1)各雌は固有の卵模様を持つ、2)模様が異なる卵を認識排除する、3)個体間の卵模様の変異が極めて大きい、ことがフィールド研究により知られている。雌固有の卵模様は他個体の卵を認識排除する手がかりとしての「自筆署名」の役割を果たしていると考えられているが、自分だけに固有の署名は、托卵先で自分の卵が相手に認識排除されることを意味し、種内托卵のうま味を損なうものである。Ploceusに属する多くの種が、極めて大きな卵模様の集団内変異を持つ理由は明らかにはされていない。本研究では、種内托卵の習性と卵模様を手がかりにした托卵認識排除能力の進化、そして、これに伴い卵模様の個体間変異が如何に変化したかを理解する手がかりを得るために、個体ベースモデルを用いたモデル解析を行う。そして、キタメンガハタオリのように、署名としての卵模様が進化する条件について考察する。
  • 奥田 武弘, 野田 隆史, 仲岡 雅裕, 山本 智子, 堀 正和
    セッションID: H204
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    種多様性の緯度勾配は生態学において最も普遍的なパターンのひとつである。過去の研究から、岩礁潮間帯固着生物群集では海岸間の希少種の入れ替わりが地域多様性の緯度勾配を生み出すことが明らかとなっている (Okuda et al. 2004)。このパターンを生み出すメカニズムとして、1)低緯度ほど種の空間的入れ替わりが大きい、2)低緯度ほど相対優占度曲線の希少種の部分が増加し、種のプールからの確率的な抽出のみで種多様性が決定される、の2つの仮説が考えられる。そこで、岩礁潮間帯固着生物群集を対象に空間スケールを階層的に配置した調査を行い、種多様性がランダムな要因のみで決定されるかどうかを、H1:種のプールからのランダムな分布のみで種多様性が決定される、H2:観察された種多様性パターンは調査デザインによる人為的な効果によって生じる、の2つの帰無仮説を用いて検証した。太平洋岸(31_から_43°N)に6地域、各地域内に5海岸、各海岸内に5個の調査プロットを設定し、固着生物を対象として出現種数を3回の季節で調査した。各季節において各空間スケール(コドラート、プロット、海岸、地域)の種の豊度を求めた。また、帰無仮説を検証するために、各季節の調査データを基にH1:種の出現頻度のみで分布が決定されている群集、H2-1:海岸内でコドラートをランダムに組み替えた群集、H2-2:地域内でプロットをランダムに組み替えた群集、の3つのランダム群集を作成し、種の多様性を実際の群集と同様に求めた。それぞれ1000回ランダマイズを繰り返し、種多様性の平均値と95%信頼区間を求めた。ランダム群集の種多様性を実際の群集と比較した結果、両者は有意に異なっていた。このことから、2つの帰無仮説は棄却できると考えられる。
  • 小橋 寿美子, 野島 彰洋, 藤井 紀行, 堀 信行
    セッションID: H205
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    ブナ(Fagus crenata) の葉緑体DNAを用いた系統地理学的な解析によれば、本種には大きく日本海側と太平洋側に分かれて分布する2つの系統が存在すること、さらに本州中部地域では日本海側の系統が太平洋側に張り出し、太平洋側の系統が隔離分布することが示された(Fujii et al. 2002*)。そこで本研究では、日本海側の系統と太平洋側の系統が接触していると予測される関東西部から甲信・静岡地域に着目し、1)両系統の境界地域における葉緑体DNAハプロタイプの分布を明らかにすること、2)接触が確認された集団内でのハプロタイプの地理的構造を明らかにすることを目的とした。関東西部,甲信・静岡地方において、26集団199個体のブナの葉を採集した。また両系統のハプロタイプが混在していた集団のうち2集団(三国峠と三方分山)では細かいスケールでの採集を行った。葉緑体DNAのハプロタイプの決定はPCR産物断片長多型および制限酵素切断断片長多型を用いて行った。解析の結果,26集団中22集団はType D・E(日本海側系統)とType F(太平洋側系統)のいずれか一方のハプロタイプを持ち、残りの4集団はType EとFが混在していた。両者の分布にはモザイク状の構造は認められず,大きく東西に分かれる地理的構造が見られた.また細かいスケールの解析からType EとFは三国峠周辺では約5_から_10kmの間に,また三方分山周辺では約3kmの間で混在し,両者が比較的狭い範囲内に収まることがわかった。両タイプの分布は比較的明瞭な境界をもって接触していると考えられる。* Fujii et al. (2002) Plant Systematics and Evolution. 232:21-33.
  • 谷内 茂雄, 石井 励一郎
    セッションID: H206
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    近年、個々の生態現象に特徴的なスケールを越えてトランススケールで、生態系・生物多様性を総合的にとらえるこころみが始まっている。これらの研究のスケール軸を以下のように分類し、その相対的な関係に着目しその基盤となる概念的枠組みを提案したい。1)「生物的スケール(Biological Scale: BS):生物には、種に固有の空間スケール(個体サイズ、繁殖分散、生息域)と、時間スケール(成熟、寿命、個体群存続時間)」2)「観測するスケール(Observational Scale: OS):実際に生態系・生物群集を観測するときに、観測・測定に用いる時間・空間スケール。空間スケールとして方形区、プロット、リモートセンシングなど。時間スケールとしては短期センサスからLTERまで」BS、OSとも空間スケールは個体_から_地球で規定される。前者は個体スケール、繁殖・分散スケール、種として生息可能な物理環境によって決まるスケールなどに分類することができ、それぞれには種間差がある。OSは観測手法や規模によって規定される。野外観測データはある固定されたOSに基づいており、観察された種のBSとの相対的な関係によって異なるメカニズムに基づく現象を観察している可能性があるため、着目する群集のBSの種間差を考慮したOSの選択が重要となる。一方、環境攪乱の評価には、「攪乱スケール(Disturbance Scale: DS)」が必要となる。例えばある種の存続への影響はDSの絶対値ではなくその繁殖・分散のスケールに対するDSの相対的な規模が重要となる。あるスケールの撹乱が生物多様性に与える影響は該当空間に生息する各種の繁殖・分散のスケールとの関係を相対化することから推測できるであろう。生物多様性のパターンや傾向を説明する既往の仮説を以上のスケール軸に照らして位置づけるレビューをおこない、それらをつなぐ枠組みを提案したい。
  • 谷亀 高広, 吹春 俊光, 鈴木 彰, 大和 政秀, 岩瀬 剛二
    セッションID: H207
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    ラン科植物はリゾクトニア属に属する不完全菌類が菌根菌となることが広く知られているが、近年それ以外の担子菌が菌根共生する場合のあることが明らかにされている。〈BR〉 そこで本研究ではラン科植物の菌根共生に関する知見の集積を目的としてサイハイラン属のサイハイランとモイワランについて菌根菌の同定を行った。サイハイランは日本各地の丘陵地帯の湿った林内に自生する緑色葉を持つ地生ランである。一方、同属のモイワランは深山の沢筋に自生する無葉緑ランである。サイハイランは神奈川県藤野町のコナラ林において、モイワランは青森県佐井村のオヒョウ、カツラ林において、それぞれ1個体を採取した。菌根菌分離は、リゾーム内に形成された菌根菌の菌毬を分離培地(Czapec・Dox+酵母エキス寒天培地)上へ取り出し、そこから伸張した菌糸を単離培養するという方法(Warcup&Talbot 1967)を適用した。その結果、サイハイランより5菌株、モイワランより2菌株の菌根菌が分離された。それぞれ1菌株についてオガクズ培地で前培養し、これを赤玉土に埋没させることで子実体形成を誘導し、その形態的特徴から菌根菌の同定を試みた。両種から分離された菌株は、子実体の観察の結果、いずれもヒトヨタケ科ヒトヨタケ属キララタケ節に属することが明らかとなった。また、野外から採取したそれぞれのランのリゾームを子実体形成を誘導した菌の培養菌株と共に赤玉土に植え込み、菌根菌を感染させたところ、それぞれのランでリゾームの成長および塊茎の形成を確認した。〈BR〉ヒトヨタケ科の菌がランの菌根菌として同定された例は無葉緑種のタシロランがあるが(大和2005)、他は報告例がない。本研究によって、新たにサイハイラン属について、緑色葉を持つ種と無葉緑の種がともにヒトヨタケ属の菌を菌根菌とすることが明らかとなった。
  • 大和 政秀, 岩瀬 剛二
    セッションID: H208
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    自然生態系では、多くの植物がアーバスキュラー菌根菌(AM菌)との共生によって、リン酸などの土壌養分を獲得している。AM菌はポット栽培条件では宿主特異性をほとんど示さないが、各生態系にはそれぞれの環境や植物相に対応したAM菌相が形成されている。このため、自然生態系の復元を目的とした緑化を行う際にはAM菌相について配慮することが望ましいと思われる。本研究では京都府瑞穂町の落葉広葉樹林を試験林とし、試験林のAM菌相および試験林の表土を感染源として作成したヌルデおよびリョウブのAM菌感染ポット苗のAM菌相をそれぞれ調査し、試験林のAM菌群集がどの程度ポット苗に導入されているのかについて検討した。AM菌相の解析は、感染根から抽出したDNAについて、AM菌に対して高い特異性をもつプライマーAM1とユニバーサルプライマーNS31を用いたPCRを行い、18SrDNA部位の約550 bpの領域を増幅後、これらのPCR産物を解析することによって実施した。試験林からは計394個のクローンが得られ、これらはRFLP解析によって5グループに分けられた。各グループから2割以上のクローンを無作為に選抜し、塩基配列を得、データベース上の類似配列とともに系統樹を作成し、各塩基配列データの類縁関係を検討したところ、すべてGlomus属に属し、各グループがそれぞれクラスターを形成することが明らかとなった。また、ヌルデとリョウブのAM菌感染苗について、AM菌相を上記と同法によって調べたところ、計172クローンが得られ、上記の5グループのAM菌のうち4グループが検出された。以上の結果から、試験林のAM菌相がポット苗に概ね維持されていることが確認された。このようなポット苗を植栽することによって、多様なAM菌を植栽地へ導入することができるのではないかと考えている。
  • 深沢 遊, 大園 享司, 武田 博清
    セッションID: H209
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    木材の分解は、材を構成する有機物であるリグニンとホロセルロースが主に菌類によって化学的に分解されることにより進行する。野外では枯死材の分解過程を通じて、定着する菌類群集の遷移が見られる。森林生態系における枯死材の分解過程を菌類の働きから理解する上で、枯死材の分解過程と菌類遷移の対応関係を調べる必要がある。本研究では、ブナ枯死材の物理・化学性と菌類の子実体の発生を調査し、枯死材における分解過程と菌類相の推移との対応について検討した。調査地は京都府北部の冷温帯ブナーミズナラ天然林である。直径10cm以上のブナの生木および枯死材を計29本選び、生木は0、枯死材は外見的特徴から4段階の分解段階に分類した。それぞれの材について、密度、含水率、有機物濃度、養分濃度の測定を行った。このうち18本について、子実体の発生と種を1年間記録した。材の密度は分解段階が進むにつれて減少していた。また、同じ分解段階でも倒木は立枯れに比べ密度が低い傾向があった。材の含水率は立枯れよりも倒木において高かった。立枯れについてのみ比較すると、リグノセルロース複合体に占めるホロセルロースの割合を示すリグノセルロース指数(LCI)は分解段階間で差がなく、分解過程を通じてリグニンとホロセルロースが等比率で分解していることがわかった。菌類相については、分解段階が進むにつれてハカワラタケが優占する群集からツキヨタケが優占する群集への移行がみられた。これら2種はいずれもリグニンとホロセルロースを等比率で分解する白色腐朽菌である。以上から、ブナ枯死材では分解過程を通じて白色腐朽菌の定着によりリグニンとホロセルロースが等比率で分解されると予想された。
  • 鹿野 秀一, 千葉 秀樹, 高木 茂人, 土居 秀幸, 菊地 永祐
    セッションID: H210
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     宮城県鳴子火山の火口湖潟沼は、強酸性(pH 2.0_から_2.2)を示すため、浮遊生物は緑藻(Chlamydomonas acidophila)と浮遊細菌群集だけからなっている。この湖は基本的には二循環湖であるが、春から夏の成層期には、湖底からの地熱により温度成層は弱く、1_から_8日間の全循環が起きる年もある。成層期では表水層には溶存酸素が見られるが、深水層では湖底からの硫化水素が供給より、無酸素状態になる。一方、秋季循環期に入ると全層で溶存酸素が見られ、硫化水素は検出されなくなる。このような水質変化は、浮遊微生物群集の現存量と種構成に大きな影響を与えると考えられるので、湖水の水質調査と浮遊微生物群集の現存量と分子系統による群集構造の解析を行った。 水質と生物のサンプルは水深約20mの湖心で層別に採取した。湖水から群集DNAを抽出し、16S rDNAをPCR法で増幅した。これよりクローンライブラリーを得て、RFLP法によりグループわけして、代表株について部分塩基配列を決定し、系統解析を行った。 クロロフィル濃度は、成層期では表水層にのみ検出でき、秋季循環期では混合が起きた直後は低いが、10_から_11月にかけて増加した。細菌群集は、成層期初期では表水層と深水層ともにAcidiphilium acidophilum がほとんどを占めていたが、成層状態が続くと表水層と深水層で細菌組成が異なった。循環期になると全層でAcidithiobacillus 属に近縁な2種類の細菌の割合が増加した。成層・循環状態に伴って溶存酸素や硫化水素濃度が変化し、ソウ類の現存量や浮遊細菌群集の組成が変化したと考えられる。
  • 伊藤 昭彦, 村岡 裕由, 小泉 博, 三枝 信子, 村山 昌平, 山本 晋
    セッションID: P1-001
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    陸上生態系の炭素収支を定量化するためのフラックス観測が各地で行われているが、そのデータを生物地球化学・生理生態学の観点から解析するモデルは開発の途中段階にある。本研究では冷温帯落葉広葉樹林(岐阜県高山市)を対象に、渦相関法で測定された生態系正味CO2交換(NEE)を再現するモデルに関する改良について報告する。従来のモデルでは個葉の生理特性は文献値に基づいて通年一定のパラメータで表現されていたため、ガス交換の季節変化を表現する上で誤差要因となっている可能性があった。2003年に実施されたキャノピータワー上での個葉ガス交換測定データを用いて、比葉重(LMA)、25℃での最大カルボキシレーション速度(Vcmax)、最大カルボキシレーション速度と電子伝達速度の比(Jmax/Vcmax)、暗呼吸速度(Rd)を経験的パラメタリゼーションで表現した。キャノピーの優占種であるナラ類(Quercus)とカンバ類(Betula)について展葉期・成育期・落葉期の3期間に分け、上記パラメータ値を展葉からの時間の関数で与えた。個葉特性の季節変化を考慮したモデルは、昼間に観測されたNEEについて年間を通じて良い再現性を示した(r2=0.87)。各パラメータについて個別に感度を検討したところ、Jmax/Vcmax変化の影響は比較的小さく、LMAおよびVcmaxの季節変化はNEEへの影響が大きく、モデルの再現性を高める上で重要と考えられた。一方、本研究のモデル推定は展葉期には観測値との差が比較的大きくなる傾向があり、この点は上層木だけでなく下層植生の寄与も含めて検討が必要である。
  • 内田 雅己, 中坪 孝之, 神田 啓史, 小泉 博
    セッションID: P1-002
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    北極陸域生態系の炭素循環を解明する一環として,高緯度北極域における地衣類の光合成特性,呼吸特性およびバイオマスを調査し,一次生産量の推定を行うことを目的とした.
    調査地はノルウェー,スピッツベルゲン島のニーオルスン(79oN)にある東ブレッガー氷河後退域のモレーン上とした.本調査地は,樹枝状の地衣類であるトゲエイランタイCetrariella deliseiが優占する.2000年7月下旬から8月中旬にかけて,一定の光および温度条件下で,本種の純光合成および暗呼吸速度の測定を赤外線ガス分析装置(Li-Cor,Li-6252)を用いた通気法で測定した.さらに,光-光合成,水分-光合成,温度-光合成,および温度-暗呼吸曲線を求めた.
    Uchida et al.(2002)のモデルに従い,上記の各曲線の回帰式,野外の光,地衣体の温度および降水量のデータから無雪期間の一次生産量を推定した.その結果,1995-2003年の無雪期間における地衣類の一次生産量の平均値は2.2 gC m-2と見積もられた.本調査地に優先する維管束植物(キョクチヤナギ)および蘚類(カギハイゴケ)の無雪期間における一次生産量は49.2 (Muraoka et al., 2002)および7.4 (Uchida et al., 2002) gC m-2 と報告されていることから,トゲエイランタイの炭素固定量は,上記2種よりも著しく少ないことが示唆された.
    地衣類の一次生産に対する温度の影響を調べるために,生産量推定モデルにおける地衣体の温度を6℃上昇させ,無雪期間の一次生産量を推定した.その結果,6℃の温度上昇は,一次生産量を著しく減少させることが推察され,温暖化による温度上昇は,高緯度北極の地衣類の一次生産に少なからぬ影響を与えることが示唆された.
  • 梶本 卓也, 松浦 陽次郎, 大沢 晃, Abaimov Anatoly P., Zyryanova Olga, 石井 篤, 近藤 千眞, ...
    セッションID: P1-003
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     中央・東シベリアの永久凍土連続分布域には、近縁2種のカラマツ(L. gmelinii, L. cajanderi)が優占する疎林が分布している。これまでの調査から、成熟した林(100年生以上)では、根が全現存量に占める割合は30-50%と北方林の中でも顕著に多く、同化産物のアロケーションが根にかなり偏っていることがわかっている。このことは、個体の成長や林分発達が地上部の光獲得競争よりも地下部での土壌養分、とりわけ窒素をめぐる競争に支配されていることを示唆している。本研究では、こうした点を裏付けるために、中央シベリアの成熟した林(約100年生)や山火事更新直後の若齢林(10年生前後)を対象に新たに伐倒・伐根調査を行い、既存のデータも加えて、アロケーションや根系発達が時系列でどう変化するのか検討した。その結果、100年生林では根が現存量に占める割合はやはり30%以上と高く、各個体の根系水平分布面積は樹冠投影面積の3-5倍に達していた。また林分レベルで推定された根系分布面積合計、単位土地面積当たり1を大きく上回り、根系がすでにほぼ閉鎖していることが示唆された。一方、更新直後の実生や若木では、根の割合は個体サイズとともに低下し、成長良好な大きめの個体で15-20%と成熟木よりかなり少なかった。この永久凍土地帯では、山火事更新後、コケや地衣、低木等林庄植生の回復に伴って、地温が低下し活動層の厚さも徐々に減少する。そして、もともと限られた無機態窒素の利用も制限されていく。こうした根圏環境の時系列変化を踏まえてカラマツ個体のアロケーションを考えると、土壌養分吸収の制限が少ない山火事後の更新初期段階では地上部の成長に偏っているが、数10年を経ると地上部から根へ大きくシフトし、その時期を境に地下部での個体間競争が起こって、やがては根系が閉鎖した林分状態に達することが推察される。
  • 小山 里奈, 山中 典和, 徳地 直子
    セッションID: P1-005
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     鳥取砂丘では1950年代からクロマツ等を植栽し防砂林としてきたが、後に防砂林帯の背後に位置する砂丘自体に草本類の侵入といった影響が現れてきたため、天然記念物・観光資源である砂丘を保護する目的で防砂林の一部除去が行われた。しかし、防砂林除去後も砂丘の草原化の進行が問題となっており、1991年からは除草も行われている。 先行研究により、草本種の砂丘への侵入と定着には砂の移動が重要な環境要因として働き、適度な砂の堆積が必要であることが明らかにされている。しかし、砂丘の草原化に関わる植物の養分利用に関する特性は未解明で、窒素に関して非常に貧栄養であるとされる砂丘において、植物が侵入してくる機構には不明な点が残されている。さらに、砂丘の砂中の総炭素・窒素現存量は非常に小さいとされているが、植物が利用可能な無機態窒素に関しては未解明である。本研究では、砂丘における植物の窒素源を明らかにするため、砂丘の砂の窒素無機化特性と植物の窒素利用に関する生理的特性の把握を試みた。 まず、砂丘の砂の窒素無機化特性については、汀線からの距離と表層からの深度が砂中の無機態窒素現存量、窒素無機化・硝化速度、含水率、pH等に及ぼす影響を調査した。植物の窒素利用に関しては、砂丘に自生する植物8種(ウンラン、カワラヨモギ、ケカモノハシ、コウボウムギ、ネコノシタ、ハマニガナ、ハマヒルガオ、ハマゴウ)を対象に、硝酸態窒素利用の指標として硝酸還元酵素活性を測定し、植物の利用している窒素源について窒素の形態別の把握を試みた。今回の発表では、これらの結果を比較することによって、砂丘の草原化と草本を中心とする砂丘生態系が維持される機構について窒素養分循環の観点から考察を加える。
  • 中西 麻美, 稲垣 善之, 柴田 昌三, 平田 啓一, 境 慎二朗, 大澤 直哉
    セッションID: P1-006
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     森林において伐採を行うと,資源量に対する植物個体間の競争は緩和されるが,風当たりが強くなって水ストレスを受ける場合もあるなど,林内環境の変化により残存木が影響を受けることが予想される.伐採による影響を把握することは,環境変動に対する樹木の応答を知る上で必要である. 本研究では,京都市にある京都大学上賀茂試験地内のアカマツ枯死木の伐採以外は手入れがされずにヒノキが優占種となっている二次林において,小面積の伐採がヒノキ落葉の季節性と窒素濃度に及ぼす影響を評価することを目的とした.2000年1月に林内の斜面上部,中部,下部それぞれで小面積の皆伐を行い,伐採区と対照区で3年間リターフォールを採取した.累積落葉量が落葉開始から年間落葉量の50%に達するまでの日数(落葉期間)を年ごとにロジスティック式から求めた.落葉期間は対照区,伐採区ともに斜面下部ほど長い傾向があった.伐採区の落葉期間は対照区に比べて斜面上部で短くなり,中部と下部では長くなった.3年間のヒノキ落葉の平均窒素濃度は対照区の斜面上部,中部,下部で4.8,4.3,6.4mg/g,伐採区では4.3,4.6,7.2mg/gであった.落葉期間および落葉の窒素濃度ともに,伐採区と対照区での違いが斜面下部ほど大きく,上部と中部では小さかった.落葉期間と窒素濃度には有意な正の相関関係があり,短期間に葉を落とすほど落葉の窒素濃度が低い傾向がみられた.斜面下部では落葉期間が増大して落葉前の窒素の引き戻しが少なくなったために落葉の窒素濃度が増加したと考えられた.ヒノキは伐採による環境変化に対して落葉の季節性や窒素濃度を変化させており,その変化の仕方は斜面位置による立地条件の違いによって異なると考えられた.
  • 藤吉 正明, 内田 雅己, 中坪 孝之, 小泉 博
    セッションID: P1-007
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    森林生態系の土壌炭素フローに対する植物細根の影響を明らかにするために、富士山亜高山帯針葉樹林(シラビソ林)において細根の呼吸速度の定量を行った。細根の呼吸速度を推定するため、2002年11月に異なるタイプの処理区をシラビソ林内に設置した。処理区の種類は、根切りを行い、その後根を再侵入させた区(細根区、n=8)と根切りを行い、塩ビ管を土壌に埋設することによって根の侵入を阻害した区(根無し区、n=8)である。また、対照区として、根切りを行わない区(n=10)も設けた。処理後1年半経過した2004年4月から11月まで毎月1回、携帯式赤外線ガス分析器(Li-6400)を用いて、各区の土壌呼吸の測定を行った。細根の呼吸速度の推定は、細根区の土壌呼吸速度の値から根無し区の土壌呼吸速度の値を差し引くことによって求めた。細根区、根無し区および対照区の土壌呼吸速度は、3区とも雪解け後の4月下旬から7月上旬まで急激に上昇し、その後 11月下旬まで徐々に減少する傾向であった。土壌呼吸速度は、細根区が四季を通して最も高く、常に根無し区よりも有意に高かった。対照区の土壌呼吸速度の値は、4月下旬から8月中旬までは細根区とほぼ同程度であったが、9月上旬に急激に低下し、その後11月下旬までは根無し区とほぼ同じ値となった。細根の呼吸速度は、3区の土壌呼吸と同様の季節変化を示し、0.55(4月下旬)_-_3.44(7月上旬)μマイクロmol m-2 s-1の範囲であった。7月上旬において土壌呼吸(対照区)に対する細根の呼吸の占める割合は、72%であった。これらの結果より、本林分において細根の呼吸は、土壌呼吸の主要な構成要素であるとともに、土壌炭素フローに大きな影響を与えている可能性が示唆された。
  • 稲垣 善之, 倉本 惠生, 酒井 敦, 川崎 達郎
    セッションID: P1-008
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    樹木の種子生産は年変動を示す。窒素は種子を生産するために必要な養分物質であり,樹木の窒素利用様式が種子生産の年変動に影響を及ぼすことが予想される。本研究では高知市にある森林総合研究所四国支所構内の1960年に植栽されたヒノキ・スギ人工林において,1991年7月から2003年6月まで13年間にわたってリターフォールを採取し,種子生産量の年変動を明らかにした。また,落葉の窒素濃度から窒素利用様式の年変動を明らかにし,種子生産に樹木の窒素利用様式が及ぼす影響を検討した。観測期間のヒノキ・スギの種子生産量はそれぞれ1.5 - 26.5 g m-2,1.1 - 10.5 g m-2であり,それぞれ18,9倍の年変動を示した。スギとヒノキの種子生産量はほぼ同じような2年周期の変動を示し,1995,99,2001年に多く,偶数年では少なかった。種子の窒素濃度は種子生産量と同様に2年周期で変動し,種子生産の多い年に高く,種子生産の少ない年に低かった。したがって,種子生産に投資された窒素資源が多いほど,窒素濃度の高い質のよい種子を多く生産すると考えられた。1992年から2年ごとに区切った6期間における落葉の窒素濃度と種子生産量にはスギとヒノキのどちらでも有意な負の相関関係がみられ,落葉の窒素濃度が低いほど種子生産が多い傾向を示した。落葉の窒素濃度が低いほど,落葉前に引き戻しによって多くの窒素が樹体内に転流されると考えられる。この場合,転流によって引き戻した窒素資源を種子生産に配分することが可能になると考えられた。
  • 石川 真一, 町田 由利香
    セッションID: P1-009
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    玉原高原ブナ林(標高1300m)と群馬大学構内アカマツ・クヌギ・コナラ混交林(標高130m)において、土壌CO放出速度を測定した。測定は、Vaisala社の携帯型拡散式CO計(GM70)を装備した密閉型土壌呼吸チャンバーを用いて行った。GM70は分解能が10ppmとやや粗いが、このチャンバーを用いることによって、5分から15分(データは15秒間隔で自動記録される)で1地点の測定を行うことができた。各調査森林においてそれぞれ20地点を固定して、月に一度、日中の約3時間以内に測定を完了した。各調査森林で月ごとに平均すると、群馬大学構内混交林においては、土壌CO放出速度は5・6月に最も高く(1.4 g m-2 hr-1)、12月に最も低く(0.2)なった。玉原高原ブナ林においては、7月から8月に最も高く(2.1)、積雪の残る4月に最も低く(0.2)なり、ついで11月に低く(0.4)なった。地温と土壌CO放出速度の間には、両調査森林いずれにおいても、有意な正の相関がみられた。土壌含水率と土壌CO放出速度の間には、群馬大学構内混交林において有意な正の相関がみられ、玉原高原ブナ林では弱い負の相関がみられた。玉原高原ブナ林では、土壌含水率が高い季節には地温が低かったため、この負の相関はみかけ上のものであると考えられる。一方、土壌CO放出速度に地温や土壌含水率では説明できない地点間差異が生ずることもあり、モグラの穴の有無やリターの厚さの差異など、生物学的要因の関与が示唆された。Vaisala社が今年発売する分解能5ppmのCO計(GMP343)を用いれば、さらに精緻な解析を行うことができるようになる。
  • 鈴木 英治, 相場 慎一郎, 山田 俊弘, 永野 徹, 渡辺 名月
    セッションID: P1-010
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ボルネオ島ブルネイのツトン地区に、長さ約2kmの浅い湖を中心としたマリンブン湖自然遺産公園がある。湖の周囲は標高20m前後で、微地形に応じて凹地に湿地林、丘状地に低地林がある。50-100年前に焼畑などに使われたと思われる丘の若齢林にP4、丘の老齢フタバガキ林にP1、泥炭層が未発達の若齢湿地林にP3、泥炭湿地の老齢林にP2を、1999-2000年に設定した。各面積は1haで、幹周囲≧15cmの樹木の座標、直径、種名を調べた。2004年まで再測し、4年間の森林動態を解析した結果を報告する。
      種類数は2000年時で、丘の若齢林のP4では175種が出現したが、フタバガキ科は皆無だった。丘の老齢林のP1では225種あった。若い湿地のP3は119種、古い湿地のP2は78種あった。つまり丘よりも湿地は多様性が低かった。また、丘では古い森林で多様性が高かったが、湿地林では逆であった。その後4年間にどのプロットでも、およそ100種当り0.5種が消滅し1種が加わり、種多様性は増加傾向にあった。 優占種はP4でGironniera nervosa、P1はShorea foraminifera、P3とP4はDryobalanops rappaと Dactylocladus stenostachysであった。
     個体数は種多様性とは逆に、湿地が丘より大きかった。主因は林床生ヤシ類の繁茂にあった。丘の若齢林のP4は個体数が4年間ほぼ安定していたが、他の区では減少し、いずれも老齢林の減少が著しかった。胸高断面積合計(BA)も、湿地のほうが丘よりも大きく、老齢林で減少し若齢林で増加していた。
      まとめ:湿地林は丘の林と等しいかそれ以上の現存量を持つが、多様性は1/3程度しかない。老齢林ではBAが減少傾向にあり、森林構造としては最大の発達段階にあると思われるが、種数は増加傾向にあり、種多様性はまだ安定状態とはいえないようだ。
  • 林 明姫, 周 承進, 中根 周歩
    セッションID: P1-011
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    Experimental evidence from a wide variety of ecosystem shows that growth in elevated [CO2] usually stimulates soil respiration (King et al. 2004). Over recent years, a number of soil-warming experiments have indicated average increases of 20% in soil-carbon efflux rates across a range of temperature increases, with greater increases over the first few years, but no significant increases in longer-term studies (Kirschbaum 2004). Relatively few studies have addressed the responses of soil respiration to both elevated [CO2] and elevated air temperature. We investigated elevated [CO2] and temperature impacts on soil respiration in six large Open-Top Chambers (4 x 4 x 5 m) situated at an agriculture land in Hiroshima University. 36 saplings of 3-year-old Quercus glauca were planted in the ground in each OTC in October 2002 and grown under different conditions with the following treatments from April 2003: 1, 1.4 or 1.8 times ambient [CO2] at ambient temperature and 1, 1.4 or 1.8 times ambient [CO2] at 3°C above ambient. 12 saplings were harvested in each OTC in January 2004. Soil respiration measurements over diurnal periods (24 hours) were conducted on 20 occasions during the second year of treatments (April to December 2004), with an open-flow system and we will present the seasonal and annual patterns of soil respiration in each OTC.
  • 大塚 俊之, 莫 文紅, 酒井 徹, 小泉 博
    セッションID: P1-012
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    CO 2フラックス観測に基づく微気象学的な手法に比べて、生態学的手法による陸上生態系の炭素循環についての研究は遅れている。本研究の目的は、CO 2フラックス観測サイトである岐阜大学高山試験地の落葉広葉樹二次林において、生態学的な手法により生態系純生産量(NEP)を推定し、系内のどこに炭素が蓄積していくのか、またNEPの年変動が系内のどの生物プロセスの変化に依存しているのかを明らかにすることである。高山サイトはササ型の林床を持ち、そのNEPは (NPPt + NPPs) – (SR – RR)により推定できる。樹木の純一次生産量(NPPt)は積み上げ法により、また土壌呼吸量(SR)は通気法によりそれぞれ1999年から連続的に測定した。さらに林床の純一次生産量(NPPs)は1993年の積み上げ法による値(西村ら 2005)と、群落レベルでの光合成量と呼吸量のモデルからその年変動を推定した。土壌呼吸における根の呼吸量(RR)の割合はトレンチング法による値を引用した(Lee et al. 2003)。高山サイトでのNPPt、NPPsはそれぞれ3.2 、1.2 t C ha-1 y-1であった。土壌呼吸量は7.3 t C ha-1 y-1であり、根呼吸の寄与率は年平均で45.3%であった。これらの結果、本調査地の平均のNEPは0.4 t C ha-1 y-1(1999_-_2002)であり、微気象学的な手法による平均値2.59±0.68(1994_-_2002)を大幅に下回った。生態学的な手法によるNEPの過小評価は、地下部リターなどの土壌中の炭素動態にその多くが起因していると考えられる。さらに1999年から2002年までの4年間の各生物プロセスの変動からNEPの変動要因についても検討した。
  • 周 承進, 林 明姫, 中根 周歩
    セッションID: P1-013
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    大気の二酸化炭素(CO2)濃度が倍増し、その温室効果によって地球平均気温が1.8-5.8℃まで上昇することが予想されている(IPCC, 2001)。現在、地球温暖化の進行とともに上昇した大気CO2濃度に対する森林生態系の持つ炭素固定能力が期待されている。また上昇した大気CO2濃度が植物組織の化学性質を変化させることによって植物リターの分解速度の低下が生じる可能性が示唆されている。そこで、地球温暖化と森林生態系の間のフイードバック機構を明らかにしようとする研究が世界各国で様々な環境調節装置を用いて進んでいる。しかし、大部分の研究は高CO2濃度に関連する樹木の生理機能と成長に限られており、さらに植物リターの分解過程に対する高CO2濃度と高温の相互作用の効果を扱った研究例は少ない。そこで本研究では、異なるCO2濃度と温度を組み合わせた温暖化環境下で、リターバック法を用いて常録広葉樹(アラカシ、Quercus glauca)の葉リターの分解渦程を調べることを目的とする。広島大学の精密実験圃場に設置された6基の大型オープントップチャンバー(OTCs, 4×4×5 m)に3年生のアラカシを植栽し(2002年10月)、3段階のCO2濃度処理(外気の1、1.4、及び1.8倍)と2段階の温度処理(外気±0℃及び+3℃)の合計6通りの環境条件区を設定し、2003年4月から6基のOTC内の環境条件を制御した。アラカシの葉リター(約4 g)を入れたリターバック(2 mmメッシュサイズ)を各OTC内の地表に設置して(2004年4月)、1、3、6及び9ヶ月後にリターバックを回収し、重量残存率及びC/N比を調べた。初期1ヵ月後の葉リターの重量残存率は各OTC処理区の間に有意差はなかったが、6月から9月の夏にかけて、外気CO2濃度×高温度区での減少率が大きくなった。アラカシ葉リターの初期9ヶ月間の分解過程に及ぼす温暖化環境要因の影響を詳しく検討し発表する予定である。
  • 関川 清広, 莫 文紅, 木部 剛, 小泉 博, 鞠子 茂
    セッションID: P1-014
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    全球の陸上生態系からの総土壌呼吸量は,炭素ベースで年間77 Pgに達し,この放出量は植物の純一次生産量NPPを上回ると推定されている(Schlesinger & Andrews 2000).このため,陸上生態系土壌が保有する炭素の放出プロセスとして,土壌呼吸を正確に評価することは極めて重要である.土壌呼吸の測定手法には様々なものがあり,測定値の再現性や比較評価に当たり,さまざまな問題が生じてきた.したがって,土壌呼吸研究において,測定手法の標準化は緊急性の高い課題である.これまでに演者らは,さまざまなチャンバー法によって土壌呼吸を測定し,それぞれの長短を検討してきた.本発表では,土壌呼吸測定の標準化を目標として,チャンバー法に焦点を当て,論議したい.チャンバー法は,測定原理によっていくつかの手法に分類される.使用頻度の高い手法には,(1) アルカリ吸収法(アルカリ溶液にCO2を吸収させ,中和滴定によって分析する),(2) 密閉法(チャンバー密閉後,一定時間毎に少量のガスを採取し,そのCO2濃度の時間増加を調べる),(3)ダイナミックチャンバー法(チャンバーとCO2分析計間で空気を循環させ,CO2濃度の時間変化を調べる),(4)通気法(大気をチャンバーを経てCO2分析計に通気し,チャンバー入口と出口のCO2濃度差を求める),などがある.演者らは主に,信頼性の高い通気法を用い,年間を通して土壌呼吸速度の日変化を測定してきた.しかし,通気法では測定中,チャンバー内外の環境が不連続となるため,天候変化など環境要因の影響を評価できない点で長期的な連続測定に限界がある.そこで,非測定時にチャンバーを開放できる自動開閉チャンバー(2軸エアー駆動)を開発し,現地測定を行い,その有効性と使用時の注意点を検討した結果を報告する.
  • 四軒家 省三, 佐々木 晶子, 竹田 一彦, 中坪 孝之
    セッションID: P1-015
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    近年、流域の物質循環における河川水中の溶存有機物(DOM)の役割が注目されている。しかし河川の溶存有機物の詳しい供給源や量、水中での動態については不明の点が多い。本研究では、溶存有機物の起源として河畔植生に着目し、ネコヤナギSalix gracilistyla、ツルヨシPhragmites japonica を対象に、葉から溶出する溶存有機化合物の定量を行った。野外から採取した葉を超純水に浸水させ、経時的に溶出液を採取して、全溶存有機炭素、全糖、総ポリフェノールについて定量を行った。全溶存有機炭素についてはTOC分析計、全糖はフェノール・硫酸法、総ポリフェノール類はFolin-Denis法で定量した。
    全溶存有機炭素、全糖、総ポリフェノールの溶出量は、植物種にかかわらず、浸水1日目に最も多く、その後、急激に低下する傾向が見られた。2週間で溶出した全溶存有機炭素はネコヤナギ落葉1gあたり約12mg、ツルヨシ落葉1gあたり約7mgであった。また、落葉直前の葉と緑葉についても同様に定量した。落葉直前の葉では、落葉と同様に浸水1日目の溶出量が最も多かったが、その量は落葉の5倍近かった。一方、緑葉については、浸水初期の溶出は少なく、日数を経るにつれて溶出量は増加した。
    次に落葉から溶出した各物質の分解消失速度を比較するため、落葉を超純水に浸水させて1日後に取り出し、溶出液に含まれる各物質の量を経時的に調べた。その結果、全糖は1週間で急激に減少したが、総ポリフェノールの減少はわずかであった。以上のことから、河畔域の落葉から溶出する溶存有機化合物は、その形態によって、水中での動態に大きな違いがあり、河川の物質循環に異なる影響を与えている可能性が示唆された。
  • 曽出 信宏, 車戸 憲二, 小泉 博
    セッションID: P1-016
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     日本ではスギ、ヒノキといった針葉樹の植林が全国各地で行われている。植林初期の炭素動態を明らかにすることは日本の森林における炭素収支を理解する上で重要である。そこで、本研究では伐採後の森林に焦点を当て、そこでの炭素動態・収支を明らかにすることを目的としている。今回は伐採後の管理法の違いが土壌呼吸速度および現存量にどのような影響を及ぼすかについて報告を行う。 岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地周辺の冷温帯落葉広葉樹林内の伐採跡地に調査地を設置し、調査地内に植林区(スギの植林3年目の区;20m×20m)と放置区(伐採後、全く手を入れず7年間放置した区;20m×20m)を設けた。それぞれの調査区において土壌呼吸速度と植物体の現存量を測定した。 両区における2004年7月_から_11月の5ヶ月間の積算の土壌呼吸量を比較すると、放置区で0.58kgCO2-Cm-2、植林区で0.45kgCO2-Cm-2の値を示し、放置区の方が高い傾向を示した。先行研究(足立、2001)によると伐採後1年経過した放置区における土壌呼吸量は0.32kgCO2-Cm-2と推定されており、伐採後の初期段階では、時間経過(遷移)に伴って土壌呼吸量が増加すると考えられる。さらに、9月下旬の地下部の現存量を両区で比較すると、植林区で0.25kgCm-2、放置区で0.43kgCm-2の値を示し、放置区の地下部現存量は植林区の約1.7倍であった。以上のことから、両区の土壌呼吸量の違いは、根の現存量の違いが大きく関与していることが示唆された。
  • 張 鵬程, 唐 艶鴻, 広田 充, 鞠子 茂
    セッションID: P1-017
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    土壌は地球上で二番目に大きな炭素のプールであり、その炭素動態が環境に与える影響は大きい。高山草原として知られている青海?チベット高原は降水量が多く、生産性が高い一方で有機物の分解速度が遅いため、現在土壌中に大量に有機炭素が蓄積しているといわれている。これまでに青海?チベット高原の湿地生態系では、帯状に分布する植物群落ごとに土壌炭素動態が研究されている。しかし、草原生態系では群落別に研究されたことはない。そこで、本研究は青海?チベット高山草原の三つサイト(Kobresia.pygmaea, Kobresia.tibetica, Kobresia.humilisが優先する群落)を選び、それらの生態系における土壌炭素動態の特徴の解明を目的として、密閉法によるCO2フラックスの測定を行った。また、土壌炭素動態の一部として、CH4フラックスの測定も行った。測定は2004年の8月と10月に行った。測定データから、以外のことが明らかになった。(1)各サイトにおける土壌のCO2フラックスは地温と関係が強いことが分かった。(2)8月8日の測定結果から、三つの各サイトの中でK.pygmaeaのサイトは最もCO2フラックスの値が低いことが分かった。また、8月のCO2フラックスは10月より高い値を示した。(3)土壌水分が高いK.tibeticaのサイトだけはCH4を放出し、他のサイトはCH4を吸収した。今後、土壌CO2、CH4フラックスの測定を更に行って、サイトの水分環境と土壌炭素動態の関係を明らかにして行きたい。
  • 徳地 直子, 舘野 隆之輔, 山中 典和, 杜 盛, 大槻 恭一, 侯 慶春, 王 勝旗, 薛 智徳
    セッションID: P1-018
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    中国の黄土高原においては現在、緑化木として外来樹種のニセアカシアが多く植林されている。しかし、近年、乾燥による森林限界付近ではニセアカシア林の土壌中に乾燥層が発達し、枯死や先枯れが目立ってきており、外来樹種による単純一斉造林の問題点が指摘されつつある。これまで、半乾燥地において、水分利用特性について明らかにした研究は、比較的多いが、物質循環様式を明らかにした研究は少ない。そこで本研究では、黄土高原の延安付近にわずかに残存している潜在植生であるリョウトウナラ天然生林とニセアカシア林において、物質循環様式の違いを、窒素循環量と有機物分解過程に着目して、明らかにすることを目的とした。ニセアカシアは窒素固定することが出来るため、ニセアカシア林ではナラ林に比べて、窒素の蓄積量が大きくなり、またリターの分解速度も早いため、窒素循環量も大きくなることが期待される。本研究においても、リター量はリョウトウナラ林で多かったものの、リター中の窒素濃度はニセアカシアで高く、その結果年間に土壌に還元される窒素量はニセアカシア林で大きくなった。これらの結果を含め、本研究では、物質循環の側面から見た植栽木のメリット・デメリットを議論する。
  • 藤野 毅, 中嶋 崇, アウン ナンダ, 浅枝 隆
    セッションID: P1-019
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    渓流の落葉が生態系を支えるエネルギー源として、また、流下する有機物の供給源として重要であることはよく知られているが、河川形態は複雑であり、有機物収支を見積もった例は極めて少なく、定量的評価が困難であるのが現状ある。特に、低勾配で低流量の河川においては、落葉は流下よりも河床へ滞留しやすいものの、その量や分布を調べた例はほんどない。 本研究は、埼玉県入間市内を流れる柳瀬川小作線の270m区間を対象に、落葉リター、流下リターの種類と量を落葉期に集中的に観測し、河川内外のリターの分布特性についてまとめる。 河川の流量は0.01㎥オーダーであり、リターは瀬と淵、流れの後流部にわたって定着していた。上下流を流下するリター量の時間変化は、落下量の時間変化と同様の傾向を示した。但し、上流から移入したリターは区間中にトラップされ、直ちに流下するものではなかった。観測期間中に多量の降雨によって流量が1オーダー上がると、堆積の分布は変動するが、リターが分布するところでは細かい土砂も溜まっていた。低次河川では、有機物の収支としてはFPOMよりもCPOMのほうが多量である傾向にあるが、滞留時間が長い条件では、CPOMの捕食・分解がその場で進みやすく、FPOMの生産も多量になる傾向が示唆された。
  • 舘野 隆之輔, 福島 慶太郎, 嶋村 鉄也, 藤巻 玲路, 大木 正美, 大手 信人, 徳地 直子
    セッションID: P1-020
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    樹木は土壌からの窒素などの養分供給量や樹木自身の要求量に応じて、細根など地下部への配分を変化させることにより、生育の制限となる養分を効率的に吸収する。森林の成立に伴う物質循環様式の変化は、養分供給量に影響する一方で、樹木の要求量も成長速度や葉量などの違いに応じて変化すると考えられる。森林の成立に伴い地下部への配分は様々な変化を示すと考えられるが、これまで地上部の炭素・窒素蓄積量の変化に関しては、多くの研究例があるが、地下部については十分な情報がないのが現状である。そこで本研究では、森林の成立に伴う地上部・地下部の炭素・窒素蓄積量および地上/地下部比や葉/細根比の変化を明らかにした。 調査は、小集水域単位での輪伐を行っているスギ人工林で行った。皆伐植栽後4年、14年、29年、40年、88年経過した森林に20m×20mの調査区を各2個設置し、毎木調査を行い、スギの地上(幹・枝・葉)・地下部(粗根)バイオマスをアロメトリー式により推定した。また、細根バイオマスについては、表層0-50cmの土壌を各林齢から採取し、推定した。また、土壌窒素供給量の指標として、現地培養による土壌の窒素無機化速度を測定した。 土壌の窒素無機化速度は、伐採後減少し29年生の森林で最も小さくなり再び増加した。また地上部・地下部の炭素・窒素蓄積速度のピークは、器官ごとに多少異なるが20-30年ごろに見られた。一方で、地上部/地下部比は林齢とともに増加し、葉/細根比は14年生で最小となり、その後林齢とともに増加した。以上の結果から窒素要求量の大きい成長のピークに、土壌条件も悪化していると考えられるが、地上部/地下部比や葉/細根比は、供給量や要求量とは異なるパターンを示した。
  • 三島 慎一郎, 谷口 悟, 駒田 充生
    セッションID: P1-021
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     持続的社会を支える基盤として、持続的な農業生産を行う事は必須の条件である。農業は地域生態系に対し開放して行われる人為活動であり、水質の汚染等を通して自然生態系の撹乱要素となっている。本研究では農業生産が環境に与える影響を包括的にとらえる方法としてLCAを用い、農業での肥料資材利用に伴って発生する環境負荷の度合いを試算したのでここに報告する。 調査地は栃木県南西部の思川集水域とした。環境負荷の指標として水系の富栄養化ポテンシャル、陸域生態系の富栄養化、環境の酸性化、温暖化、重金属負荷をを挙げて、化学肥料と家畜ふん尿の利用/未利用の現状と標準的施肥や低投入農業といった改善案を比較した。 現状の農業に比べて、標準とされる施肥を行った場合には、化学肥料の窒素・リン酸の施用量は大幅に減少し、それに共なって水系の富栄養化ポテンシャルと温暖化が25%程度削減される一方、陸域生態系の富栄養化や酸性化はあまり削減されないと推定された。農地へのカドミウムの負荷は減少するが、亜鉛と銅の負荷が増加するため、全体で見ると農地への重金属負荷は標準とされる施肥では増加する。これらの傾向は、化学肥料の低投入農業を行った場合でも同じであった。 肥料利用に伴う環境負荷を減じる方策としては、標準とされる施肥量を守ることで実現できると推計される部分がある一方、指標によっては効果がないか、逆に負荷が増す場合もあり、どの項目をどの程度許容するかが問題となると考えれられた。
  • 丹羽 慈, 堀野 眞一, 野宮 治人, 佐藤 保, 前山 絵里, 飯塚 弘毅, 北原 英治, 金子 信博
    セッションID: P1-022
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    ニホンジカの適切な密度管理を行うにあたり,生息密度や採食強度に応じたシカの生態系影響を明らかにすることは重要であると考えられる.
    一般に草食獣は,植物の変化を介して土壌生態系に影響を及ぼす.生産力の高い系では,採食を受けた植物は旺盛に再生長を行うが,生産力の低い系では,採食による損失を補いきれず,不嗜好性種への置き換わりが進む.その結果,前者の系では土壌のN無機化が速まり,後者では遅くなるとされる(Bardgett and Wardle 2003).光制限の強い森林林床は後者に属するとされるが,ササ型の林床など比較的生産力の大きい植生では,弱度の採食に対しては,N無機化の促進を引き起こす可能性がある.このように,草食獣のN無機化速度への影響は,採食強度にも依存すると考えられるが,研究例はほとんどない.
    本研究では,シカ生息密度および林床のミヤコザサへの採食強度と,土壌のN無機化速度との関係を調査した.調査は,シカの非分布域に設けられた,大規模なシカ導入実験区で行った.本調査地には,6.25haと25haの2つの囲い柵が設けられ,2002年6月にシカ1頭ずつが導入されている(シカ密度はそれぞれ16頭/km2,4頭/km2).シカ密度とN無機化の関係を調べるため,各柵内および柵外(対照区)の,林床をミヤコザサが覆う落葉広葉樹林内において,4m四方の区を6つずつ設け,ササ採食強度とN無機化速度を測定した.また,採食と排泄物の影響を分け,採食強度とN無機化との関係を調べるため,柵外に2m四方の区を12設け,6段階の強度を設けたミヤコザサへの摘葉と,糞・尿の設置の処理を組み合わせた操作実験を行った.以上の実験より,採食強度が 低い場合にN無機化の促進が生じるかを検証する.
  • 木原 孝志, 山本 昭範, 大江 悠介, 鞠子 茂
    セッションID: P1-023
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    炭素は生物と非生物環境に共通して含まれる元素であり、炭素循環を研究することは生態系の構造と機能を理解するために重要である。また、温室効果ガスであるCO2の大気中での濃度が増加していることから、生態系におけるCO2の吸収・放出に対して関心が集まっている。陸上の生態系では、CO2吸収の役割を担っている光合成のフラックスに関しては研究が進んでいるものの、陸上生態系からのCO2放出の大部分を占める土壌からのCO2放出、すなわち土壌炭素フラックスに関しては未知の点が多く、詳細な研究が求められている。
     土壌炭素フラックスは空間的な変動が大きいことが知られており、同一地点においてもリターフォールの量、土壌温度、土壌水分ポテンシャル、降水イベントの有無といった環境の変化によって変動することが報告されている。これらの環境の変化による土壌炭素フラックスへの影響を定量化するためには、環境の変化と共に土壌炭素フラックスを自動的に連続して測定する必要がある。土壌炭素フラックスの連続測定には通常、金属あるいは樹脂製のチャンバーを用いた方法が用いられており、チャンバーの形状や通気の方法によって幾つかのタイプの手法が開発されている。これらのチャンバー法には長所・短所があるが、一般的には、多点測定が困難、長期測定が出来ない、測定精度が悪い、測定場所が交流電源のある場所に限られる、など今だ改良の余地がある。 今回の発表では、土壌炭素フラックスの連続多点測定の問題を解決するために考案された新しいチャンバーの性能について報告を行う。
  • 三橋 順, 秋山 克, 若浜 洋, 重廣 道子, 石島 洋二
    セッションID: P1-024
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    北海道北西部に位置するサロベツ湿原は面積約3万haの規模を有する広大な湿原であり,植生・水質など様々な環境因子に関する多くの研究がなされてきた。しかしながら研究の多くはサロベツ湿原北部の上サロベツ湿原地域に集中しているのが実情である。また、農地等の開発や放水路の設置等により湿原域では地下水位低下が起こり,それに伴う湿原の乾燥化と植生の変化が懸念されている。地下水位の低下は表層付近の水質分布にも変化を及ぼし,それに伴って微生物生息環境も変化するものと考えられる。一方で,主要な温室効果ガスであるメタンガスや亜酸化窒素が湿原から発生しており,これらのガスは主に土壌中の嫌気性微生物によって生成されることが知られている。本研究では,サロベツ湿原南部の下サロベツ湿原地域において地表面付近浅層の水質環境とそれに伴う微生物生態を明らかにする目的で水質分析を行った。分析試料は,地表面下55cmまでの4深度から採水可能な装置を設置し,7日間毎に採水して分析に供した。採水した試料は水温・酸化還元電位・pH等を測定し,陰イオン・陽イオン分析,有機酸(酢酸),全有機炭素(TOC)を測定した。また,同時に地下水位測定用の井戸を掘削し,水位変化を測定した。その結果,深度25cm以深に明瞭な酸化還元境界が存在することが明らかとなった。この酸化還元境界を中心とした微生物相あるいは諸物性値の変化の傾向について議論したい。
  • 李 美善, 小泉 博
    セッションID: P1-025
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    森林生態系における炭素循環・収支において、土壌呼吸は主要な生物プロセスの一つである分解プロセス(二酸化炭素の放出)を把握する上で重要である。土壌からの炭素放出は年変動が大きいと言われ、その長期変動および年変動パターンを把握することは不可欠である。土壌からの年間炭素放出量を推定する簡単なモデルとして温度(t)又は土壌水分(θν)といた環境要因と土壌呼吸速度の依存性が用いられている。最も一般的なモデルは温度のみで推定するモデル(flux = aebt、 Mo et al., 2005)である。また、温度と土壌水分含量で推定するモデルもある(flux = aebt×[(θν – c)× (d – θν)] f(Lee et al., 2002)或はflux = aebt×[1 – (1 – [θν/c])2](Lee et al., 2005))。しかし、長期観測データを用いて上述したモデルの検討を行った研究例は極めて少ない。そこで本研究では3年間の観測データを用い3つのモデルから年間の炭素放出量を推定、検討する。また、土壌炭素放出量の年々変動をシミュレーションし、年変動パターンを示し、その変動要因を明らかにすることを試みる。調査地は、岐阜県高山市にあるミズナラ・タケカンバを優先種とする冷温帯落葉広葉樹林(岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地、標高1439m)とした。土壌呼吸の測定は1999年5月から2001年10月まで3年間(積雪期は除く)毎月1回、連続24時間、4地点で、赤外線分析装置を用いた通気法で行った。また、フラックス観測タワーで得られた地温と土壌水分含有量の連続データ(30分間隔)を用いた。これらのデータから1999年から2001年までの年間炭素放出量を3つのモデル式で求め、その有効性を検討した。さらに、タワー観測が始まった1993年から2004年までの土壌呼吸の年変動をシミュレーションし、考察を行った。
  • 浦野 忠朗, 川田 清和, 鞠子 茂, 及川 武久
    セッションID: P1-026
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     モンゴル共和国はアジア大陸の中央に位置し、国土の約75%、1560,000km2を草原が占めている。しかし、モンゴル高原の半乾燥草原においては、未だに炭素のプールであるバイオマス及びCO2フラックスの研究データが少ない。そこで、本研究ではモンゴルの草原において地上部バイオマスとCO2フラックスの季節変化についての調査を行った。
    本研究では、ウランバートルの南東約100kmに位置する、典型的なステップ草原であるケルレン-ベイヤン-ウラン(KBU)の草原を研究対象地にした。
    結果、植物の生育はほぼ6月から9月の3ヶ月間に限られており、地上部バイオマスは6月から7月の1ヶ月の間に急増し、8月から9月にかけて急減した。これは、6月までは降雨量が少ないため植物の生育が抑制され、8月から9月にかけては気温の低下に伴う植物の枯死が影響したと考えられる。また、放牧の影響については統計的な有意差は見られなかったものの、7月以降は保護枠内で多い傾向にあった。
    草原のCO2フラックスは、気温、地温、土壌含水率、LAI、地上部バイオマスの変数で説明され、降雨のある5月以降、LAIの増加する7月までソースとなっており、7月以降、9月まではシンクとなった。また、年間のNEPの合計は、保護区で383g CO2 m-2 year-1、対照区で140g CO2 m-2 year-1となり、保護区内の値が対照区の倍以上の値となった。これは、GPPがLAIに依存しており保護区で大きい値をとったにもかかわらず、Reは保護区と対象区で近い値をとったため、その差し引きであるNEPで大きな差が出たという結果になった。KBUの草原では近年牧畜が増加しているが、本研究の結果から、KBUの草原で放牧圧がこれ以上大きくなった場合にReの値が大きく変化しなければ、草原がCO2フラックスのソースとなりえることが示唆された。
  • 金子 隆之, 沖森 泰行, サイフディン アンショリ, 太田 誠一
    セッションID: P1-027
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     大面積短伐期単一樹種造林が環境へ及ぼす影響は明らかではない。貧栄養な熱帯土壌でのこうした施業における持続性を検証する基礎的資料のために、インドネシアでのAcacia mangium産業植林地において現存量推定と森林構造を調べた。
     スマトラ島、南スマトラ州の低地はかつて低地フタバガキ林の優占する地域であった。森林伐採後の農地利用などを経て、劣化二次林やチガヤ草原の広がる広大な未利用地を早成樹産業植林地として利用されている。このエリアの土壌の大半を占めるアクリソル土壌では粘土含量の多寡が土壌の保水力や無機養分の保持力に影響する。そこで2つの粘土含量の異なる同一齢林分での成長の違いを検討した。
     平均直径は重埴土林分では平均20.8cmで、軽埴土林分より4.5cmも大きい。軽埴土林分では萌芽幹を複数もつ個体が多いので小径木が多く、単幹がほとんどな重埴土と大きく異なった。推定された平均樹高は重埴土区が24.1mで、軽埴土区より5.4m高かった。
     バイオマスの推定には各林分毎に幹、枝、根、葉、繁殖器官など各部のバイオマス量とDBH2*Hとの関係から各部ごとのアロメトリー式を得た。地上部の林分あたりの現存量は重埴土が154.2Mgで132.2Mgの軽埴土より16.6%大きい。地下部は重埴土が25.0Mgで、軽埴土の17.8Mgより、40.4%大きい。地上部と地下部をあわせた全バイオマスでは、重埴土が179.3 Mgで、軽埴土の150.0Mgより、19.5%大きかった。
  • 毛塚 由佳理, 右田 千春, 千葉 幸弘
    セッションID: P1-028
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    樹体内において窒素は必須元素であり、個体成長の資源として展葉期や落葉期には特に大きく変動するとされる。窒素は樹体外から取り込まざるを得ないため、生態系の窒素循環を評価するためには、個体レベルの窒素動態を理解しておく必要がある。 本研究では、26年生コナラ林分(茨城県つくば市)において、3個体の窒素濃度の季節変化を器官別に測定した。サンプル枝は3-4年生部分から切断・採取し、冬芽、葉、枝(年枝ごと)に分類した。樹幹については、成長錐によってコアを採取し、形成層から随に向かって2.5mm間隔で切り分けた。測定試料のサンプリングは、窒素転流が活発になると予想された展葉期と落葉期は週1回、それ以外の期間は1_から_2ヶ月に1回の頻度で行った。 冬芽の窒素濃度は開芽2週間前から開芽までに著しく増加した。冬芽の窒素濃度と同調するように、開芽2週間前から1,2年生枝の窒素濃度が増加した。開芽後、1,2年生枝の窒素濃度は低下し始めたが、逆に、当年生シュートの窒素量は増加した。また当年生シュートの窒素量は、当年生シュートの伸長がほぼ停止するまで、開芽後約40日間増加し続けた。この間、3年生以上の枝の窒素濃度に大きな変動は見られず、ほぼ一定の値で推移した。一方樹幹の窒素濃度は開芽のあと著しく減少し、5月に最低となった後、成長盛期の夏期に徐々に回復した。このことから、開芽に先立ち、樹幹の窒素が1,2年生枝に転流され、一時的に貯蔵されることがわかった。一方、落葉期には葉の窒素濃度が約6割まで急減したことから、葉の窒素が枝へ回収されたと考えられた。この時0,1,2年生枝の窒素濃度は上昇し、樹幹の窒素濃度も同様に増加したことから、成長休止期間には、葉から回収された窒素が枝と幹に貯蔵されていることが明らかになった。
  • 小林 秀樹
    セッションID: P1-029
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    東アジア・東南アジアでは,近年都市の大気汚染粒子の増加,黄沙の発生,大規模森林火災の煙や野焼きの増加等の影響で,森林キャノピーの上端に入射する日射の量と質(直達日射の減少と天空散乱光の増加),及びそれらの各波長成分の変化が著しい地域である。このような環境下における,森林内の光環境の変化と樹冠,林床部における光合成活動への影響を診断的に評価するために,三次元の森林内光散乱モデルを構築した。特に本研究では,様々な日射環境における森林の光環境・光合成活動と衛星リモートセンシングによって得られる森林からの分光反射率との関係を統一的に扱うことを主眼に,10-1000mスケールの景観に適用可能なモデルの検討を行い,初期的な解析結果を得た。 光散乱モデルは,North (1996)による森林内部の光散乱のモンテカルロ計算手法をもとに,幾つかの改良を行って構築した。モデルでは,葉・幹・枝を光の散乱体の最小要素としているが,本研究では樹冠の形状を,円錐,円柱,回転楕円体に近似し,林床部の植生は平行平面レイヤーとして,それらの領域の中に葉が均一に分布していると仮定した。シミュレーションではキャノピー上端より波長別にフォトンを入射させ,乱数を用いてフォトンが散乱するまでの到達距離と散乱方向を決定し,フォトンが計算領域から射出するまでトレースして計算した。 本研究では,快晴時・曇天時・高エアロゾル濃度の大気条件において,樹冠密度,葉面積密度を変化させながら森林上端の分光反射率,樹冠APAR,林床APAR,林床入射PAR(直達・散乱光別)を計算し,それらのパラメータの関係を考察した。
  • Rempei Suwa, Akio Hagihara
    セッションID: P1-030
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    To investigate the matter production in a mangrove forest along the Okukubi River, we performed the tree census, soil assay and diurnal photosynthesis measurement. Five belt-transect plots (5 m wide) perpendicular to the stream were established. The diurnal change in net photosynthesis for sun leaves was measured for Bruguiera gymnorrhiza and Kandelia candel from June to August 2004 in four plots. The number of individuals in B. gymnorrhiza, K. candel and Rhizophora stylosa were respectively 750, 289 and 7 (including some forks) in the total study area of 900 m2. The tree density increased from the landward zone to seaward zone and drastically decreased at the belt-transect plot nearest the seaside. On the other hand, the maximum tree height decreased from the landward zone to the seaward zone. The soil salinity and pH increased from the landward zone to the seaward zone. The diurnal change in net photosynthesis showed a strong dependence on that in the incident PPFD. The maximum net photosynthesis decreased from the landward zone to the seaward zone. The leaf and soil nitrogen concentration decreased from the landward zone to the seaward zone.
  • 戸田 哲也, 武田 博清, 徳地 直子, 太田 誠一, ワチャリンラット チョンラック, カイトプラニート サン
    セッションID: P1-031
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     防火措置後の経過年数が異なるタイ国東北部の乾燥落葉林(DDF)において、地下部バイオマス量とその構成、および窒素含有率を測定し、地下部の年間回転率からそれを介した土壌中への窒素還元量を推定した。
     地下部バイオマス量は、防火措置後35年が経過した林分(F35)、10年が経過した林分(F10)、毎年野火の侵入がみられる林分(F0)の順に多かった。F0では草本によるものが85%を占め、著しく発達していたが、総量としては林分で違いはみられなかった。
     樹木および草本細根の分布は、F0の樹木の場合を除いて、表層から5cmの層で最も多かった。その層では窒素蓄積量や窒素無機化能も高いことから、リターの分解による養分の可給化と土壌中養分の垂直分布に関連していることが示唆された。また、F0では表層において草本のルートマットが形成されており,これによって樹木細根量が抑制されていることが考えられた。
     地下部バイオマス中に蓄積されている窒素量と地下部の年間回転率から推定した窒素還元量はF35、F10、F0の順にそれぞれ49、24、72 kg/ha/yrであった。F0においては樹木リターフォールによる年間窒素還元量が少ないのにもかかわらず、他のプロットよりも高い窒素無機化量が報告されており、これは本調査の推定値から草本地下部バイオマスの高い回転率によって引き起こされているものと推察された。
  • Md. Nabiul Islam Khan, Akio Hagihara
    セッションID: P1-032
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    Aboveground net primary production in a mangrove stand of Kandelia candel (L.) Druce was quantified using the summation method. Aboveground biomass and its increment were estimated using allometric relationships and stem analysis. Stem volume without bark of harvested trees showed a strong allometric relationship (R2 = 0.924) with D0.12H (D0.1, stem diameter at a height of H/10; H, tree height). Annual stem volume increment without bark also showed a strong allometric relationship (R2 = 0.860) with D0.12H. Branch biomass increment per tree was indirectly estimated using the allometric coefficients from the relationships of branch weight, stem volume, stem volume increment and stem weight to D0.12H. Litterfall rate showed a peak in August-September (summer season). Total annual litterfall was estimated as 10.60 Mg ha-1 yr-1 in which 67.94% was contributed by the leaves. Stem and branch biomass increments were 11.13 Mg ha-1 yr-1 and 8.40 Mg ha-1 yr-1, respectively. Aboveground net primary production in the K. candel stand was 30.13 Mg ha-1 yr-1. These results suggest that K. candel is a fast growing and highly productive species.
  • 大江 悠介, 熊谷 麻紀子, 鞠子 茂
    セッションID: P1-033
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    地球上で2番目に大きな炭素の貯蔵庫である土壌はグローバルな炭素循環において重要な役割を果たしているため、様々な生態系における土壌炭素動態について定量的な研究が進んでいる。好気的な土壌ではCO2放出だけでなく、CH4の吸収機能があり、その吸収量の測定も盛んに行われている。CH4酸化の量はCO2放出に比べると少ないと考えられているが、GWPを考慮した温室効果ガスの収支から生態系あるいは土壌を評価する場合には、CO2およびCH4という2種のガスフラックスについて定量化とガス交換機構を解明することが重要である。しかし、これら2種のガスフラックスを冷温帯のような積雪のみられる生態系で複数年にわたり詳細に調査した研究はほとんどない。本研究では2002年2月から2004年11月の約3年に渡り、野外調査とインキュベーション実験によりQuercus属森林土壌の炭素動態とその詳細なメカニズムを解明することを目的として行った。野外調査の結果、リター層および土壌炭素量は同様のQuercus属森林や日本の黒ぼく土の平均値と比較して小さかった。これは本サイトではササのような林床植生の進入がみられないことに起因すると思われる。土壌CO2、CH4フラックスは地温に依存した季節変動を見せ、地温の推移から推定したCO2放出量はリターフォールとのバランスを考慮すると世界の温帯森林と比較して標準的な値であったが、CH4フラックスは世界の同属の森林で観測された値よりも3-7倍大きいことがわかった。インキュベーション実験の結果からこれは高い土壌CH4吸収ポテンシャルがその原因であると示唆された。また、野外で観測された土壌の低い水分飽和度も高いCH4吸収量が観測された要因の一つであると推測された。
  • 福島 慶太郎, 舘野 隆之輔, 中野 孝教, 大手 信人, 徳地 直子
    セッションID: P1-034
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     森林生態系において窒素は植物と土壌の間で効率よく循環され、系外への流出量は一般的に少ない。しかし皆伐など大規模な攪乱が加わるとその内部循環が崩壊して窒素が大量に流出し、地力の低下や下流域への負荷につながる。伐採による窒素循環の影響は多くの研究例があるが、その後の窒素循環の回復過程を明らかにした研究は少ない。持続的な森林経営のためにも伐採の影響に加え、森林の回復過程を物質循環の観点から把握することは重要である。そこで本研究では林齢に注目して、植物_-_土壌系の内部循環の発達と流出する窒素の主要形態であるNO3-との関係を明らかにし、さらに林齢以外に地形的、地質的要因を加えて重回帰分析を行いNO3-濃度を形成する要因を明らかにした。
     調査地は集水域単位で伐期約90年の輪伐を行うスギ・ヒノキ人工林で、林齢が1-88年まで並んでいる。そのうち33の集水域で渓流水のNO3-濃度を測定した。また4、14、29、40、88年生の5集水域内に土壌断面を作成し、土壌N動態を算出した。地形的要因として各集水域の標高、面積、スギの面積比率を地図上で求めた。さらに渓流水のSr同位体比を測定し、地質的要因も考慮した。
     NO3-濃度の形成要因は、20年生を境に大きく異なった。土壌N動態と渓流水のNO3-濃度から、20年生以前では土壌表層の硝化速度と植物の吸収がNO3-流出を規定すると考えられた。一方20年生以降は地質や標高がNO3-濃度に影響を与えていた。土壌N動態からは、29-40年生で植生のN要求量が土壌のN供給量を上回り、植物の成長が頭打ちとなる時期と一致することが示された。88年生では土壌のN供給量が再び増大し、NO3-の流出が増加する可能性が示唆された。
  • 佐々木 晶子, 吉竹 晋平, 中坪 孝之
    セッションID: P1-035
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     河畔植生は河畔域における主要な有機物供給源の一つである。増水によって植生が冠水するような立地では、リターは陸上である程度分解された後、一部が増水によって水中に入り、CO 2まで分解(無機化)されるか、あるいは有機物として下流へ流出すると考えられる。しかし、河畔域での無機化を含めたリターの動態についてはよく分かっていない。本研究では、河畔域における植生由来の有機物の動態を定量的に明らかにする目的で、西日本の河畔域でしばしば優占するネコヤナギ林を対象に、リター(落葉)の重量減少を調べ、さらに年間無機化量を推定した。 調査地は広島県太田川中流域に設定した。ネコヤナギ落葉の重量減少をリターバッグ法で調べた結果、一年を経ても陸上では65%、水中ではおよそ40%が粗粒有機物として残っていた。リターの重量減少は、無機化と溶存態・細粒状有機物の流出によって起きる。そこで次に、調査地に一定期間設置したリターサンプルの無機化速度とその温度依存性を測定し、調査期間中の気象データをもとに、年間のリター無機化量を見積もった。陸上での無機化速度は赤外線ガス分析装置を用いたOpen-flow法で、水中での無機化速度はリターを入れた密栓容器内の溶存酸素消費量を溶存酸素計で測定して求めた。その結果、陸上では推定無機化量が野外での重量減少の結果を大きく上回った。無機化速度の測定は、サンプルに水分を充分に与えた状態で行ったことから、野外では主に乾燥によって無機化が抑制されている可能性が示された。一方、水中では推定無機化量が重量減少とほぼ一致した。以上の結果から、河畔域に供給された落葉の4割以上が、一年を経ても粗粒有機物として群落周辺に残るか、増水によって下流域へと流出する可能性が示唆された。
  • 嶋村 鉄也, 舘野 隆之輔, 渡辺 恒大, 藤巻 玲路, 徳地 直子
    セッションID: P1-036
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    森林生態系の物質循環において粗大木質有機物は様々な役割を果たしていると考えられている。特に葉リターなどと比較して粗大木質有機物は分解に長い期間を必要とする。そのため、養分の吸収源や供給源として長い期間作用する。これまで地上部の粗大木質有機物の分解過程と養分動態に関する研究は数多くあるが、地下部に存在する粗大木質有機物については研究例が少なく、長期の分解過程と物質動態に関する情報は限られている。地下部にある木質の有機物は土壌中に埋もれている。そのため、分解に伴う物質動態も地上部・地下部で異なるパターンが予想され、森林生態系の物質循環におけるそれぞれの役割の違いが期待される。
    奈良県吉野郡十津川村にある三興林業のスギの造林地では約90年を伐期として集水域単位で大規模な皆伐、植林が行われている。それぞれの林齢の森林が隣接しているために同一気候で、地質や地形の差が小さい。ここでは1年生から90年生の皆伐後の森林動態を同時に追跡することが出来る。そこで、材の地上部と地下部の分解過程とそれに伴う物質動態の違いを明らかにするために、皆伐植裁直後・5年・15年・30年・41年経過したスギ人工林から、各5つずつ切り株を選定し、その分解過程を追跡した。各切り株の地上部の芯材・辺材・地下部の根について、有機画分の重量変化についての分析を行った。
    有機画分の分析の結果、リグニンの濃度が地下部で高いことが示された。また、LCI(リグノセルロース指数)は窒素濃度と負の相関を持ち、窒素によるリグニン分解の抑制が示された。発表では含水率・無機養分・容積重・重量減少・室内培養による材の呼吸量の測定結果なども含めて考察する予定である。
  • 清水 良憲, 小林 達明, 犬伏 和之
    セッションID: P1-037
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    富栄養化した海域において干潟底質が果たす窒素循環機能を評価し,適切な沿岸域の保全再生を検討するため,東京湾の干潟において窒素循環特性を調査した.まず,創出しうる干潟のタイプとして,前浜型と後背湿地型の2型を想定し,両タイプの窒素循環特性を現地調査によって比較した.調査は,2004年の夏期の大潮昼間干潮時に,両タイプの干潟が隣接して存在する葛西,市川,木更津の3カ所で行い,底質の諸理化学性,底生微細藻類クロロフィルa量,全窒素含量,無機態窒素濃度,底生動物バイオマス窒素量,微生物活性,脱窒活性,亜酸化窒素フラックスを測定した.その結果,前浜型干潟の底質は砂泥質で好気的であり,後背湿地型干潟の底質は泥質で嫌気的であるという理化学性の違いが見られた.窒素循環機能は,前浜型干潟では潮干狩り対象の底生動物バイオマス窒素や脱窒速度が高く,窒素の系外除去傾向が見られた.一方,後背湿地型干潟では底生微細藻類や底質全窒素が多く,海水中窒素の同化蓄積傾向が見られた.また,全体として,湾奥海域の干潟では底質中のアンモニア濃度が高くなる傾向が見られた.この原因として,底質の富栄養化及び嫌気化が微生物の硝酸還元反応に影響していることが推察された.次に,干潟の窒素循環機能に対する青潮の影響を把握するため,同年夏期に青潮の襲来を受けた幕張と千葉港の前浜型干潟において同様の調査を実施した.その結果,幕張では底生動物バイオマス窒素が非常に少なく,脱窒活性が著しく高いという異常が見られた.また,千葉港では底質の顕著な嫌気化が観測された.以上の結果から,干潟の窒素循環特性は干潟のタイプによって異なる機能を果たしていると考えられた.一方,青潮の影響による機能低下も示唆され,今後さらなる検討が必要であると考えられた.
  • 中村 雅子, 牛山 克巳, 江面 康子, 田尻 浩伸, 神谷 要, 嶋田 哲郎, 相崎 守弘
    セッションID: P1-038
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    はじめに 日本に冬鳥として数多く飛来する水鳥(主にカモ類)は鳥類の中でも体が大きく集団で行動するため、中継池や越冬池となる池沼の生態系に何らかのインパクトを与える。最近、水鳥が数多く飛来する池沼において水質悪化が懸念されるが、詳細な調査は行われていない。そこで、水鳥と水質の関係を明らかにすべく、水鳥が数多く飛来する日本各地の池沼の水質変動調査を行った。
    調査方法 調査池は宮島沼(北海道美唄市),伊豆沼・給餌池主池(宮城県若柳町),東京港野鳥公園・東淡水池(東京都大田区),片野鴨池(石川県加賀市),米子市水鳥公園・つばさ池(鳥取県米子市),以上の5つの池沼とした。採水は2004年7月から2週間に1度の頻度で、年間通して採水可能な地点で行い、現地にて水温・pHを測定し、持ち帰った試水をSS・Chl.a,栄養塩類,COD・DOCの分析に用いた。また同時に池の水鳥の飛来数をカウントし、種別に換算係数を乗じ「水鳥の総入り込み体重」を算出し、水鳥の体重、つまり排泄物量を加味する指標とした。
    結果と考察 夏期の調査結果から、5つの調査池は_丸1_夏期に栄養塩レベルが低い池:水鳥公園・つばさ池、片野鴨池_丸2_夏期に水質が悪化する池:東京港野鳥公園・東淡水池、伊豆沼・給餌池主池_丸3_夏期後期に水質が回復する池:宮島沼と3つの異なるパターンに分けられた。このパターンの違いは池の水生植物(主に沈水植物)の繁茂、つまり夏期に生産者が植物プランクトンから水生植物に交代することが大きく関わっていると考えられる。また、宮島沼については他の調査池が越冬地であるのに対し中継地であることから、元来は夏期に栄養塩レベルが低い池タイプであるが、7月末まで春の水鳥の飛来の影響を引きずっていることが示唆された。
  • 橋本 徹, 三浦 覚
    セッションID: P1-039
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     森林の土壌呼吸は場所によってその速度が異なり、空間的不均一性が見られる。このような空間的不均一性がどのような機構で生じているかを明らかにする上では、スケールを考慮することが重要である。立地特性にはしばしば空間依存性が見られ、その空間依存距離が空間的不均一性を調べる上での重要なスケールとなる。そこで、本研究では森林の土壌呼吸の空間依存性について調べた。 調査は岩手県安比高原のブナ二次林で行った。調査地は平坦な緩斜面で、その等高線と平行するように、直径10 cm、深さ7 cmの塩ビパイプ製カラーを10 m間隔で21個、1 m間隔で18個、0.2 m間隔で16個、同一ライン上に埋設し、2004年9/18、9/26,10/26の三回、 Li-cor社の携帯式土壌呼吸測定装置Li-820を用いて土壌呼吸速度を測定した。得られたデータは、セミバリオグラムの手法で解析した。 9月の空間依存距離(レンジ)は約10 mだったが、10/26には3.3 mと短くなった。また、空間依存度(Q値)も測定回を重ねるに連れて小さくなっていた。3_から_10 mというレンジのスケールから、空間依存距離は複数の樹木集団による根系の粗密によって決定されている可能性が考えられる。また、空間依存距離や依存度が季節によって変化することは、単に土壌呼吸の活性低下だけでは説明できない何か他の原因があると考える。
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