日本生態学会大会講演要旨集
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  • 安立 美奈子, 大塚 俊之, 中坪 孝之, 小泉 博
    セッションID: P1-040
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    湿性ツンドラの土壌は炭素の吸収源とされてきた。しかしながら、気候変動に伴って炭素の放出源と変わりつつあると報告されている。本研究では、湿性ツンドラの土壌からの二酸化炭素 とメタン の放出と環境要因および土壌化学特性との関係を明らかにすることを目的とした。 スバールバール諸島・ニーオルスンの東ブレッガー氷河後退域において、20m ごとに14地点に密閉法用チャンバーを設置した。2ラインの合計28地点において、真空バイアル瓶を用いて土壌から放出される空気の採取を行った。空気はガスクロマトグラフィーによって濃度を測定して放出・吸収量を求めた。また、空気を採取したのちにチャンバー内の土壌を採土管によって採取し、pH、C/N 比、NO3- 、NH4+ の測定をおこなった。これらの土壌の化学特性に加え、土壌の環境条件(地温、土壌含水率、植物体地上部バイオマス量)などと二酸化炭素 とメタン の放出量との関係について解析をおこなった。 土壌からの二酸化炭素の放出量の平均は104 mg CO2 m-2 h-1であった。一方、メタン を放出していた地点の平均値は0.24 mg CH4 m-2 h-1、吸収していた地点の平均値は 0.18 mg CH4 m-2 h-1となり、全てを平均すると0.07 mg CH4 m-2 h-1の放出となっていた。二酸化炭素 とメタンの放出速度は共にばらつきが大きく、二酸化炭素 の変動率は97%、メタン の変動率は放出系で153%、吸収系で109%であった。二酸化炭素とメタンの放出量には強い正の相関関係が認められた (r = 0.581, p < 0.01)。土壌からの二酸化炭素とメタンの放出量と土壌化学特性および環境要因との関係についての解析結果を報告する。
  • 時岡 あき子, 加賀谷 隆
    セッションID: P1-041
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     林床上の枯死材は、周辺部の水分条件を改変し、落葉リター分解系に影響を与えていると考えられる。材には、水分貯留および周囲への供給作用や、構造物として枯死材下の土壌からの水分蒸発抑制作用があると考えられる。これらの作用は、恒常的な湿潤環境の形成によりリター分解に正の影響を及ぼすことが予想される。一方、林内雨を遮断することでリター分解に負の影響をもたらす可能性もある。各々の作用の大きさは枯死材の材径や材質によって異なると考えられる。演者らは第50回大会で、倒木直近のL層表面の落葉リターは、材径が大きくかつ腐朽の進んだ倒木直近のリターほど分解が速いことを示したが、倒木の存在自体および材径と材質の影響は分離して評価されていない。本研究では枯死材の有無が落葉リター分解系に及ぼす影響を評価するとともに、枯死材の材径が落葉リター分解に影響する機構を明らかにすることを目的とした。
     東京都八王子市のアラカシ-モミ林で、リター分解実験を2003年12月から2004年9月に行った。長さ、腐朽度が同程度の大径(8から11cm)、中径(3から6cm)の枯死材、および水分貯留・供給作用のない塩ビ製の大径、中径の人工材を設置し、それらの直近および対照区として裸地上に、ケヤキとアラカシのリターバッグを設置した。
     初夏までのリター分解は対照区に比較して大径材の直近で遅かった。大径材では林内雨遮断作用が大きく、溶脱が遅れたと考えられる。夏、秋の土壌動物量は対照区より材の直近で多く、特に大径材、枯死材で顕著であった。秋までのリター分解は対照区に比較して大径枯死材で有意に速かった。枯死材の水分貯留・供給作用に加え、大径材では蒸発抑制作用が大きく、恒常的な湿潤環境を形成した結果、土壌動物によるリター分解が促進されたと考えられる。
  • 勝又 伸吾, 大園 享司, 森 章, 土井 裕介, 武田 博清
    セッションID: P1-042
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    枯死材は他のリターに比べて分解が遅いという特徴をもち、森林生態系の物質循環や生物多様性に強く影響する。そのため、枯死材の現存量や分解過程を把握することは林分の長期的な物質動態を明らかにする上で重要である。特に亜高山帯針葉樹林では、寒冷な気候によって分解が抑制され、多くの枯死材が蓄積していることが予想されるので、枯死材について定量的に理解する意義は大きいと考えられる。しかし、亜高山帯針葉樹林の枯死材蓄積量についての知見は少ない。本研究は、亜高山帯針葉樹林において枯死材が林分の物質循環、特に炭素動態に与える影響を評価することを目的として、枯死材の現存量・炭素蓄積量を推定した。
    調査地は岐阜県・御岳の標高2050mに位置する亜高山帯針葉樹林である。1haのプロットを設定し、DBH10cm以上の枯死材を対象として、材積の推定、腐朽度の記載を行った。腐朽度は枯死材の外観から6段階に設定した。各腐朽度の枯死材のサンプルを採集して密度・炭素濃度を測定し、材積に乗じて現存量と炭素蓄積量を推定した。
    本調査プロットでは、544本、217.9m3の枯死材が発見された。密度は分解に伴って0.37g/cm3から0.11g/cm3まで減少したが、炭素濃度は約50%であまり変動しなかった。現存量は42.4t/ha、炭素蓄積量は21.3t/haと推定された。枯死材の炭素蓄積量は、地上部および林床有機物の炭素蓄積量のそれぞれ26.6%、103.2%に相当し、枯死材に蓄積している炭素量は林分全体の炭素蓄積の中で無視できない割合を占めていることがわかった。
    発表ではこれらの結果に加えて、枯死材の分解過程における有機物の動態と予備的に行った分解速度の推定結果も示し、枯死材が炭素動態に与える影響について総合的に考察する。
  • 木部 剛, 関川 清広, 増沢 武弘, 小泉 博, 鞠子 茂
    セッションID: P1-043
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     土壌呼吸の測定には何種類もの手法が現在用いられているが、それらの手法のクロスチェックは、いまだなかなか行われていない。本研究は通気法(OF法)をベースにしたいくつかの測定手法を用いて、同一試験地で並行して測定し、その手法の比較検討を行うことを目的とし行われた。 測定は、比較的均一な植生が確保される、長野県菅平高原の筑波大学菅平高原実験センターのススキ草原において行われた。2004年5月末に機器のセッティングを行い、以降6月から12月まで、ほぼ毎月2、3日間の連続測定を行った。なお、10月中旬の測定時まではススキその他の植生には手を加えず自然のままとし、10月中旬の測定後にススキを中心とした草原全体の地上部を刈り取り、地上部はすべて系外へ持ち出した。したがって11月、12月の測定時には地表面にリターが無く、チャンバーは直射光や風にさらされた状態での測定となった。また11月、12月の測定時には一時気温が氷点近くまで低下したが、チャンバーや土壌の凍結はみられず、12月の一時的な降雪の際にも、チャンバー内外の通気は確保されており、測定は通常通り行われた。 用いられた手法は、通気法(OF法)、OTC法(風防無し)、OTC法(風防有り)、自動開閉チャンバー法、ダイナミック・クローズド・チャンバー法などであるが、それらの全般的な評価については本大会の莫らの発表を参照されたい。 発表者らはこれらの手法のうち、特にOTC法に着目し、風防を設けたタイプと風防のないタイプのチャンバーを用いた際の土壌呼吸の比較測定結果について報告する。特に植生高の高い夏期と、植生高の低い春期から初夏、地上部植生の無い秋期から冬期での風の影響に注目して報告する。
  • 杉田 和之, 大塚 俊之, 中野 隆志
    セッションID: P1-044
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    1997年の国連気候変動枠組み条約第三回締結会議(京都会議)以降、陸上生態系におけるCO2吸収能力、とりわけ森林生態系における実質的炭素固定量である生態系純生産量(NEP)がタワーフラックス観測によって推定されるようになった。日本では近年、岐阜大学高山試験地での先駆的研究によって、NEPは年によって2倍近くも違うことが明らかになり、そのメカニズムの解明にはタワー観測による微気象学的手法と平行して生態学的手法によるNEPの測定が重要である。そこで本研究では、富士北麓標高1030mに位置するアカマツ(Pinus densiflora)が優占する溶岩地上の林分において、植物の純一次生産量と土壌からの炭素放出量を個別に評価することによってNEPが年によってどのくらい異なり、その原因は何によってもたらされるのかを考察するために、調査を行った。
    調査はNPPは積み上げ法、土壌呼吸量はLI-6200(LI-COR)によって測定することによって行われ、2003年から2004年の調査の結果から、本調査地における2003年、2004年の脱落量はそれぞれ5.42ton C ha-1、5.99 ton C ha-1、微生物呼吸量はそれぞれ2.83 ton C ha-1、3.39 ton C ha-1、であり、炭素量は毎年土壌中に2tonから3ton蓄積していると考えられた。また現存量は毎年2ton以上増加していた。このことから、この土壌の未発達であるアカマツ林の特徴として、土壌中にも植物体中にも毎年多くの炭素が蓄積しているということが言える。 本研究は2000年から2004年の過去5年間のデータからNEPの年変動性についてさらに詳しく解析する。
  • 横澤 隆夫, 大塚 俊之, 中野 隆志
    セッションID: P1-045
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    富士山北東斜面1000m付近には溶岩の影響により、土壌の発達段階の異なる森林が存在する。土壌の未発達な森林では、森林の成長量は無機態の窒素などの土壌の栄養塩類によって制限されていると考えられる。本研究では土壌発達段階の異なる3つ森林における純一次生産量(NPP)と無機化速度の関係調べることを目的とする。発達段階の異なるサイトとして、剣丸尾溶岩流(西暦937年)上にあるアカマツ林、長尾山溶岩流(西暦864年)上のヒノキ、ツガ林、大室山溶岩流(2850年前)上のミズナラ、イヌシデが優占する落葉広葉樹林で調査を行った。
    NPPは、DBHからアロメトリーによって求めたバイオマスの増加と、リタートラップをもちいて求めた枯死脱落量の合計として測定した。無機化速度はポリエチレンの袋に深さ5cmまでの土壌を入れて約1ヶ月現地にて培養して測定した。その他に土壌の特性として、pH、無機態窒素濃度、可給態リン濃度、全窒素、全炭素を測定した。
    アカマツ林では土壌の深さは8.5cmと浅く、8月の土壌では、pHは4.24、無機態窒素濃度は74.9mg kg-1であった。ヒノキ、ツガ林の土壌の深さは15.1cmであった。pHは4.68、無機態窒素濃度は135.7mg kg-1であった。落葉広葉樹林の土壌の深さは70cm以上だった。pHは5.63、無機態窒素濃度は89.3mg kg-1であった。アカマツ林では無機化速度もNPPも低くかった。ヒノキ、ツガ林と落葉広葉樹林では無機化速度は落葉広葉樹林で高かったが、NPPは同じ程度であった。この結果について考察した。
  • 鈴木 希実, 木庭 啓介, 伊藤 雅之, 尾坂 兼一, 大手 信人, 戸張 賀史, 勝山 正則, 山田 桂大, 豊田 栄, 永田 俊, 吉田 ...
    セッションID: P1-046
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     メタンは二酸化炭素に次いで温暖化に寄与しており、その動態の解析は温暖化機構の解明と対策に有益である。メタンの動態に関して、還元的土壌環境ではメタンは生成し、酸化的土壌環境では消費されることが知られている。一般に、森林土壌は酸化的環境にあり、メタンの重要な吸収源であるとされているが、土壌の酸化還元状態は空間的異質性に富み、実際の土壌中メタン動態の解析は容易ではない。本研究では、同一森林生態系における土壌中及び大気_-_土壌境界でのメタンの濃度と炭素安定同位体比の測定によるメタンの土壌中動態の解析を目的とした。 試料の採取は平成16年の3月と5月に滋賀県南部の京都大学桐生水文試験地で行った。異なる土壌酸化還元環境にある数地点において長さが異なる採気管を地中に埋め、土壌ガスを採取した。また、各地点においてチャンバー法による気体の採取も行い、メタンが土壌から放出、及び土壌に吸収される際の同位体分別についての測定を行った。採取した試料はGC-MSを用いてメタンの濃度及び炭素安定同位体比の測定を行った。 土壌深度の増加に伴いメタンが減少している場合でも、その炭素安定同位体比がメタンの生成を示唆している地点もあるなど、異なる採取時期及び採取地点では、メタンの放出・吸収特性は大きく異なっていた。また、土壌から放出または土壌に吸収されるメタンと土壌ガス中のメタンとを比較すると、土壌の極表層が大気_-_土壌境界のメタン動態に密接に関わっていることが示唆された。メタンが放出されている地点で、酸化的と予想される土壌極表層部でのメタン生成の可能性が暗示された場合もあった。空間的異質性に富む森林土壌におけるメタン動態は、安定同位体比の情報を濃度情報に付け加えることによって、より詳細な議論が可能である。
  • 眞壁 明子, 木庭 啓介, 由水 千景, 高津 文人, 豊田 栄, 小川 奈々子, 大河内 直彦, 戸張 賀史, 金 ?九, 小林 由紀, ...
    セッションID: P1-047
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     窒素は生元素であり、窒素化合物の挙動を解明することは生態系の状態を考える際に不可欠である。安定同位体比の情報を用いることにより、生態系中の窒素循環におけるプロセスについての情報を得ることができ、また、異なる生態系間における窒素循環や食物網を比較・議論する際にバックグラウンドとなる情報も得られると考えられる。例えば、地球温暖化・オゾン層破壊ガスである亜酸化窒素生成過程には、硝化・脱窒の2経路が考えられるが、亜酸化窒素が持つ2つの窒素それぞれの安定同位体比と酸素の安定同位体比は、硝化・脱窒プロセスの情報を含んでいる可能性がある。 河川は陸域生態系と湖沼生態系を繋ぐ場であり、河川生態系における窒素化合物の安定同位体比を解析することは、河川生態系における環境指標構築に貢献できるだけではなく、陸域からの人為起源物質の影響評価、湖沼における富栄養化の評価にも有効であると考えられる。 本研究では、琵琶湖に流入する第一級都市河川おいて上流域から河口域に渡る流程調査を行った。2004年5月に野洲川23地点にて、2004年9月に安曇川14地点にて各種窒素化合物の安定同位体比測定用のサンプルを採水した。亜酸化窒素の窒素・酸素安定同位体比を測定したところ、上流域においては大気中亜酸化窒素の同位体比に近い値が得られ、下流にいくにつれ窒素安定同位体比がやや低くなる傾向があった。このことから、全域に渡り常時大気平衡による亜酸化窒素の流入があり、下流にいくにつれ脱窒による亜酸化窒素の生成・消滅過程による寄与が大きくなっている可能性が示唆される。さらに、窒素安定同位体比と溶存有機物濃度に負の相関が見られたことから、溶存有機物の増加により脱窒が促進された可能性が考えられる。
  • 大谷 壮介, 上月 康則, 水主 隆文, 北代 和也, 仲井 薫史, 上田 薫利, 村上 仁士
    セッションID: P1-048
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    本研究では日本全国に広く分布するヤマトオサガニ(Macrophthalmus japonicus)を対象種とし,徳島県勝浦川河口干潟においてヤマトオサガニを中心とした干潟における有機物の物質循環機能を明らかにすることを目的としている.そこで,摂餌活動,摂餌量および同化率を推定するモデルを作成し,その検証を行った.
    ヤマトオサガニの摂餌活動と摂餌量は,現地調査より得たヤマトオサガニの一日の砂団子数,砂団子造粒速度および干出時間から摂餌活動時間ならびに干出時間中の摂餌割合を算出した.また,ビデオ撮影より摂餌活動時間および干出時間中の摂餌割合を算出した.これらを比較した結果,ヤマトオサガニは干出時間の48%を摂餌活動に当てており,その他の時間は巣穴掃除や甲羅干しなどの行動を行っていた.さらに,現地調査の結果を用いて一日の砂団子造粒数および砂団子造粒速度の重回帰式を作成した.一日の砂団子造粒数は地温と干出時間,砂団子造粒速度は地温を説明変数とした重回帰モデル式が作成され,現地調査の結果と概ね一致していた.
    ヤマトオサガニの消化管内砂泥を光学顕微鏡下で観察を行った際,胃と腸に含まれる底生微細藻類の葉緑素が抜け落ちていた.また,干潟表層砂泥およびヤマトオサガニの消化管内砂泥のChl.a,Pheo.を測定した結果,干潟表層砂泥ではChl.aの占める割合が高く,Pheo.の割合が低かった.一方,消化管内砂泥ではPheo.の割合が高く,消化管内でChl.aの分解・消化が行われていることが示された.そこで,底生微細藻類の葉緑素があるものを生細胞,ないものを死細胞とした上で珪藻の同化率推定を試みた.その結果,ヤマトオサガニの珪藻同化率は37.6%であり,これらはデトリタス食者の同化率と同程度の値を示していた.
  • 鈴木 佳奈
    セッションID: P1-049
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    産卵サケの死骸の栄養は、分解や捕食により淡水や陸上の食物網に取り込まれる。本研究は、北海道内で普遍的に見られる分解速度の異なる落葉樹種3種(ヤチダモ、イタヤカエデ、ミズナラ)を用いて、落葉の分解速度ならびに落葉に付着する底生動物が、サケの死骸(流出する栄養塩)から異なる影響を受けるかどうか実験的に評価した。仮説は、1)サケの効果を受けて落葉3樹種の分解速度は促進する、2)サケの効果により落葉に付着する底生動物の現存量や密度が高くなる、である。野外実験は北海道大学苫小牧研究林にある人工水路6本(幅33cm、長さ8m)を用いて2003年11月_から_2004年4月にかけて行った。実験処理区は「落葉区」(落葉パックのみの対象区)と「サケ区」(落葉パック+サケの死骸を投入)の2処理区を設け、サケ区にはシロザケ1匹ずつを投入した。実験開始から15、30、45、60、75、95、115、135、155日後に3樹種の落葉の残存量と各樹種に付着していた底生動物の現存量や密度を計測した。60日をピークにサケの死骸からNO3やPO4などの栄養が溶出した。3樹種の落葉分解量に対する処理区の効果は、115日後と135日後において認められ、落葉の分解はサケ区で促進された。落葉に付着していた底生動物の総密度は、115日目において「サケ区」で高い傾向が見られた。底生動物の優占種は、採集食性(collector-gatherer)のユスリカ科幼虫(Chironominae)と捕食性のユスリカ科幼虫(Tanypodinae)であった。Chironominaeは、イタヤカエデの115日目とミズナラの115日目においてサケの効果を受けてその現存量が高くなる傾向が認められた。Tanypodinaeは落葉3樹種すべてにおいてサケ区でその現存量や密度が増加した。以上のことから、サケの死骸から流出する栄養塩の効果は、各樹種の分解過程や底生動物分類群によって異なることが明らかになった。
  • 黒川 紘子, 中静 透
    セッションID: P1-050
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    植物の二次代謝産物であるフェノール性物質(総フェノール・縮合タンニン・リグニン)は被食防衛物質としての機能をもつと同時に、分解速度をも制限するといわれている。つまり林冠で植食者にとって利用しにくい葉は、落葉後、分解者にとっても利用しにくいことが予測される。では、実際の森林生態系において、食われにくい葉は本当に分解されにくいのか、という問いに答えるため、マレーシア・サラワク州の低地_-_丘陵フタバガキ林にかけて出現する260樹種の葉の性質や分類群の幅を網羅するよう選んだ40樹種を用い、葉の様々な性質(フェノール性物質濃度、葉の硬さ、LMA、窒素濃度)と被食率および分解速度との間に成り立つ関係を明らかにした。具体的には1)生葉と落葉の性質は同じか、2)生葉の被食率、落葉の分解速度を説明する葉の性質は何か、3)被食率と分解速度に相関関係はあるのか、ということを明らかにし、上記の問いを検証した。その結果、幅広い分類群に属する熱帯樹種について1)落葉の性質は生葉の性質を反映しているものの、変化する質(総フェノール、縮合タンニン、窒素含有量)としない質(リグニン含有量、硬さ、LMA)がある。2)分解速度は、落葉のリグニン濃度、リグニン:N、葉の硬さ、LMA、窒素濃度、C:N、および縮合タンニン濃度と強い相関を持つ。一方、被食率に関してはそれを説明する特定の葉の性質を明らかに出来なかった。多様性に富む熱帯雨林では、樹木の被食防衛戦略も多様で、群集内で一つの戦略が卓越していない可能性がある。3)林冠における被食率と落葉の分解速度には相関関係はない、ということが明らかにされ、実際の森林生態系において食われにくい葉が必ずしも分解されにくいとは限らないことが示唆された。
  • 戸田 求, 横沢 正幸, 渡辺 力, 隅田 明洋, 原 登志彦
    セッションID: P1-051
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    森林は、木材や林産物の生産場であると同時に、環境保全という重要な役割を持っており、その保護や管理において、地球温暖化による急激な環境変動に対応した森林動態の知見の蓄積が急務であると考える。しかし、大気CO2上昇による気温増加等の“温暖化”を想定した実験的研究は主に草本種に限られ、一方で木本においてはその規模や時間的制限のため、中長期的な戦略のもとで行われる必要がある。この状況の下、数値研究は、室内実験や野外観測に代わって上記の制約を克服し、現実的な将来予測を目に見える形で提供してくれる特色を持つ。当研究室は、森林動態に伴う陸域から大気へのフィードバックプロセスを加味したプロットスケールでの新しい大気?陸面モデル(Multilayered Integrated Numerical Model of Surface Physics-Growing Plants Interaction, MINoSGI)の開発を行い、全球モデルとの結合を視野に入れた開発と様々な機能タイプを有する植生(常緑樹や落葉樹など)に対応可能な更なるモデル開発を平行して進めている。現在、筆者らはこのMINoSGIを用いて群落特性が森林群落動態や競争過程に及ぼす影響についての数値実験を行っている。ここでの群落特性とはバイオマスアロケーション、個体のクラウン形状(個体の葉面積密度の鉛直分布)、群落構造(森林全体の鉛直方向の葉面積密度)といった要因が挙げられる。既往の研究の中にはこれらの要因によって群落動態や個体間競争がどのように決定されるのかという疑問に対する、幾つかの実験的研究も見られるが、個体の炭素収支的な観点から定量的に示した研究結果は少ない。本研究では群落特性を示すこれらの要因が個体の炭素収支を通して群落動態や競争過程に及ぼす影響を調べるとともに、気象条件の違いが群落動態や競争過程、さらに熱・水・炭素フラックスに及ぼす影響についても議論する。
  • 鈴木 準一郎, ハッチングス マイケル
    セッションID: P1-052
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    ある環境下に存在する土壌中の栄養塩の総量が同じであっても、不均質に栄養塩が分布する環境下で生育するクローナル植物の成長量が、均質に分布する環境下での成長量に比べて、より大きい場合があることが実験的に知られている。この現象をひき起す機構とされているdivision of labourとは、栄養塩が多い場所に存在するラメットでは地下部への物質分配が著しく増加し、そのラメットの形態が栄養塩吸収に特化するので効率的な栄養塩の吸収が起り、その結果、複数のラメットが物理的に連結したクローナルフラグメント全体の栄養塩吸収や成長量も増加する機構と説明されている。また、栽培実験により、この機構の存在を仮定した場合と矛盾しない結果も得られている。たくさん資源がある場所で、その資源の獲得に特化したラメットを持つ事は、なるほど効率的である。ただし、クローナルフラグメントの成長量の増加の程度は、集中的に栄養塩が分布する場所の大きさや、集中する場所とそうでない場所との栄養塩濃度の差によって影響をうけることも知られている。では、ある場所に存在する一つのラメットは、自らが存在する場所が、他の場所に比べて豊かである事をどのように「知り」、自らの物質分配様式を変化させるのであろうか。  本研究では、クローナル植物が土壌養分の不均質性をどのように認識しているかを実験的に明らかにすることを目指した。実験では、「一つのラメットは、自己が経験する環境のみに影響を受け、物質分配比を変化させている」を帰無仮説とした。個々のラメットが異なる栄養条件を経験しうる環境下で、クローナル植物の代表的なモデル植物であるカキドオシを栽培し、その乾燥重量から上記の仮説の検討を試みた。
  • 上野山 雄也, 岡崎 純子, 名波 哲
    セッションID: P1-053
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    個体群構造の解析は個体群維持の機構を解明するばかりではなく、繁殖様式の進化・維持の解明にも有効な手段となっている。雄性両性異株という性型はまれな性型であり、その進化・維持機構についての生理学的・遺伝学的な研究はここ10年の間に進んできている。雄性両性異株では雄株は花粉生産のみに関与し、両性株では花粉・種子の両方の繁殖に寄与することから両者に繁殖コストの差異があり、そのことが野外集団での両性型のサイズ構造、空間構造に違いをもたらしていることが予測されるが雄性両性異株での個体群構造の解析をおこなった研究はほとんどない。 そこで本研究では、大阪府柏原市大阪教育大周辺緑地(柏原集団)の明るい二次林に設置したマルバアオダモの優占する40×60m2のpermanent plotにおいて、(1)個体群構造特にサイズ分布、繁殖開始サイズ、開花フェノロジー、RGRに性型間での違いがあるのかの調査をおこなった。さらに、(2)位置情報からRiplyのK(t)関数の修正関数L(t)を用い、性型間での空間分布に違いがあるのかを解析した。また、また比較のために(1)に関しては、和歌山市和歌山大周辺緑地(和歌山集団)の常緑樹が優占する二次林のマーク個体においても調査を行った。 その結果、柏原集団では開花フェノロジー、RGRには性型間での有意な差異はみとめられなかった。ただし和歌山ではマーク個体の開花に著しい年隔差があり、光条件に制約のある環境下では性型間で開花頻度に差異がある可能性が示唆された。またサイズ分布の解析からは開花開始サイズに性型間に差異があることが示された。空間構造はサイズクラスが大きくなるにつれ集中分布からランダム分布へと移行する傾向がみとめられた。これはこの植物が風散布種子であり、実生のセフティサイトは親木の下や吹きだまりのような地点に集中するためと考えられる。一方、開花個体では雄株も両性株も12mの距離までは集中分布しそれを超えるとランダム分布へと移行していく傾向がみとめられた。性型間には同所的に分布する傾向が認められ、性型間での分布パターンの違いは認められなかった。
  • 岡崎 純子, 井上 大輔, 上野山 雄也, 石田 清
    セッションID: P1-054
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    性表現は植物の多様性を生み出す重要な繁殖戦略の一つとなっている。この性表現の中で、雑居性雌雄異株(雌性両性異株・雄性両性異株)は、この進化の過程を明らかにするための鍵となる性型であると考えられている。雄性両性異株性は特にまれな性型で、その維持には、雄の高い繁殖成功度をもたらす交配様式(特に高い外交配率)や近交弱勢、また生育環境に応じた雄株と両性株の繁殖特性の差異といった要因が関与していると考えられているが、実際に雄性両性異株性を示す野外集団を用いて検証された例は少ない。このような交配様式や集団の繁殖構造の解明にはDNAの繰り返し配列部であるマイクロサテライト部位の多型を用いた遺伝的解析の利用が有用であることが多くの植物で報告されてきている。本研究では、モクセイ科の落葉性高木で雄性両性異株性を示すマルバアオダモを材料として、既存のマイクロサテライトマーカーの有効性の判定をおこない、有効であったマイクロサテライトマーカーを利用し、個体群の遺伝子レベルでの空間分布がどのようになっているのか、雄株と両性株の間でその遺伝的な構成の違いがあるのか、混合花粉受粉実験により実生への寄与に性型間での違いがあるのかの調査をおこなった。調査は大阪府柏原市の二次林と和歌山市和歌山大学周辺緑地の二次林の2地点でおこなった。その結果、ヨーロッパのアオダモ属植物に対して開発されたDNAマイクロサテライトマーカー13種のうち、マルバアオダモには3種が有効であることが判明した。この3マイクロサテライトマーカーを用いた解析結果からは、混合花粉での受粉の成功にやや雄株が有利であること、性型間での遺伝的構造の違いがあることが示された。これらの結果から、この植物における性型の維持機構についての考察をおこなう。
  • 川口 英之, 名嘉真 希美代, 溝内 正広, 舘野 隆之輔, 名波 哲, 井鷺 裕司, 金子 有子
    セッションID: P1-055
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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     京都大学芦生研究林内のモンドリ谷において,胸高直径10cm以上のトチノキ28個体の着花数と種子生産数を1997年から6年間調査し,個体および個体群レベルの変動パターンとその要因を解析した.雄花と両性花を含めた着花数は,花序をつけた当年枝の割合の観察とトラップを用いた落下数の測定によって得た式より推定した.種子生産数は落下した果皮数から推定した.
     6年間で25個体の開花が確認された.個体群全体の種子生産数は,最小と最大の年の間に10倍以上の差があった.6年間の豊凶は,豊並並並凶並の順となった.着花数の変動は種子生産数の変動に比べて極めて小さかった.開花は毎年おこり着花数の年変動は小さいので,開花から成熟までの間に豊凶が決定されると考えられた.個体レベルでは,多くの個体で着花と種子生産は大きく年変動し,明瞭な2年周期を示す個体がみられた.しかし,2年周期を示した個体のうちには豊作年にわずかしか開花しなかった個体もあり,個体群全体で強く同調しているわけではなかった.
     種子生産の年変動に影響する要因として,個体サイズ,平均種子生産数,谷内での渓流から斜面への地形に沿った生育場所をあげ,個体ごとの6年間の種子生産数の変動係数とこれらの要因との関係を検討した結果,斜面下部に生育する個体は,斜面中部に生育する個体に比べて,種子生産数の変動係数が有意に大きかった.
     種子生産の同調度に関係する要因について,開花時期の同調度,個体間の距離,遺伝子型の類似度,着花数の同調度と,種子生産数の同調度との相関を求めた結果,個体間の種子生産数の同調度と個体間の距離との間に有意な負の相関があった.種子生産の同調度は,個体間の距離が近いほど強いことが示された.
  • 鳥丸 猛, 戸丸 信弘
    セッションID: P1-056
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    雌雄異株植物では雌雄間に性差(性的二型)が存在することが知られている。有性繁殖では雄は比較的低コストの花粉を生産し、一方雌はよりコストの高い種子、さらに果実を生産する。このような雌雄間の異なる資源配分がさまざまな性差を引き起こす要因と考えられている。木本植物は分節構造(モジュール)を形成するため、性的二型性の有無を調査する場合、調査対象とするモジュールレベルを決定する必要がある。生活史が他の植物よりも長期間におよぶ樹木では、葉、枝、花、果実など下位のモジュールの動態は、ラメートやジェネットなど上位のモジュールの動態よりもずっと短い期間で推移する。したがって、短期間の調査では、下位のモジュールではしばしば性差が認められるが、上位のモジュールでは性差が認められない場合が考えられる。本研究では、大山ブナ老齢林の林床に生育し、クローンを形成する常緑低木で雌雄異株のヒメモチを用いて、異なるモジュールレベルにおける性的二型性の有無を明らかにすることを目的とした。まずヒメモチのラメート(開花雄、開花雌、結果雌)を採取し、葉、枝、花、果実の幹重を測定した。次に、パッチを形成しているヒメモチを6個選定し、RAPD(random amplified polymorphic DNA)解析によってジェネットを識別した。その後、ジェネットあたりの葉、非同化部分(枝+幹)、花のバイオマスを推定した。そして、ヒメモチのシュート、ラメート、ジェネットの各モジュールレベルにおける繁殖投資(花と果実)と同化部分(葉)への投資に関する性的二型性の有無を調査した。今回の発表では、各モジュールの繁殖投資を明らかにした上で、有性繁殖とモジュール形成の関連性について議論する。
  • 福山 欣司, 長沖 暁子
    セッションID: P1-057
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    1990年から2004年の15年間、横浜市郊外の大学キャンパス内にある雑木林に置いて、シュンラン群落の長期的な生態調査を行った。コナラーイヌシデ林に10平方メートルの方形区を6つ設置し、毎年3月下旬から4月上旬に各方形区を精査し、個体数の変化、開花数、成長率などを記録した。その結果、10平方メートル当たりの平均個体数は、21.6から34.2まで変動したが、この間、群落の動態にもっとも大きく影響したのは盗掘であった。盗掘の影響を除くと、この群落では新規加入個体は少ないが、定着している個体の生存率が高いため、安定した個体数密度を維持していると考えられた。また、個体の成長速度は緩やかで、成長の良かった上位10_%_の個体においてもシュートの年間増加率は、平均0.99であった。講演ではこれ以外に開花率などのデータも提供し、シュンラン群落の動態の一端を明らかにしたい。
  • 梶原 嗣顕, 神崎 護, ワチャリンラット チョングラック
    セッションID: P1-058
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    森林の林床光環境は実生の生存を規定する重要な要因の1つである。その空間的,時間的な分布特性を明らかにし、林分構造がどのように光環境を規定しているのかを解明することは、森林の更新機構をより動的に理解する上で重要であると考えた。そこで、タイの熱帯季節常緑林の2.5 ha調査区内で、全天写真を用いて林床光環境(Global Site Factor:GSF)の空間分布とその季節性を明らかにし、林分構造との相関を解析した。また、Hopea ferrea当年生実生群の動態に対するGSFの影響を明らかにすることを試みた。
    調査区内に設定した450mのライントランセクト上 で1 m間隔に地上0.6 m(下層)と1.4 m(上層)で全天写真を撮影した。GSFは、乾季が雨季より有意に明るく季節性が認められ、地上1.4 mよりも下層の0.6 mのほうが有意に明るかった。また、樹冠高10 m以下のギャップ部分の林床では、GSFは有意に低くなっていた。セミバリオグラムで求めたGSFのレンジ(自己相関の及ぶ範囲)には季節性は無く、下層が10 m、上層が20 mで、下層のほうが小さなスケールで変動していた。GSFは小径木(DBHで40 cm未満)の現存量とは負の相関、大径木(DBHで40 cm以上)および落葉樹とは正の相関が見られた。GSFと実生の死亡率との間には直接の相関はみられなかったが、ギャップ内での死亡率は、他の林分に対して有意に高くなっていた。
  • 川瀬 大樹, 湯本 貴和
    セッションID: P1-059
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     蛇紋岩地帯という環境ストレスが高い特殊な土壌に隔離分布する蛇紋岩植物オゼソウ(VU)は、北海道の天塩山地と本州の至仏山、谷川岳にのみに生育し地下茎によるクローン繁殖をしている。本研究ではオゼソウの生育地情報に関して生育環境要因と植生情報を用いて蛇紋岩植生の特性を把握し、AFLP解析によってオゼソウのクローン構造と集団の遺伝構造を明らかにすることを目的とした。クローン識別のためにAFLP解析を行った結果、至仏山の一つの集団では崩壊斜面が生じている場所で、15m以上離れた箇所においても同じクローンから構成されていることが示され、崩壊斜面、基盤岩による地形的な影響を受けていることが示唆された。一方で、天塩山地の集団ではクローンの広がりが小さく小パッチごとに異なるクローンで構成されていることが示された。さらに至仏山におけるオゼソウの詳細な生育分布図(被度)を作成したところ、オゼソウは雪解けによる雪食の影響を受けて裸地化した場所に小パッチ状に優占的に生育しており、過去に地下茎の分断によって広がった可能性、或いは、連続的に分布していたものが土砂崩壊によって削り取られた可能性が示唆された。このような場所では背丈が高く、生育分布の広いササなどが侵入しておらず他の植物との競争が緩和されていると考えられた。またAFLP法から得られたバイナリー情報から集団遺伝学的パラメーターを計算したところ、北海道側と本州側における集団間の遺伝分化は大きく、集団内の遺伝的多様性が低いことが示された。
  • 譲原 淳吾, 花岡 創, 津村 義彦, 向井 譲
    セッションID: P1-060
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    西南日本及び太平洋側の山岳地帯に隔離されたブナ林は、稚幼樹が少なく、成熟木がほとんどを占めているため、今後、急速に衰退していくことが懸念されている。稚幼樹が少ない原因には、堅果散布後の発芽や実生の定着と密接な関連をもつ積雪時期や積雪深などが日本海側と大きく異なることに加えて、充実した堅果がほとんど生産されないことが指摘されている。したがって、ブナの天然更新をはかるためには充実堅果が生産されない原因を解明する必要がある。
    当研究室では、富士山南西斜面2合目のブナ天然林にシードトラップを設置し、落下堅果の充実率、シイナ率、虫害率を調査した。その結果、虫害が多いことに加えて、シイナが多いことも充実率を低下させる原因であることが明らかになった。そこで、1998年、2000年及び2003年の3回にわたって、隔離分布した局所集団に生育する複数の個体を対象に人工交雑を行い堅果の充実率に及ぼす自家不和合性や近交弱勢などの遺伝的要因を調べた。その結果、いずれの年度、母樹においても自家受粉では大部分がシイナになったため、ブナが強い自家不和合性を示すことが明らかになった。また、遠く離れた個体を花粉親とした交雑で得られた堅果に比較して近隣個体を花粉親とした交雑で得られた堅果の充実率が有意に低かった。このことから、花粉親と母樹との空間的な距離が堅果の充実率に影響を及ぼすことが明らかになった。また、RFLP分析の結果、集団内に遺伝的構造がみられた。さらに、遺伝的血縁度と堅果の充実率には負の相関が認められた。すなわち、近くに存在する遺伝的にも近縁な個体間の交雑が堅果の充実率の低下を引き起こしていることが推定された。
  • 榎木 勉
    セッションID: P1-061
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    ハワイ諸島には約100年前から砂防などの目的で導入されたマングローブ林が定着している。近年は、外来種による生態系への影響を懸念し、一部の地域では伐採による駆除の試みがなされている。本研究ではオアフ島のヘエイア州立公園内にあるRhysophola mangle L.が優占するマングローブ林において、皆伐が稚樹の生育に与える影響を調べた。 長さ40mのライントランセクトをマングローブ林から隣接する伐採後3年経過した伐採区にかけて、ラインの中央がマングローブ林と伐採区との境界になるように設置した。ラインは3本設置し、5m間隔で開空度と稚樹の個体数、サイズ、葉、幹、根への資源配分を調べた。 開空度は森林内の境界まで10mの地点から増加し、森林から離れるほど大きくなった。稚樹の密度は森林内から境界までは変化しなかった。伐採区では地樹密度は増加したが、境界からの距離が15m、20mの地点では減少した。個体サイズは森林内においても境界に近付くにつれて増加し、この変化は境界をこえると急激になった。 開空度の増加に伴い、稚樹のT/R比は森林内では徐々に減少し、境界を越え伐採区に入ると急激に減少した。これは葉重/個体重比と根重/個体重は増加するが、幹重/個体重比が減少するという変化に対応していた。SLAは森林内で境界に向かって減少し、皆伐区では一定であることから、葉重/個体重比の増加は森林内では葉数の増加よりも個葉の重量の増加によるものであり、皆伐区では葉数の増加によるものと考えられた。根重/個体重比の変化は森林内では小さく、皆伐区では大きかった。皆伐による急激な光資源量の増加により、着葉量が増えるが、相対的に減少する土壌中の利用可能な資源量に対応するため、根へ光合成生産物の配分が大きくなったと考えられる。 以上のように、天然更新した稚樹は、皆伐による光環境の変化に対応した資源配分を行いながら良好な生育を示しており、マングローブ林の除去のためには、皆伐に加え、天然更新の抑制の必要があると考えられる。
  • 白崎 仁
    セッションID: P1-062
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     新潟県およびその隣接地域のコケ植物は複雑な分布様式を示しており、それらはこの地域の環境要因と密接に関連していると考えられる。コケ植物の分布情報データベースを作成し、これらの情報をもとに、分布図の自動打点・画像データベースを作るとともに、アメダスデータ(地上気象観測資料)と連携させて、それぞれの種の分布地点における気温、降水量、積雪深、および8月の可能蒸発散量をもとめ、環境要因を解析している。 新潟県およびその隣接地域で分布が明らかになっているコケ植物のなかで、比較的分布頻度の高い苔類の6分布型について、分布と環境要因を解析した。1)日本海側では北部の内陸部に多く、500m以下の低海抜に分布する、2)日本海側では海岸部から内陸の1000m以下の低地に広く分布する、3)ややまばらに広く分布する、4)佐渡の北部と越後の内陸の山岳地域に多く分布する、5)日本海側では県北部に多く、1500m以下の低海抜に主に分布する、6)海岸部から内陸の1500m以下の山地に広く分布する。これらの型に含まれる種は、国内に広く分布しており、その環境要因の解析結果が多雪地域のものとは異なる可能性がある。新潟県およびその隣接地域と同様に、比較的情報の多い近畿地方の分布をもとに環境要因を解析して比較した。各環境要因における分布頻度と相関が比較的類似する場合には、その共通要因によって分布が制限されているが、逆の場合には、これらのコケ植物の分布は、その要因とは無関係と考える。
  • 渡辺 雅子, 仲岡 雅裕, 向井 宏
    セッションID: P1-063
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    北日本沿岸にはアマモ属の海草数種で構成される多様性の高い海草藻場が形成され、その中にはオオアマモやスゲアマモ、タチアマモ等の日本近海の固有種が含まれる。このうちオオアマモは分布域が減少し絶滅が危惧されている種であるが、その分布は国内では北日本の一部と限られている。分布についての調査は1932年に行われているのみで、近年における報告は厚岸湾や大槌湾など限られた場所しかなく、またこれらの分布域における現存量や生育環境について詳細な調査はなされていない。そこで、北海道内におけるオオアマモの分布域を調査し、現存量を推定するとともに地域間の密度や形態などの比較を行うことを目的として調査を行った。 調査はオオアマモが主に分布している北海道沿岸を対象として行った。オオアマモの分布が確認できた場所においてGPSを使用しての藻場面積測定や、水深、水温、光量、塩分、粒度組成などの生育環境測定、密度測定や坪刈りを行った。採集してきた海草は部位ごとに分け形態の測定や乾燥重量など測定した。生育環境調査からオオアマモの生育水深は1m以浅から約14mであった。また、水温においては-1.6℃から22.4℃までの範囲において分布しており、光量については海上に対する相対光量が5%以上の所に生育していることがわかった。単位面積あたりの密度や現存量は地域間で大きく変わらなかったが、道東の方が藻場面積は大きく現存量が大きかった。3枚目の葉における幅、長さについては地域別に有意な差が見られ、道南タイプ、道東南タイプ、道東北タイプ、の3つに分けることが出来た。
  • 森 茂太, 山路 恵子
    セッションID: P1-064
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    青森ヒバの種子豊凶の年次変動はこれまで報告はあるが、樹木個体毎の結実数、球果重量、種子重量の情報は殆ど無いのが現状である。そこで、我々は津軽、下北半島のそれぞれ代表的な1林分で球果が充実した2004年9月中旬以降に、伐採された複数個体すべての球果を採取し、「個体毎の球果数」、「個々の球果重量」、「球果毎の個々の種子重量」を調査した。その結果、津軽、下北半島ともに個体サイズに関わりなく結実していた。しかし、個体当たり平均球果数、調査面積当たりの結実個体数は下北より津軽の方で明らかに多く、両調査地での差は大きかった。「球果重量?球果毎の平均種子重量」、「球果重量?球果当たりの種子個数」はそれぞれ比例しており、津軽の方が下北よりも、球果重量、球果当たりの種子個数、球果毎の平均種子重量ともに明瞭に大きかった。以上のように2004年は、林分、個体、球果、種子レベルで共に津軽調査地の方が下北よりも種子生産は充実していた。ヒバの更新の主力は伏状と予想されるが、根の浅い青森ヒバは大規模に風倒を起こす事があり、実生更新は一種の「セーフガード」としての機能を持つと思われる。こうした2地域間の種子特性の違いが実生更新の可能性の違いとして、林分の構造などと関わりあう可能性を検討する必要があろう。
  • 目黒 伸一
    セッションID: P1-065
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     1992年からブラジル河口部において人間活動にとって破壊されてきたアマゾン熱帯林の修復・回復プロジェクトを行ってきた。植生調査によりアマゾン川に生育する土地本来の樹種を用い、ブラジル・パラ州においてポット苗による植栽を行い、その生長調査を追跡した。これまでにほとんどの樹種の厳密な意味での生態はほとんど明らかにされていない。そこで、地形や立地の差異による生長解析によりその種生態と生長特性について調査を行った。 その結果、Dipteryx odorata、Sterculia speciosa、 Virola cuspidateおよびCarapa guianensisは湿性立地に生育し、Virola melinoniは乾性立地に生育することが明らかになった。これらの種は乾性立地および湿性立地における区分種であった。 Eschweilera parvifoliaはその分布が広く、立地に対する選択性が低いことが明らかになった。Tabebuia serratifoliaはその高い材密度のため生育は遅く、また台地など比較的排水がよい立地で良い生長を示すことが明らかになった。 アマゾンに生育する樹種の種特性は東南アジア熱帯雨林に生育する樹種よりも、より高い変異幅を持ち、Schizolobium amazonicum,、Ochroma pyramidaleおよびCeiba pentandraなどは時によりずっと速い生育する樹種があることが確認され、その多様な立地が多くの種群の生育を可能にしていることが示唆された。 また、樹種の有する材密度と生長特性、樹木形態に強い相関があることが示されていた。
  • 大久保 幸実, 鈴木 準一郎, 可知 直毅
    セッションID: P1-066
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     植物個体群のサイズ構造および個体密度と個体サイズの関係は、個体間競争の非対称性により変化する。競争の非対称性は主に個体の成長速度と形態によって変化する。成長速度と形態は種間また環境条件により異なり、また獲得した資源量に応じ同時に変化しうる。そこで本研究では生育環境に応じ植物が示す反応が、サイズ構造と個体密度と個体サイズの関係に及ぼす影響の総合的な評価を目的とした。そのため条件1:明期高温/暗期低温、条件2:明期低温/暗期高温の2条件下で、シロイヌナズナ個体群のサイズ構造と密度と個体重の関係を比較した。成長速度が小さい条件2下で、個体サイズのばらつきは小さく競争はより対称的であり、密度依存的な枯死が生じにくく、密度と平均個体重の直線関係の傾きはより緩やかになると予想した。 成長速度と個体サイズは条件1下でより大きく、密度と平均個体重の直線関係の傾きは急であり予想と一致した。しかし各密度下の生残個体数は条件間で差がなかった。また個体サイズのばらつきは低密度では条件2でより大きく高密度では同程度であり、サイズ構造と競争の非対称性は予想とは異なった。その理由の一つとして条件1下の植物は葉柄が長く、条件2下では葉柄が短く葉身の割合が大きかった。前者は垂直方向への葉身の展開が可能で、被陰を逃れやすい形態であり予想よりも対称的な競争が生じたが、後者の形態ではその反対に競争は非対称的になったと考えた。このように異なる環境下での競争の非対称性は成長速度のみで決定されるのではなく、同時におこる形態的反応によっても変化する。個体群のサイズ構造や個体密度と個体サイズの関係の決定要因を解明するためには、物質生産と形態形成を担う環境応答機構やシグナル伝達物質の個体群へ及ぼす影響に注意すべきである。
  • 中井 亜理沙, 木佐貫 博光
    セッションID: P1-067
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    河川沿いの砂礫堆に生育する樹木の成長には水位変動の影響を受ける基質の水分条件が関与している。河川沿いの砂礫堆では,水際からの比高の違いに応じて浸水時間が異なるため,基質の水分条件が比高間で異なるであろう。このことから,砂礫堆における異なる比高間では,同一植物の成長に差が生じるものと予測される。これを検証するために,三重県宮川中流域の砂礫堆に生育するネコヤナギ(Salix gracilistyla)の1年生実生について,枝数,当年シュートの枝長および着葉数を測定し,比高間で比較した。また,比高ごとの基質の水分条件を把握するために,県の水位データを基に砂礫堆の水没期間を推定した。枝長を開芽日以降50日間に占める水没期間の異なる比高間で比較すると,水没期間が7日未満の比高(高比高)では個体によるばらつきが大きかったが,枝長が比較的長い個体が多かった。水没期間が7日以上の比高(低比高)では,枝長が比較的短い個体のみ出現した。枝数については低比高の個体の方が高比高の個体よりも少ない値を示した。開芽日以降50日間の着葉の総数は,低比高の個体では高比高の個体よりも少なかった。水没期間の長い比高では枝長が短く着葉数の少ない個体だけが出現したことから,実生の成長に及ぼす水没期間の影響は大きいものと推察される。また,水没期間の比較的短い比高において個体サイズのばらつきが大きかったことは,水分条件以外の要因が実生の成長に影響を及ぼしたものと推測される。河川における水位変動を伴う砂礫堆では,水没期間の違いがネコヤナギ実生の成長に少なからず関与するものと考えられる。
  • 中村 亮二, 鈴木 準一郎, 可知 直毅
    セッションID: P1-068
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     土壌養分の空間分布の不均質性と競争が植物個体の成長に及ぼす影響を定量的に評価することを目的に、ソライロアサガオを用いて、不均質性と地上部の競争(実験1)、不均質性と地下部の競争(実験2)を主要因とする栽培実験を行った。鉢内の全個体が1本の支柱を共用するか、あるいは支柱を各自で独占するかを地上部の競争の有無とした。地下部の競争では、鉢内の仕切り(ポリプロピレン板または防根シート)の有無を競争の有無とした。同量の遅効性肥料を、鉢内のパッチだけに集中的に与えるか、鉢内に均質に与えるか、あるいはその中間、の3条件を不均質性とした。 不均質性に対する地下部の形態的または生理的反応に個体差があれば、より不均質な条件下では個体サイズのばらつきの増加が予想される。また競争や不均質性が及ぼす個体サイズへの影響は競争下では下位個体ほど強いと予想される。 約6週間の栽培の後に植物体を刈り取り、乾燥重量を比較した。平均個体乾重量には地上部の競争と不均質性による効果が認められた。個体乾重量の全ばらつきへの各要因の寄与率は、地上部の競争下で6.24%、地下部の競争下で0.85%、不均質性下で5.74%(実験1)と4.24%(実験2)だった。同じ鉢内の個体を乾重量で順位づけし、その順位別に競争と不均質性の影響を分散分析で調べた。どの順位の個体でも地上部の競争の影響が認められ、地下部の競争の影響は認められなかった。不均質性の影響は、最上位や最下位の個体では認められず、中間的な順位の個体で認められる傾向があった。 以上の結果から、個体サイズのばらつきに地上部の競争に次いで不均質性が貢献し、異なる不均質性間での個体サイズの違いは中間的な順位の個体のサイズによって決定されること、が示唆された。
  • 下野 綾子, 上野 真義, 津村 義彦, 鷲谷 いづみ
    セッションID: P1-069
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
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    種子散布すなわち種子期における個体の移動は、個体群の空間構造を作り出す主要なプロセスである。一方、種子期は土壌中で何年も生き続ける永続的土壌シードバンクによって時間的分散が可能であり、過去の散布パターンが平均化され、空間構造が緩和されることも考えうる。これらの可能性を検討するために、土壌シードバンクと地上個体群の空間的遺伝構造の相互作用を分析した。調査はユキワリソウ(サクラソウ科)の個体群を対象に、長野県浅間山の亜高山帯の植被のまばらな湿地草原で行った。ユキワリソウは小型のロゼット型植物で、果実や種子は特別な散布機構を持たないことから、種子の空間的散布距離は限られていると考えられる。2003年4月の実生出現前に2.5×5.5 mのコドラートを設け、このコドラートを0.5mの格子状に分割し、その交点40点から直径5cm・深さ5cmの円柱形の土壌を採集した。表層(0-1cm)および下層(1-5cm)にわけ、実生発生法により土壌中の生存種子数を推定した。得られた実生とコドラートに含まれる開花ラメットを対象にマイクロサテライトマーカー10座の遺伝子型を決定し、個体間距離に応じた遺伝子頻度の相関の強さの指数としてMoran’s Iを算出した。表層から採集した土壌シードバンク(SSB)と開花個体との間の空間的遺伝構造は、近傍の個体間で正の相関が見られたのに対し、下層から採集した土壌シードバンク(DSB)と開花個体との間には、明瞭な空間的遺伝構造は見られなかった。このことから、SSBは前年の散布種子が多くを占める一時的シードバンクとしての性格が強く、DSBは複数世代の散布種子を蓄積した永続的要素を反映するものであること、また時間的分散が空間的遺伝構造を弱める作用をもたらすことが示唆された。
  • 富松 裕, 大原 雅
    セッションID: P1-070
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    生育場所の分断化は、個体群サイズの減少や環境条件の改変を通じて、残存する植物個体群の存続可能性に影響を及ぼすと考えられる。しかし、長期的データに基づく個体群動態の分析はほとんど行われていない。北海道十勝平野では、近年の農地開拓によって分断された落葉樹林が多く点在する。本研究では、このような森林の林床に生育する多年生草本オオバナノエンレイソウの4個体群を対象として、個体群動態の観察を行った。先行研究から、小さな個体群では実生の加入量が制限される傾向にあることが分かっている。5年間(2000-2004)のデータから、行列モデルを基礎とした Partial Life Cycle Model を作成し、個体群増加率(λ)の時空間変動や、変動の原因となる生活史過程について解析した。λは個体群や年によって大きく変動したが、多くの場合ではλ=1 (漸近的に安定)からの統計学的な差異が認められない範囲にあった。開花個体が同一段階に留まる確率(P4)と実生の加入(F)を示すパラメータが、観察されたλの分散に特に大きく寄与し、P4やFはλとの間に正の相関関係を示した。また、P4とFとの間で見られた正の共分散が、λの分散の増加に寄与していた。以上の結果から、Fが減少する環境下では、弾力性の大きい他のパラメータが共に変動して、λの低下を招いたことが分かる。各個体群の存続可能性は更に長期的な調査から検証しなければならないが、個体群の長期的動態は、分断化による環境条件の変化や年変動のパタンによって規定されると予想される。
  • Miyoko Kurimoto, Mutsunori Tokeshi
    セッションID: P1-071
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    Light intensity and herbivory are two major factors which affect plants' physiology and population dynamics. Corallina pilulifera, is a turf-forming red alga which is often dominant in rocky intertidal and subtidal shores. In the study site in southeast kyushu, C. pilulifera demonstrated a wide range of colour variation in fronds, which appeared to result from the variation of light availability. The accumulation of pigment would affect the growth of the alga through the process of photosynthesis. Hermit crabs also seem to affect the dynamics of algal population, by cutting their fronds and removing the sediment accumulated beneath the algae. The former action generates a negative effect on algal growth, while the latter generates a positive effect. Thus, in this study we investigated (1) the relationship between light intensity, colour variation and growth, and (2) the effect of hermit crabs on the algal population. An attempt was made to experimentally manipulate sedimental removal, frond cutting and crab density.
  • 鈴木 智之, 鈴木 準一郎, 可知 直毅
    セッションID: P1-072
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    1959年の伊勢湾台風によって林冠が大規模に破壊された北八ヶ岳のシラビソ・オオシラビソ林の構造と動態を解析した。1980年にKimura(1986)らにより設定された4×4-8×8 m2の4調査区を2004年にそれぞれ50×50 m2に拡大し、樹高50 cm以上の全個体の座標を記録した(一部未測定部分を含む)。座標を記録した全個体の胸高直径(DBH)もしくは地際直径と、一部の個体に関しては樹高および過去4年分の樹高成長を測定した。測定は、2004年の6月から11月に行った。 調査区内のほとんどの個体はシラビソもしくはオオシラビソであり、胸高断面積合計の90%以上をこの2種が占めていた。樹高200 cmに満たない稚樹では、全調査区でオオシラビソの個体数が最も多かった。一方、樹高200 cm以上の個体では全調査区ともシラビソがオオシラビソよりも多かった。DBHおよび樹高のサイズ構造には、両種の間に明確な違いが見られた。シラビソでは、DBHのサイズ分布は一山型、樹高のサイズ分布は逆L字型を示した。オオシラビソでは、DBHのサイズ分布はL字型、樹高のサイズ分布はL字もしくは二山型を示した。 L関数により個体の分布様式を解析した。解析にあたって、全木をDBHに基づいて小木、中木、大木に分けた。どの調査区でも全木は集中分布を示した。小木および中木は全木の分布と比べて集中分布していたが、大木は全木の分布よりも一様に分布していた。 小木・中木の多くはすでに樹高成長をしておらず、林冠を占める大木による被陰が続けば枯死する可能性が高い。大規模な撹乱やそれに続く多数の実生の定着が起こらない限り、全木の分布パターンは現在の大木の分布パターンに近づき一様分布となると予想される。
  • Wane Paina, Md Nabiul Islam Khan, Rempei Suwa, Akio Hagihara
    セッションID: P1-073
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    Self-thinning and size-density relationships in a natural mangrove forest dominated by Kandelia candel, were studied from June to October 2004. A belt-transect plot of 100 m long and 5 m wide (an area of 500 m2), running through a river-land gradient, was established. Subplots were established at every 5 m (a total of 20 subplots). Size parameters of individual trees including tree height (H), stem diameter at 10% height (D0.1), crown width (R) and height of the lowest living leaves (HL) were measured. Crown depth (Cd), coverage (C), crown volume (Cv) and tree weight (w) were calculated. The mean tree density varied from 4.9 trees m-2 near the river bank to 2.7 trees m-2 near the land. Size parameters were influenced by tree density and also related to the distance from the river to the land. The biomass shows an increase from the river to the land, representing the various stages of growth and development of this forest. The slope of the self-thinning line for this mangrove forest stand was ca. -1.3.
  • 馬場 昭浩, 久保田 康裕
    セッションID: P1-074
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    南西諸島における亜熱帯林では、ラン科着生植物(ナゴラン、オキナワセッコク、チケイラン、シコウラン、カシノキラン、クモラン、ヨウラクラン、マメズタラン等)の消失が明らかになっている。着生植物の個体群動態は、ホストとなる林木の空間構造動態に規定されており、攪乱による森林構造の変化に応じて個体群構造が大きく変化することが予想される。つまり林木個体群はラン科着生植物のセーフサイトとして機能することで植物種の多様性維持に貢献し、着生植物種自体は亜熱帯林の植物種多様性に大きな割合を占めるキーストーン種群と定義できる。 本研究の目的は、亜熱帯林におけるラン科着生植物の種個体群の維持機構を明らかにし、それに基づき森林動態と植物種多様性の対応関係を明らかにすることである。特に本論では、チケイラン(Liparis plicata)(絶滅危惧_I_B類)の個体群構造に基づき、森林構造属性がチケイランの個体群動態に及ぼす影響を考察した。 極相林においてチケイランが着生していたホスト林木の密度は41.7/haだった。ホスト林木種は4種(イスノキ・スダジイ・ヒサカキサザンカ・ヒメサザンカ)で、その平均DBHは43.0 cm(12.3 - 82.9 cm)だった。チケイランの未繁殖個体の密度は398/ha、繁殖個体密度は242/ha だった。また未繁殖個体の定着高は、平均113 cm(0 – 516 cm)、繁殖個体は平均180 cm(34 - 510 cm)だった。これらの結果より、チケイランの定着サイトは特定の大径木種に限定され、比較的高い位置に着生する個体が繁殖に至ることが明らかとなった。森林伐採によりホスト林木種が小サイズ化した場合、チケイラン個体群密度は影響を受けることが予想された。
  • 赤坂 宗光, 露崎 史朗
    セッションID: P1-075
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    外生菌根の形成が実生の生長に与える影響を明らかにすることを目的として、北海道渡島駒ケ岳において非在来種であるカラマツの実生を3マイクロハビタット(裸地、ミネヤナギパッチ、カラマツ樹冠下)×3標高帯(低標高帯、中標高帯、高標高帯)から掘り取った。外生菌根形成率は、最も被陰されておりリターが蓄積していたカラマツ樹冠下で最も高かった。これは被陰している成木が主な外生菌根菌の感染源として機能したためと考えられた。外生菌根形成率はカラマツ樹冠下で他マイクロハビタットよりも高く、標高帯によらず一定であったが、裸地、ミネヤナギパッチにおいては土壌窒素栄養が増加する低標高ほど低くなっていた。これらから、特に裸地とミネヤナギパッチにおいて外生菌根菌は土壌栄養の吸収に関連していることが示唆された。しかしカラマツ実生の当年生長は、標高や土壌栄養の変化と同調していなかった。外生菌根形成率はカラマツ樹冠下で最も高かったにも関わらず、主に林冠木による被陰により実生の当年生長量は最も小さかった。一方、ミネヤナギパッチでは、おそらく外生菌根菌間及び植物間の競争によって、外生菌根形成率が最も低かったのにも関わらず、実生の当年生長量はカラマツ林冠下よりも多かった。これらの結果から外生菌根形成が実生の当年生長に与える影響は、光環境や競争などのマイクロハビタットスケールの要因により被い隠されてしまうことが示された。
  • 大谷 真弓, 早坂 大亮, 藤原 一繪, 中村 武久
    セッションID: P1-076
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     マングローブ林は熱帯林以上に二酸化炭素固定能力もつことが報告されている(松村, 2002; 須田, 2002)。汽水域の厳しい環境条件によりリターの分解が抑制され、炭素の貯留場所として重要な場となっている。
     Sonneratia albaAvicennia albaは、マングローブ林汀線最前面に生育する。マングローブ林最前面は、後背部からの土壌の流出を防いだり、波浪の影響を緩和したりと環境保全林の役割を果たしている。前面群落を保全することは、マングローブ林全体の保全につながり、さらにそれは二酸化炭素固定の場を保全することになる。
     S. albaA. albaについての先行研究は、特に日本の研究者によるタイ国マングローブ林における群落単位の決定(宮脇ら, 1985)、S. albaの耐塩性についての研究など(Wakushimaら, 1994)、また海外の研究者による、塩分濃度の違いによるS. albaの成長量の違い(BALL et al, )などがある。しかし、S. albaA. albaの立地環境の相違について解明した研究はこれまでにない。マングローブは地盤高の違いによる冠水頻度、時間などによりその生育地が限定されるが、二種の生育地は非常に類似している。
    そこで本研究では二種の立地環境の相違を明らかにすることを目的として、2004年9月にタイ国パンガ県パンジー川流域で調査を行った。河口部から上流域にかけて調査区を3つ設け、毎木調査、実生調査、植生調査、及び立地環境調査を行った。
    その結果、S. albaA. albaは実生の定着サイトに違いがあることが明らかになった。S. albaの実生はギャップ下で、かつ微地形レベルでの地盤高の等高線が密なサイトに定着し、A. albaはギャップ下にも生育することがあり、微地形レベルでの地盤高の等高線が疎であるサイトに定着していることがわかった。
  • 緒方 淳二, 富田 瑞樹, 鈴木 邦雄
    セッションID: P1-077
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    マングローブの前面群落を構成するAvicennia alba(Aa)とA. marina(Am)はともに先駆種であるが、両種の地理学的分布の範囲や樹形は大きく異なる。本研究では、AaとAmが共存する林分において両種の生活史段階ごとの空間分布と非生物的環境の関係を調べ、両種の分布様式と分布相関からそれぞれの更新特性について考察した。
    タイ国のパンガとカノムにそれぞれ100m×35mと50m×50mの調査区を設置し、出現樹木の位置、種名、サイズを記録し、全天写真の撮影を行った。また、サイズから実生、稚樹、成木の生活史段階に各種を区分し、種ごとの分布様式についてはL(t)を、種間および種ごとの生活史段階間の分布相関についてはL12(t)を用いて解析した。
    パンガではAaが優占し、カノムではAaとAmが優占していた。Aaの分布様式は生活史段階に伴って集中からランダムへと変化し、実生および稚樹は成木に対して独立的に分布していた。特にパンガでは、ギャップ依存的にAaの実生が出現していた。一方、Amは全ての生活史段階で集中して分布し、実生と稚樹は成木に対して同所的に分布していたことから、同所的に更新が可能であると考えられた。
    Amの成木に対してAaの実生は独立的に分布していたが、稚樹は排他的に分布しており、Aaの実生がAmの成木の下層に定着しても稚樹の段階までの生存は困難であると考えられた。一方、Amの実生と稚樹はAaの成木に対して独立的に分布しており、Amは同種成木の下層のみならず、Aaの成木の下層でも更新可能であることが示唆された。また、Aaの実生はAmの実生に比べて良好な光環境下に多く出現していた。
  • 早坂 大亮, 藤原 一繪
    セッションID: P1-078
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    日本では.戦前より各地の海岸において,防潮・防砂林として大規模な造林 (特にクロマツ) が行われてきた (田中 1992). しかし,海岸林は汀線に沿った林帯幅の狭い森林で,人口の増加と産業の近代化に伴って縮小・分断化され,人為的干渉も受けやすい.従来の海岸林を対象とした研究の多くは,防災林としての海岸林の管理や,造林の視点に立つ研究が多く (小笠原ほか 1975, 鈴木 1981, 1984; 塚本ほか 2001),生態学的研究が少ない. 自然の海岸林が少ないことも海岸林の研究が蓄積されてこなかった一因であると考えられる.限られた自然性海岸林を保全するためには,生態学的基礎データがその管理・維持のために重要となる.とくに自然性の高い海岸林の構造・動態,種生態を把握し,さらに,海岸低木_から_海岸後背林_から_低地林までの一連の海岸域の成帯構造(zonation),各林分タイプの構造特性・変化を明らかにすることで,海岸林全体の成立・維持機構を明らかにすることが可能である.そこで,これまであまり研究例のない亜熱帯地域のサンゴ砂堆積地上に成立する海岸林を対象に,1. 海岸林の個体群構造と実生・稚樹の空間分布パターン(均質 or 不均質),2. 各樹種の,実生・稚樹定着に影響を与える環境要素(物理的,生物的,microhabitat),3. 各林分(海岸低木帯,海岸後背林帯および低地林帯)の成立要因,という3つの課題に取り組み,多様な階層構造,種構成が形成されるメカニズムを明らかにすると共に,環境の質の変化によって各森林帯の相互関係がどのように変化するのかを予測する.今回は,沖縄県西表島の海岸林を対象に,とくに海岸後背林ハスノハギリ群集(Niiro et al. 1974)に相当する林分の個体群構造および各種の実生の分布様式について報告する.
  • 三嶋 賢太郎, 高田 克彦, 蒔田 明史, 澤田 智志
    セッションID: P1-079
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    日本海側の多雪地域におけるスギ天然林の更新には、伏条・立条更新のような無性繁殖が大きな役割を果たしていると考えられている。本研究では、スギ天然林の更新・繁殖様式の実態解明を目的として秋田県のスギ天然更新林分において更新様式ごとの空間的・遺伝的広がりを野外調査およびゲノム解析によって調査した。前回の発表では立地条件の異なる2林分間で繁殖様式の割合及び樹高階別の無性繁殖の割合が異なることを報告した。さらに、マイクロサテライトマーカーを利用することによってラメット及びジェネットの空間的な広がりを正確に捉えることができた。今回は、前回の2林分(P1,P3)に加えて両者の中間と考えられる樹高階分布を持つ林分(P2;20×40m)を調査区として設定し、併せてP2内に小調査区(PC2)を設定した。P2内の樹高1.3m以上の立木について樹種、位置、サイズ、樹齢等を調査し、スギについては全幹から針葉サンプルを採取しゲノム解析を行った。PC2では、1.3m以下のスギも含めて上記の調査、解析を行った。樹齢に関してはP1及びP3においても調査を行った。本発表では、得られた知見を元に3林分間での更新・繁殖構造の違いを検討するとともに各林分内での詳細な繁殖構造の解析を試みたので報告する。
  • 小林 哲, 岩崎 敬二
    セッションID: P1-080
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     福岡県古賀市の小河川中川(全長約4km)において,イシマキガイの移動分散様式を調査した. 2003年5月,淡水域中流部(河口から1.5km)で多数の個体が遡上しているのが確認された.遡上個体は殻幅7.9-16.9mmであり,8.5-12mmが80.6%を占め(全262個体内),モードは9.5-10.0mmであった.遡上は列をなしており,先行個体に後方個体が追従する行動がみられた.5月4日に標識放流した個体(83個体)は,1日後10-33m(35個体),8日後33-106m(31個体),13日後 99-146m(5個体)遡上したのが確認された. 次に感潮域上部から淡水域下流部にかけての約400mの範囲(河口から約500mより上流)の5定点(上流に向けてAからE)で,2003年4月から2004年4月にかけ2ヶ月ごとに,殻幅約8mm以上の合計約1500個体を個体識別後標識放流し,1m単位の移動を2004年10月まで追跡した.また2003年7月から2004年11月の間2ヶ月ごとに,50cm四方のコドラート採集を各定点周辺で10回行った. コドラート調査では,9-10月に感潮域上部定点 AからBに着底した新規加入個体が,翌年5月に淡水域CとD,7月にはEに出現し,積極的な遡上が読みとれた.同時に,5月にはこれら0歳群の個体(殻幅3-9mm)が列をなし遡上する行動も観察された.また標識放流(おもに1歳以上の個体)によると,冬季(12月-2月)はほとんど移動がなく,春から秋にかけて様々な程度の移動が確認された.流下と遡上両方が確認されたが,全体としては遡上が勝っていた.感潮域では感潮域内に留まる個体も多かったが,淡水域では積極的に移動する個体が多くみられた.移動距離も様々であったが,1ヶ月に200m以上遡上したものも含まれており,イシマキガイの感潮域から淡水域にかけての広い分布を反映するような,積極的な遡上による分布拡大が確認された.
  • 山口 恭弘
    セッションID: P1-081
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     秋になると日本全国各地でヒヨドリが数羽からときには数百羽もの群になって北から西や南へと渡って行く姿をよくみかける。しかし、これらのヒヨドリがどこからどこへ行くのか、またいつからいつまで渡りが続くのかといった基本的な情報さえ分かっていないことが多い。 そこで本研究では、9月半ばから10月半ばの土日(計8日)に全国一斉調査日を設け、7時から10時に観察を行うことを基本とし、それ以外にも渡りを観察したら随時情報を集めることとした。情報収集の手段として、複数のML、研究室のHP等を利用した。現在のところ43名の方から情報が寄せられ、興味深いことが明らかとなったので発表する。 ヒヨドリの渡りの特徴はまず午前中に渡ることである。終日観察した地点でも午後の観察はほとんどなく、全体でも少ない。また観察場所による観察個体数の差が大きく、渡りの主要ルートの存在が考えられる一方、観察地点の多さから多数のルートの存在も考えられる。日本全国を北海道、東北、関東、中部、北陸、東海、関西、中国、四国、九州の10の地域に分けて比較すると、渡りの開始が最も早かったのが関西で9/9、ついで9/14の中国となり、関東で9/19、東北で9/26、北海道で10/10となった。このことは、北海道から渡り始めた群が日本全国を通過しながら九州や沖縄まで行くのではなく、関西や、中国などの地域の中で渡りが開始されていることを示唆しており、高標高地から低標高地、さらに南への移動であると考えられる。一方、渡りの期間は、地域ごとに差はあるものの11月初旬まで観察されており、最長の関西では3ヶ月に及んだ。関西の例を細かくみると9月の下旬に大きなピークがあり、その後は少群が観察されるというパターンになっており、このことは関西などの地域外から次々と渡りの群が来ていることを示唆している。また少群であること、渡りが午前中に限られることから、遠距離を一気に渡るのではなく、短距離を移動しながら渡っていくものと考えられた。
  • 岡田 賢祐, 野村 雄太, 宮竹 貴久
    セッションID: P1-082
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    里山の主な構成樹であるコナラ・アベマキ・アラカシの樹液には、英名でsap beetleと呼ばれるケシキスイ類が多数存在する。里山に普通に生息するケシキスイ類を用いて里山環境の評価を試みるためにケシキスイ類の発生消長を調べた。アベマキ、コナラとアラカシが主に植生する二次林(岡山大学演習林:半田山)において、バナナをベイトトラップとして発生消長の経時調査を2002_から_2004年の3年間行った。トラップ数は、2002年に13個、2003年に14個、2004年に8個とした。調査の結果、2002年で16科41種725個体、2003年で10科21種534個体、そして2004年で10科34種471個体の甲虫が捕獲された。そのうち、2002年で12種614個体、2003年で5種458個体、そして2004年で12種422個体のケシキスイ科の甲虫が捕獲された。いずれの年もケシキスイ科の甲虫が捕獲数全体の85%以上を占めた。このうち最も多く捕獲されたヨツボシケシキスイ、モンチビヒラタケシキスイとキマダラケシキスイの3種はいずれも樹液を摂食する。そこで3年間を通してこの3種のアバンダンスについて詳しく解析した結果、3種の個体数ピークは明らかな違いを示し、資源利用の時期が異なる可能性が示唆された。またバナナトラップではほとんど捕獲されなかったナガコゲチャケシキスイやルイスコオニケシキスイは、野外の樹液では多数確認することができた。従ってバナナトラップは、樹液に集まるケシキスイ個体群の一部を反映しているものと考えられた。しかしバナナトラップは容易に作成できることから、このトラップを用いてケシキスイ類の発生を調査することで里山構成林の樹液資源量を推定比較できる可能性がある。
  • 加藤 聡史, 占部 城太郎, 河田 雅圭
    セッションID: P1-083
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    食物網のプロセスを理解するうえで、近年、空間的な要因を考慮することの重要性が説かれている。水系でも動物プランクトンが空間的に集合する現象については、さまざまなパターンとプロセスが考えられている。にもかかわらず、従来の湖沼におけるプランクトン食物網の研究の多くで、湖沼の生物的・非生物的構成要因は空間的に均質であるという想定をしており、こうした動物プランクトンの空間的パターンやプロセスが、特に下位の栄養段階である藻類に対していったいどのような生態学的影響を与えるかという疑問についての研究は驚くほど少ない。動物プランクトンが藻類に対して与える影響には大きく分けて、『摂食』と『栄養塩の再供給』の二つがある。近年、後者の栄養塩リサイクルが藻類群集の成長と競争に与える効果について大きく着目されつつある。これまでの消費者による栄養塩リサイクル(CNR)を考慮したモデリング研究事例においては、CNRは多様性を下げる要因であると考えられている(Andersen 1997; Grover 2002)。しかし我々は、これまでの研究で、消費者による栄養塩リサイクルの時間的変動が藻類の一時的な多様性を高くする可能性を示した。我々は、動物プランクトンの集合プロセスの違いが消費者のリサイクル効果の空間的パターンを変えるのではないかと考えた。消費者の集合プロセスの違いによって、栄養塩を巡る藻類の局所的な競争関係が変化し、系の藻類の多様性パターンに違いをもたらす可能性がある。そこで、生態学的なプロセスの中で消費者のパッチが持つ役割の一例として、空間構造と栄養塩リサイクルの効果を考慮したモデルを考える。消費者のパッチ集合プロセスの違いが藻類の競争と多様性にどのように影響するかを比較する。
  • 吉野 元, 伊澤 雅子, 松村 澄子
    セッションID: P1-084
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    現在、日本に生息するキクガシラコウモリ類は4種2亜種に分類されている。キクガシラコウモリ類は翼の形状から、持続的に長距離を飛翔することが得意ではなく、地域ごとあるいは島嶼などの個体群間で隔離が生じやすい。そのため、島嶼や地域ごとでエコーロケーションコールの周波数や前腕長に変異が観察されている。これまで、琉球列島における飛翔性哺乳類の地理的変異の研究は、島嶼間変異のみが考慮され、島嶼内変異については着目されていない。オキナワコキクガシラコウモリRhinolophus pumilusは、沖縄諸島の固有種であり、沖縄島と久米島、伊平屋島に分布している。沖縄島内におけるオキナワコキクガシラコウモリのエコーロケーションコールと前腕長に関して地理的変異の詳細を把握するため、沖縄島の11箇所の洞穴から捕獲したコウモリのエコーロケーションコールを録音し、定量的なデータに基づいて洞穴間で比較を行った。沖縄島内で本種のCFパルスの周波数には性的二型および明らかな地理的変異があり、種内の周波数変異幅は106kHzから120kHzとかなり広かった。また、沖縄島中部に位置する洞穴間は直線距離が約28kmしかないにもかかわらず、コロニーのCFパルスの周波数平均が5kHz以上も異なり、周波数変異はその2つの洞穴を境に中南部と北部の二群に大きく分けられた。前腕長も二群に分けられたことから、個体群自体が二群に分かれている可能性がある。本研究の結果から、琉球列島の飛翔性哺乳類の地理的変異を考える上で、島嶼間変異のみならず島嶼内変異を考慮する必要があることを示唆した。
  • 上野 真由美, 齊藤 隆, 梶 光一
    セッションID: P1-085
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    狩猟や有害駆除による捕獲圧が、シカの生存率に与える影響を評価するため、コホート分析によって生息数を復元し、捕獲圧と齢別期間生存率を算出した。北海道東部足寄町で1990-2002年度に捕獲された約3万頭のシカのうち、有害駆除で得られた約1.5万頭の齢を査定し、その齢構成に基づいて、各年度の齢構成表を性別に作成した。最終齢を7歳に設定し、1990-1995年度の生息数を復元した。復元する際には、自然死亡も考慮した。オスの捕獲圧は0.15-0.27であった。オスにおいて捕獲圧が低いときに、期間生存率は齢によって大きく異なり、0.0-0.8の範囲でばらついた。中でも5, 6歳の期間生存率は他の齢に比べて低い傾向を示した。しかし、捕獲圧が高くなると、期間生存率の齢によるばらつきは小さくなり、0.4-0.7の範囲に狭まった。これは、捕獲圧の上昇に伴って、特定の齢に捕獲対象が偏らなくなり、ランダムサンプリングに近づいていったことを示唆する。つまり、捕獲圧が低いときは、比較的齢の高いシカに偏って捕獲していたが、捕獲圧が高まると、どの齢のシカもまんべんなく捕獲するように変化したと考えられる。メスの捕獲圧は0.12-0.15とオスより低く、捕獲圧に伴う期間生存率の変化は特に認められなかった。メスは有害駆除を除き1993年度まで禁猟であり、94, 95年度も短期間の狩猟が許可されるにとどまった。オスに比べて捕獲機会が制限されていたことが捕獲圧の性差を生み出したと考えられる。
  • 濱本 恭子, 百瀬 邦泰
    セッションID: P1-086
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    背景と目的:中央カリマンタン州のSebangau河流域には泥炭湿地が広がり、川から内陸に入ると、川と平行して帯状に森林タイプが変化する。森林タイプは大きく以下の4つに分けられる。Riverine forest(RF); 乾季の川から1km。pandan を主とし、わずかに低木がある。Mixed peat swamp forest(MPF); 川から1_から_3km、浸水域を超えた範囲。Low pole forest(LPF); 川から6_から_11km。林冠は低く、林床には背の高いpandan。Tall interior forest(TIF); 川から12km以上。植生の異なるそれぞれの森林では植物の繁殖周期が異なる。泥炭湿地林では一年間に林床の状態が大きく変化するため、林床での重要な種子捕食者が植物繁殖周期の決定に大きな影響を及ぼしていると考えられる。リス、ネズミ類を含む小型哺乳類に注目し、植物繁殖周期に小型哺乳類個体数動態が及ぼす影響を知ることを目的とした。調査方法:小型哺乳類個体数調査: 記号放逐法種子生産量調査: シードトラップ実生調査: 実生収集食害率調査: 種置き実験種子食動物の判定: センサーカメラ結果と考察:調査は林床が不安定な雨季に行なった。調査プロットはRFとMPFとの移行区、MPF、LPFの3地点に設けた。これら3タイプの森林では、異なる植物種が見られ調査期間の繁殖種、種子生産量は異なった。小型哺乳類についても、各森林タイプによって捕獲された動物種、個体数は異なった。各森林タイプで異なる生物間相互作用が働き、植物繁殖周期に影響を及ぼしている可能性がある。以後、継続して調査を行い季節性についても検討する。
  • 江田 真毅, 小池 裕子, 三原 正三, 長谷川 博, 黒尾 正樹, 樋口 広芳
    セッションID: P1-087
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    19世紀以降の商業的漁業の発達は,海鳥の食物を大きく変えた可能性が指摘されている.流し網にかかる大型の魚類やイカ類など,通常海鳥が利用できない高栄養段階の食物が供給されるようになった可能性や,逆に漁業活動の結果,採食できる高栄養段階の魚種が減少した可能性などである.本研究では,主に海面に浮上したイカ類や魚類を採食する大型海鳥であるアホウドリ(Phoebastria albatrus)を対象に,完新世後期における窒素と炭素の安定同位体比の変化を調べた.試料として,約60年前,500年前,1000年前,3500年前の遺跡から出土した骨と,繁殖地で採集された死体の骨を用いた.各試料から骨中のコラーゲンを抽出し,窒素と炭素の安定同位体比(δ15Nとδ13C)を測定した.骨コラーゲンはターンオーバーが遅く,その同位体比は数年の平均的な食性の情報をもつとされる.測定の結果,アホウドリの骨コラーゲンのδ15Nは約16—19‰,δ13Cは約-16—-12‰で,この種が海洋食物連鎖の高次栄養段階にあることが示された.各試料のミトコンドリアDNAの制御領域とチトクロームb領域を調べ,種内の系統ごと,時代ごとに安定同位体比を比較した結果,1)各時代の試料の安定同位体比は系統に関わらず比較的集中した値をとること,2)同一の時代でも異なるミトコンドリアDNAの系統では安定同位体比に差のある傾向があること,3)完新世の他の時代に比べ,現在のアホウドリでは平均値でδ15N値が約1‰,δ13C値が約2‰減少したことが明らかになった.3)の傾向のうち,δ13C値の約1‰の減少は海洋スエズ効果に由来すると考えられるが,観察された変動はそれよりも大きい.また,δ15N値の減少は栄養段階の低下を示す可能性がある.
  • 佐藤 拓哉
    セッションID: P1-088
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     隔離された小個体群にとって,繁殖個体の移動や繁殖成功は,個体群の遺伝的多様性の維持に関係する要因として重要である.演者は,河川源流域(約1.2 km)に隔離された在来イワナ個体群Salvelinus leucomaenis japonicusにおいて,繁殖期における成熟個体の移動と繁殖行動を,個体群全体を対象に1繁殖期を通じて調べた.繁殖期前の2003年9月に,調査河川においてイワナの捕獲調査を行ない,尾叉長100 mm以上の個体の背ビレ,腹ビレ,胸ビレにイラストマーを注入して個体識別をした.このマーキング方法によって,双眼鏡を用いて観察すれば,繁殖行動中の個体を個体レベルで認識することができた.
     繁殖行動は,2003年10月15日から30日にかけて行なわれた.繁殖期前約1ヶ月のイワナの移動方向について,雄ではほぼ同数が上流と下流方向に移動したのに対し,雌では多くが上流方向に移動していた.また,雌雄ともに移動しなかった個体はごくわずかであった.一方,繁殖期中には,雄はいぜんとして上流と下流方向に広く移動したが,多くの雌は始めの産卵場所から移動しなかった.イワナの移動距離は,繁殖期前と繁殖期中ともに,雄の方が長く,その差は特に繁殖期中で大きかった.しかしながら,雄の繁殖期中の平均移動距離は,100 m程度(生息流程の約10分の1)であった.本個体群では,スニーカーの繁殖参加がほとんど認められず,雌との産卵に貢献しているのは,ペア雄のみであることが示唆された.また,ペア産卵に成功した雄は大型個体に限られていた(繁殖行動に参加した雄の約54 %).一方,繁殖行動に参加している雌は,すべて少なくとも1回,産卵を行なった.
     繁殖参加個体の比較的小さな移動範囲と大型雄に偏った繁殖成功は,本個体群の有効集団サイズを小さくする方向に働くと考えられる.
  • 鹿野 雄一, 鎌田 直人
    セッションID: P1-089
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     白神山地に生息するイワナを対象に、繁殖期の移動動態と産卵床の分布を明らかにする。

    –結果–
    (1)非繁殖期の事前調査により、本流にはオスが多く、支流にはメスが多いことがわかった。また、本流の個体サイズは支流のそれに比べ、有意に大きかった。
    (2)10月中旬から下旬にかけて、大規模な支流や上流への移動が確認された。
    (3)移動した個体は有意にオスに偏っていた。
    (4)移動は、夜間および降水時に特に顕著であった。
    (5)産卵床は、本流にも支流にも、全体にわたって分布していた。

    –考察–
    (1)本流と支流における局所個体群の生態的特性の違い(性比とサイズの非対称性)が、繁殖期の移動をもたらしている可能性がある。
    (2)夜間や降水時に移動するのは、多くの降海型サケ科魚類の川への遡上条件と一致する。
    (3)イワナを良好に保全するためには、広域な水域スケールでの保護が望まれる。
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