チャイニーズハムスターの発情周期にともなう腟垢像変化を詳しく検討する目的で, 4日周期を示すチャイニーズハムスターの腟垢を5日間にわたり, 3時間間隔で採取観察し次の結果を得た。なお, 日長条件は, 人工照明により, 14時間点燈, 10時間消燈 (6: 00~20: 00点燈) に調節した。
腟垢が発情前期像を示す日を, 発情周期の第1日とすると, 第1日の0時前後に発情休止期像から発情前期像への移行が開始され, 第1日の午後には, 有核上皮細胞が増加し, 18時から21時にかけてほぼ有核上皮細胞によってのみ占められる細胞像が見られるようになる。次いで, 第2日の0時には, 角化細胞のみの像へと変化し, 角化期は9~12時間持続した。第2日の9時から12時にかけて発情後期特有の小型で原形質がヘマトキシリンに比較的よく染まる楕円形の有核細胞が出現し, 一時的に有核細胞のみ見られる像を経た後に, 白血球が混在するようになる。第2日の18時から第3日の0時にかけて白血球が増加し, 有核細胞は原形質の明るい大型の変性有核細胞へと変化し始める。第3日においては, 変性有核細胞と白血球を主体とする中に粘液が認められるようになる。そして, 第4日に向って, 変性有核細胞が減少し, 第4日においては, 白血球と粘液を主体とする中に変性有核細胞の点在する細胞像が観察された。次いで, 第4日の21時にはすでに発情前期像への移行のきざしが認められた。
これらの細胞像変化は, おおむね, 発情前期 (I) , 発情期 (II) , 発情後期I (III) , 発情後期II (IV) , 発情休止期I (V-1) , 発情休止期II (V-2) の6期に区分することができた。また, 第1日の夕刻から翌朝まで, 複数の雄と同居させた場合, 83.8%の高い交尾率が得られたことから, 交尾は, 発情期 (II) の腟垢像のとき (第1日の18: 00~24: 00) に行われるものと考えられる。
終りに臨み, チャイニーズハムスターを恵与戴いた, 国立遺伝学研究所, 吉田俊秀博士, 本研究の機会を与えられた川崎医科大学中央研究部, 柴田進部長に深謝する。
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