特別に製作したY型迷路自動測定装置を用いて, 近交系マウス15系統の雌雄各10匹の成熟マウス (60~75日令) の回避, 弁別および弁別回避の各学習成績を測定し, 各系統の学習能力特性を調べた。
その結果,
1) すべての学習成績において, 系統間には統計的に有意な差が認められ, 雌雄の成績の間の相関も有意であった。また, 近縁の系統は一般に類似の成績を示した。これらのことから, 本実験で測定された学習成績は遺伝的形質であることが示唆された。
2) 回避成績と弁別成績との間には一般に負の相関が認められ, 回避能力の優れた個体または系統は弁別能力が劣る傾向があった。
3) 上記のことから, 一般に回避学習実験に適した系統と弁別学習実験に適した系統とを兼ねることは難しく, RF/Ms, SWM/Ms, SWR/Msは回避学習に, またC3H/HeMs, DBA/2, DBAf/Lwは弁別学習に適した系統であったが, なかでもC3H/HeMs, C57BL/6HeMsは比較的両学習に優れた系統といえる。
4) 回避学習に関して, 学習第1回目の成績 (AR
1) とそれが第2回目の成績に及ぼす効果の程度 (AR
2-1) とを検討した結果, RF/Ms, C3H/HeMsはAR
1, AR
2-1ともに優れた系統, SWM/Ms, BALB/cJMs, CBA/StMsはAR
1が優れ, AR
2-1が劣っている系統, DBA/2, C57L/JMs, C57BR/aJMsは逆にAR
1が劣り, AR
2-1が優れた系統, D103/Ms, AKR/JMsはAR
1, AR
2-1ともに劣った系統であることがわかった。
5) D103/Msは回避学習成績が, SWM/Ms, SWR/Msは弁別学習成績がそれぞれ最も低い系統であった。
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