Experimental Animals
Online ISSN : 1881-7122
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35 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 溝口 順二, 外尾 亮治, 佐野 潤, 鍵山 直子, 今道 友則
    1986 年 35 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Wistar-Imamichiラット育種集団にTrichophyton mentagrophytes感染による白癬が発生した。発生状況を調査したところ雌では49匹 (10%) , 雄では150匹 (44%) の動物に脱毛, 痂皮形成などの白癬の症状が認められた。皮膚の症状から白癬と診断した118匹の動物について被毛の培養検査を3回くり返したところ, 107匹 (90.7%) から菌が検出され白癬の摘発には習熟した臨床診断が有効と考えられた。哺育中の母親ラットでも白癬菌の感染がみられたが, それらの乳仔からは全く菌が検出されなかった。
    本症の撲滅にあたってラットの原種を維持する立場では全群の淘汰が不可能であるため, 臨床診断と被毛の培養検査による感染動物の摘発淘汰と徹底した消毒をおこなった。全動物を汚染動物舎から搬出した後, 10%ホルマリン溶液, 3%プロピオン酸ナトリウム溶液による消毒をくり返した。動物の新規搬入時には白癬菌の非感染母ラットからの離乳仔のみを対象とし, 3%プロピオン酸ナトリウム溶液の温浴をさせたのちに搬入した。その後毎月1回全動物の臨床症状の検査と被毛の培養検査を行なうとともに, ヨードホール剤による飼育器材の消毒を励行した。コロニーの再編成後4カ月後に3匹の白癬陽性動物が発見されたが直ちに淘汰した。その後5年間白癬菌は全く検出されず, 撲滅したと考えられるに至った。
    稿を終わるにあたり御指導いただきました実験動物中央研究所の田嶋嘉雄博士, 慶応義塾大学医学部の前島一淑博士に感謝いたします。
  • 呉 洋錫, 富田 武, 近藤 恭司
    1986 年 35 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    1979年より, 近交系マウスKSB系統において, 加齢に伴ない毛色が薄くなるマウスが発見された。これらの形質を持つ雌, 雄を交配した結果, 同じような形質を持つ子孫を得たので, KSBから独立させ, KSB-fe (faded) と称する亜系を分離した。この形質をもつマウスでは, 色素が加齢に伴なって失われて行くことと, ひんぱんに皮膚病をおこす形質を持つことを認めた。この形質に関して遺伝子分析を行ない, この形質が常染色体性, 単純, 劣性遺伝子によることを明らかにした。また, 対立性検定の結果, 毛色が薄くなる遺伝子leaden (ln) , dilute (d) , beige (bg) , pink-eyed dilution (p) とは異なる遺伝子座に存在することが判明した。そこで, この新しい突然変異遺伝子をfaded (fe) のと命名した。
  • 伊原 信夫, 杉浦 喜久弥
    1986 年 35 巻 2 号 p. 139-148
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ICR/d系皮膚炎モデルラットの皮膚炎発症素因の基礎的研究の一環として一般血液像, 白血球分画像及び血清蛋白量・分画像の週齢推移 (4―24週齢期) と系統特異的パターン像の解析を行なった (対照ラットはJcl: Wistar, Jcl: SDの2系) 。血液像では, 定常的なleukocytosis, 相対的なneutrophiliaとeosinophilia, neutrophils/lymphocytes比の著明な上昇とともに特異的なthrombocytopeniaがみられ, これらの所見はいずれも週齢とともに進行する傾向を示した。血清蛋白量は傾向的に軽度の低位水準を示したが, 統計学的有意義はJcl: SD系との間でのみ成立した。血清蛋白分画像では, 週齢とともに進行する高度ないし中程度のγ-globulinとβ-globulinlevelの上昇が, さらにこれらとは反対傾向を示す特徴的なα1-globulin levelの低下がみられ, これらの所見は全体として著しい系統的パターン像を与えた。以上の所見は, 前報で報告した胸腺早期萎縮所見などと合わせていずれも本系ラットの白内障と皮膚炎の発症に関連する体質的素因, 特に代謝異常並びに免疫機能を含む生体防御反応異常の内在を示唆すると考えられる。
  • 御船 弘治, 野田 安孝, 毛利 資朗, 鈴木 秀作, 西中川 駿, 大塚 閏一
    1986 年 35 巻 2 号 p. 149-158
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    マウスとゴーデンハムスターの精嚢腺上皮細胞について光学顕微鏡ならびに透過・走査電子顕微鏡で観察した。透過電顕的に, 精嚢腺上皮には, 両動物ともに明調細胞と極めて少数の暗調細胞からなる分泌性の上皮細胞と, さらに基底に存在する明るい細胞が認められた。分泌性の上皮細胞には, 両動物とも電子密度の高い小体を有する顆粒がみられ, その顆粒は, マウスではPAS弱陽性でABに微弱に反応し, ゴールデンハムスターではPAS, ABともに陽性であった。核はマウスでは円形ないし卵円形で, ゴールデンハムスターでは分葉状を示した。走査電顕的に上皮細胞の頂部は, 両動物とも多くが平坦もしくはドーム状を呈していたが, アポクリン突起様に膨隆した細胞や, 腺腔面の形質膜に大小の孔を有する細胞もわずかに認められた。基底に存在する細胞は両動物ともに類似し, 偽足様の細胞突起を有し, 核は不整形で細胞小器官の発達は悪く, また少数のdense bodyが認められた。
  • 小泉 勤, 早川 純一郎
    1986 年 35 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    NCマウスは6週齢頃から両側性に耳介, 次いで顔面, 頸部に皮膚炎の自然発症がみられる。congenic系統のNC-nudeマウスのnu/+ではNCマウスと同様に皮膚炎が発症するが, nu/nuでは全く発症しない。このことから皮膚炎発症と免疫機能との関係について検討した。生後24時間以内に胸腺を摘除したNCマウス, 新生児の胸腺あるいは胸腺細胞を移植したNC-nu/nu, 皮膚炎を発症しているNCマウスの血清を移入したNC-nu/nuについて皮膚炎発症の有無を調べた。免疫機能はヒッジ赤血球 (SRBC) に対する抗体産生, 腸管膜リンパ節におけるT細胞数の比率で判定した。その結果, 胸腺依存性の免疫応答の有無とは関係なくNC-nu/nuでは全く皮膚炎の発症がないのに対し, 免疫抑制されたNCマウスに皮膚炎が発症し, 血清移入されたNC-nu/nuでは皮膚炎は発症しなかった。これらのことからNCマウスの皮膚炎には免疫が関与しないことが明らかにされた。NC-nu/nuに皮膚炎がおこらないのはnu遺伝子の免疫異常以外への遺伝子効果によるものと考えられた。
  • 利部 聰
    1986 年 35 巻 2 号 p. 165-167
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ラット卵胞を大きさ別に分類して, 加齢に伴う消長を調べた。自然排卵に至ると思われる550μm以上の卵胞の数は, 加齢に伴ってほとんど変化はみられないが, 過排卵誘起処理によって排卵に至ると思われる250~549μmの卵胞の数は, 加齢によって影響されると指摘された。後者の変化は過排卵処理後にみられる排卵数の変異の1要因と考えられる。
  • 篠原 春夫, 西村 秀雄
    1986 年 35 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    1974年に実験動物中央研究所に導入された新実験動物であるナキウサギを用いて実験奇形学的研究を進めるにあたり, 先づその自然発現奇形の背景値を得る試みがなされた (1983, 西村ら) 。その中で特に注目されたのは, ナキウサギにおいては心室中隔欠損が高頻度に観察されたことである。しかしながら, この値については観察を行なった研究機関によって数%から35%といった数値のばらつきがあったが, その観察法がWilson法によっている事もその原因の1つと考えられた。われわれは合計160匹のナキウサギを用いて, 胸部内臓のより詳細な観察の可能な, 1974年西村 (大日本製薬) によるBarrowの変法によって心臓観察を行ない, 併せてその心奇形の生後発育に伴なう変化についても検討した。その結果, 新生仔期には, 生存例56例中5例 (8.9%) , 死亡例34例中3例 (8.8%) に膜性心室中隔欠損が認められた。3週齢では, 生存例37例中1例のみ (2.7%) に膜性心室中隔欠損が認められた。そこで, 生後1週から3週までに何らかの原因によって死亡した33例を調べたところ, その2例 (6.1%) に膜性中隔欠損が認められたのみであった。このことから, 膜性心室中隔欠損例が特に選択的に死亡しているというより, むしろ, 新生仔期に認められた高頻度の膜性心室中隔欠損の大部分が生後発育の初期の段階に自然閉鎖するのではないかと推察された。
  • 水谷 誠, 勝家 康富, 梅沢 英彦, 倉益 茂実
    1986 年 35 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    日本生物科学研究所付属実験動物研究所で維持している近交系APG系の全兄妹交配61代において, 振戦を伴う黒毛色のハムスタ (black tremorと命名) が出現した。このミュータント形質の遺伝子分析のために毛色を支配しているE, B両座位が異なる4近交系およびそれらと同じ毛色を有する個体へblack tremor遺伝子を導入して育成した4ミュタント系を用い, 種々の交配を行うとともにblack tremorの特性を検索した。得られた結果は次のように要約される。1.black tremorはEおよびB両座位における突然変異ではない。2.black tremorは常染色体性の単一劣性遺伝子“bt”により支配され, 毛色の黒色化と振戦両形質は“bt”遺伝子の多面発現と考えられる。3.毛色の黒色化発現にはE座位に少なくとも1つのE遺伝子が必要である。このためee (クリーム色) 個体では毛色の黒色化は発現せずクリーム色のままで, 振戦のみが発現する。4毛色の黒色化の程度はEE個体とEe個体とで異なり, 前者は後者より黒色化が激しい。5.振戦の原因と思われる中枢神経系のミエリン形成遅延症およびメラニンの生合成過程の研究用モデル動物としての可能性が考察された。
  • 江馬 真, 伊丹 孝文, 加納 晴三郎
    1986 年 35 巻 2 号 p. 181-183
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    解熱坐剤の効力をウサギを用いて検討するためにサーミスター式体温計の感温部を, 坐剤の漏出が防止できるように改良した。今回試作した感温部のうち, 3枚の円盤状ゴム栓を取付けた感温部では, 首架式保定器に保定した通常姿勢のウサギ直腸内に坐剤を投与したときの直腸からの薬物の漏出を完全に防止できた。また, 改良した感温部あるいは漏出防止栓のない従来の感温部を使用して, 細菌性発熱物質を投与したウサギ直腸温を測定したところ, 両感温部の検温性能に差はみられなかった。これらの結果から, 今回改良した感温部は解熱坐剤の効果を検討するために有用であると考えられた。
  • 余川 隆, 村上 昇, 古川 忠司, 江藤 禎一
    1986 年 35 巻 2 号 p. 185-188
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    連続照明は, ラットのサーカディアンリズムの自由継続周期の延長をもたらす (アショフの法則) 。しかし, 連続照明下でも睡眠中には眼瞼は閉じられており, このことは, 網膜へ投射する光が常に一定の照度でないことを示唆している。そこで, 連続照明下で自由継続リズムを示す10匹のラットで眼瞼を除去したところ, 7匹にリズムの消失が認あられ, 3匹はリズムを維持した。この結果, 連続照明のリズムに及ぼす効果が, 正常ラットと眼瞼除去ラットで異なる可能性が示された。
  • 佐藤 浩, 宮田 博規
    1986 年 35 巻 2 号 p. 189-192
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    我国の実験小動物コロニーにリンパ球性脈絡髄膜炎ウィルス (LCMV) の感染が存在するか否かを蛍光抗体間接法を使用して検索した。その結果, SPFマウスで3/152 (2.2%) , コンベンショナルマウスで30/539 (5.600) の抗体陽性を確認し, 抗体価は1: 10-1: 160の分布を示した。またシリアンハムスターならびに捕獲後飼育室で繁殖させたセスジネズミ, カヤネズミの抗体保有率もそれぞれ2/89 (2.2%) , 2/68 (2.9%) , 3/14 (21.4%) を示した。一方, スナネズミ, スンクス, モルモット, ラットにおいては今回の調査範囲では抗体陰性であった。以上の結果より, 我国の実験小動物の一部にLCMVの感染があることが示唆され, 今後, 小動物の微生物学的モニタリングやヒト髄膜炎患者に対する検査体制の確立が望まれる。
  • 鈴木 通弘, 成田 勇人, 羽成 光二, 福井 正信, 長 文昭, 本庄 重男
    1986 年 35 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    カニクイザル新生仔, 1, 531頭の前眼部を調査し, 両眼の水晶体が完全に白濁している1個体を認め, 先天性白内障と診断した。水晶体内周縁部の白濁の透明化が一時期認められ, 眼底も同時期不完全ながらも観察可能であった。先天性白内障に遺伝的素因が関与しているか否かの検討が必要である。
  • 滝口 和彦, 大和田 一雄
    1986 年 35 巻 2 号 p. 199-202
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    自動給水配管内の水の微生物学的汚染を防止する目的で, 配管内の水を定期的に排水して新しい水と入れ替えることのできる定時排水装置を開発した。この装置は電磁弁とそれを制御するタイムスイッチから構成され, 電磁弁の開閉及び作動時間は任意に設定できる。1回につき自動給水配管容積の2倍量を排水するように設定し, 一般細菌数を汚染の指標として汚染防止効果の検討を行った。この装置を使用しない場合は1mlあたり103以上の一般細菌数が存在した。本装置を使用し6時間間隔以内で作動させると一般細菌数は1mlあたり5以下となり, 本装置は配管内の水を清浄に保つために極あて有効であることが示された。
  • 矢沢 肇, 梅沢 英彦, 倉益 茂実, 宮嶋 正康
    1986 年 35 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    日本生物科学研究所付属実験動物研究所において全兄妹交配により, JWY-NIBS及びNWY-NIBSの2近交系が確立された。それらの起源, 確立過程, 成熟時月齢, 成熟時体重及び標識遺伝子は下記の如く要約される。1.JWY-NIBS: 起源: 東京都の高尾山付近で繁殖され, その後府中市の農家で維持されていたウサギを起源とする。近交開始年月: 1964年4月。近交系確立年月: 1981年6月。成熟時月齢: メス7カ月, オス7.5カ月。成熟時体重: メス2.8~3.0kg, オス2.7~2.9kg。生化学的標識遺伝子: ヘモペキシンHxs型, エステラーゼEst-1s型, α-プロテインはF型にそれぞれ固定していた。2.NWY-NIBS: 起源: 米国ジャクソン研究所より1967年に導入された系統III, ニュージーランドホワイト種を超源とする。近交開始年月: 1967年11月。近交系確立年月: 1982年7月。成熟時月齢: メス7.5カ月, オス8カ月。成熟時体重: メス2.8~3.0kg, オス2.9~3.1kg。生化学的標識遺伝子: ヘモペキシンHxF型。エステラーゼEst-1s型及びEst-2f型, α-プロテインはS型にそれぞれ固定していた。
  • 1986 年 35 巻 2 号 p. 217-234
    発行日: 1986/04/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
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