Experimental Animals
Online ISSN : 1881-7122
Print ISSN : 0007-5124
40 巻, 4 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
  • 下田 耕治, 久原 孝俊, 前島 一淑
    1991 年 40 巻 4 号 p. 425-430
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Rプラスミド保有大腸菌のマウス腸管内定着性について検討するため, Rプラスミド保有菌および非保有対照菌を同時にストレスプトマイシン処理マウスに経口投与し, 経時的に糞便内菌数を測定した。その結果, Rプラスミド保有菌の菌数は非保有菌に比べ同じか低値であったが, 本来宿主菌が保有していたcrypticプラスミドに由来するRプラスミドでは逆に保有菌の方が非保有菌よりも多く検出された。以上の成績から宿主菌対Rプラスミドの関係は宿主菌の腸管内定着性に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 奥本 正昭, 西川 量介, 岩井 峯子, 岩井 良昭, 今井 俊介, 森 展子, 高森 康彦, 矢ヶ崎 修
    1991 年 40 巻 4 号 p. 431-438
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    DD/Tbrマウス, DD/Tbrマウス乳癌ウイルス (DD-MMTv) 感染NIH swissマウス (NIH/Mtv+) , およびDD-MMTV感染BALB/cマウス (BALB/Mtv+) の乳癌におけるMMTVの共通組み込み部位, int遺伝子の発現を調べた。DD/Tbrマウスの乳癌16例のうち9例 (56%) と8例 (50%) において, それぞれint-1およびint-2遺伝子の発現が増加していた。また, このDD/Tbrマウスに発生した16例の乳癌のうち13例 (81%) においてint-1とint-2のいずれかの遺伝子発現の増加がみられた。一方, NIH/Mtv+マウスでは17例の乳癌中7例 (41%) , 4例 (24%) において, それぞれint-1およびint-2遺伝子の発現が増加していた。int-1とint-2のいずれかの遺伝子の発現増加が見られたのは, DD/Tbrに比べて明らかに少なく, 17例中8例 (47%) であった。BALB/Mtv+マウスの乳癌ではさらに低く, int-1とint-2のいずれかの遺伝子の発現増加を示したのは, 9例中3例 (33%) に過ぎなかった。DD-MMTVで3系統のマウスにひきおこした乳癌におけるint-1あるいはint-2遺伝子の発現増加の頻度の違いは, マウスの系統に固有の遺伝的性質によると考えられる。従って, 乳癌発生におけるint-1とint-2の寄与の大きさは宿主細胞側の遺伝的性質によって大きく変わることを示唆している。また, int-1およびint-2遺伝子の活性化はH-ras, K-ras, N-ras, myc, raf, fgr, fms, erbB , mos, srcのような癌遺伝子の発現と相関していなかった。
  • 安食 隆, 鈴木 秀作
    1991 年 40 巻 4 号 p. 439-446
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    SD系ラットを用い血管鋳型法による皮膚血管構築の観察を行った。ラット頸部皮膚では, 第一層 (浅層) , 第二層 (中層) 及び第三層 (深層) の3層の血管網が存在した。毛包周囲では, 毛包の大小によりランダムな網工で形成された小型の毛細血管網と, 網工の形成状態により3つの部分が分けられる大型の毛細血管網が認められた。大型の毛細血管網は, 毛乳頭への毛細血管と毛嚢脂腺の毛細血管網と共に1つの微小循環の単位を形成していると考えられた。この微小循環単位への流入動脈は, 第三層より起きる枝付燭台動脈から分岐しており, 第二層の深さまで上行したのち下行し, 毛包周囲の毛細血管網の底側へ向かい流入動脈に近接して毛細血管網を形成していた。またこの微小循環単位からの流出静脈は, 毛包周囲の毛細血管網の浅側と深側の2部分に起きており, 各々第三層の血管網に向かって直線的に下行していた。そして第二層と第三層間を直線的に走行するこれらの細血管の存在が単純な層構造と共にラット皮膚血管構造の特徴であった。
  • 斎藤 徹, 青木 忍, 斎藤 正好, 天尾 弘実, 丹羽 健, 寺田 賢, 杉山 公宏, 高橋 和明
    1991 年 40 巻 4 号 p. 447-452
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    覚醒剤の性行動に対する報告はヒトに数多くみられるが, 小動物に対するその研究はほとんど行われていない現状である。今回の報告はラットの交尾行動に対する覚醒剤の単回および連続投与の影響について検討したものである。動物には交尾行動の経験を有する生後10週齢のWistar-lmamichi系の雄ラットを用い, メタンフェタミン (単回投与群: 1, 2, 4mg/kg, 連続投与群: 1mg/kg) を腹腔内に投与し, その後90分間の交尾行動を暗期の19時30分より赤色ライト下で観察した。その結果, 単回投与におけるメタンフェタミン1および2mg/kg群の交尾行動パターンは溶媒対照群と同じ傾向を示したが, 4mg/kg群では, マウント, イントロミッションおよび射精回数の有意な減少 (p<0.001) を認めた。この投与群の動物には自発運動の亢進ならびに常同行動の出現が見られた。連続投与, 即ち1週間に1回メタンフェタミソを投与し, 2週間毎に投与直後より交尾行動を観察した結果, 第4回目の観察 (7回目のメタンフェタミン投与直後) では, 射精した動物の割合は溶媒対照群の成績に比較して低い値 (p<0.05) を示し, 第5回目の観察では全動物に射精は認められなかった (p<0.01) 。さらにイントロミッションの割合も第5回目で低値を示した (p<0.05) 。連続投与群の動物には観察期間中, 常同行動の出現は認められなかった。以上の成績より, 覚醒剤メタンフェタミンはラットの交尾行動におけるイントロミッションならびに射精の発現に対して抑制効果を示すものと推測される。
  • 三上 博輝, 西端 良治, 尾崎 清文, 沼沢 拓身, 河本 泰生, 猪 貴義
    1991 年 40 巻 4 号 p. 453-460
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    気管支喘息モデル動物として, 気道過敏系 (BHS) およびその対照として気道非過敏系 (BHR) のモルモット二系統が著者らによりすでに開発されている。今回, これらモルモット二系統の生物学的特性について調べ, 以下の結果を得た。1) アセチルコリン, ヒスタミンおよびロイコトリエンD4の静脈内投与によるBHSの気道抵抗はBHRより高かった。2) 肺膜におけるBHSのムスカリン性アセチルコリン受容体数および親和性はBHRと比較して, 有意に増加した。しかしながら, βアドレナリン, ヒスタミンH1受容体数および親和性は二系統間に差を認めなかった。3) 卵白アルブミソに対するIgE抗体産生能は二系統間に差を認めなかった。4) BHSおよびBHRの末梢血における白血球数, 白血球分類について調べた。BHSのリンパ球, 好酸球はBHRよりも有意に多く, 逆にBHSの好中球はBHRよりも有意に少なかった。
  • 山本 利男, 各務 進, 額田 久雄, 井上 博之
    1991 年 40 巻 4 号 p. 461-469
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    F334/DuCrjラットを用い, (財) 食品農医薬品安全性評価センターで最近5年間におこなった11の長期毒性試験や発癌性試験の対照群動物の死亡率, 体重, 摂餌量, 摂水量および一般状態のデータを集計した。その結果, 109週齢時の生存率は雄で80.2% (最小: 74.0%, 最大: 90.0%) , 雌で80.5% (最小: 72.0%, 最大: 92.0%) であった。平均体重の最大値は雄で443.3±15.8g (平均±標準偏差) , 雌で295.7±13.3g (平均±標準偏差) であり, それらは雄で82.6±5.3週齢 (平均±標準偏差) , 雌で103.5±2.5週齢 (平均±標準偏差) であった。一般状態では特に生後84週齢以降で雌雄とも加齢に伴う所見が観察され, 痩削, 立毛, 皮下部の腫瘤, 腹腔内の腫瘤および自発運動低下が高い発現率を示した。また, 切迫屠殺動物には体温低下と耳介の蒼白がもっともしぼしば観察された。被験物質処置群動物に観察される毒性発現の種類と程度は一般に対照群動物と行動や症状を比較して解析されている。しかし, それに加えて試験実施機関それぞれに背景データを備えることは慢性毒性試験や発癌性試験の成績を評価するに当って非常に有用である。
  • 権田 辰夫, 沖 充
    1991 年 40 巻 4 号 p. 471-484
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Hirschsprung氏病の実験動物モデルである先天性無神経節腸管ラット (AGR) を使って正常腸管と狭小部腸管のコリン性, アドレナリン性神経の分布の違いをそれぞれアセチルコリンエステラーゼ (AChE) 染色とカテコールアミン蛍光法 (C-F) により検索した。またAChEとC-Fの二重染色法によりそれぞれの神経線維の分布の違いも検討した。AGRは狭小部腸管が遠位回腸から直腸にまで及ぶ広い範囲にわたっており壁内神経節細胞を欠如していた。狭小部腸管の直腸では外来性のAChEおよびC-F陽性の太い神経線維束が不規則な粗大な網目を形成し, 分枝しながら壁内を上行し盲腸まで達していた。遠位回腸ではC-F陽性の細い神経線維がみられたがAChE陽性線維は殆ど観察されなかった。二重染色法により太い神経線維束は両染色共に陽性であったが, 細い神経線維で単独に認められるものが存在し特に血管壁のC-F線維は単独に多数認められた。以上の結果より狭小部腸管の近位部ではコリソ性, カテコールアミン性神経共に著しく減少しており, 遠位部では両者に陽性な太い神経線維束からなる神経線維網がみられたが壁内神経細胞は欠如していた。これらの外来性神経線維の役割は不明である。
  • 山越 純, 大下 克典, 高橋 令治
    1991 年 40 巻 4 号 p. 485-492
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    急性期の二腎性Goldblatt型高血圧 (2KGH) ラットおよび高血圧自然発症ラット (SHR) に及ぼすカプトプリルの28日間連続経口投与の影響を検討した。その結果, 収縮期血圧は, カプトプリルを投与しなかった2KGHラットとSHRの両群共, 実験期間の経過に伴い順次上昇し, 実験開始28日目で2KGHラットは平均194mmHg, SHRは平均198 mmHgを示した。一方, カプトプリルを投与した両群では, 各対照群と同程度の, それぞれ平均111mmHgおよび, 平均132mmHgの値を示した。血漿レニン活性は, 実験期間中, 2KGHラットとSHRにカプトプリルを投与した群で最も高値を示し, これらの群に続き, 2KGHラット群で高値を示したが, SHR群は各対照群と同程度の値を示した。Juxtaglomerular index (JGI) 値とJuxtaglomerular cell count (JGCC) 値は, 2KGHラット群の腎動脈狭窄腎で, 実験期間の経過に伴い順次上昇を示したのに対して, 腎動脈非狭窄腎で順次低下を示した。これらの変化は, SHR群と各対照群では認められなかった。一方, 2KGHラットにカプトプリルを投与した群の腎動脈狭窄腎と, SHRにカプトプリルを投与した群の両腎で, JGIとJGCCの順次上昇が観察された。以上のことより, 2KGHラットの高血圧発症における糸球体傍細胞の関与が示唆されたが, SHRの高血圧発症における糸球体傍細胞の役割を明らかにすることはできなかった。また, カプトプリルは, 2KGHラットとSHRでJGIとJGCCを上昇させるにもかかわらず, 降圧作用を示すことがわかった。
  • 竹島 勉, 中潟 直己, 尾川 昭三
    1991 年 40 巻 4 号 p. 493-497
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    12, 15, 18, 21%のRaffinose (W/V) に3%Skim Milkを加えた保存液を用いマウスの精巣上体尾部精子を凍結保存した。凍結は試料を室温から液体窒素ガス中に10分間静置後, 液体窒素内に浸漬する急速冷却法を用いた。融解は, 試料を液体窒素から取り出し, 室温水槽に静置することにより行なった。融解した精子浮遊液を注射筒内に吸引後, 注射筒先端に0.45μのディスポーザブル・フィルターユニットと三方活栓を装置し, 濾過することにより保存液を除去した。その結果, 18%Raffinoseに3%Skim Milkを添加した保存液で凍結保存した精子が, 融解後1時間の運動性で最も優れていた。この精子を用いて体外受精を行ない, 授精6時間後の受精率および28時間後の2細胞期への発生率は, それぞれ35.9% (74/206) および33.6% (42/125) であった。また, 2細胞期胚を受容雌の卵管内に移植し, 45.2% (19/42) が新生仔として得られた。
  • 鈴木 敏明, 田名 網祥一, 藤原 弘, 石橋 晃
    1991 年 40 巻 4 号 p. 499-509
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    マウス用の固形飼料を考案するため, 粗蛋白質が24%と一定でエネルギーを段階的に変えた4種の固形飼料を約3年間C57BL/6Jマウスに給与した。飼料の窒素補正代謝エネルギー (MEn) は乾物当たり最低2.86最高3.73kcal/gであった。1飼料区に対し雄15匹雌30匹ずつを割り当て, 7週間隔で雄と雌を1週間同居させて5回の交配を経験させた後, 寿命まで飼育した。60週齢以後の瀕死期のマウスは病理組織学的検査に供した。最高MEnの飼料においては最低MEnの飼料に較べて, (1) 子マウスの離乳時体重が31.6%増大し, (2) 雄は雌と異なり繁殖期間中から軽度の肥満傾向が現れ, (3) 50週齢以降は雄雌とも著しく肥満して最大体重がそれぞれ41.2および49.6%増大し, (4) 飼料摂取量は約18%減少したがMEnの摂取量はわずかに過剰となり, (5) 雌マウスに加齢に伴い高率に脱毛が発生し, (6) 50週齢以後の生存率が低下して寿命が短縮し, (7) 加齢に伴う病理組織学的変化が早期に出現した。一方, 飼料のMEnの低下に伴い, 雌マウスの分娩時の死亡率が増大した。以上から, C57BL/6Jマウスの一生を通じ, MEnが高低2種の飼料, 即ち, MEnが3.73kcal/gDMの飼料を最良の繁殖成績を得るために, 2.86kcal/gDMの飼料を繁殖期以後の長期飼育における肥満と加齢の最も効果的な抑制のために, 必要とすることが判明した。
  • 梅津 元昭, 川田 建二, 三輪 明美, 石井 伸一, 正木 淳二
    1991 年 40 巻 4 号 p. 511-515
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    古藤らがWistar-Imamichi系ラットより発見した遺伝性侏儒症 (rdw) の雌雄10週齢のラットの下垂体および血中GH, FSH, LHをRIAにより測定し, 同週齢の正常ラットと比較した。その結果, 下垂体および血中のGHがrdwラットでは極端に減少していることが判った。FSH, LHはrdwラットでは全体的に低い傾向があったがGHほど著しい減少は見られなかった。これらの結果は古藤らが下垂体の組織化学的検討により得た成績を一部裏付けた。rdwラットは下垂体GH欠乏の内分泌疾患モデルの一つとして有用性が高いと考えられた。
  • 田爪 正気, 梅原 恵子, 松沢 秀之, 相川 浩幸, 橋本 一男, 佐々木 正五
    1991 年 40 巻 4 号 p. 517-522
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    マウスの寿命に及ぼす無菌状態と食餌制限の影響について検討した。実験動物は雄のICR系無菌およびSPFマウスを用いた。制限食の開始時期は生後5週とし, 自由摂取群と制限食群とに分けた。制限食群の食餌は自由摂取群の摂取量の80℃6 (4.5g/日) を毎日与えた。平均寿命は自由摂取群のSPFマウスでは75.9週, 無菌マウスでは88.9週, 制限食群のSPFマウスでは117.5週, 無菌マウスでは109.6週であった。また, 体重を計測した結果, 制限食群は自由摂取群と比べて, SPFおよび無菌マウス共に低値の成績が得られた。この結果, 離乳直後からの食餌制限は成熟を遅らせ, 成長期間が長くなり, 寿命が延びている可能性が考えられる。一方, 無菌マウスの平均寿命はSPFマウスの平均寿命と比べて, 自由摂取群では長く, 制限食群では短かった。この成績から, 無菌状態と食餌制限の組合せでは顕著な延命効果は認められなかったが, 各々単独では平均寿命の延長に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
  • 田爪 正気, 梅原 恵子, 松沢 秀之, 吉田 貴彦, 橋本 一男, 佐々木 正五
    1991 年 40 巻 4 号 p. 523-528
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    無菌およびSPFマウスの老化過程における免疫機能に及ぼす制限食の影響について検討した。実験動物は雄のICR系無菌およびSPFマウスを用い, 各々自由摂取群と制限食群とに分けた。制限食の開始時期は生後5週とし, 制限食群の食餌は自由摂取群の摂取量の80% (4.5g/日) を毎日与えた。平均寿命が最も延長した群はSPFマウス制限食群, 次いで無菌マウス制限食群, 無菌マウス自由摂取群, SPF自由摂取群であった。この結果, 無菌状態と制限食の組合せでは顕著な寿命延長効果は認められなかった。一方, 各群の加齢に伴う脾臓リンパ球のマイトゲン (Con A, LPS) に対する免疫応答能は, 無菌およびSPFマウスともに制限食群は自由摂取群に比べて高い反応性を示した。羊赤血球に対する抗体産生能も同様の傾向がみられた。これらの成績から, 食餌制限は加齢に伴う免疫機能の低下を抑制している可能性が示唆された。
  • 都築 政起, 若杉 昇, 森岡 宏至, 江崎 孝三郎
    1991 年 40 巻 4 号 p. 529-536
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/12/09
    ジャーナル フリー
    ニホンウズラの“stumpy limb”ミュータントは孵化直前の完全致死性を示し, その特徴は次のようであった。 (1) 短頭症を呈し, 頚部が正常なものより肥厚していた。 (2) 上嘴の上縁部の湾曲が正常個体よりも強度であるため, いわゆる“parrot beak”様の外観を呈したが極端なものではなく軽度のものであった。 (3) 翼および脚が正常個体に比べ短く太かった。 (4) 翼および脚の骨, すなわち, 上腕骨, 橈骨, 尺骨, 手根中手骨, 大腿骨, 脛骨, 足根中足骨, および足指骨が正常なものに比べ短く太かったが, この異常は翼よりも脚の骨においてより顕著であった。指骨の異常はほとんどみられなかった。遺伝分析の結果, 本突然変異は常染色体性の単一劣性遺伝子によって支配されていることが判明し, この突然変異遺伝子に対し遺伝子記号slを提唱した。本ミュータントは骨形成研究のための実験動物として有用であり, また, その異常形態がヒトの疾患「骨形成不全症皿型」に極めて良く似ているので, この疾患の動物モデルとなり得る可能性がある。
  • 武田 真記夫, 神鳥 仁志, 板垣 慎一, 平山 和宏, 畠山 和久, 土井 邦雄
    1991 年 40 巻 4 号 p. 537-540
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    BALB/c系の無菌 (GF) および普通 (CV) マウスの肝の数種の機能と形態を比較した。8週齢では, 肝の過酸化脂質 (LPO) 量とアニリン・ヒドロキシラーゼ (AH) 活性値ならびに血清の総コレステロール (TC) , トリグリセリド (TG) およびリン脂質 (PL) 量は, CVよりもGFマウスで有意に低かった。しかし, 肝の組織学的およびレクチン組織化学的所見には差は認められなかった。一方, 4週齢時にGFマウスを同週齢のCVマウスと同居させた普通化 (ex-GF) マウスでは, 肝のLPO量とAH活性値ならびに血清のTC, TGおよびPL量は最初の1週間で急速な増加を示し, 4週後 (8週齢時) にはCVマウスのそれとほぼ同様な値を示した。しかし, 肝の組織学的所見にはGF, CV, およびex-GF間で差は認められなかった。
  • 茶山 和敏, 森山 俊朗, 松沢 昭雄
    1991 年 40 巻 4 号 p. 541-543
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    850radのγ線照射後, 同系骨髄移植を行った19匹のBALB/c, 14匹のCBA/Kl, 12匹のC3H/HeJおよび15匹の (CBA/K1×C3H/HeJ) F1雌マウスで, 6ヶ月にわたり, 白内障の発症を観察した。BALB/cではすべてのマウスのレンズが113日から149日目に白濁した。6ヶ月目の剖検時に摘出したレンズの観察では, BALB/c, CBA/KI, C3H/HeJおよびF1マウスでの白濁したレンズの割合が, それぞれ100, 7.1, 16.7および0%であった。以上の結果から, BALB/cマウスはCBA-C3H群マウスに比べて, γ線誘発白内障に対する感受性が著しく高いことが示された。
  • ―超音波画像診断によるヒト肝細胞癌モデルの解析―
    志賀 淳治, 大西 真, 井廻 道夫, 山本 孝史, 輿水 馨, 佐々木 伸雄
    1991 年 40 巻 4 号 p. 545-548
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ウッドチャック肝細胞癌はその発癌過程がヒト肝細胞癌によく似ており, ヒト肝細胞癌のよい動物モデルである。これまで27匹のウイルスキャリヤーを繰り返し経時的に観察して, 18匹に超音波画像診断方法により腫瘍を発見したが, このうち6匹では最大径1cm以下の腫瘍であり, 最小は7mm×5mmであった。エコーパターンは1例以外は総てlow echoicで, 1例のみがhighechoicであった。エコーパターンによる病理形態的な差はなく, いづれもよく分化した肝細胞癌であった。6例においてその発育過程を経過観察したが, 腫瘍体積10cm3以下では徐々に発育するが, それ以上では急激な体積の増加を示した。進行癌ではヒトと同じくいわゆるモザイクパターンをしめした。
  • 川合 覚, 高鳥 浩介, 下沢 和広, 今井 清
    1991 年 40 巻 4 号 p. 549-551
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    実験用カニクイザル体表の真菌学的調査を行った。調査動物は, インドネシア産カニクイザル雌39例, 雄35例で, これら74例中73例から真菌類が分離された。分離された菌のうち, Cladosporiumがもっとも多く, 以下Acremonium, Curvularia, Arthrinium, Trichoderma, Stachybotrys, Emericella, Epicoccum, Pestalotia, Aureobasidiumであった。しかしながら, 皮膚糸状菌やケラチン好性菌は分離されなかった。
  • 穴井 俊二, 山崎 寛治
    1991 年 40 巻 4 号 p. 553-555
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    12週齢の高コレステロール症ラット雌に乳腺癌が認められた。肉眼的に右後部乳腺部付近の皮下に灰白色腫瘤がみられた。組織学的に腫瘍は, しぼしば核分裂像を示す一層から数層の異形上皮細胞からなる腺管様構造と, 増殖した結合組織から形成されていた。腫瘍内には, 壊死および出血がみられ, 腫瘍細胞の周囲筋組織への浸潤も認められた。
  • 長尾 静子, 高橋 久英
    1991 年 40 巻 4 号 p. 557-560
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/12/09
    ジャーナル フリー
    一般にヒトの多発性嚢胞腎症 (PKD) の疾患モデルとして, 幼児型のcpkマウスと成人型のpcyマウスが用いられている。一方, ラットでは幼児型と成人型のPKDは, それぞれCy遺伝子のホモ型とヘテロ型に起因している。そこで, 2つのマウスPKD遺伝子が同一遺伝子の対立形質であるか否かを確認する為に, リンケージ試験を行なった。pcy遺伝子は第9番染色体上のd遺伝子とリンケージを示したが, cpk遺伝子では示さなかった。また分離テストでは, 2つのPKD遺伝子は独立していることが示された。これらの結果から, cpk遺伝子とpcy遺伝子は対立遺伝子ではなく, マウスのPKD発症における遺伝的メカニズムは, Cyラットとは異なることが示唆された。
  • 斎藤 徹, 青木 忍, 首藤 康文, 外尾 亮治, 佐々木 敬幸, 天尾 弘実, 若藤 靖匡, 杉山 公宏, 高橋 和明
    1991 年 40 巻 4 号 p. 561-563
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    雄ラット, ハムスターおよびマウスに対するp-Chlo-roamphetamine (PCA) による誘起射精について検討した。PCAの用量は0.078125~160mg/kgであり, 各動物種とも腹腔内に単一投与された。その結果, 投与後2時間以内に射精の認められた割合は, ラットの0.625mg/kg群で0/8 (0%) , 1.25mg/kg群で4/10 (40%) および2.5mg/kg群で8/8 (100%) であり, ハムスターの0.078125mg/kg群で1/6 (16.7%) , 0.15625mg/kg群で5/6 (83.3%) および0.3125mg/kg群で8/8 (100%) であった。上記のラットおよびハムスターのED50 (Effective dose in50%) 値はそれぞれ1.3397 (1.0732~1.6725) および0.1105 (0.0802~0.1522) mg/kgであった。これに対して, マウスでは全ての用量群において射精を示した個体は認められなかった。以上の成績より, PCAによる誘起射精には明らかな種差が観察された。
  • 長谷川 嘉子, 新井 敏郎, 塩見 美江, 佐々木 稔, 大木 与志雄
    1991 年 40 巻 4 号 p. 565-567
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    草食性ハタネズミとC57BL/6Jマウスにおいて, 脂肪酸合成の律速酵素である肝ATP-クエン酸リアーゼとアセチルCoAカルボキシラーゼの両酵素活性を測定し, 比較検討を行った。ハタネズミの肝ATP-クエン酸リアーゼ, アセチルCoAカルボキシラーゼ活性もマウスのそれに比べ各々1/5, 1/2以下と著しく低かった。ハタネズミの脂肪酸合成能力はマウスに比べ著しく低く, これは, 草食動物の特性のひとつと考えられた。
  • 青木 忍, 天尾 弘実, 斎藤 徹, 斎藤 学, 高橋 和明, 多川 政弘
    1991 年 40 巻 4 号 p. 569-572
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    モルモットの精巣摘出手術を腹部正中線および陰嚢の2ルートから行って, 手術時間, 術後の経過, 術創の治癒状況を比較し, いずれの手術ルートがモルモットに負担をかけずに, かつ安全に実施できるかを検討した。その結果, 手術時間には, 両者間に有意差は認められなかった。腹部正中線切開法では, 術後の経過が良く, 1週後の術創の治癒状況も良好であった。しかし, 陰嚢切開法では, 鞘膜臓側板や精巣白膜が薄く手術時に精巣実質を傷つけて精巣内容物を周囲に飛散させる危険性が高かった。そして, 治癒状況も不良であり, 5例中4例に陰嚢内化膿が見られた。以上の結果より, モルモットの精巣摘出手術法としては, 腹部正中線切開法が陰嚢切開法より適していた。
  • 御船 弘治, 鈴木 秀作, 野田 安孝, 林 良博, 望月 公子
    1991 年 40 巻 4 号 p. 573-577
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    各齢のスナネズミにおける右側の心耳筋細胞の心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) 顆粒を免疫組織化学的ならびに透過電子顕微鏡的に観察し, さらにこれらのANP顆粒の加齢に伴う変化を形態計測により解析した。免疫組織化学的に, 3および4年齢におけるANP免疫反応、は90日齢, 1および2年齢にくらべ弱かった。90日齢, 1および2年齢間, あるいは3および4年齢間に, 反応差はなかった。電顕的に, 1および2年齢の形態的特徴は90日齢に類似していたが, 3: および4年齢において細胞内にライソゾーム様構造物が散見された。形態計測的に, 3: および4年齢のANP顆粒の数と大きさは, 90日齢, 1および2年齢にくらべ有意に少なく, 小さかった。90日齢, 1および2年齢間, あるいは3および4年齢間の数および大きさに有意な差はなかった。
feedback
Top