Experimental Animals
Online ISSN : 1881-7122
Print ISSN : 0007-5124
42 巻, 3 号
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  • 1993 年 42 巻 3 号 p. 275-304
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
  • 田中 愼, 松沢 昭雄
    1993 年 42 巻 3 号 p. 305-316
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ドイツマウスの導入過程を文献上で調査した際, このマウスの導入に関わった秦佐八郎が1911年~27年の間重用したマウスは, フランスマウスであることを明らかにした。今回はこのフランスマウスを調査し, このマウスが南京ネズミとともに日本で最初に研究者の手で多年に亘って自家繁殖されたものであることを明らかにした。更にこのフランスマウスの自家繁殖を実行した研究者が増井清であることも判明した。また両マウスの90日齢での大きさも特定できた。自家繁殖の思想は秦により提唱されたものであり, これを実行したのが増井であった。それ故, この2人が日本の実験動物界の原点といえよう。まず増井が副腎皮質の先駆的な研究に用いたマウスは, このフランスマウスであった可能性を考察し, 次いで増井の用いたマウスが極めて特異な皮質第4層, X層を有することに注目して愛玩用マウスに由来する4近交系のそれと形態学的に比較した。この比較を基にフランスマウスが外国 (フランス) から導入されたものではなく, 日本にいた愛玩用マウスに由来する可能性を考察した。
  • 中潟 直己, 竹島 勉
    1993 年 42 巻 3 号 p. 317-320
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    18%ラフィノース+3%スキムミルクを保存液とし, 5系統の近交系 (BALB/c, C3H/He, C57BL/6N, CBA/JNおよびDBA/2N) と3組の近交系間交配F1 (B6C3F1 (C57BL/6N×C3H/He) , BDF1 (C57BL/6N×DBA/2N) およびCDF1 (BALB/c×DBA/2N) 雄マウスの精巣上体尾部精子を-196℃に凍結保存した。融解後の精子の受精能は, ICR系マウス未受精卵との間で体外受精を行なうことにより検討した。各種凍結マウス精子の活力および受精率 (2細胞期へ発生した卵子の割合) は, 系統によりかなりのばらつきが見られた (精子活力: 23-62%, 受精率: 26-89%) 。また, 2細胞期胚の移植により, 移植胚の35-62%が新生児へ発生した。
  • 清澤 岩水, 青木 誠, 今村 卓広, 内藤 惇, 斎藤 徹, 高橋 和明
    1993 年 42 巻 3 号 p. 321-325
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    オープンフィールド試験で眼球摘出ラットおよび無処置ラットの歩行移動量を比較し, 同試験による視覚機能障害検出の可能性を検討した。Slc: Wistar/ST系ラットを用いて30分間測定した結果, 10分間の観察で無処置群との間に有意差が認められた。次に, 観察に適した系統と時間帯を検討するために, Slc: Wis-tar/ST系, Slc: SD系およびF344/N Slc系ラットを用いて9~11時, 13~15時および17~19時の時間帯に10分間の測定を実施した。その結果, Slc: Wistar/ST系およびF344/N Slc系ラットではすべての時間帯に, Slc: SD系ラットでは13~15時に無処置群との間に有意差が認められ, 視覚障害による歩行移動量の変化が確認された。しかし, F344/N Slc系ラットでは時間帯により歩行移動量に有意な差があることが確認された。以上より, オープンフィールド試験にて視覚機能を検討する場合, 3系統の中ではSlc: Wistar/ST系ラットを用いることが最適であると考えられた。
  • 市村 英資, 小川 和重, 谷口 和之
    1993 年 42 巻 3 号 p. 327-335
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    スナネズミに長期間の渇水ストレスを与え, 腎皮質に抗レニン血清を用いた免疫染色を施し, 渇水によるレニン陽性細胞の動態を画像解析法によって形態計測学的に検討した。また同時に, 体重と血漿浸透圧も測定し, 形態計測の結果と比較検討して考察を加えた。渇水により, スナネズミの体重は, はじめは急激に減少し, その後, 渇水10日からは緩やかに減少した。一方, 血漿浸透圧は渇水2日では有意な変化は示さなかったが, 5日からは次第に上昇し, 15日からはほぼ平衡状態に達して一定の範囲内で高い値を保った。同様に, 腎臓皮質に対するレニン陽性細胞の面積比は, 対照群に比べて, 渇水2日では有意差がなかったが, 5日以降有意に増加を示し, 渇水15日以降は平衡状態となって対照群に対して有意に高い値を保った。この結果と体重および血漿浸透圧の変化より, 渇水初期には動物は細胞間液と細胞内液を動員して血漿浸透圧の上昇を防ぐため, 体重は減少するものの, 血漿浸透圧とレニン陽性細胞の面積比に有意な変化は認められないが, 渇水がある程度持続すると, 血漿浸透圧が上昇することによって糸球体傍細胞のレニン合成も盛んになり, レニン陽性細胞の面積比も増大すると思われた。また渇水が長期間にわたった時は水分の喪失に比例して体内から電解質も排泄されるようになるため, 血漿浸透圧は一定レベル以上には上昇せず, それに対応してレニン陽性細胞の面積比もほぼ平衡状態に達するものと考えられた。
  • 周藤 俊樹, 辻 荘一, 万年 英之, 後藤 信男, 梅沢 英彦, 水谷 誠, 矢沢 肇, 塩見 雅志
    1993 年 42 巻 3 号 p. 337-342
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/12/09
    ジャーナル フリー
    実験用日本白色種 (日白種) ウサギは, 各種動物実験における結果の個体差や系統差が指摘されている。そこで本実験では, M13ファージ反復配列をプロープにしたDNAフィンガープリント法をダッチ種を含む実験用ウサギ5系統に適用し, 日白種系統の遺伝的均一性をみるとともに, 本法がこれらの系統の遺伝的モニタリングや遺伝的類縁関係の推定に有効であるかどうかを検討した。
    近交系2系統のDNAフィンガープリントは, 各系統内で変異がみられず, それぞれ特有のバンディングパターンを示した。またクローズドコロニーの日白種3系統では, 同一のバンディングパターンを示す個体はなかったが, average percent difference (APD) 値は13.7~18.6となった。実験用ウサギ5系統のDNAフィンガープリントのAPDにもとづくデンドログラムは, 大きく日白種とダッチ種の2つのクラスターから形成されていた。この結果は, これら5系統の下顎骨12部位計測値にもとづくデンドログラムとほぼ一致していた。これらのことから, DNAフィンガープリント法は実験用ウサギ系統の遺伝的モニタリングや類縁関係の推定に有効であることが示唆された。
  • 福田 勝洋, 坂本 賢一郎, 橋詰 良一, 万年 英之, 後藤 信男
    1993 年 42 巻 3 号 p. 343-347
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ゴールデン・ハムスターに出現した長毛の性状とその遺伝様式を調べ, 長毛ハムスターの近交系を樹立した。長毛ハムスターでは臀部および腹側部の体毛が最も長く (約70mm) , 頸部でもかなり長い (45~50mm) 。雌に比べ, 雄の体毛が著しく長い。交配実験の結果から, 長毛の遺伝は常染色体劣性遺伝子によるとみなされた。
    (正常毛アルビノx長毛野生色) F1同士の交配で生まれた長毛アルビノF2の兄妹交配の継代により, 長毛アルビノハムスターの近交系を樹立し, その遺伝的均一性をDNAフィンガープリントにより確かめた。この近交系は, 他のハムスター系統と逆に, 雄が雌より著しい成長を示した。
  • 飯田 治三, 福田 俊
    1993 年 42 巻 3 号 p. 349-356
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    雌雄Wistarラットにおける骨の重量, 含有成分量および骨関連血清成分の年齢変化を雄60匹, 雌60匹を用いて検索した。1, 2および3から30ヵ月齢までは3ヵ月間隔の計12時点でそれぞれ雄5匹, 雌5匹を供し, 大腿骨, 脛骨, 第1腰椎の生骨, 乾燥骨および灰化骨の重量, 水分, 有機成分, 灰分, カルシウムおよびリン含有量と血清中の総カルシウム値, リン値およびアルカリフォスファターゼ活性値を測定した。各骨の重量は, 雌雄とも3ヵ月齢まで急速に, それ以降雌では12ヵ月齢, 雄では9ヵ月齢まで増加した後変化しなかった。しかし雄では27ヵ月齢以降減少がみられた。1ヵ月齢から6あるいは9ヵ月齢まで雌雄の各骨の含有水分量は減少, 灰分量, カルシウムおよびリン含有量は増加したが, 有機成分量はほとんど変化しなかった。しかし雄では15ヵ月齢以降有機成分量は変化しなかったが, 水分含有量は増加, 灰分量, カルシウムおよびリン量は減少した。血清総カルシウム値は雌雄とも12ヵ月齢まで減少し, 18ヵ月齢以降増加した。リン値およびアルカリフォスファターゼ活性値は9ヵ月齢まで減少した。本実験で得られた成果は, 既報のラットの骨強度や組織形態計測学的に測定した単位骨量のピークが12ヵ月齢に認められた成果とほぼ一致した。
  • 清澤 岩水, 青木 誠, 今村 卓広, 内藤 惇, 斎藤 徹, 高橋 和明
    1993 年 42 巻 3 号 p. 357-361
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    成熟Slc: Wistar/ST系雄ラット68匹 (体重259.9-298.0g) の脳硬膜上からの視覚誘発電位を測定した。関電極装着部位は頭頂骨部の, Bregmaに近いポイントA, Bより後頭骨近くのポイントG, Hまでの8ヵ所とし, 鼻先部に不関電極を, 左後耳介部にアース電極を装着した。各部位とも, 頂点潜時が45msec前後の大きな陰性波 (頂点N1) , 75msec前後の大きな陽性波 (頂点P) および120msec前後の大きな陰性波 (頂点N2) がそれぞれ観察されたが, ポイントAおよびBではN2頂点の判定が困難な個体があった。N1, PおよびN2頂点潜時については有意差が認められた部位もあったが, ポイントAおよびB以外に測定に不適と思われる部位はみられなかった。Nl-P頂点振幅は, 左上丘視覚神経層上が他の部位に比較して著しく大きかった。以上の結果より, ラットの脳硬膜上での視覚誘発電位の測定部位としては上丘視覚神経層上 (BregmaよりLambdoidal point方向に7.0mmにて矢状面より3.0mm左の部位) にて電位が最大振幅を示すことから, 同部位に電極を設置すれば視覚機能の異常が鋭敏に検出できるものと思われた。
  • 後藤 一雄, 伊藤 豊志雄, 江袋 進, 鍵山 直子, 原澤 亮
    1993 年 42 巻 3 号 p. 363-369
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    (財) 実験動物中央研究所において生産, 維持されている実験用スンクスから分離されたマイコプラズマ5株の性状を, これまでに報告されているスンクス由来のマイコプラズマ株 (G3-5) および齧歯類由来のマイコプラズマ (M. pulmonis m53, M. arthritidis PG6, M. neurolyticum TypeA) と比較した。今回分離された5株はいずれもブドウ糖を分解し, アルギニンおよび尿素非分解, 孔径450-nmの濾過膜通過性, ジギトニン感受性であり, 寒天培地上のコロニーの直径は115~231μmであった。また, (i) 代謝阻止試験, (ii) SDS-PAGE, ウェスタンプロッティングによるタンパク分析, および (iii) 制限酵素によるDNA分析の結果, これら5株はG3-5株と同様の結果を示したが, 齧歯類由来のマイコプラズマとは明確な差異が観察された。さらに, 我々の施設で生産, 維持されている, 2週齢から45週齢のスンクス56匹のマイコプラズマ汚染調査では全例の口腔からマイコプラズマが分離された。しかし, これらのうち5匹の病理学的検索では呼吸器等に病変は見出されなかった。また, マウス, ラットに対する感染性も認められなかったことから, 本株はスンクスに固有なマイコプラズマであることが示唆された。
  • 宮田 博規, 渡辺 洋二, 近藤 久義, 八神 健一, 佐藤 浩
    1993 年 42 巻 3 号 p. 371-376
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    マウス肺炎ウイルス (PVM) の感染把握を目的として, その特異抗体の定量を三種類の血清学的試験法 (二種の血球凝集抑制試験「HI」法並びに間接蛍光抗体法「IFA」) で吟味したところ, IFAが最も感度並びに特異性に関し優れていた。この結果, IFA法は動物実験施設等を対象とする小規模的なモニタリングの適用に実用性から選択肢の一つであることが確認された。この方法を使用して, 我が国の研究機関およびブリーダー由来の実験動物 (ラット, マウス, ハムスター, モルモット, ウサギ) の1, 280サンプルを対象として, PVMの感染流行の有無を血清学的方法により検索した。その結果, 実験動物の中で特にコンベンショナルラット (116/674; 17.2%) とSPFラット (60/200; 30.0%) で高率に抗体が検出された。また, コンベンショナルウサギにおいても低率ながら, 抗体陽性固体 (2/144; 1.4%) を認めた。しかしながら, ハムスターやマウスでは抗体陽性固体を検出することが出来なかった。これらの結果から, 我が国のコンベンショナルコロニーやSPFコロニーにも, 欧米同様PVM感染が存在し, 今後SPFラット・マウスの検査項目として全ブリーダーでとりあげる必要性が示唆された。
  • 久世 博, 岡庭 梓
    1993 年 42 巻 3 号 p. 377-382
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    9匹の新生児ビーグルを用いて, 生後から16周齢まで, ABRを経時的に記録し, その発達をみた。I, IIおよびIII波は13日齢から17日齢にかけて, IV波は13日齢から20日齢にかけて, また, V波はやや遅れて20日齢から35日齢にかけて現われた。I波の頂点潜時は3週齢以降, II, IIIおよびIV波のそれは6週齢以降, 一方, V波は8週齢以降は殆ど変化なかった。頂点間潜時はI-III波間潜時が4週齢以降安定したのに対し, I-VおよびIII-V波間潜時は8週齢から10週齢と安定が遅れた。各波の電位には固体差が大きかったが, I波は3週齢, II, IIIおよびIV波は6週齢にはプラトーに達した。10週齢以降はABR波形に変化はなかった。以上, 電気生理学的所見からビーグルにおける末梢性の聴覚伝導路の発育は生後3週齢に, また, 脳幹における聴覚中継系は10週齢にはほぼ成熟するものと結論された。
  • 岩田 聖, 萩原 孝, 加藤 睦美, 山本 早苗, 山川 誠己, 志賀 敦史, 廣内 康彦, 小林 和雄, 井上 博之, 榎本 眞
    1993 年 42 巻 3 号 p. 383-396
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    過去9年間に我々のセンターで行われたFischer 344/DuCrjラットおよびB6C3F1マウスを使用した亜急性毒性試験あるいは発癌性試験の対照群の臓器重量および肉眼所見を集積, 解析した。平均臓器重量では, ラット, マウスともに肝臓, 腎臓, 脾臓, 肺が加齢とともに増加した。発生数の多い肉眼所見として両動物とも胸腺の萎縮, 脾臓の肥大, 子宮の内腔拡張, 卵巣の嚢胞が観察された。その他観察された肉眼所見としては, ラットでは雌雄に腎臓の表面粗〓化, 下垂体の肥大/結節, 皮下の塊などが, 雄では精巣の多発性白色斑や肥大, 萎縮, 精嚢や前立腺の萎縮, 膵臓の結節が, 雌では肝臓の奇形結節が多くの例に認められた。また, マウスでは雌雄の肝臓の結節, 肺の結節, リンパ節の肥大, 雄の包皮腺の結節などが多くの例に認められた。以上の所見のいくつかは雌雄差が認められた。これらの背景データは, 長期毒性試験や発癌性試験における臓器重量や剖検時の肉眼所見の解析に有用である。
  • 山本 利男, 各務 進, 額田 久雄, 井上 博之
    1993 年 42 巻 3 号 p. 397-404
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Slc: B6C3F1マウスを用い, (財) 食品農医薬品安全性評価センターで最近5年間におこなった長期毒性試験や発癌性試験 (雄: 11試験, 雌: 12試験) の対照群動物の死亡率, 体重, 摂餌量, 摂水量および一般状態のデータを集計した。その結果, 83および109週齢時の生存率は雄で96.4% (最小: 94.0%, 最大: 100%) , 79.0% (最小: 74.0%, 最大: 86.0%) , 雌で98.7% (最小: 96.0%, 最大: 100%) , 81.7% (最小: 70.0%, 最大: 90.0%) であった。
    平均体重の最大値は雄で45.1±3.1g (平均±標準偏差) , 雌で39.2±4.1g (平均±標準偏差) であり, それらは雄で72.7±4.3週齢 (平均±標準偏差) , 雌で76.2±5.9週齢 (平均±標準偏差) であった。一般状態では特に生後84週齢以降で雌雄とも加齢に伴う所見が観察され, 痩削, 立毛および腹腔内の腫瘤が高い出現率を示した。また, 切迫屠殺動物には体温低下と耳介の蒼白がもっともしばしば観察された。背景データは特に長期毒性試験の成績を評価および解析するに当たって非常に有用である。
  • 武下 政一, 芝谷 光治, 子林 孝司, 新比恵 啓志, 周参見 正行, 有行 史男
    1993 年 42 巻 3 号 p. 405-410
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    50kGy電子線照射滅菌飼料をラットに給餌し, 親ラットの生殖機能ならびに第一世代および第二世代の発生・発育に及ぼす影響を検討した.その結果, 電子線照射滅菌飼料群に特異的な変化は認められず, 今回用いた50kGy照射条件下では, 電子線滅菌飼料は既存のγ線照射滅菌飼料と同様, ラットの繁殖・育成用飼料として使用可能と判断された。
  • 及川 寿浩, 島村 和位, 斎藤 徹, 谷口 和之
    1993 年 42 巻 3 号 p. 411-419
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    食虫目であるスンクスの鋤鼻器の微細構造を観察し, 比較解剖学的観点から考察を加えた。スンクスの鋤鼻器は鼻中隔基部に横たわる全長約6mmの一対の管状構造で, 吻側端では小孔によって鼻腔に開口し, 尾側では盲端に終わっていた。鋤鼻器管腔の内側壁は感覚細胞, 支持細胞, 基底細胞より成る感覚上皮で被われるのに対し, 外側壁を覆う呼吸上皮は微絨毛に被われた多列上皮であった。ヤコブソン腺は鋤鼻器の背外側部から腹外側部に分布し, 感覚上皮と呼吸上皮の移行部で鋤鼻器管腔内に開口していた。その分泌物はPAS陽性, アルシアンプルー陰性であった。微細構造的には感覚上皮の感覚細胞は双極性ニューロンの形態を呈し, 遊離縁を著しく長い微絨毛で被われていた。それ以外の感覚細胞, 支持細胞, および基底細胞の微細構造は, 他の動物種で従来報告された所見とほぼ同様であった。呼吸上皮の微細構造も, 自由縁が線毛でなく微絨毛で被われていることを除けば, 従来の所見とほぼ同様であった。また, 感覚上皮および呼吸上皮内にはしばしば各種の遊走細胞が観察された。一方, ヤコブソン腺の腺細胞は円形ないし楕円形の核を有し, 細胞質内には直径約1, 000nmの大型の分泌顆粒を多数含み, 粗面小胞体, ゴルジ装置などがよく発達していた。スンクス鋤鼻器感覚上皮の特徴である著しく長い微絨毛は, 系統発生の途上で鋤鼻器の全長が短縮したため, 減少した感覚上皮の表面積を代償的に補うために発達したものと考えられた。
  • 増田 豊, 松田 幸久, 菱川 泰夫
    1993 年 42 巻 3 号 p. 421-425
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    受動的回避反応実験装置の暗室内で電撃を与えられたddYマウスのうちには, 暗室を回避する行動をとるものと, 容易に暗室内に入るものがみられた。後者には電撃に対する学習障害があると考えられる。回避反応陽性マウスのIgGを腹腔内に注射することによって, 回避反応陰性マウスは電撃を与えられた後には暗室への入室潜時は増大し, 回避反応陽性マウスと同様な行動パターンを示すようになった。また, 回避反応陰性マウスのIgGの糖鎖構造は回避反応陽性マウスと異なっていることが, レクチンを用いたELISA法により示された。このことは, IgGの糖鎖構造がddYマウスの学習機能に影響を与えていることを示している。
  • 小守 忍, 斎藤 徹, 梅田 昌樹, 杉山 公宏, 高橋 和明, 谷口 和之
    1993 年 42 巻 3 号 p. 427-434
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    成熟した雌雄スンクスのじゃ香腺について, レクチン組織化学的に検討した。組織学的には, じゃ香腺は分岐又は不分岐単一管状胞状腺の集合から成る全分泌腺で, 雌雄差は認められず, 周辺部深層にはアポクリン汗腺様構造を示す汗腺 (以下汗腺とする) が付属していた。じゃ香腺の終末部では, 基底側から管腔側へ, 未成熟細胞, 成熟細胞, 変性細胞が認められた。導管は重層立方上皮より成っていた。レクチン組織化学的にはConA, PNA, RCAI, SBA, UEA-I, DBA, WGAの7種のレクチンを用い, じゃ香腺, 汗腺, ならびにその周辺部皮膚の皮脂腺に対する反応性を比較検討した。じゃ香腺ではWGA, PNAは終末部より導管に強い反応を示した。また, 各種のレクチンで終末部, 導管ともに基底側より腺腔側の細胞に強い反応を示す傾向が認められた。汗腺および皮脂腺では, 各種レクチンに対する反応性が互いに, また, じゃ香腺とも異なるため, じゃ香腺, 汗腺, 皮脂腺は互いに異なる種類の細胞によって構成されており, その分泌物の性状も互いに異なることが示唆された。
  • 吉田 高志, 清水 利行, 長 文昭, 後藤 信男
    1993 年 42 巻 3 号 p. 435-441
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    筑波医学実験用霊長類センターにおいて, ケージ内繁殖・育成方式によって出生したカニクイザルの生体各部位の縦断的計測値にアロメトリー式を適用し, 本種の形態学的成長について解析を行なった。計測は, 頭部, 体幹部ならびに四肢の長さに係わる14部位で実施した。計測値を対数変換し, 基準となるXに前胴長をとり, 同一個体のほかの計測部位の値をYとして対応させ, 直線回帰分析を行なった。回帰式の適合度を決定係数 (R2) の値により判断し, 直線の勾配 (相対成長係数; α) を算出した。雌の場合, すべての計測項目が単相アロメトリーであると判断された。他方, 雄の場合は, 最大頭長, 最大頭幅および形態学上顔高では変移点のある2相アロメトリーであると判断された。また形態学顔高, 上腕長, 前腕長でも2相性の傾向が認められた。他の計測項目では, 雌の場合と同じ単相アロメトリーと判断された。雌雄ともに, 前胴長の成長に対して劣成長を示したものは, 最大頭長, 最大頭幅, 形態学顔高, 全頭高, 肩峰幅, 手長, 足長であり, 他の計測項目は, ほぼ等成長であった。またαは, 骨盤幅を除いて, 雄の方が雌よりも大きな値を呈した。このような雌雄での成長様式のちがいが, カニクイザルの体型の性差をもたらすものと判断される。
  • 久野 博司, 花見 正幸, 秋元 倫代, 藤井 孝朗, 臼居 敏仁
    1993 年 42 巻 3 号 p. 443-449
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    妊娠9日のCRJ: CDラットに軟X線を1.6, 3.2, 6.3または12.6Gyの線量で照射し, 生後3または5週齢のF1産児の眼科学的な異常を倒像検眼鏡および細隙燈顕微鏡を用いて検査した。3.2, 6.3または12.6Gyの線量で照射したF1産児の観察において, 小眼球症, 無眼球症, 虹彩のコロボーマおよび脈絡膜のコロボーマが観察された。12.6Gyの線量では, さらに水晶体脱臼, 硝子体脱臼および網膜血管の欠損が認められた。網膜血管の欠損は, 組織学的に網膜血管の無形成と診断された。外形観察で観察することができない水晶体および硝子体の脱臼, 網膜血管の欠損および脈絡膜のコロボーマが細隙燈顕微鏡あるいは倒像顕微鏡により観察されたことは, 生殖毒性試験の生後観察としてこれら眼科学的検査の有用性が強く示唆された。
  • 外尾 亮治, 斎藤 徹, 高橋 和明
    1993 年 42 巻 3 号 p. 451-455
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    我々は各種実験動物の性行動を明らかにすると共に, その加齢性変化を検討するための適切な実験動物を選定する目的でゲッ歯目 (マウス, ラット, シリアンハムスター, ハタネズミ, モルモット) , 重歯目 (ウサギ) および食虫目 (スンクス) などの性行動を観察した。その結果, 各種実験動物における交尾行動パターンには差異が観察された。特に, 射精回数において顕著であった。一定時間内の射精回数が多い実験動物としてハムスター, ラットが存在し, 30分間の観察で約3回の射精を認めた。これに対してマウス (IVCS系) の射精は10時間の観察において1回のみであり, まれに2回見られることもあった。ラット, ハムスターでは数分以内に挿入が出現し, 射精に至る潜時は10分以内であった。また, 雌においてロードシスおよび勧誘行動の両方を示した動物はラットのみであった。以上の成績より, 各種実験動物の交尾行動パターンの差異が明らかとなり, 性行動の加齢性変化を追求する実験動物としては, ラットが適切であると考えられた。
  • 山田 隆, 栗原 明義, 西山 勤, 内田 英男
    1993 年 42 巻 3 号 p. 457-461
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    アリザリン・レッドSにより既に染色されているラットの胎児骨格標本に対し, 更に, その軟骨部に染色を加えることのできる簡便なブロムフェノール・プルー (BPB) 染色法の応用について検討した。この染色によって, アリザリン・レッドS染色だけでは観察しにくかった胎児の軟骨部の異常および未骨化尾椎の観察が容易になった。即ち, BPB染色により判別困難な肋軟骨異常は分岐肋骨として, また, 軟骨を含めた尾椎は成熟と同数の尾椎数として観察された。このBPB染色は標本をpH4に調整しなければならないが, 染色された標本はpH8の水あるいはエタノールによって, アリザリン・レッドS色を落とすことなく容易に脱色できる特色がある。
  • 梶原 典子, 杉山 文博, 後藤 陽子, 杉山 芳宏, 深水 昭吉, 上原 小百合, 杉村 圭一, 村上 和雄, 外尾 亮治, 赤堀 文昭, ...
    1993 年 42 巻 3 号 p. 463-466
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    生産ファームで準備した後, 研究機関に輸送したドナーとレシピエントラットを用いてトランスジェニックラットの作成を行った。導入遺伝子としてラットレニンプロモーター部位とクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードした部位を連結させた1.9Kbの直鎖の融合遺伝子を用いた。過排卵後採取選抜された539個の前核期卵に外来遺伝子を顕微注入し, 2細胞期に発育した117個の胚を偽妊娠0日齢のレシピエントラットに移植した。得られた67匹の新生児のうち3週齢まで発育した55匹の尾部よりゲノムDNAを抽出し, PCR法により導入遺伝子の検索を行った。その結果, 本作成システムにより6匹のトランスジェニックラットが得られた。
  • 安斎 政幸, 中潟 直己, 松本 和也, 高橋 明男, 高橋 由美, 宮田 堅司
    1993 年 42 巻 3 号 p. 467-470
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    当研究室で作製したトランスジェニックマウスの系統保存を量的に, 既に確立されている超急速凍結法を用いて2種類のトランスジェニックマウス (ラット成長ホルモン・アンチセンス遺伝子が導入されたトランスジェニックマウスおよびホタル・ルシフェラーゼ遺伝子が導入されたマウス) 由来の初期胚の凍結保存を行った。導入遺伝子をヘミ接合に持つ雄マウス精子を用いた体外受精によって得られた2細胞期胚の凍結融解後の生存率は, 双方とも70%以上と高率であり, さらに移植後の新生児への発生率は前者で53%, 後者で16%であった。また, 産児の尾部組織より抽出したDNAをサザンプロッティング解析で調べたところ, いずれも約40%の個体に外来遺伝子の伝達が認められた。以上のことから, 超急速凍結法によるトランスジェニックマウス由来初期胚の凍結が可能であることが示された。
  • 新井 敏郎, 渡辺 利彦, 浜田 茂, 菅原 盛幸
    1993 年 42 巻 3 号 p. 471-473
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    草食性ハタネズミとC57BL/6Jマウスの赤血球および諸組織におけるグルタチオンペルオキシダーゼ (GSH-Px) 活性を比較検討した。ハタネズミ, マウスともに, 肝臓, 腎臓, 赤血球のGSH-Px活性が, 脂肪組織, 膵臓, 骨格筋に比較して高かった。また, ハタネズミのGSH-Px活性は, 肝臓, 腎臓, 赤血球および脳で, マウスに比べ低い値を示した。
  • 田中 愼, 佐々木 文彦, 東條 英昭, 松沢 昭雄
    1993 年 42 巻 3 号 p. 475-479
    発行日: 1993/07/01
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ヒト成長ホルモン (hGH) 遺伝子を導入して作出されたトランスジェニック (Tg) マウスの腺性下垂体を, 免疫組織学的手法で検索した。GH陽性細胞は全く検出されず, このTgマウスで高濃度に検出されたhGHは下垂体以外の器官に由来することが明らかとなった。ACTH陽性細胞の分布様式と数に大きな変化は認められず, 前に束状層細胞の所見から推定した状態と一致した。一方PRL陽性細胞は多数検出された。これは報告されている結果と一致しないので, 確認のため卵巣を組織学的に検索したところ変性途上の黄体が存在し, 卵胞はほぼ正常であった。間質には大きな明るい細胞が集団を形成していた。不妊と高hGHを示し, 同一ラインに由来していても今回のTgマウス間では卵巣の組織学的所見に相当個体差のあることが判明した。
  • 1993 年 42 巻 3 号 p. e1
    発行日: 1993年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
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