自然発症性糖尿病好発WBN/Kob系雄ラットの加齢に伴う網膜の変化を病理組織学的に検討した。Wistar/ST系雄ラットを対照とし, 1, 2, 3, 5, 9, 13, 17, 23, 27, 36, 45, 54, 67および80週齢時に各5匹, 10眼ずつの眼球切片を作製し, 網膜中央部および周辺部の変化を検討した。WBN/Kob系ラットの網膜では, 杆状体・錐状体層の発達が悪く, 最厚期の比較でも対照の71.7% (中央部) および59.3% (周辺部) であった。5から45週齢頃より, 網膜中央部および周辺部では杆状体・錐状体層, 外顆粒層および外網状層が加齢に伴って菲薄化し, 中央部では, 内網状層にも認められた。そして, 層の菲薄化に伴って細胞核数も減少し, 網膜全体も菲薄化した。菲薄化した細胞層では, 構成細胞の消失のみが認められた。また, 杆状体・錐状体層の菲薄化は網膜周辺部にやや強く観察された。杆状体・錐状体層の生後の発達は悪いが, 他の細胞層の発育は正常であること, 視細胞に初期変化が表れること, 生後5週齢より杆状体・錐状体層の菲薄化がみられ始め, 加齢に伴って緩徐な菲薄化がみられること, 菲薄化は周辺部でやや強いこと等から, WBN/Kob系ラットの網膜変性はrdsマウスの網膜変性症に類似しており, 網膜変性症の疾患モデルの一つとして有用であることが示唆された。
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