ファルマシア
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50 巻, 12 号
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目次
  • 2014 年 50 巻 12 号 p. 1182-1183
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    特集:ファルマシア創刊50年記念
    特集にあたって:「ファルマシア」は1965年4月5日に創刊された.以来50年間毎月,会員のもとに本誌は届けられてきたが,どのような存在であったろうか.サイエンスとしての薬学をはじめ,薬学教育,関連医療分野など様々な「薬学」の分野について会員がよりよく知り,より深く考えあうための場として「ファルマシア」は誕生し,ここに至っている.本特集では,読者と編集関係者それぞれにとってファルマシアはどのような存在であったか,また「薬学」がこれからの50年に向けて何を目指すのか,を自由に語っていただいた.半世紀の「ファルマシア」の軌跡を振り返りつつ,将来の「薬学」を考える場になれば幸いである.
    表紙の説明:龍は想像上の動物であるが,仏法の守護神とされている.寺院の法堂の天井に龍が描かれるのはそのためである.ファルマシアの行く末を見守り,ファルマシアが龍の如く未来に向かって自在に飛翔してほしいとの願いを込めて,表紙を龍の図柄にした.これまでに使われたファルマシアの表紙を龍の鱗に見立てて,帝京平成大学薬学部の平郁子氏にデザインしていただいた.
グラビア
オピニオン
  • 柴﨑 正勝
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1181
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    医薬品の開発から適正使用までに関する情報を発信し続けている「ファルマシア創刊50年」を一薬学人として,又日本薬学会会頭として心からお祝い申し上げます.ファルマシアは,1965年4月より宮木高明委員長のもとに創刊されたと理解しています.出発点を築かれた宮木高明先生をはじめ,編集委員の御努力はいかばかりであったかと,頭が下がる思いです.創刊に至るまでの経緯等は,当時大学一年生であり,まだ薬学部進学も決めていなかった私には知るすべもありません.ただし,その時期の日本の状況はかなり正確に記すことができます.1965年4月は日本が待ちに待ったオリンピックが開催された直後でした.今回の創刊50年も2回目の東京オリンピックが決定していることを考えますと,なにか運命的なものを感じます.当時の日本の産業は,重化学工業(繊維産業も含む)が中心であり,製薬産業の社会的位置づけもそれ程高いものではありませんでした.大学進学も「花の工学部」全盛時代でした.そのような状況下,薬学の世界では育薬についての積極的議論,問題解決能力の高い薬剤師を社会に輩出する等の議論もそれ程盛んでなかったはずです.その時代,宮木高明委員長と編集委員の方々は,言葉は異なっていたはずですが,育薬や高水準の薬剤師を出すことまで考えられて,ファルマシアを創刊されたと考えます.私事になりますが,30代前半の頃,私もファルマシアの編集委員を経験しています.委員の数は今程は多くなく,多くないがゆえに激論が交わされていた記憶が強く残っています.誤解を恐れずに申すなら,当時の委員の方々はややもすると特定の考えを持たれていたように思います.その後50代になり,ファルマシアの委員長も経験しました.若い時の委員の時代から20年以上が経過していました.この間におけるファルマシアの発展は想像を絶する程でありました.すなわち,日本薬学会が会頭以下,全理事がファルマシアを強力にサポートする体制が出来上がっていたからです.このことは,委員の構成メンバーからも明らかでありました.薬学の基礎研究者,医療の現場で活躍する薬剤師の方々,更には厚労省の官僚の方まで入っていました.大変嬉しい驚きであったと記憶しております.その当時までファルマシアは楽しく読み続けていましたが,特に内容のバランスが素晴らしくなっていると強く感じていました.このような編集体制が大きな影響を与えているのだとはっきり分かった次第です.平成26年の現在,ファルマシアは学会の機関誌として日本最高の水準にあると確信しています.私が委員長時代にファルマシアに欠けていることを考えました.アメリカ化学会の機関誌等と比較すると,内容では劣っていないものの,ややもすると記事のスピード感に問題があると考えました.そこで「Editor's Eye」を新たに設けた次第です.
    最近のファルマシア委員会の様子は,会頭という立場でよく耳にします.会頭として真に頭が下がる御努力を委員長以下各委員の先生がされていることが分かります.その御努力が素晴らしいファルマシアにつながっているのです.「ファルマシア創刊100年」時には,私は117歳になっています.そのファルマシアを読むことは不可能ですが,ますますの発展をお祈り致します.今年誕生の赤ちゃん達が50歳になって,まさに社会をけん引しているはずです.
Editor's Eye
ベランダ
創刊号復刻記事
資料
ファルマシア50年を振り返って
50年後の薬学
  • 鎌滝 哲也
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1210-1212
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    著者のような,既に定年退官した「老人」が50年後の予測をするのは如何なものかと思う.本来,未来予測は最先端の知識を持った若者の特権だと思うからである.50年後まで私が生きているとは思えない.著者の未来予測が当たっているかどうかは,著者が死んだ後になって評価されるのだから間違っていても責められることは絶対にない.その点は気が楽というものである.
  • 佐藤 陽治
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1213-1215
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    「再生医療」という言葉はここ数年,世間にずいぶん浸透した.iPS細胞(人工多能性幹細胞)がノーベル賞関連で脚光を浴びる一方で,STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)の一連のニュースがあるなど,良かれ悪しかれ,マスコミの科学欄で頻繁に取り上げられている.社会的な期待も高い.私はこのような状況を見るにつけ,「再生医療」が言葉だけのブームに終わらぬようにと祈るような気持ちを抱く.なぜなら我が国には,革新的な医療・医薬品等の実用化に関し,非常に苦い経験があるからである.
  • 福山 透
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1216-1217
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    「50年後の薬学」に有機化学はどのような貢献をするだろうかと考えるにあたり,現在66歳になったばかりの私が50年後に生存している可能性は限りなく低いので,あとは野となれ山となれという気分で水晶玉を覗いてみよう.医薬品の大部分は有機化合物であり,近年その存在感が増しているバイオ医薬も有機化合物には違いない.合成医薬であろうがバイオ医薬であろうが,50年後にはその製造法が大きな変革を遂げていることだろう.私の専門は有機合成化学であるので,ここでは合成医薬について考えさせていただく.
  • 寺尾 允男
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1218-1219
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    過去50年をふり返ると,我が国は様々な悲惨な薬害を経験している.代表的な薬害事件の例を表1に示す.このような薬害が起きた原因を検証すると,副作用に対する監視や対応の遅れ,制度の不備や医薬品の不適正使用などによることが明らかであり,薬の安全性に対する監視が十分に行われ,製薬企業,行政,医療機関の関係者が被害の発生の初期に気付き,迅速・的確に対応していれば,被害者を最少に抑えることができたと思われる.
  • ベンチャー企業
    藤田 芳司
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1220-1221
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    医薬品開発で大切なことは,製品が世の中に出る頃に世界市場がどのように変貌するか予測することである.世界の医薬品市場約90兆円を疾患別に眺めると,2015年時点で,がん領域(急拡大:8兆円),呼吸器系疾患(喘息・COPD)および糖尿病(微増:各4兆円),高血圧(変化なし:3兆円),高脂血症(縮小:3兆円)と推定されている.日米欧の医薬品市場は既に飽和状態で,今後の市場拡大はない.先進国のブランド薬市場規模を維持してきたのがアンメット・ニーズの高額医薬品である.一方,中国やインドなどの発展途上国では,安価な大衆薬やジェネリック薬が原動力となって市場が急拡大している.過去20年間に膨大な数の主要医薬品が安価なジェネリック薬に置き換わった.さらに,13兆円以上ものブランド薬の特許が切れる「2015年問題」が迫っている.代表的なバイオ医薬品4品目の累積売上高をみると,リツキサン(6兆円),ハーセプチン(4.6兆円),アバスチン(4.3兆円),アービタックス(1.4兆円)と,総額約17兆円にも上る.なかでもバイオ医薬品のジェネリック薬(バイオシミラー)が注目される.
    多くの製薬企業は,ジェネリック薬が充実した疾患の創薬研究から撤退する動きを加速させている.製薬企業が疾患領域を絞り込めば,ベンチャー企業が導出した化合物が突然開発中止になり,経営基盤が揺らぐ.企業の大規模吸収合併(M&A)が起これば,通常100個以上の開発化合物の優先順位が下がるか不要となって ”For Sale”になる.メガファーマが放出するパイプラインと同じ作用メカニズムの化合物を持つベンチャー企業は導出するのに苦労する.今後求められる薬を知るには世界の臨床試験数を調べるといい.①腫瘍(4,840),②中枢性疾患(2,000),③感染症(1,920),④自己免疫疾患(1,100),⑤代謝性疾患(1,060),⑥呼吸器系疾患(650),⑦循環器系疾患(630)などに集中している.がん,アルツハイマー病,パーキンソン病,HIV,自己免疫疾患,稀少病などに創薬対象がシフトしていることが分かる.
    資金が潤沢でないベンチャー企業にとって,抗体医薬品は大きなビジネスチャンスといえる.2013年度の抗体医薬品のライセンス契約を研究開発ステージ別に見ると,探索研究(22件),非臨床研究(20件),第I 相および第Ⅱ相臨床試験(各6件),第Ⅲ相臨床試験(2件)である.低分子医薬品の場合,第Ⅱ相臨床試験で有効性が検証されてから導出交渉の対象となるため資金集めに苦労する.一方,抗体医薬品は多額の費用を要する臨床試験なしに研究初期段階で導出できる.さらにライセンス契約金は,低分子医薬品では想像できないほど巨額である.例えば,2008年設立の CytoX 社は2013年にファイザーとの共同研究でアップフロントフィー25億円およびマイルストーンフィー610億円で契約した.2014年にはブリストルマイヤーズ・スクイブと4品目の共同研究でアップフロントフィー50億円とマイルストーンフィー総額1,200億円で契約した.他の追随を許さない抗体作成技術を保有することが成功の鍵といえる.
    稀少病薬もベンチャー企業にとって注目すべき領域である.ありふれた病気が全世界で数百万人,数千万人以上の患者数がいるのに対し,稀少病の患者数は通常数万人以下である.稀少病は7,000種類以上ある.約400種類の新薬が承認されているが,わずか2%の稀少病をカバーしているにすぎない.患者数が少ないため開発コストの低い小規模臨床試験で承認申請できる.しかも稀少病であるので優先審査により短期間で承認されるメリットもある.創薬の宝庫といわれるゆえんである.ヨーロッパ27か国だけでも稀少病患者は総人口の約6%(2,600万人)もいる.しかし高額の稀少病薬が急増すれば,将来医療費抑制の影響を受けるリスクがある.
    稀少病と関連するのがドラッグ・リポジショニング(リプロファイリング)である.臨床試験で開発中断になる新規化合物は年間150~200個あり,今までに2,000個以上の化合物が有効活用できずに眠っている.安全性データがあるので新規適応症を探せば開発期間は短くて済む.アメリカ国立衛生研究所は10社以上のメガファーマと連携して,開発中断された化合物から新しい適応症を探索するプロジェクトを開始した.これからの創薬手法の1つといえる.
  • 日本の製薬企業の行方
    谷田 清一
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1222-1224
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    薬づくりの世界は,企業再編の熱がいまだ冷めやらない.他方でオープンイノベーションに活路を見いだす動きが勢いを増し,アカデミアとの連携が加速する.かつての自前主義は影を潜め,企業とアカデミアが萌芽期から併走して新薬を目指す戦略が熱を帯びる.
    筆者は,(独)科学技術振興機構(Japan Science and Technology Agency:JST)の産学連携・技術移転事業の一部に外部メンバーの1人として加わり,アカデミアのシーズに発する薬づくりを10年近く眺めてきた.本稿では,その経験を起点にこの国の医薬品産業の現状と未来を考えてみたい.
  • 専門薬剤師
    望月 眞弓
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1225-1227
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    「調剤」は薬剤師の最も基本的な任務であり,ごく一部の例外を除いて専権事項である.堀岡の分類によれば,調剤学は今から50年前に「調剤の新しい概念と学問体系の確立の時代」がスタートし現在に至っている.それまで調剤が医薬品の正しい供給に焦点が当てられていたのに対して,1965年日本薬学会のドラッグインフォメーションのシンポジウムをきっかけに,薬剤師が頭を使って調剤する(情報を活用する)ことが求められ始めた.そして,60年代に米国で誕生したクリニカルファーマシーの影響とも相まって,80年代に入ると医薬品情報を基盤とした患者指向の調剤,服薬指導,治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)などの業務が注目されるようになった.この新しい潮流は,1988年の入院調剤技術基本料(医薬品情報室の設置,病棟での服薬指導と薬歴管理など)の新設をきっかけに全国に瞬く間に広まった.病院内でのチーム医療への薬剤師の参画も進んだ.薬剤師はもはや単なる調剤に長けた技術者というだけではだめで,医薬品情報や患者情報を的確に把握・理解し,患者に対する薬物療法の最適化を支援する医薬品の専門家でなければならなくなった.
    続く90年代は病院から薬局へと新しい調剤概念が広まった時代である.分業率は10%台から30%台まで増加し,薬局でも薬歴管理や服薬指導が行われるようになった.こうした薬剤師業務の変化を受けて2006年には薬学教育6年制が始まった.一方,2010年の厚生労働省「チーム医療の推進について」の報告書では,薬剤師が実施できるにもかかわらず薬剤師を活用できていない業務として,医師との事前に合意されたプロトコールに基づく処方変更や検査オーダーの実施,積極的な処方の提案などが挙げられ,薬学的介入のあるべき姿が明確化された.さらに2012年にはこれらを後押しするかのように病棟薬剤業務実施加算が認められ,薬剤師は病棟で,処方前から処方後まで薬物療法の専門家として深くかかわるようになった.こうした薬剤師業務の変遷は,医療の高度化,専門化,そして患者ニーズの変化などを反映しているものであるが,近年はさらに各種の領域の専門性の高い薬剤師が求められ,様々な専門薬剤師や認定薬剤師が誕生している.
  • 薬剤師のこれまでとこれから
    平井 みどり
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1228-1229
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    筆者の幼少時,国民皆保険が始まっていない頃は,プライマリ・ケアの担い手は各家庭の「配置薬」とご近所の「薬局」であった.つい最近まで自宅の近所にあった薬局は,店舗の外に床ぎが置かれ,そこは近所のご老体がお茶(薬草茶?)を飲みながら,健康談議・病気自慢にふけるコミュニティスペースであった.その中での薬剤師の役割は,もちろん薬を出すことも薬の相談を受けることもあるだろうが,健康維持のための情報提供や,地域住民の集う場所を提供する,地域医療機関の開設者としての機能を持っていたはずである.
    国民皆保険が整備され,医薬分業が進展し,薬局は地域のコミュニティスペースから,処方せん調剤を中心とした治療に特化する施設となって現在に至っている.薬剤師は「薬物の適正使用」に責任を持つことを主眼に治療にかかわっているが,もともと薬局が備えていた地域住民へのサービス・教育的機能は,直接治療にかかわらないものとして,脇に置かれている感は否めない.
  • 松木 則夫
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1230-1231
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    現在は薬学教育の過渡期で薬学や薬剤師を取り巻く環境が大きく変わりつつあり,近い将来の予測も難しい状況であるが,本稿では,将来の医療環境と薬学教育を予想し,それに向かって我々が今取り組むべきことについて私的見解を述べる.
  • 臨床薬学
    伊藤 智夫
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1232-1233
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    この原稿依頼を受けたとき,まず50年前の日本を考え,東京オリンピックが開催された年であることを思い出した.当時はカラーテレビが普及し始めた頃であったが自宅は白黒テレビだったし,また我が家には電話がなく,近くの家で電話を借りていたことを覚えている.現在は4Kテレビが普及し始め,個人がスマートフォンを持っていることを考えると隔世の感がある.一方,当時は1ドル360円の時代で海外旅行は夢のまた夢であり,「兼高かおる世界の旅」を羨ましく思いながら見ていた.今では学生でも気軽に海外旅行をしているが,50年前には想像できなかったことである.ところで,19世紀は化学の世紀,20世紀は物理学の世紀,そして21世紀は生命科学の世紀と呼ばれている.今世紀は脳科学の時代,あるいはロボット科学の時代とも言われる.以上を踏まえて,50年後の薬学教育を考えてみたい.
  • 医療者教育
    福島 統
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1234-1236
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    「50年後の薬学」という言葉で最初にイメージしたのは,薬のない世界である.医療を取り巻く環境はものすごいスピードで変化している.知識の増加だけではなく,社会規範も激変している.30数年前,私が医学生であった時,非配偶者間人工授精が行われて,体外人工授精も試みられようとしていた.当時の私はこの生殖医学の進歩を「神をも恐れぬ行為」だと感じていた.しかし,今ではそんな感覚はない.不妊症の患者さんの心の問題を考えれば,生殖医療は確実に進むべきと考えている.これからの医療はどこに行くのであろうか.多分,その答えを持っている人はだれ一人いないのであろう.
    歴史をひも解くと,西洋医学は明治時代に導入され,当時の国策に従って「富国強兵」政策とともに発展してきた.戦場で傷ついた兵士を,病気になった工場労働者をどれだけ早く仕事場に復帰させるかに焦点が当てられていた.今の少子高齢化の世界では,そしてこれからの未知の世界では,どんな医療をだれが,どのような分担で行うのだろうか.全く先の見えない世界が到来するのである.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1247-1251
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    このコラムでは既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,50巻10号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
新薬のプロフィル
数式なしの統計のお話
  • なぜ日本で生物統計家が少ないのか?
    酒井 弘憲
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1240-1241
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    あっという間に1年が過ぎ去ろうとしている.隔月でこの連載を始めたのが2月号で,今回がいよいよ最終回である.読者の皆さんには,少しでも統計に親しみを持って頂けたであろうか?
    時期的に,ほぼ毎晩,忘年会という方もいらっしゃるだろう.懇意にさせていただいている某旧帝国大学医学部教授は,去年の12月は忘年会の付き合いだけで80万円も使っちゃったよ,とこぼしておられた.そこまで義理を立てずともよかろうと思うが,今年はどうであろうか?
    ところで,多くの人が,お店選びにインターネットやガイドブックを利用されていることと思うが,例えば,あるガイドブックを参考にあなたが利用したことのないレストランに行くことを仮定しよう.初めて入るレストランは美味しいか,否か?
    そのガイドブックは星の数でレストランをランク付けしていて,あなたが行こうとしているレストランには,3つ星がついているとしよう.しかし,ガイドブックの取材のときだけ上手く立ち回ってよい評価をつけてもらっている可能性も疑われ,ガイドブックで3つ星がついていても本当に美味しい店であるのはせいぜい4割の確率(A)とみて,6割はガイドブックの評価が誇張である確率(B)だと厳しめに考えることにする.あるレストランにフラリと入った場合,このガイドブックの評価通りに料理が美味しいという確率を8割(C)としておく(逆に評価が誇張でまずい料理を出す確率は2割).ガイドブックの評価は低いが料理は美味しいという場合もあるので,その確率を3割(D)とする(ガイドブックの評価も低くて,まずい料理を出す確率は7割).
    このガイドブックを参考にして入ったレストランの料理が美味しくてあなたは大満足したとすると,その確率は以下のように計算される(タイトルで“数式なし”と宣言しながら最後に数式を出して申し訳ない).
       A×C      0.4×0.8
    ——————=——————————=0.64
    (A×C)+(B×D) (0.4×0.8)+(0.6×0.3)
    もしも,行き当たりばったりでレストランに入ろうものならば,その店の料理が美味しいかどうかはハラハラ,ドキドキであろう.しかし,ガイドブックなどである程度の事前情報が分かっていれば,それなりに安心してそのレストランに入ることができる.
    上述の計算のように,このガイドブックに対する信頼性という意味での確率が0.4から0.64に上昇しているので,このガイドブックを参考にして,後日,別の3つ星評価のレストランに行き,美味しい料理が出てくれば,ガイドブックの評価に対する信頼性はさらに上がって
       0.64×0.8
    ———————————=0.83
    (0.64×0.8)+(0.36×0.3)
    になる.これなら安心してそのレストランに彼女をエスコートできるだろう.
    このように多くの人は経験(統計の世界では「事前確率」と呼ぶ)に基づき,修正を重ねた行動を取っているものである.厳密には正しい説明とは言えないのだが,このような考えをベースにしたものがベイズ流(ベイジアン)と呼ばれる統計手法であり,社会の様々な分野で活用されている.簡単に言うと,「未来を知ろうとすれば過去を振り返る必要がある」ということである.「21世紀はベイズの時代」として,2000年代にマイクロソフト社やグーグル社などが競って多くのベイズ統計家を囲い込もうとしたことは記憶に新しい.医薬の世界では許認可が絡むので,どうしても白か黒かをはっきりさせるために「検定」中心の頻度論が主流の考え方(平たく言えば,p値で0.05を超えるか超えないかだけを気にする)になっているが,実際の診療の現場を含め実生活では,事前情報に基づいた行動をしていることが多く,医薬品開発の世界でももっとベイズ的アプローチが使われてもよいと考える.
    ちなみにベイズのお墓は,ロンドンの金融街,シティの外れに苔むしてたたずんでいる.同所には,ロビンソン・クルーソーの作者ダニエル・デフォーの立派なお墓も建っている.
薬薬連携 つながる病院・薬局
  • 鷹野 理
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1237-1239
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    当院では,緩和ケアチームが介入した患者が退院し訪問医療に引き継いで在宅療養される際,チーム薬剤師が薬剤サマリーを作成し,在宅患者訪問薬剤管理指導で介入する保険調剤薬局に提供する取り組みを行っている.筆者は緩和ケアチーム立ち上げ時から活動に参加しているが,退院時の患者へのアプローチは薬剤師が行う通常の退院時指導に準じたものに収まっていた.
    しかし,入院中に提供した緩和ケアの意図を,在宅でかかわる薬剤師に理解いただいたうえでケアをつないでいきたいという思いから,サマリー提供の取り組みに至っている.こうした取り組みを継続する中で,サマリーの有用性を高めるために本取り組みを一度評価する必要があると考え,保険薬局へのアンケートを実施することとした.
家庭薬物語
製剤化のサイエンス
トピックス
  • 藤間 達哉
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1257
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    通常は不活性なC-H結合を直接的に官能基化する方法は,既存の合成デザインを根本から変えうる可能性を有しているため,精力的に研究が行われている.自然界は酵素の生み出す空間を巧みに利用し,多数あるC-H結合の選択的な酸化反応を実現している.近年,このような反応をフラスコの中で実現・制御する試みが注目を浴びている.今回,Du Boisらにより報告された有機触媒を用いるC-H酸化反応について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Newhouse T., Baran P. S., Angew. Chem. Int. Ed., 50, 3362-3374 (2011).
    2) Adams A. M., Du Bois J., Chem. Sci., 5, 656-659 (2014).
    3) Brodsky B. H., Du Bois J., J. Am. Chem. Soc., 127, 15391-15393 (2005).
    4) Litvinas N. D. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 48, 4513-4516 (2009).
  • 堀 浩一郎
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1258
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    製薬企業にとって化合物ライブラリー(以下,ライブラリー)は貴重な化合物ソースであり,リード化合物探索における生命線といえる.したがって,「製薬企業がどのような骨格シリーズをどの程度の規模で保有しているのか?」などのライブラリーに関する情報は,一般的には非公開である.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kogei T. et al., Drug Discov. Today, 18, 1014-1024 (2013).
    2) Cumming J. et al., Nature Rev. Drug. Discov., 12, 948-962 (2013).
    3) Pascolutti M. et al., Drug Discov. Today, 19, 215-221 (2014).
  • 梅原 薫
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1259
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    「顧みられない熱帯病(neglected tropical diseases:NTDs)」は,先進諸国でほとんど症例がないことや流行地域の所得水準から関心が払われてこなかった熱帯地域を中心に149か国でまん延し,10億人の罹患者が推定されるWHOが指定する17種の感染症を指す.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) World Health Organization, Second WHO report on neglected tropical diseases (2013).
    2) Ivens A. C. et al., Sciences, 309, 436-442 (2005).
    3) Ogunbe I. V. et al., J. Mol. Graph. Mod., 48, 105-117 (2014).
    4) Newman D. J. et al., J. Nat. Prod., 75, 311-315 (2012).
  • 大橋 良徳
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1260
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    日々新たな医薬品候補化合物が見いだされ,様々な剤形の医薬品へと仕上げられていく.臨床試験から申請を通じて,製剤開発に関する知識・経験を高め,得られた技術情報を体系化し,承認取得後の実生産へとつなげるのが企業製剤研究の役割の1つである.近年,製剤開発のガイドラインにおいて,『品質は製品になってから検証するものではなく,設計によって製品に組み込まれるべきもの(quality by design:QbD)』という考え方が通知されている.そのガイドラインの考え方からprocess analytical technology(PAT)ツールの使用が大きく進歩してきている.PATツールとは製造中の特性測定やその結果解析に使用するツール全般を指しており,代表的なものには近赤外分光分析法が知られている.これらは,製造工程中に各特性をモニターにすることより,最終製品になる前の段階で品質を担保するという目的達成の一助を担っている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知 「製剤開発に関するガイドライン」 , 平成18年9月1日.
    2) Reich G., Adv. Drug Deliv. Rev., 57, 1109-1143 (2005).
    3) Roggo Y. et al., J. Pharm. Biomed. Anal., 44, 683-700 (2007).
    4) Roβteuscher-Carl K. et al., Int. J. Pharm., 466, 31-37 (2014).
  • 中澤 瞳
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1261
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    私たち人間と同様に,マウスも初めて会った相手とそうでない相手を区別し,初めて会った相手に興味を持つことが以前から知られている.最近,遺伝子改変マウスの行動学的解析から,海馬のCA2領域が,この既知か新奇かを認識し,個体の違いを区別する社会性メモリーに非常に重要であるという興味深い報告がなされた.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hitti L. F., Siegelbaum A. S., Nature, 508, 88-92 (2014).
    2) Kohara K. et al., Nature Neurosci., 17, 269-279 (2014).
    3) Wintzer M. E. et al., J. Neurosci., 34, 3056-3066 (2014).
  • 中本 賀寿夫
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1262
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    microRNA(miRNA)はnon-cod‐ing RNAの一種で,多くの遺伝子やタンパク質の発現制御に関与している.これまでのmiRNA研究は細胞内のmiRNAが主な対象であったが,近年,エクソソーム(細胞小胞顆粒)中に包埋されたmiRNAが細胞間を移動し,情報伝達の媒介役として機能していることが明らかとなっている.さらに,miRNAは様々な疾患の病態や進行度合いなどによって,その発現量や種類が大きく変動することや細胞外miRNAが疾患時の循環血液中や脳脊髄液中で検出されることから,診断・治療のバイオマーカーとして期待されている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Bartel D. P., Cell, 116, 281-297 (2004).
    2) Lehmann S. M. et al., Nat. Neurosci., 15, 827-835 (2012).
    3) Liu T. et al., Nat. Neurosci., 13, 1460-1462 (2010).
    4) Zhao J. et al., J. Neurosci., 30, 10860-10871 (2010).
    5) Park C. K. et al., Neuron, 82, 47-54 (2014).
  • 戸次 加奈江
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1263
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    アリール炭化水素受容体(AhR)は,環境汚染物質であるダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類の受容体として働く転写因子である.AhRがリガンドと結合して活性化すると核内に移行し,そこでAhR nuclear translocator(ARNT)と結合する.このダイマーは異物応答配列(XRE)と呼ばれる特定の塩基配列に結合することにより,薬物代謝酵素CYP1A1をはじめとする様々な標的遺伝子の発現を誘導する.一方で,このようなAhRの反応経路(古典的経路)以外に,AhRの転写因子としての機能やARNTに依存しない,nongenomic pathwayと呼ばれる毒性経路の存在がMatsumuraによって示された.このAhRの反応経路では,炎症反応にかかわる様々な細胞内誘導される.このため,従来の古典的経路とは異なるnongenomic pathwayを介した新しいAhRの役割が明らかになってきた.さらに興味深いことに,培養細胞を用いた検討から,古典的経路の指標であるCYP1A1の誘導は曝露数時間後に減少してしまうのに対し,nongenomic pathwayに由来するCOX2等の誘導は72時間後でも増加しており,反応性の違いが見られている.したがって,nongenomic pathwayを介したAhRによる初期のシグナルが,持続的なシグナルに変換され,慢性的な炎症反応につながる可能性も示唆されている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Matsumura F., Biochem. Pharmacol., 77, 608-626 (2009).
    2) Dong B., Matsumura F., Mol. Endocrinol., 23, 549-558 (2009).
    3) Vogel C. F. A. et al., J. Biol. Chem., 289, 1866-1875 (2014).
    4) Fujisawa Y. et al., Biol. Chem. Soc., 392, 897-908 (2011).
  • 矢野 健太郎
    2014 年 50 巻 12 号 p. 1264
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    P-糖タンパク質(P-gp)は,様々な薬物を細胞外へ排出するトランスポーターである.P-gpの発現は,がん細胞に加えて,薬物の主要な吸収部位である小腸組織においても確認されており,その排出機能を抑え込むことでがん多剤耐性の克服や薬物の吸収改善を達成しようとする研究が盛んに行われている.現在までにP-gpが,エズリン,ラディキシンおよびモエシン(ezrin,radixin,moesin: ERM)と呼ばれる足場タンパク質を介してアクチンにつなぎとめられることによって,その膜上の発現が調節されていることが明らかになっている.本稿では,このERMタンパク質の活性化に伴うP-gpの細胞膜上発現量の増加と,その排出機能の上昇にかかわるメカニズムの一部を検討した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kobori T. et al., J. Pharm. Sci., 103, 743-751 (2013).
    2) Matsui T. et al., Curr. Biol., 9, 1259-1262 (1999).
    3) Zhamg L. et al., PLoS One., 8, e52384 (2013).
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