ファルマシア
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50 巻 , 6 号
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目次
オピニオン
  • 大石 了三
    50 巻 (2014) 6 号 p. 499
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    医療における安全性の確保が重要視され,薬剤師がその役割を担うように期待されるにつれて,注射薬に関する業務や病棟業務を中心として病院薬剤業務は大きく拡大した.さらに,様々なチーム医療への参画とハイリスク医薬品への強力な関与が要求され,ICUやCCUなどの救急病棟にも薬剤師常駐が行われるようになってきた.院外処方せんの拡大による業務シフトも考えれば病院薬剤師数は飛躍的に増加し,新卒薬剤師の就職先としても大きなシェアを占めるようになった.当初は業務量に見合う診療報酬がなく不安定な状況であったが,薬剤管理指導料は徐々に増加し,2年前にはそれに加えて病棟薬剤業務実施加算が新設された.さらに,感染制御やがん化学療法,緩和ケアなどのチーム医療に対する診療報酬においても,専門知識を持った薬剤師の活動が算定の条件になってきた.医療費が高騰していく中で,病院薬剤師に対する診療報酬面でのサポートは大変ありがたいことである.しかし期待される「病棟薬剤業務」は,これまでの医師の処方を確認し患者に服薬指導を行うという業務内容をはるかに超えており,薬物療法の有効性と安全性の確保に向けた極めて積極的な行動と処方設計・提案である.当然のことながら今後の活動に対する評価は厳しいものになるだろうし,評価に耐えられなければマンパワーの低下につながり,負のスパイラルになることも免れかねない.
    私はこれまでに米国の幾つかの大学病院やがんセンターを訪問し,実際に病棟薬剤師の活動を見てきた.そこで感じたことは,チーム医療における薬剤師の圧倒的存在感であり,他の医療従事者すべてから認められていることだった.それはどこから来るのかと考えてみると,まず患者ケアに対する経験の長さがある.若い薬剤師であっても,学生時代の数年間の実習,レジデント期間も加えると相当の臨床経験がある.しかも日本の薬剤師のように調剤や注射薬の調製に時間を費やすことはほとんどないので,患者ケアに対する経験の差は非常に大きい.加えて,言うべきことははっきり言うという国民的な性格もある.日本では,病院薬剤業務が急激に拡大しているため薬剤師の多くはまだまだ経験が浅い.早急な地位確立のためには,知識・技能の習得とできるだけ多くの患者ケアを実践すること以外にもいろいろな取り組みを行うべきである.
    日本病院薬剤師会や日本医療薬学会の専門薬剤師制度は,病院薬剤師のレベルアップに寄与しただけでなく,制度が定着するにつれてチーム医療における薬剤師の存在感を大きく高めてきた.米国でも病院薬剤業務の展開に専門薬剤師制度を役立ててきた経緯があるが,その中でも薬物療法専門薬剤師が基本的な専門薬剤師と考えられている.日本医療薬学会で2012年認定が始まった薬物療法専門薬剤師を早急に増やしていくべきであろう.
    日本の薬学教育では病院・薬局実習の期間は短いが,研究室配属という大きな特徴がある.そのためか,医療現場で発生する様々な問題に対する解決に向けての取り組みは日本の薬剤師の方が勝っているように思う.4~6年次に講義・実習と並行して研究に取り組むことは医療現場での問題解決能力の養成に役立ち,薬剤師の地位確立にも非常に重要であると考える.薬学関係者の多方面からの取り組みを期待したい.
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Editor's Eye
研究室から
  • 阿部 郁朗
    50 巻 (2014) 6 号 p. 509-511
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    今後の医薬資源の開発について考えた場合,多様性に富む化合物群をいかに効率よく生産し,創薬シードとして提供できるかが鍵になる.学生時代,モルヒネやペニシリンなどの薬用天然物に魅せられて以来30年,一貫して天然物の生合成研究に取り組んできた.生物がどのようにしてあの複雑で多様な二次代謝産物の構造を作り上げるのか? 生物のものづくりの仕組みを解き明かし,更に利用,改変することで創薬に生かすことができれば,との思いからである.
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最前線
  • 福山 征光
    50 巻 (2014) 6 号 p. 512-516
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    我々の組織や臓器を構成する大多数の細胞は,高度に分化した機能と形態をもち,そのほとんどが分裂する能力を失っているため,新たに細胞を産生することができない.これに対して,幹細胞や前駆細胞(ここでは幹細胞と比較して限られた回数しか自己複製できず,その後分化することが決定付けられた未分化な細胞の意味で用いる)と呼ばれる未分化な細胞群は,個体の成長や恒常的な細胞の入れ替え,再生などのような生理的局面において,適宜分裂し,新しい細胞の追加や補充をする.幹細胞や前駆細胞の中には,個体の栄養状態の変化に応答し,分裂や分化などの活動を亢進させたり(活性化),逆にそれらの活動を一時停止したりするものがあることが最近明らかになってきた.また,幹細胞や前駆細胞の活性化調節機構が,加齢に伴う疾患や発がんに密接に関係することが報告されている.しかしながら,ほ乳動物で幹細胞の栄養応答が詳細に報告され出したのはここ数年のことであり,その分子機構は不明な部分が多く残されている.そこで本稿では,マウスのみならず,実験動物としてよく使われるショウジョウバエや線虫も含めて,幹細胞や前駆細胞の栄養応答メカニズムに関する最近の知見を概観する.
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最前線
  • 多田 教浩, 伊藤 彰近
    50 巻 (2014) 6 号 p. 517-521
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    光と空気は我々人類を含む生命体の生存に不可欠な4要素(光,空気,水,土)のうちの2要素である.例えば植物は太陽光と二酸化炭素を用いる光合成により,光エネルギーを炭化水素と酸素に変換している.一方で動物は,酸素で炭化水素を燃焼させることで生命活動を維持し,二酸化炭素と水を排出している.このように光と空気が広く生命体の生存に寄与できるのは,これらが地球上に豊富に存在しているためであり,持続可能な生産活動の実現にはこの豊富な資源を有効活用することが望ましい.
    一方,我々が日常生活において恩恵を受けている化学製品の製造プロセスにおいては,高度に還元された炭化水素(石油)を原料として用いているため,酸化反応が極めて重要な役割を担っている.しかしながら酸化反応においては,反応が進行すれば必然的に等量の酸化剤が還元される.したがって,その還元体が副生成物として排出され,しばしば問題となる.このような背景から,酸化反応を持続可能で経済的な化学技術とするには,我々の周りに豊富に存在し,副生成物が理論的に水のみとなる分子状酸素を酸化剤とすることが望ましい.我々は,分子状酸素と,身の回りに常に存在するエネルギーである光を組み合わせることで,理想の酸化反応を開発すべく研究を行っている.
    本稿では,当研究室のこれまでの光酸素酸化反応に関する取り組みについて紹介する.
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セミナー
  • 穐山 浩, 杉本 直樹
    50 巻 (2014) 6 号 p. 522-527
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    2012年5月11日に消費者庁から「コチニール色素に関する注意喚起」として,コチニール色素が添加された食品を摂取したとき,急性アレルギー(アナフィラキシー)を引き起こした症例研究情報の提供が報告された.アナフィラキシーを発症した場合,じん麻疹,血管性の浮腫,呼吸困難などが同時に起こり,重篤な症状となる場合もあるため注意が必要である.コチニール色素は,赤色の着色を目的として食品添加物だけでなく,医薬品添加物,医薬部外品や化粧品など様々な用途で使用されている.消費者庁の注意喚起を受けて,コチニール色素によって引き起こされるアレルギーの実態把握,ならびに原因解明が急務となっている.
    本稿では,レギュラトリーサイエンスの観点から我が国と諸外国の規格を元に,コチニール色素,そのアルミニウム結合物(レーキ)であるカルミンがどのような色素であるかについて説明する.また,最近の知見を交えながら,コチニール色素とアレルギーの実態および原因解明について解説する.
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セミナー
  • 原 雄二
    50 巻 (2014) 6 号 p. 528-532
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    骨格筋線維には,絶え間ない筋収縮・弛緩に伴う負荷から保護される機構が備わっている.膜タンパク質ジストログリカンは,細胞表層上で糖鎖修飾依存的に細胞外マトリックス構成因子ラミニンと,細胞内では骨格系タンパク質ジストロフィンとにそれぞれ結合する.この「細胞外マトリックス―ジストログリカン―細胞骨格」構造体は骨格筋の構造・機能維持に必要不可欠であり,ジストログリカンの機能破綻,特に同分子上の糖鎖修飾不全より筋ジストロフィーが引き起こされる.当総説ではジストログリカン発見の経緯とその分子機能を概説すると共に,最近明らかになりつつあるジストログリカン上の糖鎖修飾機構について紹介したい.
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セミナー:創薬科学賞
  • 丸山 龍也
    50 巻 (2014) 6 号 p. 533-537
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    近年,我が国において40歳以上の男女の8人に1人が,「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり,我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの悩みを抱えている,という報告がある.これらのうち,尿意切迫感を主症状とし,頻尿や切迫性尿失禁を伴い,日常生活や社会的活動に様々な支障をきたす場合,過活動膀胱と診断されることがある.過活動膀胱には,脳と膀胱(尿道)を結ぶ神経のトラブルで起こる「神経因性」のものと,それ以外の原因で起こる「非神経因性」のものが知られている.
    従来,過活動膀胱の治療薬として,ムスカリン受容体拮抗薬が使用されてきた.しかし,主作用であるムスカリン受容体拮抗作用に基づき膀胱収縮力を抑制するため,尿閉・排尿困難のリスクがある.加えて,唾液分泌や腸管吸収もムスカリン受容体を介して調節されることから,口内乾燥・便秘といった副作用が生じやすく,服薬コンプライアンスの低下が問題となっている.
    一方,近年,ヒト膀胱におけるβ3アドレナリン受容体の役割に関する研究が進んだ結果,β3アドレナリン受容体作動薬の過活動膀胱治療薬としての可能性が注目を集めてくるようになった.
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セミナー:創薬科学賞
  • 野村 純宏
    50 巻 (2014) 6 号 p. 538-542
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    人類は進化の過程で長い飢餓時代を経て,血糖を高めるすべを多く備えたと考えられる.グルカゴン,アドレナリン,コルチゾールなどのホルモンはその象徴であり,後述するナトリウム―グルコース共輸送体(sodium glucose co-transporter:SGLT)もその1つである.しかし,ここ50年における食生活の変化,飽食と車社会化の影響でカロリー過多となり,2型糖尿病患者が増加してきた.唯一,血糖を下げるホルモンがインスリンであり糖尿病治療に活用されているが,グルコースを組織に取り込むため体重増加を生じやすい.2型糖尿病においては高血糖状態が続くことでインスリン抵抗性,インスリン分泌不全が増悪し,更に血糖値を高めてしまう.グルコースのアルデヒドはタンパク質のアミノ基と反応し,変性タンパクを生成する.この変性タンパクの沈着が微小血管障害を引き起こすことが糖尿病合併症の一因となっている.
    このように,本来重要な栄養素の1つであるグルコースが過剰になると毒物として作用してしまう.これが糖毒性の概念である.既存の経口血糖降下薬は,インスリン抵抗性改善薬あるいはインスリン分泌促進薬がそのほとんどである.これらの薬剤はインスリンに依存したメカニズムを有することから,上記の体重増加をはじめ,膵β細胞の疲弊,低血糖などが見られる.
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話題
  • 松井 和浩, 飯村 康夫
    50 巻 (2014) 6 号 p. 543-547
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    1967年に始まった市販後医薬品の副作用報告制度に基づく報告件数は増加の傾向にあり,ここ数年は企業報告の国内事例だけで年間3万件を超えている.諸外国規制当局では1998年から2000年代前半にかけて,副作用報告症例のデータベースから機械的かつ網羅的に未知の副作用候補を見つけ出すこと,すなわちシグナル検出のためのデータマイニング手法が開発・実践されていた.
    我が国においても,安全性監視の充実策の1つとして,予測・予防型の安全対策の必要性が高まる中,医薬品医療機器総合機構(PMDA)の第一期中期計画の中でデータマイニング手法の安全対策業務への導入検討および支援システムを開発し,2009年4月より活用している.
    本稿では,データマイニング手法によるシグナル検出の概要およびPMDAにおける安全対策措置への活用事例を紹介する.
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話題
  • 鈴木 匡
    50 巻 (2014) 6 号 p. 548-552
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    6年制薬学教育を卒業した学生達が社会で活躍を始めている.社会が薬剤師に求めるニーズも大きく変化し,臨床現場で積極的にチーム医療や地域医療に参画できる能力が求められ,その能力習得のための薬剤師研修を大学が積極的にプロデュースする必要性が高まっている.特に,6年制薬学部で実施されている実習・演習を主体とした問題解決型学習(problem based learning:PBL)を現場の薬剤師に活用した研修が注目されている.チーム医療参画への実践的能力取得を目的として,薬学部が医療系学部と連携して行っている新しい薬剤師生涯研鑽の試みについて報告する.
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FYI(用語解説)
  • 阿部 郁朗
    50 巻 (2014) 6 号 p. 553_1
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    進化分子工学とは,生物の突然変異と淘汰の繰り返しによる進化という地球上で行われてきたサイクルを,試験管内において実験的に「早回し」で再現し,分子(核酸やタンパク質など)の生物機能に改良を加えていく研究である.具体的には,①分子に変異を導入しながら増幅することで多様性を創出し,②「望む機能を持つものだけが生き残る」仕組みを構築することで,増幅した集団から目的の性質を有する変異体を選択する.このプロセスを繰り返し行うことで,新しい分子機能を開発することを目的としている.
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  • 多田 教浩
    50 巻 (2014) 6 号 p. 553_2
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    ノリッシュ反応はカルボニル化合物(ケトン,アルデヒド)の光反応であり,I型反応とⅡ型反応が知られている.ノリッシュI型反応では,光照射により励起カルボニル基となり,α位の結合が均等開裂することでラジカル種(アシルラジカル,アルキルラジカル)を与える.発生したラジカル種は,脱カルボニル化,不均化,水素引き抜きなどにより種々の生成物となる.一方,ノリッシュⅡ型反応では,励起カルボニル酸素によってγ位の炭素に結合した水素原子が引き抜かれ,ビラジカル種を与える.生成したビラジカルは,分子内で結合してシクロブタノール誘導体となるか,α位とβ位の炭素―炭素結合を開裂し,ケトンとオレフィンに分解する.
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  • 原 雄二
    50 巻 (2014) 6 号 p. 553_3
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    特定遺伝子について臓器・時期特異的な欠失・改変操作がなされたマウスのこと.同動物作製では,臓器・時期特異的な活性を示すプロモーター配列およびDNA組換え酵素(主にCre-レコンビナーゼ)をコードする遺伝子配列をつなげた外来遺伝子が導入される.標的遺伝子配列の前後にCre-レコンビナーゼ認識配列(LoxP配列)が挿入されていると,LoxP配列間の標的遺伝子が部位特異的組み換え反応で除去される.全身性遺伝子ノックアウトマウスが胎生致死を示す場合でもノックアウト個体を作製し得るため,コンディショナルノックアウト法は目的遺伝子産物の臓器特異的な生理機能解明に欠かせない手法となっている.
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  • 丸山 龍也
    50 巻 (2014) 6 号 p. 553_4
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    薬物がそのターゲット受容体と結合した際に生じる活性反応を,割合で比較する数値.作動薬(アゴニスト)には,フルアゴニストとパーシャルアゴニストが存在する.前者は生物学的応答反応を引き起こすefficacy(効力性)が大きく,その固有活性を1とする.これに比べて後者はefficacyが小さく,固有活性は0~1の値となる.
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薬薬連携つながる病院・薬局
  • 本田 一春, 貴田岡 正史
    50 巻 (2014) 6 号 p. 555-557
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    厚生労働省が2012年に行った国民健康・栄養調査によると,糖尿病が強く疑われる者は約950万人,糖尿病を否定できない者(糖尿病予備軍)は,約1,100万人と推定されている.糖尿病を強く疑われる者と糖尿病の可能性を否定できない者を合わせると約2,050万人と推計され,今までの調査において初めて全体として減少に転じたものの,糖尿病を強く疑われる者についてみると,依然として増加傾向が持続している.
    また,このような現状を踏まえて従来より国の医療計画,「5疾病・5事業および在宅医療の医療連携体制の構築」における5疾病の1つに糖尿病が取り挙げられていた.そのなかで予防・治療には,患者自身による生活習慣の管理に加えて,内科,眼科,小児科,産科,歯科等の各診療科が,糖尿病の知識を有する管理栄養士,薬剤師,保健師,看護師等の専門職種と連携して実施する医療サービスが必要であること,さらにこれらの医療サービスが有機的に,継続して実施されることが望まれている.そのためには,糖尿病地域連携システムを機能させることが重要である.
    本稿では,西東京地区で糖尿病地域医療システムに必要とされる人的リソースの育成とその活用に努めてきた西東京臨床糖尿病研究会における西東京療養指導士の育成と薬剤師の果たす役割について,また今後高い確率で,発生が予想される首都直下型地震に対するマニュアル作成について併せて報告する.
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数式なしの統計のお話
  • 酒井 弘憲
    50 巻 (2014) 6 号 p. 558-559
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    爽やかな春も終わり,梅雨が近づいてきた.6月と言えば,ジューンブライドで結婚式の季節というイメージがあるのではないだろうか? 2012年のぐるなびウエディングのアンケート調査結果を見てみよう.まず既婚者(男性700名,女性432名)に「どの時期に結婚したか」という質問に対して,春~初夏(4~6月)が1番多く28.7%,続いて秋(10~11月)が23.9%と続く.結婚の意思のある未婚者(男性161名,女性178名)に「どの時期に結婚したいか」を尋ねると,秋が1番多く,53.1%,続いて春~初夏の41.0%となる.親族や友人など式への出席者側(男性1029名,女性703名)の意識では,「いつ出席したいか」という質問に対して,こちらも秋が41.0%で,続いて春~初夏の27.0%という回答であった.つまり,6月に結婚式が1番多いというわけではないのである.
    もっと詳細に示せば,未婚者の結婚希望時期は10月が1位で6月は4位なのである.既婚者の結婚時期でも1位は11月で,6月は6~7位なのである.例外的に6月に挙式が増えた年があったが,それは,1990年と1993年である.それぞれ6月に秋篠宮,皇太子のご成婚があり,それにあやかっての挙式増加であった.現実的な話をすれば,梅雨時期で稼働率の下がるホテルや式場が欧米のロマンチックな言い伝えを利用し,ジューンブライドとぶち上げて6月の集客を回復しようと画策したのが始まりらしい.ヴァレンタイン・デーを利用してチョコレートの売り上げを伸ばそうとした製菓業界とまったく同じ構図なのである.こういうキャンペーンはそのまま鵜呑みにせず,数字の裏付けを確認することが大事である.
    ところで,この時期になると決まって懐かしくなるのがロンドンの清々しさである.この時期のロンドンは夜も21時過ぎまで明るく,空気もカラッとしていて実に過ごしやすい.著者がロンドンを訪問する際に必ず立ち寄る場所がある.根っからのシャーロキアン(英国ではホーメジアンと呼ばれるらしい)としては,チャリングクロスのパブ・シャーロック・ホームズと言いたいところだが,同じパブでもそれはジョン・スノウ・パブなのである.と言っても読者のなかでそれを知っている人がいれば奇跡に近い話であろう.有名なエロス像のあるピカデリーサーカスからリージェント・ストリートを北に進み,ブルックス・ブラザーズの店舗の角を右手に曲がって5分ほど進み,さらに左に折れて進んだ先のブロードウィック・ストリートの左角に目指すパブは佇んでいる.別に危険な場所ではないが,普通の観光客は絶対にこんな路地裏までには入ってこないだろう.ここが生物統計学の源流の一つである疫学の“聖地”なのである.
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家庭薬物語
製剤化のサイエンス
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    50 巻 (2014) 6 号 p. 565-566
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    このコラムでは厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    当コラムは,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成25年6月28日,9月20日,9月27日,平成26年1月17日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページ→「医薬品関連情報」→「承認情報(医薬品・医薬部外品)」→「医療用医薬品の承認審査情報」(http://www.info.pmda.go.jp/info/syounin_index.html)より検索できます.
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トピックス
  • 葛西 祐介
    50 巻 (2014) 6 号 p. 568
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    グリコシド結合形成反応における最大の課題は,アノマー位立体化学の制御である.高い立体選択性を実現するためには,反応条件の厳密な制御や糖供与体の精巧な設計が必要不可欠である.複雑なオリゴ糖の合成が可能になった現在でも,温和な反応条件で進行し,基質一般性を有する高立体選択的グリコシド化反応の開発は重要かつ挑戦的な研究テーマである.本稿では1-O-トリクロロアセトイミダート(1)の活性化剤として,チオウレア2と亜リン酸3を共触媒として利用した立体選択的グリコシド化反応について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Geng Y. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 52, 10089-10092 (2013).
    2) Zhu X., Schmidt R. R., Angew. Chem. Int. Ed., 48, 1900-1934 (2009).
    3) Balmond E. I. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 51, 9152-9155 (2012).
    4) Weil T. et al., Org. Lett., 10, 1513-1516 (2008).
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  • 新谷 彰教
    50 巻 (2014) 6 号 p. 569
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    世界保健機関(WHO)によれば,2005年の世界の5,800万人の死亡者のうち,がんによる死亡は13%(760万人)を占めるが,その数は増加の一途をたどり,2030年には1,140万人に達すると予測されている.日本では1981年にがんが死因のトップとなり,2010年度はその約3割を占めている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Risinger A. L. et al., J. Nat. Prod., 76, 1923-1929 (2013).
    2) Chen Z. -L. et al., Tetrahedron Lett., 28, 1673-1678 (1987).
    3) Tinley L. T. et al., Cancer. Res., 76, 3211-3220 (2003).
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  • 奥山 聡
    50 巻 (2014) 6 号 p. 570
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    現在,うつ病の治療には三環系抗うつ薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin and norepinephrine reuptake inhibitor:SNRI)など,脳内神経伝達物質に関連した薬物が多く使用されている.いわゆるモノアミン仮説や受容体仮説に基づいた治療薬である.さらに,近年ではbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)仮説や神経新生仮説を含んだ神経可塑性仮説が注目されている.これは,うつ病患者の血清BDNF量は健常者に比べ減少しているが,抗うつ薬治療により健常者と同レベルまで回復すること,またラットにストレスを負荷すると血中グルココルチコイド濃度が上昇し,海馬におけるBDNF産生や神経新生が抑制されるが,抗うつ薬の投与により回復することなどが報告されているためである.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hashimoto K. et al., Brain Res. Rev., 45, 104-114 (2004).
    2) Wang Z. et al., Pharmacol. Biochem. Behav., 112, 104-110 (2013).
    3) Liu D. et al., Prog. Neuropsychopharmacol. Biol. Psychiatry, 49, 21-29 (2014).
    4) Jiang H. et al., Prog. Neuropsychopharmacol. Biol. Psychiatry, 47, 33-39 (2013).
    5) Rinwa P. et al., PLoS ONE, 8, e61052 (2013).
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  • 西 弘大
    50 巻 (2014) 6 号 p. 571
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    前立腺がんの罹患率は,全世界的に増加傾向にある.日本では2025年には胃がん,肺がんを上回り,男性悪性腫瘍の罹患率第1位となることが予測されている.さらに近年は前立腺がんによる死亡率も増加しており,早期発見・早期治療が望まれる.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kitajima K. et al., Int. J. Urol., in press, 2013.
    2) Nanni E. et al., Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging., 40, S11-17 (2013).
    3) Jadvar H. et al., J. Nucl. Med., 52, 81-89 (2011).
    4) Oka S. et al., Mol. Imaging. Biol., in press, 2013.
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  • 小野寺 理沙子
    50 巻 (2014) 6 号 p. 572
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    近年,医薬品研究開発の急速な進歩により,これまで以上に治癒効果が期待される細胞毒性の強い抗がん剤が登場し,がん治療における化学療法の占める割合は増加傾向にある.しかし,代表的な抗がん剤であるドキソルビシン,シスプラチン(cisplatin:CDDP)といった現状の抗がん剤の多くは,がん細胞の高い増殖効果に注目した細胞障害性を有するため,骨髄細胞など生成回転が活発で高い増殖性を持つ正常細胞に対しても強い障害性を示すことが深刻な問題となっている.さらにCDDPは,腎毒性や悪心,おう吐など重篤な副作用が知られており,腎毒性を防ぐために治療開始から数日間電解質補液の点滴が必要となっている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Dhara S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 108, 1850-1855 (2011).
    2) Graf N. et al., ACS nano, 6, 4530-4539 (2012).
    3) Johnstone T. et al., ACS nano, 7, 5675-5683 (2013).
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  • 岡本 貴行
    50 巻 (2014) 6 号 p. 573
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps:NETs)は2004年にBrinkmannらによって報告された好中球の生体防御反応である.感染により活性化した好中球は,既知の細胞壊死やアポトーシスとは異なる特徴的な細胞死(NETosis)を引き起こし,自身のDNAを細胞外へ放出して,NETsの名の通りネット状の構造を形成する.NETsは,DNAの他にヒストン,好中球エラスターゼ,好中球顆粒内の抗菌物質などを構成成分として含み,貪食とは異なり,細胞外で細菌や病原体を捕捉して殺菌する役割を持つ.また,NETsは異物を捕捉するとともに,白血球,血小板と血管内皮細胞を相互作用させ,微小血栓を形成して異物の排除を行う.近年,このNETsによる異物や細胞の捕捉という概念が各種病態の理解に影響を与えている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Brinkmann V. et al., Science, 303, 1532-1535 (2004).
    2) Cools-Lartigue J. et al., J. Clin. Invest., 123, 3446-3458 (2013).
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  • 浦丸 直人
    50 巻 (2014) 6 号 p. 574
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    臭素系難燃剤は,プラスチック,ゴム,木材,繊維等の高分子有機材料の火災による人的・経済的損失を防止するため,世界的に広く使用されている.特に,代表的な臭素系難燃剤の1つであるポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)は,ポリ塩化ビフェニル(PCBs)と類似の化学構造と物性を有し,難分解性で生物濃縮され様々な生理作用を有することから,これらの生態系や人体への汚染が懸念された.このため,PBDEsは2009年のストックホルム条約における新規残留性有機汚染物質に指定され,日本を含め世界各国で,デカブロモジフェニルエーテルを除き製造・使用が禁止されている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Covaci A. et al., Environ. Int., 37, 532-556 (2011).
    2) Ma Y. et al., Environ. Sci. Technol., 46, 204-208 (2012).
    3) Gentes M. L. et al., Environ. Sci. Technol., 46, 9735-9744 (2012).
    4) Saunders D. M. et al., Toxicol. Lett., 223, 252-259 (2013).
    5) Mankidy R. et al., Toxicol. Lett., 224, 141-146 (2014).
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  • 上田 浩
    50 巻 (2014) 6 号 p. 575
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    後天性免疫不全症候群(AIDS)は,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって引き起こされる.HIVへの感染により免疫不全が生じ,その結果,日和見感染やがんなどを発症して最終的には死に至る.AIDSの発見当初から現在に至るまで,様々な治療が試みられてきたが,いまだ根本的治療法の開発には至っていない.その理由として,一般的に知られている他のウイルスとは異なり,HIVが細胞性および液性免疫を担うヘルパーT細胞に感染し,免疫系を破壊するウイルスであること,またワクチンとして使用されるようなウイルス表面に存在する表面抗原の構造変化が,他のウイルスに比べて著しく速いスピードで起こるため,効果的な抗体を作ることが難しいことなどが挙げられる.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Picker L. J., Deeks S. G., Nature, 503, 207-208 (2013).
    2) Brauch D. H. et al., Nature, 503, 224-228 (2013).
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  • 辻 泰弘
    50 巻 (2014) 6 号 p. 576
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    1960年,当時の応用数学分野の先端研究として「モンテカルロ法(宮武修共著)」が発刊された.恐らく,日本で初めてモンテカルロシミュレーションが紹介された書籍である.確率論の中にあるサンプリング理論を利用するモンテカルロシミュレーションは,計算機の進歩と共に発達し,50年の歳月を経て,現代医療に,特に感染症治療と抗菌化学療法の分野において患者個別の投与設計に用いられている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Craig W. A. et al., Clin. Infect. Dis., 26, 1-10 (1998).
    2) Conil J. M. et al., Clin. Ther., 35, 1603-1612 (2013).
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  • 藪田 直希
    50 巻 (2014) 6 号 p. 577
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    シスプラチン(cisplatin:CDDP)は,多くの固形がんに用いられる抗腫瘍性白金錯体だが,腎障害によって減量や休薬を余儀なくされる.代表的な腎障害防止策である輸液による水分負荷を行っても,3分の1の患者で腎障害が起こることが知られており,CDDPの腎毒性軽減のための新たな対策が望まれている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Filipski K. K. et al., Clin. Pharmcol. Ther., 86, 396-402 (2009).
    2) Ciarimboli G. et al., Am. J. Pathol., 176, 1169-1180 (2010).
    3) Sprowl J. A. et al., Clin. Pharmcol. Ther., 94, 585-592 (2013).
    4) Franke R. M. et al., Clin. Cancer. Res., 16, 4198-4206 (2010).
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  • 松﨑 広和
    50 巻 (2014) 6 号 p. 578
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
    うつ病などを含む気分障害の患者数は,この10年で3倍近く急増しており,社会的に問題となっている疾患の1つである.うつ病の病態,抗うつ薬の作用メカニズムとして近年注目されている仮説の1つに,脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor:BDNF)仮説がある.臨床研究において,うつ病患者の脳内や血中で減少しているBDNFおよびその受容体であるTrkBが,抗うつ薬による治療で健常人と同レベルになることが知られている.さらに動物実験においても,抗うつ薬を投与すると,ヒトと同様の変化が生じると報告されている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Castren E. et al., Curr. Opin. Pharmacol., 7, 18-21 (2007).
    2) Lane M. A., Bailey S. J., Prog. Neurobiol., 75, 275-293 (2005).
    3) Qi X. R. et al., Cereb. Cortex., in press.
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