ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
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50 巻 , 7 号
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目次
  • 50 巻 (2014) 7 号 p. 638-639
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    特集にあたって:ファルマシアでは31巻9号(1995年)に「薬物相互作用」が特集として取り上げられ,一部は最近でも引用されるなど,大きな反響を呼びました.それから20年近くが経過し,トランスポーターを介する相互作用など,新しいメカニズムによるものも次々と明らかになっていることから,薬物相互作用をめぐる最近の話題を盛り込んだ特集を企画致しました.現在,欧米に続いて日本でも,薬物相互作用の検討方法に関する行政指針の改定作業が進められており,その概要等について,改定作業に携わられた先生方にもご執筆いただきました.薬の適正使用のために,薬物相互作用について最新の情報を会員の皆様が共有する一助となれば幸いです.
    表紙の説明:複数の薬物を併用すると,相互作用により薬物の体内からの消失が遅れ血中濃度が上昇する結果,薬理作用が増強したり副作用が発現することがある.あるいは逆に,吸収阻害や排泄促進により血中濃度が低下する結果,十分な薬理作用が得られないことがある.併用薬だけでなく,一部の食物やコーヒー,タバコなども薬物の体内動態や効果に影響を及ぼすことが知られており,注意を要する.
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オピニオン
  • 千葉 寛
    50 巻 (2014) 7 号 p. 637
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    薬物相互作用のガイドラインが10年ぶりに改定され,近日中に施行される.医薬品の作用や副作用が,併用によりどのように変化するかは,医薬品を適正に使用するために必要不可欠な情報である.ガイドラインは,医薬品が受ける可能性のある薬物相互作用と及ぼす可能性のある薬物相互作用を,開発段階で評価,予測するための方法と判断基準を示すものである.その目的は,臨床における有害な薬物相互作用の発現や有効性の低下を未然に防ぐことにある.今回改定されたガイドラインは,薬物相互作用に関する最新の研究成果を随所に取り入れており,その目的の達成を十分可能にする内容であると思う.
    新ガイドラインにおける薬物代謝の相互作用は,次のような検討手順になっている.まず,ヒト組織や発現系を用いたin vitro試験とマスバランス試験により,主要消失経路にかかわる代謝酵素を同定し,その酵素に関する臨床試験を行うことで,用量調整が必要な薬物相互作用を受ける可能性を明らかにする.一方,薬物相互作用を起こす可能性については,主要な薬物代謝酵素に対する阻害,誘導,ダウンレギュレーションをin vitro試験により評価し,得られたパラメータを基にモデルによるシミュレーションを行い,必要が認められた場合には臨床試験により相互作用の検討を行う.いずれについても,判断基準が決定木とともに明確に示されており,in vitro試験と臨床試験に使用する代表的な基質,阻害薬,誘導薬も明示されていることから,主要な薬物代謝酵素については,相互作用を開発段階で明らかにするための方法と基準が明確に示されたと言える.
    トランスポーターを介した薬物相互作用についても,臨床試験実施の必要性を判断するためのin vitro試験の方法と基準が,主要なトランスポーターについて決定木とともに明確に示され,in vitro試験と臨床試験に使用する基質,阻害薬なども明示された.トランスポーターを介した薬物相互作用は,吸収,胆汁および腎排泄,肝取り込みなどいろいろな過程で起こる可能性に加え,組織中濃度の変化も考慮する必要があるなど,その評価と予測は非常に複雑で困難である.大きな道筋が具体的に示されたことから,今後の研究の進展により,さらに精度と信頼性の高い評価と予測が可能になっていくものと思われる.
    今回の改定では,医薬品開発の過程で得られた相互作用の情報を,添付文書に記載する際の指針が新たに加えられた.添付文書は,医薬品を適正に使用するための重要な情報源である.事実や事象の羅列ではなく,明確な基準で統合整理された記載がなされることで,情報がより有効に活用されることが期待される.
    医薬品の組み合わせは無限にある.その中で臨床的に重要な薬物相互作用を抽出し,対策を含めた的確な情報提供を行うことは薬剤師の責務でもある.これを行うためには,多数ある薬物相互作用を系統的に分類整理し,重要性をランク付けできるような解析法が必要である.PISCS(pharmacokinetic interaction significance classification system)は,それを可能にするかもしれない.薬物相互作用は薬学固有の研究領域であり,その発展と進歩は薬学出身者の肩にかかっているといっても過言ではない.薬物相互作用にかかわるすべての薬学出身者に,改めてエールを送りたい.
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Editor's Eye
話題
資料
セミナー
  • 吉成 浩一
    50 巻 (2014) 7 号 p. 654-658
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    薬物代謝は,化学物質(医薬品や食品成分,環境汚染物質等)の体内からの消失に主要な役割を果たしており,この過程には薬物代謝酵素と総称される多数の酵素が関与する.薬物代謝酵素の大きな特徴として,基質特異性の低さと化学物質の曝露に伴う酵素量の増加(酵素誘導)が挙げられる.ヒトが曝露され得る化学物質の種類は無限であり,それらを速やかに解毒する必要があることを考えると,このような性質は非常に都合がよい.一方で,このような性質は薬物代謝過程における薬物―薬物間および薬物―食品間の相互作用の原因となる.薬物相互作用は様々な機序で生じるが,本稿では,薬物代謝酵素がかかわる薬物相互作用について,発現機序を中心に概説する.
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最前線
  • 前田 和哉
    50 巻 (2014) 7 号 p. 659-663
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    近年,薬物トランスポーターの発現・機能に関する情報が集積されており,その薬物動態における重要性についても,ヒト臨床での薬物相互作用試験や薬理遺伝学的試験を通じて徐々に解明されつつある.その中で,いかにして未然にトランスポーターを介した相互作用を回避するかといった予測戦略も精力的に研究が進められており,その成果は,近年改定されつつある日米欧三極の創薬における薬物相互作用評価のためのレギュラトリーガイドラインにも活用されている.本稿では,現時点でのトランスポーターを介した相互作用の実例とその予測の現状を概説したい.
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セミナー
  • 樋坂 章博
    50 巻 (2014) 7 号 p. 664-668
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    予測は科学的知識に基づく最善の合理的な判断ではあるが,残念ながら経験によって十分に検証されたものとはいえない.ヒトの健康を預かる医療は,可能であれば観察された確かな証拠に基づくべきである.これは根拠に基づく医療(EBM)の根幹であり,その考え方が現在広く認められるに至った背景には,最善の知識で論理的に正しいと信じられた治療法であっても,実際には無効,ときには有害でさえあったとの苦い経験がある.遡るなら,古代中国の神農は薬草を選別するために必ず自ら摂取したと伝えられるが,身を賭してエビデンスを確認したからこそ,あれほど広く尊敬の念を人々から集めたに違いない.それほどまでに,医療にとっては実証こそが重要であり,それを予測で補うのは特別な場合に限られるべきである.ここでは薬物相互作用(drug-drug interaction:DDI)の予測を論ずるわけであるが,まず最初に予測には限界があり,適用は利点と欠点,効率性とリスクの判断から許容される場合に限られることを強調したい.
    それでは,臨床の場においてDDIの予測は,なぜ必要なのだろうか.その理由の第一は,DDIに関係する可能性のある薬剤が非常に多いことである.市場には2,000種を超える薬剤があり,この半数程度の体内動態の制御に代表的な薬物代謝酵素であるCYP3Aが関与するといわれる.一方で,処方機会が多い比較的強いCYP3Aの阻害薬および誘導薬は,数十のオーダーで存在し(私たちの過去の調査によると33剤であった),そうすると,ここで総当たりで数え上げるならば,数万もの相互作用を検証すべき薬剤の組み合せが存在することになる.これまでに実際に相互作用が臨床試験で検証された組み合せは,文献を数えても実は数百しかない.しかもDDIに関係する薬物代謝酵素はもちろんCYP3Aだけではない.EBMを強調するあまり,確認されたDDIのみしか認めないとすると,どうしても重大なリスクを見逃すことになる.DDIに関しては,EBMの基準を緩めないと破綻するのが明らかなのである.
    少し実例を挙げて見よう.ブロチゾラムとエプレレノンは両方ともCYP3Aで非常によく代謝を受ける薬剤であり,したがってその阻害薬と併用すると血中濃度が数倍に上昇する可能性があるので,十分な注意が必要である.ところが医薬品添付文書で併用に注意すべき薬剤として挙げられているのは,ブロチゾラムはイトラコナゾール,ミコナゾール,シメチジンであるのに対し,エプレレノンはイトラコナゾール,リトナビル,ネルフィナビルが禁忌に指定されているのに加えて,クラリスロマイシン,エリスロマイシン,フルコナゾール,サキナビル,塩酸ベラパミルとの併用に注意すべきとある.よく見ると,ここでは2つの典型的なCYP3Aの基質薬の間で,イトラコナゾールを除くと危ないとされる阻害薬が重複していない.相互作用の機構を論理的に思考すると,これは決してあり得ない.現状では,CYP3Aの阻害薬の統一的な基準がないことから生じた混乱といえる.残念ながら,このような曖昧さは現状の添付文書の注意喚起には随所に存在しており,それは実は日本だけの問題ではない.例えば日本,米国,欧州のラベリングを多くの薬剤で比較すると,相互作用の注意喚起の区分が国の間で異なる例は数割にものぼる.相互作用の注意喚起に関しては,統一的な基準やハーモナイゼーションを図る枠組みがどこにもないことが,このような事態の原因となっている.
    もちろん,これまでの添付文書の相互作用の注意喚起であっても,分かりやすく臨床的重要性が判断できるように,かなり注意深く作成されてはいる.例えば,1997年4月25日発出された薬安第59号によれば,記載様式は可能な限り表形式等にして分かりやすく,また種類(機序等)毎に相互作用を生じる薬剤名・薬効群名を挙げ,相互作用の内容(臨床症状・措置方法・機序・危険因子等)を簡潔に記載することとしている.エビデンスに基づき,可能な場合には重要な順番から記載するとの配慮がなされており,実際に現在の臨床において危険な相互作用を避けるためにかなり有用であったことは間違いない.しかし,相互作用の程度を科学的に予測することで,一定以上のリスクがあれば漏れなく記載するとの観点は,あまり考慮されなかったのが実情なのである.
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セミナー
  • 前川 京子, 佐井 君江
    50 巻 (2014) 7 号 p. 669-673
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    医薬品開発においては,副作用発現や有効性の変動要因となり得る薬物相互作用の有無について,適正に試験し評価することが求められている.近年,薬物代謝酵素のみならずトランスポーターに関する研究の進展に伴い,被験薬の薬物動態に対する,これらの分子の影響を定量的に評価するための検討方法を提示した薬物相互作用ガイドラインの改定が欧州,米国および我が国の規制当局で進められている.一方,薬物動態関連分子の中には,活性変化をもたらす遺伝子多型が存在し,患者の遺伝的要因が薬物相互作用を増強する事例も報告されている.さらに一部の遺伝子多型には,その頻度に大きな人種差・民族差が認められることから,今後加速する医薬品の国際共同開発においても,特に遺伝子多型の人種差を考慮した適正な薬物相互作用の評価が重要となる.本稿では,人種差が注目されている薬物動態関連分子の遺伝子多型を取り上げ,これらの薬物相互作用への影響について事例を含めて概説する.
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最前線
  • 玉井 郁巳
    50 巻 (2014) 7 号 p. 674-678
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    医薬品の消化管吸収は血漿中濃度推移に直接的に影響するため,その変動は医薬品の作用・副作用を左右する.飲食物の作用を考えると,肝臓や腎臓など薬物動態を左右する他の組織に比べ,飲食物中成分が管腔内から直接作用し,しかも高濃度に存在する消化管が最も影響を受けやすい状態にある.小腸上皮細胞は薬物動態を決める薬物トランスポーター(輸送体)や薬物代謝酵素の発現が肝細胞と類似しており,相互作用の重大性が指摘されている肝臓と同様に小腸における相互作用を考慮しなければならない.消化管での医薬品と飲食物との相互作用はグレープフルーツジュース(以下,GFJ)の影響の大きさから注目を浴びている.すなわち,GFJは小腸上皮細胞内に存在する薬物代謝酵素CYP3A活性を低下させ,その基質薬物(被害を受けるという意味で以下victimと呼ぶ)となるカルシウムチャネルブロッカーなどの血漿中濃度が増大し,毒性が生じることが20年以上前に見いだされた.本相互作用の原因となるGFJ成分はフラノクマリン類であり,CYP3Aを不可逆的に阻害し,併用されたvictimの血漿中濃度を顕著に上昇させる.
    一方,相互作用の原因として薬物輸送体の関与も明確になった現在,医薬品の臨床開発における相互作用試験の必要性が指摘される消化管輸送体は,P-糖タンパク質(P-gp,ABCB1)とBreast Cancer Resistance Protein(BCRP,ABCG2)である.いずれも小腸上皮細胞管腔側膜に発現し,相互作用による活性低下はvictimの血漿中濃度増大につながる.したがって,相互作用を惹起する薬物(被害を与えるという意味で以下perpetratorと呼ぶ)の管腔中濃度Ciと阻害定数(KiあるいはIC50)に基づく相互作用評価が必要とされるに至っている.上述のような消化管の特徴を考慮すれば,フルーツジュース(以下,FJ)などの飲食物成分が小腸輸送体に対するperpetratorとなる可能性も十分考えられる.
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セミナー
セミナー
  • 本間 真人, 百 賢二
    50 巻 (2014) 7 号 p. 684-687
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    一般に薬物相互作用による有害事象は発現頻度が低いため,予測困難な場合が多い.薬物相互作用は大きくPharmacodynamicsとPharmacokineticsに基づくものにそれぞれ分類されるが,薬物相互作用による有害事象の発現を考える場合,Pharmacodynamicsに基づくものは投与する薬剤の薬理作用から比較的類推しやすい.例えば,糖尿病の治療に作用機序の異なる血糖降下薬を併用した場合の低血糖症状などである.一方Pharmacokineticsに基づくものは,薬物動態に関連するタンパク質(薬物代謝酵素,トランスポーター,結合タンパク質など)を介しておこるため不特定の併用薬剤の薬物動態が変化し,それに対応して薬理作用が変動(増強あるいは減弱)するため,どの薬剤の副作用がどの程度発現するかを予測することは困難である.
    このような発現頻度が低く,予測困難な薬物相互作用に起因した有害事象は,日常診療で遭遇する症例から発見されることが多く,未然に防ぐためにはその症例を詳細に解析し,調査研究によって発現にかかわるリスク因子を明らかにすることが重要である.症例を発見するためには,日頃から最新情報を収集し(文献検索や学会参加など),新しい視点で症例を観察することが肝要である.また症例解析から展開する調査研究では,薬剤の使用(併用)実態を把握することも有用である.これらの具体的な内容を筋緊張緩和薬であるチザニジンの薬物相互作用を例に述べてみたい.
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FYI(用語解説)
  • 樋坂 章博
    50 巻 (2014) 7 号 p. 688_1
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    薬学領域のモデリングとは,一般に薬物動態あるいは薬効・安全性を数理的に説明する試行を指す.個体ではなく,患者など集団の薬剤応答性を取り扱う場合も多い.シミュレーションは得られたモデルから結果を計算により予測するもので,条件を調整することで多様な予測が可能であり,研究を効率化できる.米国FDAのクリティカル・パス・イニシャチブ(本文参照)において,バイオマーカー,臨床試験のエンドポイントと並んで,創薬の革新のために最も注力すべき領域とされた.モデリングは原データの質と解析の目的に釣り合ったものであることが重要で,完全である必要はない.数学的複雑さに惑わされずに,まずは使いこなすことが重要である.
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  • 樋坂 章博
    50 巻 (2014) 7 号 p. 688_2
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    薬物動態解析の方法としては,コンパートメントモデル解析が有名であるが,これは薬物血中濃度の時間推移の再現を目的としており,得られたパラメータには具体的な意味が乏しい.これに対しPBPK解析は薬物動態を生理的な構造に基づき解析するもので,得られたパラメータは個体の代謝能力,血流量,臓器体積などと密接な関連がある.PBPK解析により,in vitroからin vivoの系統的外挿が初めて可能になる.PBPK解析はコンパートメント解析をより複雑にして臓器中薬物濃度を再現するものと理解されることが多いが,モデルの複雑さではなく,解析の意義が異なる点に注意すべきである.基本となる生理的パラメータとして,クリアランスや分布容積の理解が重要である.
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  • 前川 京子, 佐井 君江
    50 巻 (2014) 7 号 p. 688_3
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    薬物代謝能には個人差があり,特定の薬物代謝酵素が関与する医薬品の代謝に関して代謝能の高い集団と低い集団にわかれることがあり,その原因として遺伝子多型が挙げられる.前者に属し正常な代謝活性を有する人をEMと呼び,後者に属し先天的に代謝活性が欠損または著しく低い人をPMと呼ぶ.例えば,CYP2C192およびCYP2C19*3のホモ接合(*2*2*3*3)および複合ヘテロ接合(*2*3)の場合はPMとなる.PMでは代謝の遅延により医薬品の血中濃度が高くなり,当該医薬品が活性本体である場合は薬効の増強や副作用の発症に,またプロドラッグの場合には薬効の消失にかかわる可能性があることから,注意が必要とされる.
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  • 玉井 郁巳
    50 巻 (2014) 7 号 p. 688_4
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    一般的な阻害作用は,阻害薬が存在している場合にのみ生じる可逆的阻害であり,阻害薬濃度が低下すれば作用は消失する.一方,阻害薬が消失しても作用が持続する場合があり,見かけの現象からLong-lasting inhibitionと呼ぶこともある.メカニズムとしては,薬物代謝酵素において活性中間代謝物が酵素タンパク質と共有結合を形成して不活化させるmechanism-based inhibitionと呼ばれる場合や,輸送体タンパク質を内在化させるために活性低下を引き起こすなどがある.いずれも活性回復には新規タンパク質の生合成や細胞膜へのソーティングが必要となるため,阻害薬が消失してもすぐに活性が回復しない.実験的にはプレインキュベーションによって作用が増大する現象が観測される.
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トピックス
  • 野口 吉彦
    50 巻 (2014) 7 号 p. 690
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    アジリジンは生物活性化合物に広く見られるのみならず,含窒素化合物の合成における重要な中間体である.従来のアジリジン構築法としては,アルケンに対するナイトレンの付加,またはイミンに対するカルベンの付加等が知られている.しかし,いずれの場合もトシル基などの強力な電子求引基を窒素原子上に有するアジリジンが得られる.無保護アジリジンを得るためには,スルホニル基の除去が必要であるが,予期せぬアジリジンの開環が起こることもあり,改善すべき点として認識されていた.最近,Ess,Kürti,Falckらは上記に示した問題点を解決しうる無保護アジリジンの合成法を達成したので,以下に紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Pellissier H., Tetrahedron, 66, 1509-1555 (2010).
    2) Jat J. L. et al., Science, 343, 61-65 (2014).
    3) Zhu C. et al., J. Am. Chem. Soc., 134, 18253-18256 (2012).
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  • 丹羽 節
    50 巻 (2014) 7 号 p. 691
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    ポジトロン断層法(positron emission tomography:PET)は陽電子放出核種を利用する生体内分子イメージング技術であり,医療の現場や生命科学研究において活用されている.PETに用いられる放射性核種は幾つかあるが,含フッ素医薬品の開発が盛んである近年では18Fの利用が大きな注目を集めている.トリフルオロメチル(CF3)基は多くの医薬品に存在する重要な官能基であり,近年銅錯体を用いる導入法が盛んに報告されている.しかし,CF3基に18Fを導入したPETプローブの開発は簡単ではない.サイクロトロンで発生する18Fはごく少量であり,基質への複数導入は困難である.したがって,CF3基に1つだけ18F を導入する必要がある.既存の方法は前駆体の合成が容易ではなく,18F PETプローブ合成法として課題を残していた(図1,a).
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Tomashenko O. A., Grushin V. V., Chem. Rev., 111, 4475-4521 (2011).
    2) MacNeil J. G. Jr, Burton, D. J., J. Fluor. Chem., 55, 225-227 (1991).
    3) Huiban, M. et al., Nat. Chem., 5, 941-944 (2013).
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  • 粕谷 ひかる
    50 巻 (2014) 7 号 p. 692
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    イチョウ葉エキスには心臓血管障害や脳機能不全の治療,予防に効果があるとされ,栄養補助食品として使用されている.これらの薬理作用にはフラボノール(ケルセチン類・ケンフェロール類・イソラムネチン類)とテルペンラクトン(ギンコライド類・ビロバライド)が関係していると考えられている(図1).上記の病気に共通する点として血流障害が挙げられることから,イチョウ葉エキスの作用は全身循環によるものであることが考えられる.つまり,血漿を含めた全身の薬物動態を調べることが不可欠である.またイチョウ葉エキスには神経保護作用も報告されているが,これらの成分の脳への移行性については明らかになっていない.そこでFengらは経口投与および経静脈投与の2つの方法を用いて,化合物の全身および脳への移行性について検討を行った5)ので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kleijnen J. et al., Lancet., 340, 1136-1139 (1992).
    2) Zhou W. et al., Cardiovasc. Drug Rev., 22, 309-319 (2004).
    3) Yoshitake T. et al., Br. J. Pharmacol., 159, 659-668 (2010).
    4) Luo Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 99, 12197-12202 (2002).
    5) Chen F. et al., Bri. J. Pharmacol., 170, 440-457 (2013).
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  • 梅川 雄一
    50 巻 (2014) 7 号 p. 693
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    タンパク質–タンパク質の構造変化を伴う相互作用は,シグナル伝達等において非常に重要な役割を担っている.しかし,その構造解析は困難な場合が多い.特に,膜タンパク質のように脂質膜の存在が不可欠である場合,X線解析のための結晶化そのものが困難であり,また結晶状態では動的性質の情報取得には限りがある.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Gustavsson M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 110, 17338-17343 (2013).
    2) Sengupta I. et al., Nat. Chem., 4, 410-417 (2012).
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  • 三木 寿美
    50 巻 (2014) 7 号 p. 694
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    乾癬は世界の人口の約2%が罹患する慢性皮膚疾患であり,炎症性の赤い発疹の上に鱗屑(過増殖した皮膚角質細胞が重なり白く盛り上がった発疹)が形成され,かゆみを伴うことなどからQOLが低下することを特徴とする.日本の患者数は約10万人(約0.1%)と世界的には少ないが,ストレスや欧米型の高脂肪食といった生活環境の変化で増悪する事例も多く,近年患者数が増加傾向にあることが問題視されている.乾癬はヘルパーT細胞の一種であるTh17細胞がかかわる自己免疫疾患であると考えられているが,発症の根本的な原因についてはいまだ明らかとなっていない.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Nakatsuji T., Gallo R. L., J. Invest. Dermatol., 132, 887-895 (2011).
    2) Schonthaler H. B. et al., Immunity, 39, 1171-1181 (2013).
    3) Zenz R. et al., Arthritis Res. Ther., 10, 201 (2008).
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  • 成島 遼太
    50 巻 (2014) 7 号 p. 695
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病の治療には,ビグアナイド系の薬であるメトフォルミンが広く処方されている.メトフォルミンの2型糖尿病に対する作用は,肝臓における糖新生の抑制や骨格筋における糖利用の促進などによる血糖値の低下であることは以前から知られているが,本薬剤の分子生物学的な機序については完全には解明されていない.というのも,当初メトフォルミンによる抗糖尿病効果は,エネルギー代謝に広くかかわるAMP活性化プロテインキナーゼ(5'AMP-activated protein kinase:AMPK)を介した経路に作用する結果と考えられていたが,近年AMPKを欠損させたマウスでも糖新生の抑制効果が報告されており,その作用経路にはAMPKではなくグルカゴン-プロテインキナーゼA(PKA)経路が関与するとされたためである.今回,メトフォルミンの作用は,AMPKを介するものと介さない経路が独立して糖と脂質の代謝を改善するものである可能性が報告されたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhou G. et al., J. Clin. Invest., 108, 1167-1174 (2001).
    2) Miller R. A. et al., Nature, 494, 256-260 (2013).
    3) Morgan D. F. et al., Nature Med., 19, 1649-1654 (2013).
    4) Musi N. et al., Diabetes, 51, 2074-2081 (2002).
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  • 阿草 哲郎
    50 巻 (2014) 7 号 p. 696
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    内臓リーシュマニア(visceral leishmaniasis:VL)は,Leishmania donovaniLeishmania infantumといった寄生虫の感染によって生じる病気である.これら寄生虫は,脾臓,肝臓,骨髄のマクロファージ内で繁殖し,発熱や食欲不振,体重減少,肝脾腫大症をもたらす.VLは,日本での症例は少ないが,アフリカや南米,南アジアで多発しており,世界で年間41,000人が死亡している.現在,その治療薬として,ペントスタムやグルカンタイムといったアンチモン製剤が使われている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Perry M. R. et al., PLoS Negl. Trop. Dis., 5, e1227 (2011).
    2) Perry M. R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 110, 19932-19937 (2013).
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  • 稲村 直樹
    50 巻 (2014) 7 号 p. 697
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    1990年代後半,心電図波形のQT間隔を延長させる作用を有する複数の非循環器用薬剤が市場から撤退した.以降,薬剤による不整脈誘発作用の回避は医薬品開発における重要な課題として認識されている.これまで非臨床の評価としては,QT延長作用を示す多くの薬剤が遮断作用を有することが知られているhERGというKチャネルを発現させた培養細胞でのin vitro評価や動物の心電図測定等が行われてきた.しかしながら,hERGチャネルを用いた評価ではhERG以外のイオンチャネルに対する影響の評価が不十分であり,動物を用いた評価では種差の面から十分とはいえなかった.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Fermini B. et al., Nat. Rev. Drug Discov., 2, 439-447 (2003).
    2) Navarrete E. G. et al., Circulation, 128 suppl. 1, S3-S13 (2013).
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  • 坂巻 儀晃
    50 巻 (2014) 7 号 p. 698
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    プレガバリンは電位依存性Ca2+チャネルα2δサブユニットとの結合が作用機序と考えられる新しいタイプの鎮痛薬であり,2010年に我が国初となる末梢性神経障害性疼痛の適応で承認された.神経障害性疼痛は自発痛やアロデニアを伴うため,QOLを著しく低下させることから,薬剤によってその痛みをコントロールする意義は非常に大きい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Yasuo O. et al., Jpn. J. Pharm. Palliat. Care Sci., 4, 53-64 (2011).
    2) Simon D. et al., Org. Process Res. Dev., 18, 109-121 (2014).
    3) Marvin H. et al., Org. Process Res. Dev., 1, 26-38 (1997).
    4) Carlos M. et al., Org. Process Res. Dev., 12, 392-398 (2008).
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  • 吉川 晶子
    50 巻 (2014) 7 号 p. 699
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    天然の酵素のような優れた反応性と選択性を併せ持つ,小分子触媒系の構築は魅力的な研究課題である.中でも酵素による酸化反応において重要な役割を担う補因子である,キノン骨格をベースとした小分子触媒の開拓は多くなされてきた.例えばアルコールデヒドロゲナーゼの補因子,ピロロキノリンキノン(PQQ,1,図1A)はヘミアミナール中間体を経る酸化反応を触媒することが知られている.今回,1類似のキノン骨格を持つ1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン(phd,2)を用いることで,従来困難であった第二級アミンの効率的な酸化反応がWendlandtらにより達成されたので紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Largeron M., Fleury M. B., Science, 339, 43-44 (2013).
    2) Wendlandt A. E., Stahl, S. S., J. Am. Chem. Soc., 136, 506-512 (2014).
    3) Eckert T. S., Bruice T. C., J. Am. Chem. Soc., 105, 4431-4441 (1983).
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追悼
会議派遣報告
  • 松原 和夫
    50 巻 (2014) 7 号 p. 700
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    DUPHAT(Dubai International Pharmaceuticals&Technologies Conference&Exhibition)2014(アラブ首長国連邦ドバイ,3月10~12日)に出席させて頂いたので報告する.DUPHATは,アラブ首長国連邦(7つの首長国から構成される)ドバイ国で,毎年この時期に開催される薬学に関連する国際学術会議である.DUPHTは,1995年にドバイ保健省の協力を得てINDEX社が発足させた中東における薬学と薬学関連テクノロジーに関する催しである.21世紀に入り,DUPHATは中東および北アフリカ地域での最大で最も重要な薬学関連の会議・展示会に発展した(参加者は約7,000人).本会議はこのアラブ圏一円からの参加者に加え,インドネシアなどのアジア圏の国々からの参加も多数見られた.さらに,欧米の薬学関連学会・団体から多数の講演者を招待して開催される.2009年からは日本薬学会にも講演者の要請が行われ,医療薬科学分野の会員が参加している.なおDUPHAT 2014会議は,豪州病院薬剤師会およびドバイ衛生省の公認で,大会長はドバイ保健省のDr. Ali Al Sayed Hussainであった.
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藥学昔むかし
談話室
  • 宮島 敦子
    50 巻 (2014) 7 号 p. 717_1
    公開日: 2016/09/17
    ジャーナル フリー
    秋も深まった昨年のある土曜日,母校に出かけた.トンボが校章の地方の公立高校である.教育実習でお世話になって以来,およそ25年振りになる.卒業30周年を迎え,記念行事が催されたのだが,その中に後輩の高1生に向けた特別講義があった.昨年より再び土曜日に授業が行われるようになり,3限目の「総合的な学習」のキャリア教育の授業という位置付けである.講師は11名.東京駅の再生,山岳カメラマン,発達心理学,海外商社の話など理系・文系分野も様々,自分の講義などそっちのけで聴講に回りたい話ばかりであった.
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