無植物から得られた生物活性分子のなかには,植物に共生する微生物が真の生産者である場合がある.このような微生物の多くは,特定の共生環境でのみ生育が可能で,一般的な実験室環境下では培養が困難であり,工業生産などへの応用が難しい.Kudoらは,in vitro Cas9反応とバクテリア人工染色体(bacterial artificial chromosome: BAC)上でのギブソンアセンブリーを応用し,相同性が高い配列が繰り返されるI型モジュール型ポリケチド合成酵素遺伝子の標的領域を制約なく編集できる革新的な技術「in vitroモジュール編集」を報告している.本技術を用いて天然物の設計図とも言える生合成遺伝子を編集し,異種発現ホストに発酵生産させることができれば,自由にデザインされた化合物の生産が可能になると期待できる.本稿では,培養困難な微生物由来化合物生産における課題の解決策の1つとして,in vitroモジュール編集を活用したFR900359の生産に関する文献を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Kudo K. et al., Nat. Commun., 11, 4022(2020).
2) Hashimoto T. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 63, e202317805(2024).
3) Fujioka M. et al., J. Org. Chem., 53, 2820-2825(1988).
4) Taniguchi M. et al., J. Antibiot., 56, 358-363(2003).
抄録全体を表示