潰瘍性大腸炎およびクローン病に代表される炎症性腸疾患(IBD)は,消化管に炎症や潰瘍が生じ,血便などの消化器症状を引き起こす原因不明の難治性疾患である.世界的にIBDの罹患率は上昇していることから,IBDの新しい予防や治療法の開発が切望されている.腸管上皮細胞に発現するタイトジャンクション(TJ)構成タンパク質は,腸管のバリア機能に重要であり,そのバリア機能の破綻はIBDの発症や増悪と関連していることが報告されている. したがって,TJ構成タンパク質を介した腸管バリア機能の強化は,IBDの予防やその症状を改善する可能性がある.本稿では,ビタミンEの生体内代謝物の1つであるα-トコフェリルキノン(TQ)がTJ構成タンパク質の発現制御を介してIBDを抑制する可能性を見いだしたGanapathyらの研究を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Agrawal M., Jess T., United Eur. Gastroenterol. J., 10, 1113–1120(2022).
2) Garcia-Hernandez V. et al., Ann. N. Y. Acad. Sci., 1397, 66–79(2017).
3) Ganapathy A. S. et al., Cell Rep., 42, 112705(2023).
4) Yoshimatsu Y. et al., Cell Rep., 39, 110773(2022).
5) Singh R. et al., Nat. Commun., 10, 89(2019).
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