ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
最新号
選択された号の論文の48件中1~48を表示しています
目次
  • 2025 年 61 巻 2 号 p. 96-97
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

    ミニ特集:計算化学:予測と実践

    ミニ特集にあたって:大型計算機の高性能化やワークステーションの普及により,理論化学計算によって実験結果を深く考察し,より洗練された反応や優れた性能を示す触媒の開発につなげていくという研究プロセスは,いまや一般的になりつつある.さらに近年では,機械学習を活用してどのような反応が起こるか事前に予測して,効率的に研究を進める試みも一定の成果を収めるようになってきた.今回のミニ特集では,この分野で最先端の研究を展開されている先生方に,最新の研究成果をご紹介いただいた.

    表紙の説明:61巻偶数号の表紙を飾るのは,ピクトグラムである.様々な分野で活躍するファルマシア読者の姿をイメージしてデザインした.ご自身の姿と重なるピクトグラムは見つかるだろうか.見つからないという方は,ご自身の姿を表現するピクトグラムを思い浮かべてほしい.表紙のイメージよりも多くの分野の方々にファルマシアが届くことを願っている.

オピニオン
Editor's Eye
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
  • 反応経路自動探索法を用いた新反応開発
    美多 剛, 林 裕樹, 田中 耕作三世
    2025 年 61 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    量子化学計算を活用した有機合成反応経路の自動探索は、新しい反応の開発に役立つ。AFIR法(人工力誘起反応法)では、入力構造から全ての反応経路を自動的に探索し、遷移状態や中間体を特定できる。これにより、従来の有機化学の化学知識や経験に依存せず、複雑な反応経路を効率的に予測可能となった。筆者らは、AFIR法を使った逆合成と順合成によって、α,α-ジフルオログリシンなどの化合物合成に成功した。

セミナー
セミナー
最終講義
留学体験記 世界の薬学現場から
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
トピックス
  • 阿部 将大
    2025 年 61 巻 2 号 p. 152
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    光学的に純粋な化合物を得る不斉合成は,医薬品合成に必要不可欠な技術である.速度論的光学分割は,キラルな反応剤がラセミ体の一方のエナンチオマーと選択的に化学反応を起こすことで,もう一方のエナンチオマーと分割できる(図1A).しかし,この手法では最も理想的な条件下でも化学収率が50%を超えることはない.一方,「動的」速度論的光学分割では,出発物質にラセミ化平衡があるため,反応するエナンチオマーを絶えず供給でき,理論上100%の化学収率で光学的に純粋な生成物を得ることができる.今回Guanらは,この動的速度論的光学分割を活用したジアントラニリドの触媒的面性不斉合成を開発したので,本稿にて紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Guan C.-Y. et al., Nat. Commun., 15, 4580(2024).

    2) Olszewska T. et al., J. Org. Chem., 69, 1248-1255(2004).

  • 小林 梢真
    2025 年 61 巻 2 号 p. 153
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    ベンゼン環やピリジン環などの芳香族化合物/芳香族複素環化合物は,古くから医薬品設計において重要な役割を担ってきた.さらにクロスカップリング反応等の官能基化手法も発展したことで,今後の創薬化学研究においても不可欠な構造単位となっている.しかしながら,芳香環の平面性および高い脂溶性は,しばしば医薬品の溶解性や代謝安定性を損なうことが課題とされている.そのため近年,芳香族化合物を脱芳香族化しsp3炭素を多数有する構造へと変換することが,医薬品の物理化学的特性を改善し,より安全かつ有効性の高い治療薬を創出するための有力な戦略として注目されている.そのような背景のなか,本稿では後期段階飽和化反応(late-stage saturation: LSS)によって,薬物の物理化学的/薬物動態的特性を向上させる新しい方法論が提唱されたので紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Lovering F. et al., J. Med. Chem., 52, 6752-6756(2009).

    2) Liu D.-H et al., J. Am. Chem. Soc., 146, 11866-11875(2024).

  • 安本 周平
    2025 年 61 巻 2 号 p. 154
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    シャボンノキ(Quillaja saponaria)の樹皮から得られるトリテルペノイドサポニンQS-21(図1)は,優れた免疫アジュバンド活性を持ち,多くの臨床試験が進められている.QS-21は,C-28位の末端の糖の種類がアピオースのQS-21-Api,キシロースのQS-21-Xylの混合物である.今後の更なる利用のためには,QS-21を安定的に生産する手法が求められているが,その複雑な化学構造から化学的手法による全合成は難しい.本稿では,出芽酵母を用いた合成生物学的手法により単糖からQS-21やその類縁化合物合成を報告したLiuらの研究について紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Liu Y. et al., Nature, 629, 937-944(2024).

    2) Martin L. B. B. et al., Nat. Chem. Biol., 20, 493-502(2024).

    3) Reed J. et al., Science, 379, 1252-1264(2023).

  • 畑中 友太
    2025 年 61 巻 2 号 p. 155
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,開発される新薬候補化合物の多くが難水溶性を示し,経口投与時に十分な血中薬物濃度が得られないケースがある.難水溶性薬物の溶解性改善を目的として非晶質(アモルファス)化が検討されているが,非晶質状態の薬物は結晶と比較して不安定であり,結晶状態へと転移してしまう.そこで,非晶質の新たな安定化手法としてコアモルファスに関する報告が増加している.コアモルファスとは複数の低分子化合物から成る非晶質の一形態であり,化合物間の分子間相互作用が非晶質状態の安定化に寄与していると考えられている.コアモルファスを構成する成分間で共結晶が形成される場合,コアモルファスの保存や水分散時に共結晶へと転移する事例が報告されている.また,コアモルファスの安定化の観点から,高分子を添加しコアモルファスの共結晶化を抑制した報告がある一方で,高分子の添加により共結晶を調製することに成功した例もある.このように,コアモルファスの共結晶化における高分子の影響を体系的に報告した論文はほとんどないのが現状である.本稿では,固体状態におけるコアモルファスから共結晶への転移過程における結晶成長速度を薬物の分子運動性の観点から評価し,高分子添加の影響について言及したLuoらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Pekar K. B. et al., Cryst. Growth Des., 21, 1297-1306(2021).

    2) Luo M. et al., Mol. Pharm., 21, 3591-3602(2024).

    3) Ding F. et al., J. Pharm. Sci., 112, 513-524(2023).

  • 孫 雨晨
    2025 年 61 巻 2 号 p. 156
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    Small interfering RNA(siRNA)医薬品は,難治性疾患に対する新規医薬品モダリティとして注目されており,RNA干渉に基づく標的遺伝子の発現抑制により薬効を発揮する.これまでに,siRNA医薬品を含む核酸医薬品の副作用を考えるうえでは,核酸化合物の構造に起因する副作用に加えて,標的配列や標的配列以外へのハイブリダイゼーションに依存する副作用を考慮することが重要であると提唱されている.一方でsiRNAの導入自体が細胞死に与える影響は,これまでほとんど解析されていない.フェロトーシスは,プログラム細胞死の一種であり,鉄イオンに依存した脂質過酸化物の蓄積により細胞死が誘発される.本稿では,siRNAの導入により標的遺伝子非依存的にフェロトーシスに対する感受性が増強することを明らかにしたMässenhausenらの研究成果を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) ICH S6対応研究班,医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス,46,681-686(2015).

    2) Jiang X. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 22, 266-282(2021).

    3) von Mässenhausen A. et al., Sci Adv., 10, eadk7329(2024).

  • 大塚 勇輝
    2025 年 61 巻 2 号 p. 157
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)は,腸に慢性的な炎症を引き起こす難治性疾患である.通常,腸の上皮細胞同士は細胞間隙を埋めるように密着結合(tight junction: TJ)が形成されており,上皮組織表面は粘液により物理的な傷害から保護されている.これらの腸管バリア維持は,日々腸内細菌や食物からの刺激を受けている腸の恒常性維持に対し重要な役割を果たしている.しかし,IBD患者は腸管バリア機能障害を発症し,腸内細菌の粘膜内侵入を伴う慢性的な炎症が持続している.また,高シュウ酸尿症の発症リスクが高く,シュウ酸分解微生物であるOxalobacter formigenesはIBD患者の腸で減少している.さらにIBD臨床症状の1つであるIFN-γの上昇は,シュウ酸の腸管腔内への排泄に関与する推定アニオントランスポーター1(putative anion transporter-1: PAT1,SLC26A6)を減少させることが報告されている.本稿は,PAT-1の欠損が腸管バリアに影響を与え,IBDの病因と成り得る機序が初めて明らかにされたので,その研究成果について紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Saksena S. et al., J. Cell Biochem., 105, 454-466(2008).

    2) Anbazhagan A. N. et al., Gastroenterology, 167, 704-717(2024).

  • 松下 隼也
    2025 年 61 巻 2 号 p. 158
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    マルチオミクス解析は,転写物およびタンパク質等複数の網羅的解析データを統合して行う解析であり,複雑な生命現象を多面的に理解するうえで重要である.特に,化学物質による毒性発現は複数要因が複雑に絡み合うことが多いため,マルチオミクス解析はその機序理解に有用と考えられる.本稿では,重金属であるカドミウム(Cd)の主要な毒性の1つである肝毒性に焦点をあて,マルチオミクス解析を活用したCd誘発性肝障害の機序解析に関する事例を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Xie D. et al., Sci. Total Environ., 923, 171405(2024).

    2) Ma Y. et al., Int. J. Mol. Sci., 23, 13491(2022).

    3) Cannino G. et al., Mitochondrion, 9, 377‒384(2009).

  • 梨本 俊亮
    2025 年 61 巻 2 号 p. 159
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    ループス腎炎(lupus nephritis: LN)は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)に合併して生じる腎障害であり,その約10~30%が末期腎不全に移行し生命予後を悪化させる.LNにおける薬物治療は,ステロイドを第一選択薬として用い,重症例ではシクロホスファミド静注,あるいはミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil: MMF)のいずれかを併用する.このうちMMFは経口剤であり,その侵襲性の低さから欧米諸国で汎用されている.MMFは生体内で速やかにミコフェノール酸 (mycophenolic acid: MPA) に加水分解されるが,MPAは体内動態の個体内,個体間変動が大きく,投与量と血中濃度が相関しないことが知られている.そのため,TDMに基づきMMFの投与量を最適化する必要がある.成人患者においては,投与後12時間までの血中濃度曲線下面積(area under the curve0-12: AUC0-12)を30~45µg・hr/mL以上に保つことで良好な腎予後を得られたことがこれまでに報告されている.しかしながら,小児患者における目標血中濃度については症例数が限られており,これまで明らかにされていなかった.今回は小児LN患者を対象に,MPAの血中濃度と治療効果および副作用発現との関連性を解析したZhangらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) van Gelder T. et al., Nephrol. Dial. Transplant., 30, 560-564(2015).

    2) Łuszczyńska P., Pawiński T., Ther. Drug Monit., 37, 711-717(2015).

    3) Zhang L. et al., Rheumatology, 63, SI180-SI187(2024).

Information
薬学会アップトゥデイト
交信
会合予告
カレンダー
MEDCHEM NEWS 目次
学術誌お知らせ
談話室
  • 谷口 実由須
    2025 年 61 巻 2 号 p. 140_1
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル 認証あり

    最近知った「マインドフルネス」について紹介する。マインドフルネスは、「意図的に、今この瞬間に、価値判断することなく注意を向けること」と定義されている。マインドフルネス瞑想の効果は、近年、様々な研究によって検証されており、「集中力の向上」「セルフアウェアネス(自己認識能力)、セルフマネジメント力の向上」「コミュニケーション力の向上」が期待できることから、ビジネスでも注目されている。自分の日常に取り入れやすい方法を見つけて実践してみたい。

新刊紹介
クイズ「一問一答」/解答
クイズ「一問一答」/解答
クイズ「一問一答」/解答
次号掲載予告
正誤表
編集後記
feedback
Top