ミニ特集:(1)有機フッ素化合物PFAS (2)口腔ケア
ミニ特集にあたって:残留性と毒性への懸念から製造・使用が止められているPFASが,水道水に検出されて社会問題となったが,このPFASについては未だ不明な点が多い.ミニ特集(1)では,PFASに関する最新の知見について,紹介していただいた.健康で長生きするには「口腔ケア」による疾病予防が重要であり,薬剤師は地域住民の口腔健康管理によってQOL増進に貢献する.本ミニ特集(2)によって,口腔ケア商品や毎日の歯磨きを見直すきっかけになれば幸いである.
表紙の説明:61巻偶数号の表紙を飾るのは,ピクトグラムである.様々な分野で活躍するファルマシア読者の姿をイメージしてデザインした.ご自身の姿と重なるピクトグラムは見つかるだろうか.見つからないという方は,ご自身の姿を表現するピクトグラムを思い浮かべてほしい.表紙のイメージよりも多くの分野の方々にファルマシアが届くことを願っている.
「患者のための薬局ビジョン」では、かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき機能が示され、その中で患者等のニーズに応じて強化・充実すべき機能として挙げられているのが、「健康サポート機能」である。ここでの薬剤師の役割としては、地域住民による主体的な健康の維持・増進を積極的に支援するため、医薬品等の安全かつ適正な使用に関する助言を行うこととしている。そして、健康の維持・増進に関する相談を幅広く受け付け、必要に応じ、かかりつけ医をはじめ適切な専門職種や関係機関に紹介することがうたわれている。薬剤師の活躍が期待される健康サポートや疾病予防分野では,統合医療が中心となるため、薬学教育において当該医療の理解を深める機会が望まれる。
投げ縄(lasso)構造でリボソームを狙う新規抗菌ペプチド,ドーパミンはTauタンパク質の凝集を抑制する?,核酸医薬品のジアステレオマーの分離はどこまで可能か?,慢性疼痛を制御する新たな神経細胞集団の発見,超高齢社会におけるがん薬物療法の課題―高齢患者を支える多職種連携の方向性―,国内でスイッチOTC化された初めてのED治療薬
PFASによる環境汚染に注目が集まっている.2020年に代表的なPFOSとPFOAについて水道水などに目標値50 ng/Lが設定されて以降,目標値を超過する事例が各地で出てきている.2024年5月には国土交通省と環境省が自治体,事業者などへ水道水のPFAS検査の実施と報告を要請した.専用水道での目標値超過も複数報告されており,2026年4月からの基準項目への格上げが決まった.欧米ではその他,多種のPFASについての規制も検討されており,対応が迫られている.健康影響について環境省のエコチル調査や研究助成事業でもはじまっており,さらなる知見を加わえたリスク評価が期待される.
有機フッ素化合物PFASは、その有用性から1950年代以降、広く利用されてきた。しかし近年、その環境中での難分解性や生物蓄積性、さらにはヒトへの曝露と健康影響が国際的に懸念されている。PFASは日本においても水道水から検出が報告されており、さらに食事経由、特に食用魚介類を介した曝露があると考えられる。主要なPFASであるPFOA、PFOSはヒトで腎クリアランスが乏しく、げっ歯類と比べて血中半減期がはるかに長い。PFASの曝露と体内動態の解明に向けた包括的な研究が求められている。
PFAS は化学的に安定で環境中に長期にわたって残留し、ヒトがこれらを摂取することによる健康への影響が懸念されている。PFAS の中でも多く使用されてきたペルフルオロカルボン酸はヒトにおける血中濃度半減期が他の動物に比べて長い。また、ラットにおいては顕著な性差も認められる。体内動態や組織分布における動物種差や性差、また、化合物の炭素鎖長の違いによる体内動態の差異およびその原因となる生体側の因子について概説する。
膨大な数のPFAS関連物質の中からヒトへの健康リスク評価として優先すべき化合物(群)の選別が急がれている。PFOAを曝露させたヒト肝細胞様HepaRG細胞の網羅的な遺伝子発現解析から得られた分子開始イベント(MIEs)やシグナル経路を紹介する。主要なMIEsである核内受容体PPARα活性化能を指標に見出されたPFOAの代替物質HFPO-DAをマウス胎児期に曝露させた実験では、PFOA曝露よりも仔マウス肝臓への影響が大きいことを示唆する知見も紹介する。
超高齢社会の日本において,さらなる健康長寿を目指すためには,う蝕や歯周病のような歯科疾患を予防し健康な歯を多く残していくことが重要であり,口腔健康管理は疾病予防における重要領域の1つでもある。口腔健康管理は,関係機関や各種専門職が相互に連携しながら各々の立場で推進していくことが重要といえる。特に住民にとって身近な地域の薬局や薬剤師が口腔健康管理も含めた予防医療に果たす役割は非常に大きい。
私たちの体には、眼、口腔、気道、肺、皮膚、腸管など多くのバリア組織があり、それらが外来刺激に対するシグナルを調整し、恒常性を維持している。その中でも口腔は花粉などのアレルゲン、細菌、真菌、ウイルスなどの微生物コミュニティ(マイクロバイオーム)、食物、さらには咀嚼による咬合刺激(メカニカルストレス)など、多様な外来刺激に常にさらされている。このような特異な環境によって、口腔粘膜にはユニークな免疫システムが形成されている。近年、この免疫システムが外部刺激を制御し、粘膜組織の恒常性を保っていることが徐々に解明されはじめた。本稿では、最新の研究成果を交えながら、口腔粘膜の免疫機構を紹介する。
近年,歯周病が糖尿病をはじめとする多様な疾患のリスク因子となる可能性が報告されている.また,フレイル予防の観点からも口腔機能の維持はQOL向上に寄与する.薬局薬剤師が積極的に関与することで,口腔の健康維持に貢献できる可能性は高い.本稿では,薬局で取り扱う口腔ケア商品例(歯磨剤・洗口剤等)と栃木県薬剤師会の取り組みを紹介し,薬局薬剤師が担う口腔ケアの意義と今後の展望について概説した.
多発性硬化症は中枢神経系の脱髄による運動麻痺や感覚障害を主症状とする難治性脱髄性疾患である。これまでの脱髄研究では、病態モデルを用いた基礎研究から治療薬の開発が進められてきた。本稿では、筆者が新たに開発した脱髄モデルマウスと薬剤評価系、およびモデル開発の過程で見いだした髄鞘の再生阻害機構の一端を紹介したい。
本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
本稿は,厚生労働省医薬局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和7年9月19日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
大学院の研究テーマとして小腸の薬物代謝酵素に関する研究を選んだが、半年間思うような結果を出すことができず、無念のうちに別の研究テーマに変わった。その後、退職を迎えるまでには、大麻草の種子の鑑別やヒトES細胞・iPS細胞の分化誘導、さらには、アリ、モグラ、大型霊長類など実にバラエティに富み、とてもユニークな研究に関わった。これらの研究内容は全く異なるが、いずれも多くの方々の支援があってこその研究である。
筆者は2019年4月から現在に至るまで、ベルギー王国のUniversité Libre de Bruxelles (ULB) Center for Diabetes Research (UCDR)、Prof. Miriam CnopのもとでPostdoctoral researcherとして研究に従事している。留学体験記を執筆する機会をいただいたので、この機会に渡欧の経緯や現地での経験を率直に記し、海外での挑戦を考えている方の参考になれば幸いである。
筆者は、大学院時代、「長井記念薬学研究奨励支援事業」に採択され、経済的支援と「期待されている」という実感が研究の原動力となった。現在、筆者は製薬企業で学生時代に培った有機合成のスキルを活かして、放射線医療や再生医療へのペプチドの応用を目指して研究を行っている。本事業は学生の研究継続の心理的動機付けを強化するものであり、本稿が博士課程への進学を志す後輩学生たちの励みになることを願っている。
長井記念薬学研究奨励支援事業は,筆者が博士課程への進学を前にした不安や,進学後の苦しい時期を乗り越える上で,大きな助けとなった.申請書の作成過程では,自身の研究を深く見つめ直す機会となり,多くの学びを得た.採用後は,経済的支援と申請内容への評価を励みとして研究に専念できたことで,学生生活を乗りきることができた.この経験から,筆者は進学に悩む学生に,本事業への応募を強く勧めたい.
フランの還元により得られるジヒドロフランやテトラヒドロフランは,医薬品や化成品に広く見られる骨格である.植物由来原料から入手可能なフラン類を用いた反応開発は,持続可能な化学合成反応の発展に重要である.フランの還元には,遷移金属触媒による方法が開発されてきたが,高温高圧条件を必要とし,ジヒドロフランへの部分還元に成功した例は希少である.またBirch還元条件下での部分還元は,カルボン酸が置換した電子不足なものに限定される.そこで,より穏和な条件下におけるフラン類の還元反応の開発が望まれている.
このような背景のもと,Frankらはブレンステッド酸触媒存在下,シランを還元剤とするフラン1の選択的還元反応に成功したので,本稿にて紹介する.条件最適化の結果,1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)が反応溶媒として最適であった.続いて,本反応の基質適用範囲の一部を示す.まず3-フェニルフランから,トリフルオロ酢酸(TFA)を用いた条件aにより2,5-ジヒドロフラン2aを得た.続いて,より酸性度が高いトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)を使用した条件bにより3-フェニルフランからテトラヒドロフラン3aを得た.基質に応じて,酸の強さを選択する必要はあるが,3位にアルキル基が置換した2bはTfOHにより得られた.さらに無置換フランから,2,5-ジヒドロフラン2cへのグラムスケールでの還元反応にも成功した.しかし2位置換フランでは,条件aを用いても対応するジヒドロフランは得られず,テトラヒドロフラン(3b,3c)を得た.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Frank N. et al., J. Am. Chem. Soc., 147, 7932-7938(2025).
Proteolysis targeting chimera(PROTAC)は,標的タンパク質リガンドとユビキチンリガーゼ(E3)リガンドをリンカーで連結したヘテロ二官能性分子である.PROTACの作用機序におけるリンカーの役割は非常に重要であり,三者複合体形成のみならず,物理化学的特性にも影響を与える.PROTACは高分子量かつ構造が直線的であるため,細胞膜透過性が低くP糖タンパク質(P-gp)を介した排出を受けやすいという課題がある.近年,リンカーの最適化を通じて分子の動的構造変化を制御し,物理化学的特性を改善する“linkerology”という研究分野が展開され,直線的なリンカーだけでなく,複素環やスピロ環,架橋環など多様なリンカー設計が行われている.そうしたなか,Alessandraらは従来とは異なる構造的アプローチとして,フェロセンという有機金属構造をリンカーに導入したferrocene-PROTAC(FerroTAC)を新たに報告したので,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Zografou-Barredo N. A. et al., Bioorg. Med. Chem., 88-89, 117334(2023).
2) Alessandra S. et al., J. Am. Chem. Soc., 147, 13328-13344(2025).
微生物は,安価な材料から高付加価値な化合物を生産する工場として活用されている.従来型酵母と呼ばれるSaccharomyces cerevisiaeはそのゲノム情報が完全に解読され,また遺伝子編集ツールも豊富に揃えられていることから,真核モデル微生物として広く利用されている.一方,高温や低pH環境に強く,多様な基質を利用でき,優れたタンパク質発現能力などを持つ非従来型酵母が近年注目されている.例えばYarrowia lipolyticaは,細胞内に多くの脂肪滴を蓄積し疎水性環境を自然に形成するため,テルペノイド,フラボノイド,油脂などの生産に適している.しかし,相同組換え効率の低さと遺伝子編集ツールの不足が課題である.本稿では,Cas9の改良や遺伝子導入の影響が小さい場所(中立部位)の網羅的探索により,高効率かつ高発現する遺伝子挿入部位を予測し,Y. lipolyticaでの植物由来アルカロイドとフラボノイドの合成により,本プラットフォームの実用性を証明したZhangらの研究を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Zhang C. et al., ACS Synth. Biol., 14, 585-597(2025).
2) Pyne M. E. et al., Nat. Commun., 11, 3337(2020).
3) Qin Z. et al., J. Agric. Food Chem., 72, 5348-5357(2024).
光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)は,がん組織に集積させた光感受性物質(photosensitizer: PS)に特定の波長の光を照射し,一重項酸素などの活性酸素種を発生させることで,がん細胞の細胞死を誘導する治療法である.非侵襲的で副作用が少ないことから,有効ながん治療戦略として期待されている.しかしながら,一般的なPDTで実施されている生体外部からの光照射では,光の透過性が低く生体深部への適応が制限されるという大きな課題があった.一方近年では,生体内で発光する化学発光,生物発光,チェレンコフ光(Cherenkov light: CL)などの内部光源を利用してPSを励起する方法が注目されている.本稿では,核医学診断にも使用可能な放射性核種由来のCLを内部光源としたPDT(CL-PDT)に関して紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Blum N. T. et al., Front. Bioeng. Biotechnol., 8, 594491(2020).
2) An Y. et al., J. Am. Chem. Soc., 147, 11964-11974(2025).
3) Han S. et al., Nature, 587, 594-599(2020).
4) Mao D. et al., Sci. Adv., 6, eabb2712(2020).
Proteolysis-targeting chimera(PROTAC)は,標的タンパク質に対するリガンドとE3ユビキチンリガーゼに対するリガンドをリンカーで結合させたヘテロ二機能性分子であり,標的タンパク質にE3ユビキチンリガーゼを近接させることで,標的タンパク質のユビキチン化とプロテアソームによる分解を促す.PROTACは,その作用機序の性質上,標的タンパク質の活性部位に対するリガンドを用いる必要がない.したがって,PROTACは従来の低分子による創薬アプローチが困難とされたタンパク質(転写因子や足場タンパクなど)に対しても介入可能であり,革新的治療戦略として注目を集めている.PROTACは分子量および極性表面積が大きいため,受動拡散によって生体膜を通過することが困難とされている.一方で,PROTACには細胞質内へ到達し薬効を発揮するものや経口投与により体内に吸収されて機能するものも存在し,その膜透過性と薬理活性との関係を受動拡散モデルでは十分に説明することができない.本稿では,PROTACの細胞内取り込み機構を明らかにしたWangらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Scott D. E. et al., ACS Med. Chem. Lett., 11, 1539-1547(2020).
2) Wang Z. et al., Cell, 188, 3219-3237(2025).
トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は,抗HER2抗体であるトラスツズマブに,トポイソメラーゼ阻害剤デルクステカン(DXd)を結合させた抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate: ADC)である.T-DXdは腫瘍細胞の細胞膜上に発現するHER2に結合し,細胞内へ取り込まれたDXdがDNA傷害作用などを示すことにより,HER2高発現の腫瘍に対して増殖抑制効果を示す.さらに近年,HER2低発現/陰性の腫瘍に対しても効果を示すことが明らかとなり,適応の拡大が実現した.DXdは細胞膜透過性を有することから,HER2高発現の腫瘍のみならず,近傍のHER2低発現/陰性の腫瘍細胞にも取り込まれて抗腫瘍効果を発揮すると考えられている(バイスタンダー抗腫瘍効果).しかし,この効果はHER2高発現細胞の存在を前提としている.そのため,HER2低発現/陰性の細胞のみから構成される腫瘍においては,T-DXdの有効性を十分に説明することができない.本稿では,HER2低発現/陰性腫瘍において,T-DXdがHER2結合や内在化を介さずに活性を示すことを明らかにした報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Ogitani Y. et al., Cancer Sci., 107, 1039-1046(2016).
2) Tsao L. C. et al., Nat. Commun., 16, 3167(2025).
3) Shiose Y. et al., Biol. Pharm. Bull., 30, 2365-2370(2007).
メタボリックシンドローム(metabolic syndrome: MetS)は世界中で有病率が増加している.この対策の1つとして,機能性食品としての発酵食品が注目されている.発酵とは,微生物を利用して食品をヒトにとって有益な状態に変化させることである.古来より保存性を高めるために利用されてきたが,近年は脂質や糖代謝異常の改善効果をはじめ,健康への影響も明らかになり始めている.また,有益な乳酸菌等を用いて新たな発酵食品を開発する試みもある.本稿では,新たな機能性食品としてカロテノイド(carotenoid: CAR)と植物ステロール(phytosterols: PS)を強化した発酵食品がMetSに及ぼす影響について示した論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Dhuique-Mayer C. et al., Food Funct., 16, 2881-2892(2025).
2) Beydoun M. A. et al., Nutr. Rev., 77, 32-45(2018).
3) Nattagh-Eshtivani E. et al., Phytother. Res., 36, 299-322(2022).
近年,抗菌薬の不適切な使用に起因する薬剤耐性(antimicrobial resistance: AMR)の拡大は,国際社会で公衆衛生上の重要な課題とされている.適切な対策が講じられない場合,AMRによる年間死亡者数は2050年には全世界で1,000万人にも及ぶと推計されている.我が国においても,「抗微生物薬適正使用の手引き 第三版」には薬剤師から患者への具体的な指導例が記載されており,AMR対策における薬剤師の関与が期待されている.
抗菌薬の適正使用状況やAMRに対する患者の認識は,国や地域によって大きく異なる.我が国では,2020年11月から2021年1月にかけて,東京都内の保険薬局に来局した患者1,887名を対象に行われた調査が存在する.患者の72%はAMRを知らず,28%の患者が医師の処方通りに抗菌薬を服用していないと回答した.薬剤師から抗菌薬の正しい使用方法について適切な指導を受けたことがないと回答した患者も17%にのぼっている.この研究では,抗菌薬に対する認識を改善するためには,医師および薬剤師の積極的な介入の必要性を強く示唆している.
国際的なAMR対策を進めるうえで,抗菌薬が容易に入手可能な国における現状の把握は重要である.本稿では,2023年にベトナムにおいて処方箋なしに薬局で販売される抗菌薬の実態を明らかにするために,模擬患者(simulated patient: SP)法を用いて実施された調査報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課,“抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編”,2023年11月16日.
2) Hasegawa K. et al., J. Infect. Chemother., 30, 887-891(2024).
3) Do T. A. et al., Explor. Res. Clin. Soc. Pharm., 18, 100590(2025).
4) Jarab A. S. et al., Antimicrob. Resist. Infect. Control, 13, 35(2024).
令和7年6月30日に発出された「水質基準に関する省令の一部改正及び水道法施行規則の一部改正等について(施行通知)」において,ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)の2物質は,令和8年4月から水道事業者等に遵守・検査義務が課される「水質基準項目」に追加されることが通知され,0.00005 mg/L (50 ng/L)の水質基準値が設定された。
2025年7月に、広島大学名誉教授、元日本薬学会会頭でいらっしゃる木村榮一先生がご逝去されました。本稿では木村先生の大環状ポリアミンとその金属錯体の開発と応用、超分子科学への展開に関する世界的な研究業績と、日本薬学会および日本の薬学教育と研究に対する多大なご貢献をご紹介し、木村先生への追悼文とさせていただきます。
薬剤師の仕事は多くが患者とのコミュニケーションであり、声色や間合いによって医薬品の効果や安心感が左右される。近年、ChatGPTのようなAIが情報整理に有用であるが、患者に寄り添ったことばを選ぶ感性は持ち合わせていない。薬もAIも光と影、利点とリスクを併せ持つため、適切な使用が不可欠である。AI時代においても、薬とことばを橋渡しする薬剤師の役割は揺るがず、人間にしか果たせない価値を持ち続けると思う。