特集:ファルマシア・シンバイオシス
特集にあたって:DDS等に用いられる人工材料には安全性が強く求められる.一方,多くの人工材料が高分子,あるいは,様々な分子の集合体であるため,一般的な低分子とは異なる生体応答があると考えられる.これらの解明と制御を目的とした文部科学省科学研究費助成事業学術変革領域研究(A)「物質共生」が今年度に最終年を迎えることをうけて,本研究分野で活躍されている先生方を中心に執筆いただいた.本研究が実を結び,安全かつ効果的な新規DDS,ならびに新たな医療モダリティが生まれることを期待している.
表紙の説明:バイオ医薬品や生体適合材料など,様々な機能性分子が開発されている.これらの「非自己物質(マテリアル)」と生体との共生は,安全な創薬を達成する上での大きな目標となる.この目標に向けた研究の飛躍を願い,人間の生体内における究極的な共生形態である「母体」と「胎児」をモチーフとしたイメージを作成した.これは,文部科学省科学研究費助成事業学術変革領域研究(A)「物質共生」(令和2~6年度)に採用されたものである.
生体適合性は医薬材料としても不可欠である。これまで生体に認識されにくいバイオイナートな材料が生体適合性材料の設計指針であったが、生体の異物認識機能は、環境の変化とともに変わりうる。生体に安全かつ有益と判断させる能動的生体適合が、より合理的な設計指針と考えられる。学術変革「物質共生」から、このような設計指針が生み出されることを期待したい。
ホウ素触媒を用いてエステルをアルデヒドへ還元,広範囲のKRAS変異型がんを標的とするPROTACの創出,腫瘍治療電場療法における電場強度の制御とその予測,ユビキチンリガーゼ阻害薬の抗フラビウイルス薬としての可能性,ペルオキシレドキシン6は細胞内セレン運搬を介してフェロトーシスを制御する,「新しい認知症観」に立って
本稿では、核酸医薬の基礎を概説するとともに、免疫応答回避のための技術的アプローチとしての化学修飾およびDDSについて解説する。核酸医薬は特異的なDNA・RNA標的化を可能とする次世代治療手段として期待される一方、生体内での免疫応答制御が課題となっていた。化学修飾やDDS技術により、核酸センサーによる免疫認識を回避し、効率的な細胞への核酸の送達が実現可能となり、今後の臨床応用への可能性が大きく広がることが期待される。
細胞表面タンパク質、特に免疫細胞表面受容体は、細胞の基本的機能を制御する重要な反応起点である。免疫システムは、これら活性型および抑制型受容体の速く弱い分子間相互作用の集積によって、シグナルバランスの調節し、生体恒常性維持を実現している。近年では、多様な免疫チェックポイント受容体を創薬標的として注目され、分子間相互作用定量解析と構造生物学的モデルを通した新規治療法やモダリティ創出が期待される。
アレルゲン免疫療法(AIT)はアレルギーを根治する治療法であり、舌下製剤や皮下製剤が使用されているが、副作用や長期的な治療継続が課題となっている。理想的な製剤は副作用がなく短期間で効果を発揮するものであり、免疫寛容を効率的に誘導する技術の開発が進んでいる。特に、糖鎖の応用やマンナン・アレルゲン複合体が注目されており、今後、安全性と効果を兼ね備えた治療法の実現が期待される。
日進月歩のコンピュータは,科学技術や我々の日常生活に長年大きな影響を与えてきた.コンピュータを駆使した最先端のシミュレーションは,モデルや計算法の改良と相まって,バイオ分子やバイオマテリアルの振る舞いを原子解像度で観察することを可能にしている.本稿では,生体内で分子間に働く『弱い相互作用』を研究するための手段として有用性を増している最先端シミュレーションの一端を紹介する.
低分子やタンパク質がどのようなRNAの構造を好んでいるのか,強い相互作用だけでなく,弱いものも含め正確かつ大規模に解析することはこれまで困難であった.このような解析ができれば,対象分子の選択性を厳密に評価でき,さらにこれまで見逃されていた相互作用の発見にもつながる.本稿では,RNA構造ライブラリとDNAマイクロアレイを利用し,タンパク質や低分子がどのようなRNAの構造を好むのかを一度の測定で一挙に解析できる新しい方法に関して紹介する.
低分子医薬、抗体医薬に次ぐ第3のモダリティといわれる核酸医薬品の開発が活発化している。核酸医薬品開発の成功は化学修飾核酸の技術の発展に基づくものである。一方、核酸医薬品設計に必須である化学修飾核酸が、当初想定していなかった重篤な肝毒性や神経毒性を誘起する懸念事項が生じている。本稿ではアンチセンス核酸を中心に、近年明らかとなってきた化学修飾核酸による毒性発現機構ならびに、毒性軽減法について紹介する。
免疫系は、外部から侵入してきた異物や、体内に発生した異常細胞に対する防御・排除機構としてはたらくだけでなく、食物や腸内細菌に対する免疫寛容を通じて、人体の恒常性維持にも深く関わっている。このような免疫系のはたらきを理解し、その機能を適切に利活用できれば、感染症・がん・アレルギー・自己免疫疾患など、重篤疾患に対する画期的な治療・予防技術の開発につながると期待されている。本稿では、高分子化学と脂質化学に基づく材料科学の観点から筆者らが進めてきた免疫工学的アプローチ、特にがん免疫を誘導するための免疫応答制御システムについて紹介する。
磁場によって神経活動を制御する磁気遺伝学(マグネトジェネティクス)が、ここ10年で急速な発展を遂げている。磁気遺伝学では、磁場により熱や磁力を発生させる磁性ナノ粒子を用いて、遺伝子工学的に発現させた温度感受性チャネルや機械受容チャネルを開口し、神経活動を誘発する。本稿では、磁気熱効果と磁気機械効果を用いた磁気遺伝学を中心に、近年の動向について概説する。
ナノ粒子製剤やタンパク質製剤などに修飾されたポリエチレングリコール(PEG)は、免疫原性を獲得し、抗PEG抗体を誘導する.抗PEG抗体はPEG修飾製剤の効果を抑制するだけでなく、副反応の誘導因子としても作用することが言われている.近年、COVID-19 mRNAワクチンも抗PEG抗体を誘導することが報告された.そこで本項では、PEG修飾ナノ粒子を中心に、抗PEG抗体に関するこれまでの知見をポストコロナ時代に改めて述べたい.
核酸医薬は化学合成可能な中分子医薬であり、従来型の低分子医薬や抗体医薬では治療が困難であった疾患の画期的治療薬になりうると期待されている。一方で、望みの細胞や組織以外での薬効発現に由来する副作用が懸念されている。本稿では、さまざまな刺激に応答して構造や機能性を変化させる人工核酸の開発と疾患選択的な医薬素材としての応用について、著者らの最近の研究成果を中心に紹介する。
本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
今回は,60巻12号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
エストロゲン・プロゲスチン配合剤は月経困難症治療薬として使用されている。
本剤は新規天然型エストロゲンであるエステトロール(E4)とドロスピレノン(DRSP)を配合した新しい月経困難症治療剤である。
第II相試験において、本剤投与群ではエチニルエストラジオール(EE)/DRSP配合剤投与群と比較して、静脈血栓塞栓症のマーカーの一つであるAPC抵抗性増加量が軽度であった。第III相試験では、月経困難症に対する有効性・安全性が検証された。
ルプキネスの有効成分であるボクロスポリンは、ループス腎炎の治療薬としてAurinia Pharmaceuticals Inc.が開発した新規のカルシニューリン阻害薬(CNI)です。
ルプキネスは小規模探索的非盲検試験(AURION試験)、第Ⅱ相及び第Ⅲ相の二重盲検プラセボ対照試験(AURA-LV試験及びAURORA1試験)、第Ⅲ相長期継続試験(AURORA2試験)等の試験の結果により有効性及び安全性が検討されました。これらの結果から、わが国では2023年11月に製造販売承認申請を行い、「ループス腎炎」を効能又は効果として2024年9月に製造販売承認を取得しました。
ChromaJeanは、「クロマトグラフィーを変えて、研究を変える」ことを標榜する。
研究者の膨大な労力を必要とするクロマトグラフィープロセスに対して、たった数回PC画面上のクリック作業で完了できることを可能にした。DXとGXを同時に実現する。
これにより、従来と比べて労力と時間を著しく削減できることが複数の製薬企業やCROにて確認されている。日本発祥・世界初となるクロマトプロセスの変革が、創薬を一変させる。
名古屋市立大学大学院薬学研究科薬用植物園を紹介する.講義棟のすぐ西側にあり,1年次の生薬学の講義の終了後,すぐに学生を連れて行き,講義で紹介したばかりの生薬の基原植物を解説するなどして利用している.本園の維持管理は,生薬学分野の教員が維持管理を行っているが,実際は市内在住のボランティア頼りの運営となっている.銘板は,情報を印刷したコピー用紙をラミネート加工したものを使用し,コスト減に努めている.
これまで薬学部、理学部、医学部を横断しながら、一貫してドパミン神経を研究対象としてきた。当時から分野を横断した研究スタイルが推奨される風潮はあったが、実際には「横断歩道」のように整備された道があったわけではなく、好奇の赴くままに好きな道を進んできたように思う。その間、本当にたくさんの出会いがあり、学びがあり、現在の研究の礎になっている。これから進むこの先には、一体どんな景色が待っているのだろう?想像するだけでも楽しい!
筆者は副作用の少ない医薬品の開発を目指して薬学の道に進み、大学時代はがん特異的トランスポーターのバイオマーカー開発や、当該分子を標的とする新規遺伝子治療法の研究開発に従事した。国立医薬品食品衛生研究所では、医薬品の重篤副作用に対する新規安全性バイオマーカーの開発研究や核酸医薬品の測定法の開発も進め、副作用の軽減および予測を軸にした安全性研究を続け、医薬品行政の発展に貢献することを目指している。
ベンゼン環の開環反応は困難である.その原因として①共鳴安定化していること(36kcal/mol),これにより②結合解離エネルギー(147kcal/mol)が高いこと,③ベンゼン環のC-C結合の開裂に対してベンゼン環の外側にあるC-H結合の活性化が競合しており,C-C結合の選択的開環反応が阻まれることが挙げられる.そのため,ベンゼン環の反応はC-H結合の官能基化や脱芳香族化がよく知られている一方で,鎖状共役化合物が得られる開環反応は開発不十分である.今回Chengらは,ベンゼン環に導入したアジド基のオルト位に高反応性のカルベンを発生させることでベンゼン環の開環に成功したので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Cheng Z. et al., J. Am. Chem. Soc., 146, 16963-16970(2024).
DNA-encoded library(DEL)は,大規模な化合物ライブラリーのスクリーニングを迅速に行うことのできる有用な手法である.DELの構築においては,化合物の構造情報がDNA配列でエンコードされた形で合成がなされる.これによって大規模な化合物ライブラリーのなかから,標的タンパク質に結合する化合物の構造を迅速に同定することが可能である.現在,世界中の研究者によって,ケミカルプローブおよび薬剤候補分子の探索にDELが活用されている.しかしながら,水溶液中でライブラリー構築を行うDELにおいては,DNAが溶解する水溶液中でDNAの損傷を抑えながら化合物合成を行う必要があるため,用いることのできる反応条件に大きな制約がある.そのために反応が定量的に進行せず,合成された化合物の構造がDNAにエンコードされた構造情報と対応しなくなるという問題がしばしば生じてしまう.このような問題を解決する手段として,Kellerらにより固相合成と2段階切断反応を利用した新規DEL構築法が開発されたので,以下に紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Keller M. et al., Science, 384, 1259-1265(2024).
2) MacConnell A. B. et al., ACS Comb. Sci., 17, 518-534(2015).
天然化合物は生体反応により生成される特徴的な部分構造を有することで,医薬品や農薬などの新薬開発につながるユニークな生物活性を示すことがある.インドール骨格は,構造が持つ反応性の高さゆえに生体分子と相互作用し,生物活性を発揮する可能性の高い基本構造であり「プリビリッジド・ストラクチャー(privileged structure)」と呼ばれ,新薬の開発につながる母核として注目されている.例えば,インドール構造を有するトリプトファン由来の天然化合物であるビンブラスチンとカンプトテシンは,それぞれ微小管重合阻害とDNA I型トポイソメラーゼ阻害活性を持つことから,抗がん剤として臨床応用されている.本稿では,植物内生菌からγ-ラクタム骨格や,インドール骨格に由来する部分構造を有する新規テルペノイドpenindolenes A~Dを単離し,その生合成に関わる新たな遺伝子を発見したMengらの研究を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Xu W. et al., Nat. Prod. Rep., 31, 1474-1487(2014).
2) Meng L. H. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 63, e202403963(2024).
3) Meng L. H. et al., Org. Lett., 18, 5304-5307(2016).
歯周病の最重要菌であるPorphyromonas gingivalisや土壌細菌のFlavobacterium jhonsoniaeなどのバクテロイデス門には,様々なプロテアーゼの分泌に関わる9型分泌装置(T9SS)が広く存在している.P. gingivalisは,そのプロテアーゼによって分解したタンパク質を栄養源として利用しており,また,その中でも特に強力な活性を示すジンジパインは,歯周病の病原性に直結することが知られている.1)一方で,F. jhonsoniaeなどの滑走細菌ではT9SSの機能が,滑走機構に応用されている.
病原性や滑走において鍵となるT9SSから分泌されるタンパク質は全てC terminal domain(CTD)を有することが明らかになっているが,T9SSの分泌機構やトランスロコンと呼ばれる外膜領域の構造には不明な点が多い.ここでは,T9SSのトランスロコンの構造学的な特徴を明らかにしたLauberらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Sato K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 107, 276-281(2010).
2) Sato K. et al., Mol. Microbiol., 110, 64-81(2018).
3) Lauber F. et al., Nat. Microbiol., 9, 1089-1102(2024).
脳卒中は「寝たきり」の原因として最も多く,超高齢化社会が加速する日本では,急激な患者数増加が予測されている.特に高齢者では,脳卒中発症後に片麻痺などの後遺症を残す可能性が高いことが知られている.また,この脳卒中後の後遺症には慢性炎症が関与し,免疫細胞が病態進展の中心を担うことが報告されている.脳の免疫細胞には,脳実質内に存在するミクログリアに加え,髄膜や血管周囲腔に局在する中枢神経系関連マクロファージ(central nervous system-associated macrophages: CAMs)が存在する.これまでの中枢神経系疾患における研究はミクログリアの役割に注目したものが多く,CAMsの役割については不明な点が多い.そこで本稿では,加齢に伴うCAMsの形質変化が脳卒中後の運動機能低下に影響を及ぼすことを明らかにしたLevardらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Jordão M. J. C. et al., Science, 363, eaat7554(2019).
2) Prinz M. et al., Annu. Rev. Immunol., 39, 251-277(2021).
3) Levard D. et al., Nat. Neurosci., 27, 1721-1733(2024).
ヒトの寿命を議論するとき,平均寿命だけでなく健康寿命についても考えることが重要である.健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされ,厚生労働省発表の資料では,2019年の時点で男性が72.68年,女性が75.38年とある.健康寿命の延伸に向けた老化研究は近年活発に行われ,老化した細胞の除去薬(セノリティックドラッグ)やワクチンなどの魅力的な創薬研究が展開されている.
ヒトは,一定の年齢を超えると加齢とともに臓器機能が低下する.筋力や代謝機能,認知機能などが低下し,サルコペニアや糖尿病,アルツハイマー病といった加齢性疾患の発症につながる.老化のメカニズムとしては,細胞のテロメア(DNA末端)短縮や臓器中の幹細胞枯渇などに加え,分裂寿命やDNA傷害を受けた細胞が陥る細胞老化や,加齢に伴う慢性炎症が注目されている.このような老化のメカニズム解明や,その制御に向けた研究が進められている.本稿では,生体の慢性炎症に重要なサイトカインの遺伝的,薬理学的制御による健康寿命の延伸に関する報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) López-Otín C. et al., Cell, 186, 243-278 (2023).
2) Widjaja A. A. et al., Nature, 632, 157-165 (2024).
3) Castillo-Quan J. I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 116, 20817-20819(2019).
オキシトシンは脳内の視床下部で合成され,下垂体後葉から血中へと分泌される.オキシトシンは子宮収縮などの末梢作用に加え,社会行動(対人コミュニケーションの促進)や信頼関係の形成などの中枢作用も有する.脳内のオキシトシン神経回路(オキシトシン系)は生後に発達するため,その機能は発達期における社会的な環境・経験の影響を強く受ける.発達期における家族や友人とのスキンシップは,オキシトシン系を活性化して成体期での適切な社会行動を可能にする一方で,虐待などの逆境的経験はオキシトシン系の活性を低下させ,自閉スペクトラム症(autism spectrum disorders: ASD)を含む様々な精神疾患のリスクとなる.
ASDは社会的コミュニケーション障害を中核症状とする神経発達障害であり,特効薬がない.そのなかで,ASD治療に対してオキシトシンの有効性が示されているため,オキシトシンに新規治療薬としての期待が集まっている.しかし,その有効性に関して否定的な研究報告もあるため,オキシトシンによる中枢への作用のさらなる解明が必須の課題である.そこで本稿では,オキシトシンと社会行動,そしてその作用変化にかかわる要因を検討したPantouliらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Lim M. M., Young L. J., Horm. Behav., 50, 506-517(2006).
2) Grinevich V., Neumann I. D., Mol. Psychiatry, 26, 265-279(2021).
3) Erdozain A. M., Peñagarikano O., Front. Psychiatry, 10, 930(2020).
4) Pantouli F. et al., Neuropsychopharmacology, 49, 1934-1946(2024).
5) Liu C. et al., Behav. Brain Res., 469, 115052(2024).
せん妄は見当識障害,まとまりに欠ける言動,幻覚や妄想を伴った興奮など,急性の意識混乱状態であり,特に高齢者の入院中の発症頻度が高い.せん妄の発症は,死亡リスクの増加,不可逆的な認知機能低下などと強く関連するため,発症を予防することは極めて重要である.不眠症治療薬の1つであるオレキシン受容体拮抗薬のスボレキサントは,メタ解析においてせん妄リスク低減効果が示唆されてきたが,最近のランダム化比較試験ではこれまでと異なる見解が示された.本稿では,スボレキサントによるせん妄リスク低減効果を明らかにすることを目的としたHattaらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Xu. S. et al., Medicine(Baltimore), 99, e21043(2020).
2) Hatta K. et al., JAMA Netw. Open, 7, e2427691(2024).
3) Kosari S. A. et al., BMJ Case Rep., bcr2014205382(2014).
筆者が行っているゼミナールでは、生命科学者による新書(特にエッセイ)を題材に、学生たちが自由に疑問や考えを共有し合う場を提供している。本稿では、それを通して学生との関わりの中で考えたことを記した。