ファルマシア
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61 巻, 7 号
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目次
  • 2025 年61 巻7 号 p. 620-621
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル フリー

    特集:クライオ電子顕微鏡

    特集にあたって:2017年にノーベル化学賞を受賞したクライオ電子顕微鏡法は,従来のX線結晶構造解析では困難だった膜タンパク質や巨大分子複合体の解析を可能とした.近年では,低分子有機化合物や薬物複合体への応用も進んでいる.本特集では,クライオ電子顕微鏡の原理や技術的進展,創薬への応用事例を紹介するとともに,AMED・BINDS事業による共同利用体制についても解説する.

    表紙の説明:クライオ電子顕微鏡ネットワークの概念図.オートローダーと電子直接検出器を擁するハイスループットのクライオ電子顕微鏡の国内導入は,米国を初めとする世界のムーブメントの後塵を拝した.少ないリソースを効率的に活用するために,E2拠点のハイスループット機は高分解能データ収集に特化させ,サンプルスクリーニングはそれ以外の機器(E1拠点)で行う形で運用している.

オピニオン
Editor's Eye
最前線
最前線
  • 千田 俊哉
    2025 年61 巻7 号 p. 632-636
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    クライオ電子顕微鏡(クライオ電顕)を用いた単粒子解析による生体高分子の構造解析の発展に伴い、日本でも日本医療研究開発機構(AMED)などのサポートのもと、共用のクライオ電顕の導入が進みクライオ電顕施設が増加した。これらの施設運営やクライオ電顕の効率的な利用を促進するため、クライオ電顕ネットワークが設立され、様々な仕組み作りが行われた。本稿では、クライオ電顕ネットワークの設立経緯、活動内容、現状の課題、今後の展望について述べる。

最前線
最前線
  • 渡邊 善洋, 岩月 正人
    2025 年61 巻7 号 p. 642-646
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    MicroEDは微小な結晶や粉末試料を用いて, 電子回折データを取得し, 原子分解能での三次元構造を決定する手法である. 従来の単結晶X線構造解析では困難であった「微量しか得られない」もしくは「微小な結晶しか得られない」低・中分子の有機・無機化合物や「単粒子解析が難しい分子量の小さい」タンパク質の構造解析に特に有効であり, 今後の化学研究、特に創薬分野において大きな可能性を秘めた技術として期待されている. 本稿では主にMicroEDを用いた低分子化合物の構造解析について概説する.

最前線
最前線
最前線
  • 小川 治夫, 加藤 博章
    2025 年61 巻7 号 p. 657-661
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    クライオ電子顕微鏡法(cryo-EM)は、現在、タンパク質の立体構造解析で最も注目されている解析技術の1つである。2013年の「分解能革命(The Resolution Revolution))」1)を契機に、急速にその実用化と普及が進み、現在では膜タンパク質を含む分子の理解において不可欠な技術となっている。2017年のノーベル化学賞は、「溶液中の生体分子の高分解能での構造決定のためのクライオ電子顕微鏡法(cryo-EM)の開発」に対してJacques Dubochet, Joachim Frank, Richard Hendersonの3氏に授与された。この受賞は、現在のcryo-EM技術の画期的な進展を考慮すれば当然の結果と言えよう。

    本稿では、膜タンパク質の立体構造解析を主眼においてこのcryo-EM技術についての解説を行い、読者の方々が実践に活かすための手引き、筆者らによる実際の解析例や、構造解析の現状、そして今後残された課題について記述したい。

最前線
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2025 年61 巻7 号 p. 667
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.

    本稿は,厚生労働省医薬局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和7年3月27日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.

    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.

承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2025 年61 巻7 号 p. 668-670
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.

    今回は,61巻4号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.

    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.

日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
  • 岸本 直樹
    2025 年61 巻7 号 p. 679_2
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    ウイルス研究とは,研究者を魅了してやまない「知のダンジョン」だ.筆者は,ウイルスの複製機構の解明と応用を軸に研究を展開している.学部時代にヒト免疫不全ウイルス(HIV)研究の門を叩き,以来,ウイルスと宿主の果てしない「攻防戦」に没頭.現在は他のウイルスにも対象を広げ,ウイルスの増殖戦略や宿主応答の謎を解き明かすべく探究を続けている.積み重ねた経験を活かし,感染症対策と公衆衛生の向上に貢献することが使命と感じる.ウイルスは手強い.だからこそ筆者は,この知的戦いに挑戦し続けたい.

トピックス
  • 佐藤 亮太
    2025 年61 巻7 号 p. 680
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    メタセシス反応は,炭素―炭素(C―C)結合を温和な条件下で触媒的に組み替えることができるため,有機合成において有用な変換法の1つである.実際に1990年代以降の精力的な触媒開発により,アルケン・アルキン基質に対するメタセシス反応は飛躍的な発展を遂げ,実用的な反応として現在様々な分野で利用されている.一方で芳香環に対するメタセシス反応は,脱芳香族化に伴うメタラサイクル形成のエネルギー障壁が高いため,これまで困難とされてきた.本稿では,最近報告されたSchrock-Hoveyda型モリブデン触媒を用いた初の芳香環開環メタセシス反応について紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Hutskalova V., Sparr C., Nature, 638, 697-703(2025).

    2) Jončev Z., Sparr C., Angew. Chem. Int. Ed., 61, e202211168(2022).

  • 原田 芽生
    2025 年61 巻7 号 p. 681
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    現在臨床で用いられている抗がん剤の多くは,正常細胞への影響が避けられず副作用の原因となる.そこで,抗がん剤をプロドラッグ化し,腫瘍でのみ活性化させ,選択性を向上させる手法が注目されているが,生体透過性や活性化効率に関して未だ課題が多い.

    近年,生体透過性が高い硬X線と水分子が相互作用して生じる水和電子やヒドロキシルラジカルを利用した,プロドラッグの活性化が報告されている.本稿では,Fuらにより報告された硬X線を用いた白金製剤をもととするプロドラッグの活性化と,その治療効果について紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Giang I. et al., AAPS J., 16, 899-913(2014).

    2) Fu Q. et al., Nat. Chem., 16, 1348-1356(2024).

    3) Fu Q. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 59, 21546-21552(2020).

    4) Fu Q. et al., Nat. Biomed., Eng., 8, 1425-1435(2024).

  • 石川 和樹
    2025 年61 巻7 号 p. 682
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    サリチル酸(salicylic acid: SA)は,その単純な構造のため,アスピリンなどの高付加価値化合物の基盤として大きな可能性を有している.近年,様々な化合物の生産株が報告され,合成生物学的手法の発展から,部分的な遺伝子操作で新たな化合物生産株に改変可能となった.そのため,この技術を活用することで,多様な化合物への変換が可能なSAの高生産株の確立が期待できる.本稿では,L-フェニルアラニン(L-Phe)高生産株への効率的なSA合成酵素遺伝子を導入し,適応進化を利用して高SA耐性能を付与することで,SAの高生産が可能な大腸菌の細胞工場を確立したChenらの研究を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Chen C. et al., ACS Synth. Biol., 13, 3563-3575(2024).

    2) Mishra A. K., Baek K. H., Biomolecules, 11, 705(2021).

    3) Pelludat C. et al., J. Bacteriol., 185, 5648-5653(2003).

  • 花園 祐矢
    2025 年61 巻7 号 p. 683
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    第一原理分子動力学は,密度汎関数理論(density functional theory: DFT)などの量子力学に基づく電子構造計算と分子動力学を組み合わせ,化学結合の切断や再形成,反応機構といったプロセスを高い精度で計算する手法である.しかし,計算資源の大きな制約や,長時間スケールおよび大規模系の取り扱いの困難さといった課題が残る.こうした背景から,DFTレベルの計算結果を学習データとして活用し,高精度な力場を高速かつ効率的に適用できる機械学習力場(machine learning force fields: MLFF)が注目されている.本稿では,Wangらの提案したMLFFと分子断片化を組み合わせた手法AI2BMD (artificial intelligence-based ab initio biomolecular dynamics system)について紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Wang T. et al., Nature, 635, 1019-1027(2024).

    2) Wang Y. et al., Nat. Commun., 15, 313(2024).

  • 佐藤 健
    2025 年61 巻7 号 p. 684
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    リンパ球の血管内皮への接着は,二次リンパ組織や炎症部位にホーミングするための重要なプロセスである.その過程では,リンパ球が細胞表面上のセレクチンを介したローリングに続き,インテグリンを介した接着によって血管内皮上で停止し,血管壁を潜り抜けて標的組織へ浸潤する.また,内皮細胞に発現するケモカインなどの種々の細胞刺激は,ローリング中のリンパ球におけるインテグリンの構造変化を惹起し(inside-outシグナルと呼ばれる),インテグリンの活性化を通してリガンドとの結合親和性を増強する.一方で,inside-outシグナルを介したインテグリンの活性化には数分を要するため,ローリング中のリンパ球ではインテグリンが速やかに活性化される未知の経路の存在が示唆される.本稿では,細胞外Ca2+の流入による細胞膜外部近傍のCa2+濃度の一過性の低下が数秒でインテグリンを活性化させることを示したLiらの論文を紹介する. なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Sun H. et al., Dev. Cell, 30, 61-70(2014).

    2) Li Y. et al., Nat. Commun., 15, 6131(2024).

    3) Dransfield I. et al., J. Cell Biol., 116, 219-226(1992).

    4) Foote C. et al., Compr. Physiol., 12, 3781-3811(2022).

  • 林 周宏
    2025 年61 巻7 号 p. 685
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    脳内で活発に活動するニューロンは,どのようにエネルギーを獲得しているのだろうか?脳のグリア細胞の一種であるアストロサイトが,この過程において重要な役割を担っていることは広く知られている.アストロサイトは突起を血管に伸ばし,血中からグルコースを取り込み,解糖系を介して乳酸を合成し,細胞外へ放出する.この乳酸はニューロンに取り込まれエネルギー源として利用される(アストロサイト―ニューロン乳酸シャトル説).ニューロンの活動に応じてアストロサイト内で乳酸の合成が促進されることは知られているが,その作用機序,すなわちアストロサイトがどのようにニューロンの活動を感知して乳酸を放出するのか?については依然として十分には解明されていない.今回,Theparambilらによる新たな研究を紹介し,アストロサイトによるニューロンへの乳酸供給の分子メカニズムを概説する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) 夏堀晃世,ファルマシア,58,877-881(2022).

    2) Magistretti P. J., Allaman I., Nat. Rev. Neurosci., 19, 235-249(2018).

    3) Theparambil S. M. et al., Nature, 632, 139-146(2024).

  • 山城 海渡
    2025 年61 巻7 号 p. 686
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    日本における骨粗しょう症の患者数は,約1,300万人以上と推定されており,その数は経年的に増加している.骨粗しょう症の予防および治療は重要な公衆衛生学的課題であることから,健康日本21(第三次)では,骨粗しょう症検診の受診率を,2032年までに現在の5%から15%に引き上げるという目標が新設された.骨密度に影響を与える要因として,食習慣や運動習慣などが知られているが,近年,大気汚染物質が新たなリスク因子として報告されている.本稿で紹介する研究では,窒素酸化物およびPM2.5のヒトへの曝露が全身の骨密度に影響する可能性が示された.骨粗しょう症患者が増加しているなかで,前述の知見は重要であることから,その成果を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Du J. et al., Osteoporos. Int., 35, 2215-2223(2024).

    2) Allen O. et al., Curr. Osteoporos. Rep., 22, 590-598(2024).

    3) Ge Q. et al., Environ. Health Perspect., 131, 107002(2023).

  • 鈴木 達也
    2025 年61 巻7 号 p. 687
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    ジャーナル 認証あり

    慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)の罹患率は世界人口では約7~10%,日本においても約8%と高い.CKD患者は腎機能低下によるビタミンDレベルの低下,二次性副甲状腺機能亢進症,電解質の変化などにより,骨ミネラル代謝異常を発症する.またCKD患者は一般的に高齢であり,多疾患の合併やフレイルを呈していることが多く,転倒による骨折リスクが高いことが推測される.一方,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor: PPI)は腎機能正常および血液透析患者において骨折のリスク増加と関連しているが,CKD患者における研究は現在行われていない.本稿では,CKD患者におけるPPIの使用と骨折の関連性について検討したKommerらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Yuhan Z. et al., Kidney Blood Press. Res., 47, 545-555(2022).

    2) Poly T. N. et al., Osteoporos. Int., 30, 103-114(2019).

    3) Kommer A. et al., Nephrol. Dial. Transplant., 40, 173-181(2025).

    4) Bai A. D. et al., JAMA Netw. Open, 6, e2339893(2023).

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