ファルマシア
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61 巻, 9 号
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目次
  • 2025 年61 巻9 号 p. 790-791
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    特集:精神疾患における脳内炎症~新たな治療薬の可能性~

    特集にあたって:現代社会はストレス社会ともいわれ,多くの人々が日々様々なストレスを感じており,精神疾患患者数は増加の一途を辿っている.精神疾患の治療薬は古くから数多く開発されてはいるものの,満足な治療効果が得られない患者も少なくない.近年,脳血管障害や神経変性疾患だけでなく,精神疾患においても脳内炎症が病態に関与することが明らかになり,注目を集めている.本特集では,精神疾患における脳内炎症に着目した最新の研究をご紹介いただくとともに,新たな治療薬の開発に結びつく可能性についても考えてみたい.

    表紙の説明:正常な人の脳では,グリア細胞が神経細胞の周りを取り巻き,神経機能維持に重要な役割をしている.一方,脳の炎症が生じると,ミクログリアやアストロサイト,オリゴデンドロサイトが活性化して様々な炎症性物質を産生し,神経細胞の機能障害が生じる.正常な人の脳内の神経―グリア細胞の様子と,精神疾患患者の脳内での炎症,すなわちグリア細胞の活性化と神経細胞の変化の様子を模式的に表した.

オピニオン
Editor's Eye
最前線
最前線
最前線
  • 瀬木(西田) 恵里, 鈴木 敢三
    2025 年61 巻9 号 p. 808-812
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    炎症は精神疾患の新たな治療標的として注目を集めている.感染性炎症モデルを用いた解析では,不安様・社会的回避行動が出現するタイミングにおいて,海馬における炎症性サイトカインの持続的な発現亢進,ならびに自然免疫系分子の誘導が認められ,「情動障害期特異的な炎症性プロファイル」の存在が示唆された.非感染性炎症モデルでは急性ストレスによる炎症性サイトカイン発現が著しく増強され、精神疾患の一部で観察される「過剰な炎症反応」が示唆された.炎症応答の時間軸と感受性の変容の解明により,精神疾患に対する新たな治療戦略の構築が可能となると考える.

最前線
  • モノアミン仮説と神経炎症仮説の接点
    相澤 秀紀
    2025 年61 巻9 号 p. 813-816
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    脳の炎症性変化は、器質性病変のみならずうつ病などの精神疾患の病態と関連し、新たな創薬標的として注目を集めている。筆者らは、うつ病の病態と関わるモノアミン神経系の上流領域として手綱核に注目している。研究の結果、うつ病増悪の要因である慢性ストレスが手綱核の炎症反応を惹起し、その抑制が抗うつ効果を示すことを見いだした。本稿では、これらの最近の研究結果を背景に、神経炎症を標的とした抗うつ薬開発の可能性について概観し、今後の研究展開について議論したい。

最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
  • インフラマソーム,IL-18を中心とした治療応用化の展望
    山西 恭輔
    2025 年61 巻9 号 p. 837-841
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    近年、うつ病と炎症の関連が注目されており、特にインフラマソームやIL-18の役割が研究されている。うつ病患者では炎症性サイトカインの上昇が見られ、IL-18欠損マウスでは抑うつ様行動が観察される。末梢性炎症を介したうつ病モデルの研究が進む中、うつ病の炎症を介した機序解明が期待されている。今後は、炎症の制御を中心に新たな治療法の開発が求められる。炎症と中枢・脳機能の相互作用を理解することで、うつ病治療への道が開かれる可能性がある。

日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 南條 毅
    2025 年61 巻9 号 p. 850
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    分子の平面性が高くなるほど医薬品としての開発難易度が上がると認識されて以降,分子の三次元的な広がりを表す指標であるFsp3(=sp3炭素数/全ての炭素数)は,創薬の現場で特に重要視されている.しかし,飽和炭素骨格はカップリング等で簡便に変換できる芳香環と異なり,合成に多工程を要するため,多様な高Fsp3骨格構築に応用できるC-C結合形成法の開発研究は依然として重要である.本稿では,Sunらが新規ジアゾ硫黄イリド試薬を用いたsp3炭素転移により,4つのC-C結合を形成しながら,歪んだ高Fsp3スピロ骨格の簡便な構築に成功したので,以下に概説する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Lovering F. et al., J. Med. Chem., 52, 6752-6756(2009).

    2) Sun Q. et al., Science, 387, 885-892(2025).

    3) Dellus N. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 49, 6798-6801(2010).

  • 村上 英太郎
    2025 年61 巻9 号 p. 851
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    抗体薬物複合体(ADC)は,標的分子を認識する抗体と治療標的に有効な薬剤をリンカーで結合した精密分子であり,がんをはじめとする疾患の分子標的治療において重要なモダリティの1つである.これまでに,pH変化やリソソーム酵素活性といった細胞内トリガーに応答して薬剤を放出するリンカー設計がなされてきたが, その放出が細胞内のどのコンパートメントで,どのタイミングで起きているのかを可視化する手段は限定的であった.この課題に対し,Nadal-Bufiらは,ADCの細胞内動態と薬物放出の両方を同時に可視化可能なfluorogenic probeを開発した.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Bargh J. D. et al., Chem. Soc. Rev., 48, 4361-4374(2019).

    2) Nadal-Bufi F. et al., J. Am. Chem. Soc., 147, 7578-7587(2025).

    3) Dorywalska M. et al., Mol. Cancer Ther., 15, 958-970(2016).

  • 周防 玲
    2025 年61 巻9 号 p. 852
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    近年の遺伝子工学の発展により,微生物のゲノム情報を手がかりとした新規天然物やその生合成遺伝子の探索研究(ゲノムマイニング)が広く行われるようになった.微生物が有する非リボソームペプチド合成酵素(non-ribosomal peptide synthetase: NRPS)は数百種に及ぶアミノ酸を基質として取り込むことができ,多彩な化学構造を有する天然物の生産を可能とする.これまでに見いだされた化合物のなかには,強力な生物活性を示すものも数多く存在する.なかでも,非標準アミノ酸である3-furylalanine(Fua)を含むペプチド性天然物は種々の培養細胞に対して強力な細胞毒性を示し,その活性発現にFuaが大きく寄与する.一方で,既報のFua 含有ペプチドはrhizonin類,endolide類,bingchamide類の3系統に限られていた.本稿では,ゲノムマイニングとFuaの化学反応性に着目したスクリーニング法を組み合わせることで,Fuaを含む新規ペプチドを選択的に見いだしたEhingerらの研究を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Ehinger F. J. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 62, e202308540(2023).

    2) Ehinger F. J. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 64, e202421760(2025).

  • 齋藤 大介
    2025 年61 巻9 号 p. 853
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    疾患治療において,標的とする特定の組織・細胞においてのみ薬剤を活性化できるシステムは,非常に魅力的なものである.特に,外部から非侵襲的な方法でこれを実現することが強く望まれている.これまで,制御因子として光を用いることで薬剤の活性をコントロールするアプローチが数多く報告されているが,本稿では,光に代わって超音波により薬剤の活性化を制御するシステムを構築したWangらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Wang W. et al., Nature, 638, 401-410(2025).

    2) Huo S. et al., Nat. Chem., 13, 131-139(2021).

    3) Chen L. et al., Nature, 628, 320-325(2024).

  • 平尾 卓也
    2025 年61 巻9 号 p. 854
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    分子標的薬はがん治療にブレイクスルーをもたらしたが,獲得耐性の出現が薬物治療の最大の障壁となる.特に,非遺伝的な獲得耐性は根底にある機序が解明されておらず,その解決が薬物治療の予後改善に対する至上命題といえる.近年,非遺伝的な獲得耐性に,がん代謝,特に代謝可塑性(環境に応じて柔軟に代謝を変化させる性質)が重要な役割を担うことが提唱され始めた.本稿では,頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)の上皮成長因子受容体(EGFR)標的療法に対する非遺伝的な獲得耐性機序を,がん代謝という観点から示したVan den Bosscheらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Marine J. C. et al., Nat. Rev. Cancer, 20, 743-756(2020).

    2) Labrie M. et al., Nat. Rev. Cancer, 22, 323-339(2022).

    3) Van den Bossche V. et al., Nat. Commun., 16, 1237(2025).

  • 笠井 智香
    2025 年61 巻9 号 p. 855
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    がん悪液質は,脂肪減少,骨格筋減少,食欲低下,代謝異常を主症状とする多因子性の病態で,がん治療成績を大きく左右する.しかしながら,その治療法は十分には確立されていない.2021年には,食欲促進ホルモンであるグレリンの類似薬「アナモレリン」が日本で承認された.しかしアナモレリンは病態の根本機序に作用するものではなく,症状緩和を目的とした対症的アプローチと位置付けられる.そこで,病態の本質に迫る新たな治療戦略が求められている.近年,がん悪液質との関連が注目されているのが「増殖分化因子15(growth differentiation factor 15: GDF15)」である.GDF15はがん悪液質患者およびモデル動物の血中で高値を示し,悪液質の発症・進展に関与する.本稿では,抗GDF15抗体であるポンセクロマブががん悪液質に与える影響について紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Groarke J. D. et al., N. Engl. J. Med., 391, 2291-2303(2024).

    2) Mullican S. E. et al., Nat. Med., 23, 1150-1157(2017).

    3) Suriben R. et al., Nat. Med., 26, 1264-1270(2020).

  • 正木 聡
    2025 年61 巻9 号 p. 856
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    近年,アミノ酸は,タンパク質を合成する材料としてだけではなく,生体機能を調節する因子としても注目されている.細胞内にはアミノ酸センサーとして機能するタンパク質が存在するが,組織特異的に主要なセンサータンパク質が異なる可能性も考慮すると,生理活性物質としてのアミノ酸は,多岐にわたる生命機能の制御に関与していると考えられる.本稿では,必須アミノ酸の1つであるバリンのセンシングを基軸とした制がん機構を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Jin J. et al., Nature, 637, 215-223(2025).

    2) Bertos N. R. et al., J. Biol. Chem., 279, 48246-48254(2004).

    3) Wang D. et al., Science, 378, 983-989(2022).

    4) Doglioni G. et al., Nature, 638, 244-250(2025).

  • 八木澤 啓司
    2025 年61 巻9 号 p. 857
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー

    潰瘍性大腸炎(UC)は,クローン病(CD)とともに炎症性腸疾患(IBD)に分類される.IBDの根治療法は確立されていないが,近年病態解明が進み,多くの分子標的薬が開発されている.これらの分子標的薬は主に難治例に使用されるadvanced therapy(ADT)に位置付けられるが,各薬剤の明確な使い分けは確立されておらず,適切な薬剤選択が大きな課題となっている.Janus kinase(JAK)は,JAK-STAT経路を介し炎症や自己免疫疾患の病態に関与しており,その阻害薬は近年様々な免疫疾患の治療に用いられる.UCでは現在tofacitinib(TOF),filgotinib(FIL),upadacitinib(UPA)の3剤が使用可能である(CDではUPAのみ).今回,日本のUC患者における3種のJAK阻害薬の実臨床における有効性と安全性を比較した多施設の後ろ向きコホート研究を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Akiyama S. et al., Aliment. Pharmacol. Ther., 61, 524-537(2025).

    2) Ikenouchi M. et al., Intest. Res., 2025. doi: 10.5217/ir.2024.00148.

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