ファルマシア
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62 巻, 9 号
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目次
  • 2026 年62 巻9 号 p. 798-799
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    ジャーナル フリー

    特集:生薬学・漢方医薬学の最前線

    特集にあたって:生薬および漢方薬は,古くから疾病の治療や健康の維持に用いられてきた天然由来の医薬品であり,現代医療において重要な役割を担うとともに,日常的なセルフメディケーションにも貢献している.本特集は,生薬学および漢方医薬学に関する先端的な研究を紹介していただくとともに,効果的な教育活動を推進している先生方にもご寄稿いただくことで,生薬学・漢方医薬学の最前線を広く俯瞰できる機会となるように企画した.

    表紙の説明:漢方薬は自然から得られる生薬で構成されており,大部分の生薬は植物に由来している.すなわち生薬学・漢方医薬学の学問分野は,地に根を張った植物の恵みを受けて発展したサイエンスということができる.本分野の継続的な発展を願い,秋を代表する植物であり,蔓を伸ばして大きく成長する姿でも知られるマメ科クズ(生薬カッコンの基原植物)を表紙とした.

オピニオン
Editor's Eye
話題
  • 有田 龍太郎
    2026 年62 巻9 号 p. 805-809
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    ジャーナル 認証あり

    漢方薬が日常的に処方され、また薬局で手軽に手に入る時代になった。エビデンスに基づく漢方薬の使用は拡大している一方で、漢方薬が患者の体質に合わせて使われていない、漢方薬の重複、副作用報告の増加など負の側面も見られ、適切な使用が求められる。また、漢方薬の原料である生薬の価格が高騰し、利益を出しにくい構造になっている。国内栽培にも様々な課題がある。本稿では、漢方薬使用拡大に伴う課題に対して、薬剤師が実践できる役割について述べる。

最前線
最前線
最前線
話題
話題
話題
  • 開発と概要,活用事例と教育効果
    伊藤 亜希
    2026 年62 巻9 号 p. 835-839
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    ジャーナル 認証あり

    ICTの進展に伴い、教育分野においても学修者中心型教育への転換が国際的潮流となっている。また、2010 年の調査では、がん診療に携わる医師のうち漢方医学の学習経験者が 3 割未満であったことを踏まえ、ICT教材として漢方 e-learning を開発してきた。本教材は、授業時間や専門教員の不足を補完し、教育機会の均てん化に資することが期待される。今回はその開発と概要を紹介するとともに、活用事例ならびに教育効果について概説する。

話題
話題
挑戦者からのメッセージ
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 白井 孝宏
    2026 年62 巻9 号 p. 860
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    ジャーナル 認証あり

    医薬分子の三次元性は,分子の安定性を高め,溶解性,標的結合親和性などの医薬品としての性質の改善に寄与し得る.特に架橋環骨格は,剛直な三次元性を特徴とする重要な骨格であり,天然物や医薬品に広く見いだされる.一方で,架橋環をエナンチオ選択的に構築するには,反応遷移状態における歪みを克服しつつ,生成物に含まれる複数の不斉中心を同時に制御する必要があるため,依然として難度が高い.特に,キラルなビシクロ[3.2.1]オクテン,および類縁体の不斉合成は,未だ発展途上である.このような背景のもと,ZhongらはPd/Cu共触媒系にて,不斉タンデムHeck/薗頭型反応による『アルキン連結ビシクロ[3.2.1]オクテン3』および『ベンゾ縮環ビシクロ[3.2.1]オクタン6』のキラル架橋環の構築反応を開発したので本稿で紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Zhong J. et al., Nat. Commun., 16, 11373(2025).

  • 澤崎 鷹
    2026 年62 巻9 号 p. 861
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    ジャーナル 認証あり

    タンパク質の微小環境(粘度や極性など)の変化は凝集化を引き起こし,これが細胞内の調節経路の乱れや神経変性疾患を含む多くの疾患と密接に関連する.しかし,従来の蛍光タンパク質融合を用いた手法では,巨大な蛍光タグ自体が標的タンパク質の挙動を妨げるため,タンパク質内部の特定ドメインにおける微小環境変化を詳細に捉えるには限界があった.Yangらはローター型蛍光団を有する環境応答性非天然アミノ酸(ncAA)を導入することにより,特定ドメインにおける微小環境変化をリアルタイムで可視化する戦略を開発した.これにより,クラスターの形成と解離などの過程をリアルタイム観察可能になったので本稿で紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Yang S. et al., Nat. Chem. Biol., 22, 97-108(2026).

    2) Lee H. S. et al., J. Am. Chem. Soc., 131, 12921-12923(2009).

  • 太田 智絵
    2026 年62 巻9 号 p. 862
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    ジャーナル 認証あり

    モノテルペノイドインドールアルカロイド(Monoterpenoid indole alkaloids: MIA)は,ニチニチソウCatharanthus roseusやラウオルフィア属植物Rauvolfia spp.などに含まれる化合物群で,一部のMIAは抗腫瘍薬や降圧薬として利用されている.これらは,共通前駆体ストリクトシジンを起点として多様な骨格へと分岐する主要なアルカロイド群であるが,1)  その過程における立体中心の制御機構は十分には解明されておらず,特に,レセルピンに代表される3R配置を有するMIAが,3S配置を持つストリクトシジンからどのように生じるかは未解決の課題であった.2)本稿では,HwangらによるC3位立体反転機構の解明研究を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Nagakura N. et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 2308-2312(1979).

    2) O’Connor S. E., Maresh J. J., Nat. Prod. Rep., 23, 532-547(2006).

    3) Hwang J. et al., Nat. Commun., 16, 10495(2025).

  • 田巻 初
    2026 年62 巻9 号 p. 863
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    ジャーナル 認証あり

    モノクローナル抗体(mAb)はがんや自己免疫疾患,感染症などの治療に用いられており,重要な創薬モダリティとなっている.抗体治療の安全性や有効性はその高次構造(higher-order structure: HOS)に依存する.そのため製造・保存・投与などの各過程でHOSが維持されていることを確認するのが極めて重要である.核磁気共鳴分光法(NMR)は原子分解能でタンパク質の立体構造や運動性を評価でき,さらに製剤に近い高濃度域でも測定できるため,HOSを評価する強力な手法である.本稿ではNMRによるHOS解析,特に非標識抗体の解析について紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Arbogast L. W. et al., Anal. Chem., 89, 11839-11845(2017).

    2) Yanaka S. et al., J. Am. Chem. Soc., 148, 8374-8382(2026).

    3) Rizzo D. et al., J. Am. Chem. Soc., 144, 10006-10016(2022).

  • 中川 英嗣
    2026 年62 巻9 号 p. 864
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    ジャーナル 認証あり

    プロテアソームは,細胞内で不必要・異常となったタンパク質を分解することで,生体の恒常性維持に働く酵素複合体である.がん細胞の多くでは,その幹細胞性や生存能を維持するためにプロテアソーム活性が正常細胞に比べて亢進している.実際,プロテアソームによるタンパク質分解活性の阻害は,最終的にがん細胞の細胞死を誘導できる.そのため,多発性骨髄腫などの血液がんでは,現在もプロテアソーム阻害薬(PI)であるボルテゾミブなどが第一選択薬として使用されている.PIは血液がんの治療への有効性が示されている一方で,固形がんに対しては期待されたほどの効果が得られておらず,この違いについては理解されていなかった.本稿では,固形がんの治療抵抗性のメカニズムとして,PIによる細胞へのストレスが,腫瘍形成や生存を制御するHippo経路の下流エフェクターYAPの活性化を誘導することを明らかにしたWangらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Rousseau A., Bertolotti A., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 19, 697-712(2018).

    2) Gandolfi S. et al., Cancer Metastasis Rev., 36, 561-584(2017).

    3) Wang X. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 122, e2517376122(2025).

    4) Qi S. et al., EMBO J., 42, e112126(2023).

  • 森 翔太
    2026 年62 巻9 号 p. 865
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
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    心筋梗塞後の心室リモデリングには炎症が関与しており,炎症の制御は有望な治療標的である.1)  制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)は,免疫応答の抑制や自己寛容の維持に関与するCD4陽性T細胞サブセットである.心筋梗塞後においても,Tregが有害な心室リモデリングを抑制する.また,組織性Tregは非リンパ組織に局在するTregサブセットであり,環境に応じて転写因子やエピゲノムの再構築を行い,各組織に適応した機能を獲得できる.一方,心臓における組織性Tregの適応過程や機能に関しては不明である.本稿では,心筋梗塞後にTregが組織適応と心保護作用を示す機構を解明したLiらの論文を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Prabhu S. D., Frangogiannis N. G., Circ. Res., 119, 91-112(2016).

    2) Wang Y. et al., J. Cardiovasc. Transl. Res., 16, 590-597(2023).

    3) Muñoz-Rojas A. R., Mathis D., Nat. Rev. Immunol., 21, 597-611(2021).

    4) Li N. et al., Circulation, 153, 922-940(2026).

  • 市田 夏海
    2026 年62 巻9 号 p. 866
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
    ジャーナル 認証あり

    ヒストン修飾は,DNA配列を変化させずに遺伝子発現を制御するエピジェネティクス機構の1つである.ヒストン修飾はそれぞれ特異的な酵素によって制御され,環境応答や細胞分化,疾患発症など多様な細胞応答に関与する.新たなヒストン修飾としてラクチル化が2019年に報告され,注目を集めている.ヒストンラクチル化(Histone lactylation: H3Kxlaの表記でヒストンH3のx番目のリジン残基がラクチル化修飾されていることを表す)は細胞内で産生される乳酸に由来する修飾であり,従来エネルギー代謝の副産物と考えられてきた乳酸が転写制御に直接関与する可能性を示唆するものである.本稿では,ヒストンラクチル化と炎症性の関係に着目し,関節リウマチや網膜に関する近年の知見をもとに,それらを活用した新しい技術の可能性について論じる.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Izzo L. T., Wellen K. E., Nature, 574, 492-493(2019).

    2) Wu G. et al., Nat. commun., 16, 9034(2025).

    3) Gaur M. et al., bioRxiv, 2025. DOI:10.1101/2025.04.17.649437

    4) Ziogas A. et al., Cell, 188, 2992-3012(2025).

  • 畠山 史朗
    2026 年62 巻9 号 p. 867
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/01
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    日本で独自に発展した漢方医学では,複数の生薬を組み合わせた漢方薬が広く用いられる.妊娠中の諸症状に適応を有する漢方薬も多く,例えば当帰芍薬散は習慣性流産などに,小半夏加茯苓湯は妊娠悪阻に対して使用される.一方で,大黄や牡丹皮を含む漢方薬では子宮収縮作用,麻黄を含む漢方薬では交感神経刺激作用に基づく母体・胎児への影響が懸念され,妊娠中の使用には慎重な判断が求められる.多くの漢方薬の添付文書では,妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされている.このため,妊娠中の医薬品の安全性評価では,母体への有害事象に加え,先天異常や胎児毒性への影響を含めた検討が重要である.しかし,妊婦を対象としたランダム化比較試験の実施は倫理的に困難であり,これまでは主に経験的知見に依存した評価にとどまっていた.我が国においても近年,保険診療データベースや出生コホートを活用した周産期薬剤疫学研究が進展し,妊娠中の漢方薬の使用に関するエビデンスが蓄積されつつある.本稿では,麻黄含有漢方薬の妊娠中の使用と母児の転帰との関連を検討したNodaらの研究を紹介する.

    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

    1) Noda A. et al., Pharmacoepidemiol. Drug Saf., 34, e70251(2025).

    2) Noda A. et al., Drugs Real World Outcomes, 11, 263-272(2024).

    3) Suzuki S. et al., Tradit. Kampo Med., 13, e70049(2026).

    4) Suzuki S. et al., Front. Pharmacol., 14, 1107494(2023).

    5) Kikuchi D. et al., J. Pharm. Health Care Sci., 11, 112(2025).

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