森林総合研究所研究報告
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23 巻, 4 号
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論文
  • 釣田 竜也, 阪田 匡司, 小林 政広
    原稿種別: 論文
    2024 年23 巻4 号 p. 101-120
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
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    電子付録

    九州・沖縄地域に分布する主要な森林土壌の保水特性を明らかにするため、堀田 (1997) の学位論文の付表にある513の森林土壌の孔隙解析データにvan Genuchtenモデルをあてはめ、保水曲線の孔隙径分布の広さを表すパラメータmと孔隙径分布のピークの孔隙径を表すパラメータψ0、さらにvan Genuchtenモデルから算出される重力水分量、易有効水分量の4つの保水特性値を抽出し、8つの土壌タイプに分けて保水特性値の違いを比較した。その結果、赤・黄色系褐色森林土タイプと赤・黄色土タイプは重力水分量も易有効水分量 も少ないこと、黒色土タイプは易有効水分量は多いが重力水分量は少なく、また孔隙径分布が広く分散的であること、海岸砂丘砂を母材とする未熟土タイプは特に下層土の重力水分量が多く、他の土壌タイプより小さい孔隙径に分布のピークを持ち、そこに分布が比較的集中した孔隙特性を持つこと、褐色森林土では適潤性タイプの方が乾性タイプより易有効水分量が多く、孔隙径分布が広く分散的であること等の特徴が整理された。気候変動が山地の水流出や樹木成長等に及ぼす影響の予測精度を高めるには、地域ごとに特徴ある森林土壌の保水性データを関数化し、降雨流出モデルや樹木成長モデルに活用することが不可欠である。そのため今後も様々な地域・母材・土壌型の保水性データの収集・整備を進めていく必要がある。

短報
  • 土井 寛大, 亘 悠哉, 永田 純子
    原稿種別: 短報
    2024 年23 巻4 号 p. 121-126
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
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    2023年10月、森林総合研究所付近 (茨城県つくば市松の里) で斃死したアライグマの全身から外部寄生虫を採取した。採取された寄生虫はキチマダニ、フタトゲチマダニ、ネコノミ、ケモノハジラミ科であった。採取された2種のマダニはSFTSウイルスや日本紅斑熱リケッチアなどの病原体を媒介し、ネコノミはネコひっかき病の原因細菌を媒介する。以上から、アライグマが宿主として感染症を媒介する寄生虫の運搬・維持の役割を担い、市街地に近い地域であっても感染症や吸血の人に対するリスクが示唆される。こうした公衆衛生上のリスクを踏まえて,外来種管理やロードキル現場で作業する野生動物管理従事者は感染症の予防措置をとることが推奨される。

  • 末吉 昌宏, 福井 修二
    原稿種別: 短報
    2024 年23 巻4 号 p. 127-134
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
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    島根県内で得られた子嚢菌類のカエンタケ Trichoderma cornudamae (ボタンタケ目ボタンタケ科) の子実体から双翅目キノコバエ科の Rymosia placida Winnertz, 1863 が羽化した。本種の種小名の日本語訳ならびに属名に対してすでに使用されていた和名に基づいて、本種の和名としてシズカトモナガキノコバエ (以下シズカ) を提唱した。毒きのことして知られるカエンタケ子実体を直接食害する動物として初めて、また、本種の寄主きのことしてカエンタケを初めて記録した。本種はヨーロッパで多くの記録があり、既に国内で北海道に分布することも知られていたが、本州から初めて記録した。カエンタケはアジア諸外国に広く分布し、国内でナラ枯れ跡地に発生する。国内各地でシズカがカエンタケを寄主きのことして利用していること、さらにこの寄主・寄生者関係が東アジアの森林で成立したことが考えられる。

研究資料
  • 小林 慧人, 西山 典秀, 杉本 恵里子, 柏木 治次, 若山 太郎, 久本 洋子
    原稿種別: 研究資料
    2024 年23 巻4 号 p. 135-151
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
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    タケ・ササ類は、長期にわたり栄養成長を行い、数十年以上に一度開花することが知られるが、その実態解明には長期的な試験が欠かせない。国内ではモウソウチク (Phyllostachys edulis) を対象に、開花結実から次世代の開花までの年数の解明に向け、1930年から行われてきた試験がある。本稿では、文献、聞き取り、現地調査をもとに、過去約一世紀にわたる植栽記録や生態情報をまとめた。試験は累計11カ所で行われ、実生の第一世代目では、多くの試験地で発芽から主に67年目に開花した。第二世代目は現在9カ所で維持されており、開花までの年数が著しく短縮するモウソウチクも確認された。今後の課題として、系統保存、情報の更新と共有、研究の問いの再考があげられる。

  • 東北林業試験研究機関連絡協議会森林保全部会
    原稿種別: 研究資料
    2024 年23 巻4 号 p. 153-164
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツ材線虫病の日本最北端地域に当たる東北地方で、マツ材線虫病の分布の拡大過程を明らかにするべく、マツ材線虫病によるアカマツおよびクロマツ枯死木と、本病の病原体であるマツノザイセンチュウを媒介するマツノマダラカミキリの分布を、前報(2007年度から2011年度)に引き続き2012年度から2022年度の11年間の分布図として取りまとめた。分布図は毎年度、福島県、宮城県、山形県、岩手県、秋田県、および青森県の研究担当者が市町村単位にマツ材線虫病の発生とマツノマダラカミキリの捕獲頭数を調査し、その結果を、東北林業試験研究機関連絡協議会保全部会に内部資料として提供している。本稿はこの11年の間に集まったその内部資料を年度ごとに6県分まとめて報告したものである。この間、マツ材線虫病は11市町村で、またマツノマダラカミキリは9市町村で新たな分布拡大が確認された。

  • 瀨戸 美文, 富田 幹次, 山浦 悠一, 佐藤 重穂, 米田 令仁, 山中 聡, 比嘉 基紀, 市栄 智明, 鈴木 保志
    原稿種別: 研究資料
    2024 年23 巻4 号 p. 165-176
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
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    電子付録

    本研究では、スギ・ヒノキ人工林で保持林業を適用する場合にどの広葉樹種が保持木となり得るか、また約10本/haの維持が可能かを検討した。できるだけ大きく育った健全な高木性広葉樹の生立木を10本/ha で単木保持することを選木基準とし、四国の主伐後の2林地で保持木を選木した。また林業事業体に保持林施業の感想と印象を聞き取った。その結果、保持木の樹種は暖温帯自然林の自生種であった。片方の林地では稚樹や損傷個体、萌芽更新個体も選木され、保持木を一定サイズ以上の広葉樹に限定すると少量の本数でも維持が難しい林地があることが示された。林業事業体は保持林施業に肯定的であったが、作業班間での施業内容の情報伝達の難しさが指摘された。

  • 清野 嘉之, ハスタニア , スハルディマン アリ
    原稿種別: 研究資料
    2024 年23 巻4 号 p. 177-181
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    電子付録

    東カリマンタンのバリクパパン~サマリンダ道路沿いのチガヤ草原内に複数のサイトを設けて1991年7 月から98年10月まで(7.3年間)観察し、火事の頻度を調べた。平均火事間隔が1.2年と1.9年の条件下でチガヤは草原を優占し続けた。火事は降水量が少ないときに発生し易かった。繰り返される火事がチガヤより背が高くなる植物を除去したので、チガヤに日が当たり、チガヤ草原が維持された。ただし、Google Earth の履歴機能を使用して調べたところ、プロットのチガヤ草原は2024年までにほぼ全て失われていた。1998~2024年の間に、調査地域を含むサマリンダとバリクパパンの間の地域ではコショウ農園の数が減少し、アブラヤシ農園や石炭採掘地域への土地転換が進んだ。これらの転換により草原が分断され、類焼が妨げられた。断片化した草原でチガヤと共存して育つ小高木種やアカシア・マンギウム、耐火性樹木が、チガヤを被圧した可能性がある。

  • 勝島 隆史, 竹内 由香里, 勝山 祐太, 遠藤 八十一
    原稿種別: 研究資料
    2024 年23 巻4 号 p. 183-221
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
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    森林総合研究所十日町試験地では、1918年から気象観測を、1939/40年冬期から積雪の断面観測を継続して行っている。本稿の目的は、十日町試験地で観測した雪氷現象に関する基礎データを提供することである。本稿は、2019/20年から2023/24年までの5冬期の気象観測と積雪断面観測の結果を掲載した。気象観測は、毎日9時に観測した天気、気温、降水量、降雪深、積雪深、積雪水量をまとめた。積雪断面観測は約10日毎に実施し、積雪内部の層構造や雪質、雪温、密度、硬度、含水率の鉛直分布を測定した結果をまとめた。

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