Functional Food Research
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最新号
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挨拶
総説
  • 稲田 全規
    原稿種別: 総説
    2024 年 20 巻 p. 5-10
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    宇宙や地上の不動状態は廃用性の筋萎縮ならびに骨破壊を引き起こす.廃用性疾患を回避し,筋骨格系を維持するには,運動による力学的な負荷が有効である.本稿では,これら事象を定量的に解析するために,重力を変化させた運動環境下におけるマウスの筋骨格系の変化を解析した結果を中心に概説する.地上実験における通常重力(1G)と遠心飼育装置による加重力(2G),宇宙ステーション(ISSきぼう)における微小重力(µG)と遠心飼育装置を用いた人工1G重力(AG)環境下における宇宙飼育マウスの解析を行い,自由運動を伴った飼育下における加重力および微小重力環境による筋骨格系組織への影響を検討した.これら検討により,加重力および微小重力環境下の運動は筋骨格系の量的な維持において正と負の変化に相関した影響を示すことが明らかとなり,適切な重力負荷を伴った運動は筋骨格系の制御を正に導くことが示唆された. 最近,廃用性疾患は,運動器のみならず,感覚器や脳神経への種々の連鎖を生じることから,適切な運動負荷による認知症予防への重要性も明らかとなってきている.本総説では,超高齢社会の到来により増加が懸念される,老化と不動による不活動を起因とする廃用性疾患の予防を目的とした力学的な運動器制御について最新の知見を概説する.

  • 富成 司, 青木 吉嗣
    2024 年 20 巻 p. 11-17
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)はX連鎖性の遺伝形式をとり,ジストロフィン遺伝子の変異により,形質膜からジストロフィンタンパク質が欠損することで発症する希少難病である.DMDは出生男児の約5,000人に1人の割合で発症し,進行性の筋萎縮と筋力低下を特徴とする.近年,短縮型ジストロフィンの発現回復を目的としたエクソン・スキップ治療法やアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを利用した遺伝子治療法が開発されている.著者らは,同疾患を対象として,DMDモデル動物やヒト患者由来細胞を用いて,エクソン・スキップにより発現回復する短縮型ジストロフィンの機能評価,効果と安全性に関する非臨床PoCの取得を重ねた.こうした基盤研究成果をもとに,著者らは日本新薬株式会社と共同で,DMD患者の約8%を治療対象にできるエクソン53・スキップ薬「NS-065/NCNP-01(viltolarsen)」の開発を進め,同薬は2020年に日米で条件付き承認された.続けて,著者らはDMD患者の6%を治療できるエクソン44・スキップ薬「NS-089/NCNP-02(brogidirsen)」の医師主導第1/2相試験を進めており,本臨床試験では世界で初めて正常の15%以上のジストロフィンタンパク質の発現回復に成功し,運動機能への有効性を期待できる結果が得られた.Brogidirsen は,エクソン・スキップ薬として初めて,米国FDAからブレークスルー・セラピー指定を受けたことは特記される.2023年には,AAVベクターにマイクロジストロフィンcDNAを搭載した世界初のDMD遺伝子治療薬「SRP-9001(delandistrogene moxeparvovec)」が米国FDA により迅速承認された.本総説では,これらDMD治療法の最先端研究成果を概説する.

  • 高橋 智
    2024 年 20 巻 p. 18-22
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    宇宙の微小重力環境が骨格筋に及ぼす影響は,様々な宇宙実験により解析されてきたが,重力影響の閾値を科学的に解析することは技術的に困難であった.この問題を解明するため,宇宙環境において人工重力を発生させることが可能な遠心機付き小動物飼育装置が,国際宇宙ステーションに設置された.私たちは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で,本装置を用いていくつかの重力環境下でのマウス飼育を行い,重力が骨格筋に与える影響を解析した.その結果,予想されたことではあるが,人工1 g(地上重力)では微小重力で誘導された筋萎縮および筋線維の速筋化は完全に抑制された.一方1/6 g(月面重力)では,筋萎縮は抑制されたが筋線維の速筋化は抑制されなかった.これらの結果は,骨格筋に対する重力影響には閾値があること,筋萎縮と筋線維変化は独立した制御を受けていることを示唆していると考えられた.そこで骨格筋萎縮と速筋化の分子機構を解析するために,遺伝子発現解析を行い重力環境に応じて変動している遺伝子を解析した.その結果,これまで明らかにされていなかった速筋を誘導するLarge Maf転写因子を同定した.Large Maf転写因子を骨格筋で過剰発現すると,速筋線維であるType IIb線維が誘導された.また,骨格筋でLarge Maf転写因子を欠損させるとType IIb線維がほとんど形成されなかった.さらに,本機構は動物種を超えて保存されていることも明らかとなった.以上の結果より,Large Maf転写因子は動物種を超えてType IIb線維を誘導する主要な転写因子であることが明らかとなった.

  • 永井 研迅, 本多 裕之, 清水 一憲
    2024 年 20 巻 p. 23-28
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    超高齢社会のわが国では,サルコペニアなど骨格筋の機能低下に伴う筋力低下が問題になっている.こうした背景から,筋力低下を予防する食品成分の探索が求められている.一般に,有効性成分の探索プロセスでは,培養細胞を用いた効能評価試験が行われる.筋力低下を予防する成分の評価には,筋力を指標にした効能評価を行うことが望ましいが,通常の二次元的な培養皿上で培養した筋細胞では筋力を測定することは困難である.一方で近年,生体模倣システム(Microphysiological System: MPS)の研究が盛んになっており,筆者らも独自のマイクロデバイスで培養した三次元骨格筋組織を用いて筋力を指標とした効能評価を行ってきた.さらに,ヒトへの応用を考慮すると,げっ歯類由来細胞ではなくヒト由来細胞での評価が有用であるため,初代ヒト骨格筋細胞を用いた三次元骨格筋組織の評価系を構築した.本評価系は骨格筋機能の維持・向上に資する食品成分の効能評価を目的とした研究応用に期待ができる.本稿では,独自のマイクロデバイスを用いた三次元培養系について解説し,初代ヒト骨格筋細胞を用いた三次元骨格筋組織において筋力向上効果が確認されたL-アンセリンに関する研究を紹介する.

  • 澁谷 修一, 渡辺 憲史, 清水 孝彦
    2024 年 20 巻 p. 29-34
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    細胞外マトリックス(extracellular matrix: ECM)は細胞の物理的な足場としての機能のほか,組織の形態形成,分化,恒常性維持にも必要な成分である.マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloprotease: MMP)はECM成分を切断することで,組織の恒常性維持に機能する.特に,皮膚では傷の創傷治癒過程でのECMリモデリングや血管新生過程への寄与が知られている.がん細胞の細胞浸潤過程においてもMMPの機能が重要な機能を果たしている.近年,老化細胞が特徴的に分泌するSASP(senescence-associated secretory phonotype)因子が慢性炎症を引き起こし,老化細胞の全身性の影響がわかってきた.SASPにはMMP群が多数含まれることが明らかとなり,老化過程におけるMMPの役割が再認識されている.本総説では,MMPから見た老化や老化関連疾患について概説するとともに,著者らが解析している老化モデルマウスの皮膚および様々な組織老化におけるMMPの寄与についても紹介する.

  • 清水 絢介, 田中 優樹, 富成 司, 池田 圭佑, 宮浦 千里, 平田 美智子, 稲田 全規
    2024 年 20 巻 p. 35-40
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid: DHA)とエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid: EPA)はω-3不飽和脂肪酸であり,抗血栓作用,心血管疾患の予防,血中の中性脂肪や総コレステロール値を減少させる効果などが報告されている.一方,骨代謝への効果については不明な点が多い.本稿では,DHAとEPAの骨への作用に着目し,炎症性骨吸収への作用について検討した.破骨細胞形成系である骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系において,DHAおよびEPAは破骨細胞分化を阻害した.骨芽細胞培養系において,DHAおよびEPAは炎症性メディエーターであるプロスタグランジンE2(PGE2)の産生と破骨細胞分化誘導因子であるRANKL(receptor activator of nuclear factor-κB Ligand)の遺伝子発現を抑制した.マクロファージ細胞株Raw264.7細胞を用いた破骨細胞分化系において,DHA,EPAはRANKL誘導性の破骨細胞の分化を抑制し,破骨細胞分化マーカー遺伝子であるカテプシンK,Clc-7のmRNA発現を抑制した.その作用機序としてDHAとEPAはNF-κBのリン酸化を抑制することが明らかとなった.本総説ではこれらDHAとEPAの骨代謝調節作用の最近の知見を概説する.

  • 田中 優樹, 富成 司, 菅崎 萌, 春日 麗, 松本 千穂, 宮浦 千里, 平田 美智子, 稲田 全規
    2024 年 20 巻 p. 41-48
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    ルテインはキサントフィルに分類されるカロテノイドであり,緑黄色野菜や果物に含有される.眼の黄斑部には高濃度のルテインが分布し,抗酸化作用および光の吸収により網膜を保護することで黄斑変性や白内障などの疾患を予防することが示されているが,眼疾患予防以外におけるルテインの働きは不明な点が多い.本稿では骨代謝におけるルテインの作用を検討した.骨は骨吸収性の細胞である破骨細胞と造骨性の細胞である骨芽細胞の働きにより絶えず吸収と形成を繰り返している.この働きは骨リモデリングと呼ばれ,骨吸収量と骨形成量のバランスが崩れると骨粗鬆症などの骨代謝疾患を発症する.著者らは,ルテインが骨芽細胞において破骨細胞分化誘導因子RANKL発現を抑制し,炎症性の破骨細胞分化と骨吸収を阻止することを見いだした.さらに,ルテインは骨形成誘導因子BMP-2の発現促進と骨形成抑制因子スクレロスチンの発現抑制によって,骨芽細胞の分化と骨形成を促進することも明らかにした.In vivo試験では,成長期マウスにルテインを摂食させると,最大骨量が増加することが示された.これら知見を踏まえ,本稿ではルテインによる骨代謝調節作用の最新の知見を交えて概説する.

  • 髙戸谷 賢, 富成 司, 新井 大地, 田中 優樹, 唐牛 健杜, 池田 圭祐, 清水 絢介, 宮浦 千里, 平田 美智子, 稲田 全規
    2024 年 20 巻 p. 49-54
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    医療技術の進歩と共に平均寿命が延伸し,健康寿命への対応が望まれている.加齢における運動器,特に筋組織の健康状態を維持するためには,適切な運動と栄養摂取が必要である.骨格筋が萎縮するサルコペニア(加齢性筋萎縮症)は運動と栄養摂取の管理で筋量と筋機能が維持できることが明らかとなっている一方,そのメカニズムは未だ不明な点が多い.分岐鎖アミノ酸(Branched-chain amino acids: BCAA)は,筋力トレーニングとの関連が報告されており,血中や細胞内で遊離アミノ酸として存在し,様々な生理機能を持つことが明らかになっている.摂取されたアミノ酸の多くは肝代謝されるが,BCAAは骨格筋組織で代謝される.近年,BCAAであるロイシンの代謝産物がmTORC1(mechanistic target of rapamycin complex 1)経路を活性化させ,骨格筋形成を促進することが報告された.本稿では,運動刺激と栄養因子としてのBCAAが筋細胞へ与える影響について概説する.

原著
  • 山王丸 靖子, 佐久間 友美, 山田 沙奈恵, 五十嵐 庸, 和田 政裕
    2024 年 20 巻 p. 55-61
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,中医学に基づいた食物の性質(温・熱・寒・涼・平)が冷えに及ぼす影響を明らかにすることを目的として交差試験を実施した.研究期間は,2021年4月から2021年7月とした.寺澤の冷え症診断基準(1987年)により冷え症と診断された女子大学生15人(年齢19〜26歳)を対象とし,このうち朝食として週に4日以上パンを摂食している8人をA群,米飯を摂食している7人をB群として2群に分けた.被験食品は食パン(小麦:涼性)および赤飯(もち米:温性)とした.対象者は体組成の測定を行うとともに,被験食品をそれぞれ2週間ずつ朝食に摂取した.各被験食品の摂取前日および摂取2週間の最終日に血圧,腋窩温度の測定および冷水負荷試験(手指)を行った.結果の集計および解析はSPSS(Ver.27)を用いて行った. 体組成は2群間で差がなかった.食事介入前のA群とB群の比較では,B群の腋窩温度が有意に高く(p < 0.05),朝食に米飯を摂取していると体温を高く維持できる可能性が示唆された. A群では,食パン摂取前後の皮膚温度回復率,血圧,体温等の変化に関する影響は認められなかったが,赤飯を2週間摂取したところ,摂取前と比較して腋窩温度が有意に上昇した(p < 0.05).B群では,被験食品の摂取前後において変化の認められた項目はなかった.これらの結果から,普段から朝食にパンを食べている者が赤飯を摂取すると腋窩温度が高まり,中医学に基づく食性が冷え症の改善に影響を及ぼす可能性が示唆された.

  • 桜庭 大樹, 澁谷 修一, 渡辺 憲史, 阿部 卓哉, 大平 はる香, 山本 貴司, 野口 直人, 永田 岳史, 山口 芳正, 清水 孝彦
    2024 年 20 巻 p. 62-69
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    加齢や遺伝的要因,紫外線等の外的要因によって発生する活性酸素種(Reactive oxygen species: ROS)は老化を促進させる原因の一つである.細胞質内のレドックス(酸化還元)恒常性を維持する主要制御酵素であるCuZn-superoxide dismutase(CuZn-SOD, SOD1)を欠損させたマウス(SOD1欠損マウス)は,皮膚萎縮,肝臓の脂肪沈着,および筋萎縮等の様々な老化様変化を呈する.本研究では,抗酸化作用や抗炎症作用を持つクルクミンと,クルクミン,イチョウ葉エキス,L-カルニチン,ヒハツエキス,アスタキサンチンを配合した食品(以下,クルクミン配合食品),およびチオレドキシン(Thioredoxin: TRX)含有清酒エキスの抗老化作用をSOD1欠損マウスで検討した.6週齢のSOD1欠損マウスに対して,クルクミン15 mg/kg体重あるいはクルクミン配合食品440 mg/kg体重(クルクミン量として15 mg/kg体重),TRX含有清酒エキス500 mg/kg体重(TRX量として0.55 mg/kg体重)を,経口ゾンデを用いて週5回,8週間投与した.15週齢で解剖し,SOD1欠損組織の老化様変化の有無を組織学的および生化学的に解析した.その結果,SOD1欠損マウスは皮膚厚が減少し皮膚萎縮を示したが,クルクミン配合食品の投与は皮膚厚減少を有意に抑制した.さらに,欠損マウス皮膚ホモジネート中の酸化ストレスマーカー(8-isoprostane)の増加が有意に抑制され,皮膚組織のコラーゲン分解酵素マトリックスメタロプロテアーゼ-2(Matrix metalloproteinase-2: MMP-2)発現の増加抑制傾向が認められた.しかし,クルクミン単独投与ではこれらの抑制は認められなかった.一方,TRX含有清酒エキスの投与は,皮膚厚減少を有意に抑制し,肝臓肥大も有意に抑制した.以上より,クルクミン配合食品は,皮膚中の酸化ストレスを減少させ,コラーゲン過剰分解を抑制し,皮膚の老化様変化を改善したと考えられる.また,TRX含有清酒エキスは抗酸化作用や抗炎症作用に加え,コラーゲン合成促進作用を示したことから,これらの作用が皮膚や肝臓の老化抑制に寄与している可能性を示唆した.

  • 葛西 紅音, 関 洋子
    2024 年 20 巻 p. 70-77
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,麹菌を利用した発酵により有用な物質を生成する報告が多くあり,緑茶を麹菌で発酵させたところ美白効果のあるポリフェノールを生成したと報告されている.緑茶と同様の成分を含むものに柿の葉茶があるが柿の葉茶は緑茶と比較して多くの没食子酸を含む.チロシナーゼに対する没食子酸のIC50は高いチロシナーゼ阻害活性を持つことで知られるコウジ酸のIC50と同程度であることが報告されていることから,柿の葉茶自体に高いチロシナーゼ阻害活性があるといえる.また,柿の葉茶には緑茶と同様にガレート体カテキンが含まれ,緑茶におけるガレート体カテキンは麹菌の分解により没食子酸と加水分解体カテキンとなることが報告されている.このことから,没食子酸の増加によるチロシナーゼ阻害活性の向上,加えて麹菌の産生するコウジ酸によって麹菌を利用した発酵柿の葉茶は緑茶と比較してより強い美白作用が期待される.そこで本研究ではAspergillus Oryzae(NBRC30113,RIB40)とAspergillus Awamori(NBRL4388)を利用して柿の葉茶を7日間発酵させ,美白作用とその要因を評価した.美白作用はチロシナーゼ阻害活性で評価し,その阻害要因を調査するために発酵柿の葉茶のコウジ酸含量と全ポリフェノール量を測定し,これらのチロシナーゼ阻害活性を調査した.その結果,チロシナーゼ阻害活性はNBRC30113,RIB40で4日目以降,NBRL4388で6日目以降に上昇した.全ポリフェノール測定では7日間の発酵期間に増加傾向を示したが,コウジ酸含量は発酵によって大きく増減しなかった.本実験で最も高い濃度であった45 mg/L没食子酸溶液と0.03 mg/mLコウジ酸溶液のチロシナーゼ阻害活性を比較したところ,没食子酸で高いチロシナーゼ阻害活性を示したことから,発酵柿の葉茶のチロシナーゼ阻害活性にはポリフェノールが大きく関わっていることが明らかとなった.

  • 堤 渚紗, 渡部 睦人, 塚田 洋平, 板橋 勇二, 野村 義宏
    2024 年 20 巻 p. 78-88
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    長ネギ(学名:Allium fistulosum L.)は,出荷の際に段ボール箱に詰めるため,緑色の葉身部分(以下,青ネギとする)の上部が切断され,廃棄されている.この廃棄される青ネギを活用することを目的に,その摂取効果に関する研究を行うことを計画した.これまで青ネギに関する研究は抗炎症効果が報告されていることから,光老化モデルへの摂取効果について調査した. ヘアレスマウスに紫外線を暴露させる光老化モデルを作成し,青ネギ粉砕物および青ネギの水抽出物を経口投与し,光老化皮膚改善効果の検証を行った.また,青ネギ抽出物の構成成分を解析するため,逆相クロマトグラフィーや質量分析計,薄層クロマトグラフィーを用いて抽出物の解析を行った. 光老化モデルへの青ネギ粉砕物投与により,紫外線暴露により低下した背部皮膚水分量の減少抑制および表皮の肥厚抑制が観察された.加えて青ネギ水抽出物投与群では,背部皮膚のシワの形成抑制とⅠ型コラーゲン量の上昇が見られた.また,成分分析により,青ネギ水抽出物にグルコースを含む高分子の存在が認められた.また,青ネギ水抽出物には,ケルセチンが含まれていないことも明らかとなった. これまでの結果より,青ネギのケルセチン以外の成分が光老化改善効果を示すことが示唆された.

  • 山田 沙奈恵, 山王丸 靖子, 関口 祐介, 五十嵐 庸, 和田 政裕
    2024 年 20 巻 p. 89-96
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    保健機能食品(特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品)に関する理解の程度を明らかにすることを目的とし,2017年11月と2018年3月にインターネット調査を行った.対象者は,一般消費者300人と医療従事者(薬剤師,管理栄養士,看護師)392人を対象とした.調査項目は,対象者の属性(性別,年齢),健康食品の使用経験,保健機能食品の内容に関する認知と知識の程度である.本研究における健康食品の定義は「保健機能食品ならびに健康の維持向上を目的としたすべての食品」とした. 調査の結果,全対象者の半数以上が健康食品の使用経験者であった.一般消費者の約20%が健康食品を医薬品だと思う,医薬品に近いと思うと回答した.3種類の保健機能食品の認知および知識の程度は一般消費者が最も低かった.医療従事者における認知および理解は,職種による程度の差が見られ,管理栄養士が薬剤師,看護師よりも高い傾向を示した.保健機能食品のうち,特定保健用食品の認知度がどの集団においても高かった.これは,制度開始から20年以上が経過したためと考えられる.一方,2015年から制度が始まった機能性表示食品の認知度は,どのグループにおいても低い傾向にあった. これらの結果から,保健機能食品についての知識は医療従事者においても,十分ではない可能性が示された.今後は,一般消費者の保健機能食品の適正かつ安全な利用を目指し,医療従事者間での情報共有が必要である.同時に,保健機能食品を含めた健康食品に関する新たな情報提供体制の構築が必要である.また,一般消費者においては,自分の健康に責任を持ち,自ら情報収集を行うとともに,健康食品手帳(消費者庁)などの利用を進めることが望まれる.

  • 荻野 明彦, 岡村 健史, 山村 聡, 横野 智砂子, 野村 義宏
    2024 年 20 巻 p. 97-104
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    コラーゲン加水分解物を摂取することで,乾燥肌の改善が報告されている.そこで,本研究では,コラーゲン摂取に関心のある一般の方38名を対象として「魚皮由来コラーゲンペプチド」およびプラセボを8週間摂取してもらい,摂取前,摂取4および8週間後に,血液の生化学検査および血中のPro-Hyp量,皮膚の水分量,経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定した.被験者について「魚皮由来コラーゲンペプチド2.5 g摂取」,「魚皮由来コラーゲンペプチド12.5 g摂取」およびプラセボの3群を設定し,無作為化二重盲検並行群間比較試験を行った. その結果,摂取前に比べてコラーゲンペプチド2.5および12.5 g摂取による血中のアルブミン量,γ‐GT量などの指標の変化を認められなかった.通常の5倍量の摂取である12.5 g摂取でも血液中の生化学データに変化がなく,安全性が確かめられた.血液中のPro-Hyp濃度は,コラーゲンペプチド摂取により高くなっていたが,血中のコラーゲン濃度に影響は認められなかった. 摂取2か月後の皮膚の水分量は,統計的有意差はないもののプラセボ群に比べ,コラーゲンペプチド摂取群で高くなっていた.また,摂取2か月後のTEWLがプラセボ群に比べてコラーゲンペプチド2.5 g摂取群で低くなっていた. よって,コラーゲンペプチドの5倍量の過剰投与の影響は認められず,皮膚水分量の上昇,皮膚バリア機能の亢進の可能性が示唆された.

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