加齢や遺伝的要因,紫外線等の外的要因によって発生する活性酸素種(Reactive oxygen species: ROS)は老化を促進させる原因の一つである.細胞質内のレドックス(酸化還元)恒常性を維持する主要制御酵素であるCuZn-superoxide dismutase(CuZn-SOD, SOD1)を欠損させたマウス(SOD1欠損マウス)は,皮膚萎縮,肝臓の脂肪沈着,および筋萎縮等の様々な老化様変化を呈する.本研究では,抗酸化作用や抗炎症作用を持つクルクミンと,クルクミン,イチョウ葉エキス,L-カルニチン,ヒハツエキス,アスタキサンチンを配合した食品(以下,クルクミン配合食品),およびチオレドキシン(Thioredoxin: TRX)含有清酒エキスの抗老化作用をSOD1欠損マウスで検討した.6週齢のSOD1欠損マウスに対して,クルクミン15 mg/kg体重あるいはクルクミン配合食品440 mg/kg体重(クルクミン量として15 mg/kg体重),TRX含有清酒エキス500 mg/kg体重(TRX量として0.55 mg/kg体重)を,経口ゾンデを用いて週5回,8週間投与した.15週齢で解剖し,SOD1欠損組織の老化様変化の有無を組織学的および生化学的に解析した.その結果,SOD1欠損マウスは皮膚厚が減少し皮膚萎縮を示したが,クルクミン配合食品の投与は皮膚厚減少を有意に抑制した.さらに,欠損マウス皮膚ホモジネート中の酸化ストレスマーカー(8-isoprostane)の増加が有意に抑制され,皮膚組織のコラーゲン分解酵素マトリックスメタロプロテアーゼ-2(Matrix metalloproteinase-2: MMP-2)発現の増加抑制傾向が認められた.しかし,クルクミン単独投与ではこれらの抑制は認められなかった.一方,TRX含有清酒エキスの投与は,皮膚厚減少を有意に抑制し,肝臓肥大も有意に抑制した.以上より,クルクミン配合食品は,皮膚中の酸化ストレスを減少させ,コラーゲン過剰分解を抑制し,皮膚の老化様変化を改善したと考えられる.また,TRX含有清酒エキスは抗酸化作用や抗炎症作用に加え,コラーゲン合成促進作用を示したことから,これらの作用が皮膚や肝臓の老化抑制に寄与している可能性を示唆した.
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