静岡県内に植栽によって造られたブナ集団(植栽集団)を対象に葉緑体DNAと核マイクロサテライト(SSRs)の解析を行い、それらの遺伝的系統と遺伝的多様性を調べた。調査した8集団のうち3集団に、日本海側には分布するが県内には分布しない葉緑体DNAハプロタイプが検出された。そのうちの2集団については、核SSR座の遺伝子型を用いたSTRUCTURE解析でも日本海側系統に分類された。したがって、2種類の遺伝マーカーによって県内天然林集団(太平洋側系統)とは異なる遺伝的系統の植栽集団が存在することが明らかとなった。これら2集団は、遺伝的な観点から植生回復の目的に適したものではないと考えられる。また、核SSR座を用いて植栽集団の遺伝的多様性を調べた結果、対立遺伝子の豊富さが3集団で県内天然林集団の平均値よりも低かった。遺伝的多様性を保持した植栽集団の育成には、植栽当初に遺伝的多様性の高い種苗の確保が必要であると思われる。
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