要旨:次世代育種を進める上では、世代の進行に伴う育種集団サイズの減少による遺伝的多様性の低下や近親交配を回避し、特定の血縁に偏らないような候補木の選抜や交配親の選定を行う必要がある。本研究では、関西育種基本区におけるヒノキ第一世代および第二世代精英樹(候補木)集団を対象に、SSRマーカーに基づき遺伝的多様性を評価するとともに、DNA親子解析により第二世代に寄与する第一世代親の構成を明らかにした。世代間で対立遺伝子の有効数や遺伝子多様度を比較したところ、日本海岸、近畿瀬戸内海の2育種区では有意な差は見られなかったが、四国育種区では第二世代が第一世代よりも有意に低い値を示した。親子解析の結果、花粉親については第二世代の合計264系統のうち112系統(42.4%)で第一世代が親系統として特定された。第一世代親の頻度分布をプロットしたところ、全体的に母樹に比べて花粉親の頻度に偏りが大きく、少数の系統が高頻度で花粉親として寄与する傾向が見られた。本報は1育種基本区での評価ではあるが、我が国の主要造林樹種の次世代育種集団の遺伝的多様性を初めて評価した研究であり、以上の知見は今後の当該集団の普及や追加選抜・更なる育種(第三世代化等)を進める上での基礎的知見として重要である。
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