繊維学会誌
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38 巻, 11 号
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  • 塚田 益裕, Guy Bertholon, 平林 潔
    1982 年 38 巻 11 号 p. T451-T456
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
    絹フィブロインの合成アミノ酸モデルであるpoly (Gly-L-Ala)およびcopoly (L-Ala-Gly, L-Ser-Gly) (2:1)の構造を究明するため, X線回折,赤外吸収スペクトルおよび円二色性の測定結果を通して,ポリペプチド主鎖にセリシン残基が導入されることによる構造の変化を検討した。X線回折および円二色性による分子形態測定の結果には,試料間の構造上の差異が見られない。赤外吸収スペクトル測定によると, copoly (L-Ala-Gly, L-Ser-Gly) (2:1)はpoly (Gly-L-Ala)より明瞭な逆平行β構造をとっていることが明らかとなった。実験結果をもとにセリシン残基がポリペプチド鎖に導入されることによる構造上の効果を検討し次の結論を得た。
    copoly (L-Ala-Gly, L-Ser-Gly) (2:1)のポリペプチド主鎖はセリン残基のCaの位置を中心にしておりたたまれ,分子鎖はcross βあるいは逆平行β構造に結晶化する。これに対し, poly (Gly-L-Ala)の分子鎖は部分的に逆平行β構造をとるものと推論した。
  • 吉田 博久, 小林 靖二, 吉田 令子
    1982 年 38 巻 11 号 p. T457-T464
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
    スチレンーアクリロニトリル共重合体(SAN)製の食品容器から, 5種類の凝似食品溶媒中へのアクリロニトリル(AN)モノマーの移行過程ならびにそれにおよぼす熱処理効果を検討した。移行過程は主に二段階のANモノマー拡散過程として考えることができる。
    第一段階は溶媒によって可塑化されていない高分子からのANモノマーの移行過程に基づき,第二段階は溶媒が高分子中に拡散するためにANモノマーの移行速度が加速される過程と考えられる。これらの移行過程はエタノール溶液濃度とガラス転移温度以下の温度(80°C)での熱処理によって影響を受ける。Fick型の拡散を仮定して求めたANモノマーの拡散係数はエタノール濃度に対して直線的に変化した。溶媒による高分子の膨潤の開始は熱処理によって遅くなった。第一段階の熱処理試料の拡散係数は, 80°Cで65時間熱処理したものと比較して半分の値であった。第二段階のANモノマーの拡散係数は熱処理によってあまり大きな影響を受けなかった。これは熱処理によって一度減少した分子運動性が溶媒の膨溺によって再び活発化するためと考えられる。
  • 高久 明, 照井 俊, 鈴木 千章, 清水 二郎
    1982 年 38 巻 11 号 p. T465-T471
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
    ポリアクリロトリル(PAN)の動力学的性質に及ぼす熱処理効果に関し,特に熱処理の初期に於いて観測される160°Cの損失正接(tan δ)温度吸収ピークの変化が,ポリマ構造の規則性と対応して選択的に進行する熱分解の影響に帰着しうるものであるかについて検討した。PANフィルムを220°C,繊維を260°Cで種々の時賜熱処理し,これらの試料の動力学的性質の温度依存性を110Hzの一定周波数で測定した。またこれらの試料の熱処理による化学的及び物理的な構造変化を特定波長の赤外吸光度及びX線回折の測定により検討した。比較的短時間の熱処理によって160°Cのtan δピークは顕著に減少し,同時にBragg角2θ=17.0°及び2θ=29.5°のX線干渉ピークは鋭くなることが観測された。一方,炭素・炭索間二重結合及び炭素・窒素間三重結合伸縮振動の赤外吸光度には有意な変化が見出されなかった。これらの結果はPANの熱変成が160°Cのtan δピーク減少の主たる要因ではないことを意味している。熱処理に伴なう160°Cのtan δピーク減少は,熱処理により規則性の低い領域が高い領域に変化することによって,このtan δ吸収に関与する分子運動が抑制されることに基づくと考えられる。PANは適切な条件の熱処理過程に於いて,ニトリル側基の重合に基づく環化が実質的に進行する以前に,分子鎖間ラテラルオーダーが増大する段階を経ると考えられる。
  • 木下 隆利, 滝沢 章, 辻出 義治
    1982 年 38 巻 11 号 p. T472-T478
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
    L-グルタミン酸-メチルL-グルタメート共重合体膜(L-グクタミン酸の側鎖モル分率χの試料をA-χと略)中におけるL-グルタミン酸側鎖間水素結合の存在が赤外吸収スペクトル(側鎖カルボニル基のC=O伸縮振動1720cm-1,測鎖OHの伸縮振動2700cm-1)により確められた。このL-グルタミン酸側鎖間相互作用は, A-χ膜の力学分散に特徴的な分散ピークを与える。たとえば,乾燥A-17, A-30膜の対数減衰率Δは各々約7G°Cにおいて,この相互作用が断ち切られることに対応するピークを示す。このことは,乾燥A-30膜の2700cm-1の吸収がこの分散温度以上で消失することからも確められた。この側鎖間水索結合は,水,メタノール,エタノールのような極性分子の可塑化の影響を強く受けるが,その結果,温度を25°Cに固定した条件下において各溶媒濃度を増加させることによってもA-17, A-30膜の対数減衰率Δに最大値を観察することができた。このΔのピークに対応する各溶媒の分子数を求めたところ側鎖グルタミン酸2残基当り溶媒分子1分子が対応していることがわかった。このこ.とは,側鎖2分子間で形成されている水素結合が,溶媒1分子の侵入により断ち切られることを示唆した。また相対蒸気圧を固定(P/P0=0.5)した条件下でA-17膜の水蒸気透過の温度依存性を測定したところ30°C付近に〓の屈曲点があらわれた。上記のIR測定,力学的測定の結果より,この屈曲点はグルタミン酸側鎖部分の分散に対応していることは明らかである。
    これらの結果は,用いた共重合体膜の膜物性が膜中に存在するグルタミン酸側鎖間水素結合の分率に強く依存することを示唆した。
  • 宮本 正樹, 本田 憲治, 笹川 滋
    1982 年 38 巻 11 号 p. T479-T483
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
    著者らは,繊維に粘着した顆粒球からの漏出酵素を定量することにより,白血球分離用としての繊維の適合性を評価した。顆粒球は種々の合成繊維や天然繊維への粘着に伴い,形態変化が起こり,細胞内から種々の酵素が漏出した。これらの変化は,繊維の化学構造や物理的形状により異なり,また,粘着形態変化と酵素漏出量は,必ずしも対応しなかった。繊維の形状は細胞との相互作用には,重要であり,繊維の太さが,顆粒球より小さい程,形態変化と酵素漏出量は共に増加した。ヒト血清アルブミンをコートした繊維は,細胞分離を高く維持しながら,細胞の機能保持にも効果が認められた。
  • 高橋 璋, 菅原 康里, 保崎 喜久男, 高橋 史朗
    1982 年 38 巻 11 号 p. T484-T490
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
    酢酸量の異なるアセチルセルロースへの無触媒光グラフト重合が研究された。グラフト率および見かけの分岐数は酢酸量の少ない,低重合度の試料において,また石英管での値がパイレックス管のそれに比べて大きい。再生セルロースへのグラフト率もまた重合度の小さい試料において大きい。重合系に少量の有機溶媒を添加すると,一般にグラフト率および分岐鎖長は増大し,さらに増すと減少した。溶媒および幹ポリマーの連鎖移動定数が測定された。またアセチルセルロースの光分解がIRスペクトルにより検討された。これらのことから,グラフト重合は主として鎖長末端に進行し,アセチル基の光分解により開始することは否定された。
  • 升田 利史郎, 高橋 雅興
    1982 年 38 巻 11 号 p. P491-P498
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
  • 田中 芳雄, 塩崎 英樹
    1982 年 38 巻 11 号 p. T491-T499
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
    羊毛と2及び3官能性アルキル及びアリールグリシジルエーテルとの不均一付加反応を,四塩化炭素やトルエンなどの溶媒中, 50~70°C, NaClなど種々の塩水溶液を含浸触媒として用い調べた。反応は塩やエポキシド,溶媒の量や性質及び反応温度に左右された。即ち反応速度は塩濃度と共に増大するがある濃度で最大値をとった。塩の効果は塩アユオンの塩基性もしくは求核性で説明された。羊毛ケラチンのリジン.ヒスチジン,アルギニン及びシスチン残基の他に,チロシンとセリン残基へのエポキシドの付加が確められた。エポキシドの付加量は更にアスパラギン酸やグルタミン酸残基への付加量で説明できるが,蛋白質の架橋反応以外の単なるエポキシドの付加も起っていると推定される。過ギ酸/アンモニア溶液やアルカリ溶液への処理羊毛の溶解試験では,前者への溶解度はいずれも大きく低下したが,後者へはレゾルシン系エポキシドを除いて溶解性は増加した。
  • 清水 二郎
    1982 年 38 巻 11 号 p. P499-P507
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
  • 溝口 健作
    1982 年 38 巻 11 号 p. T500-T506
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
    前報で提案したロープ状布染色のシミュレーションモデルについて考観を進め,均染度におよぼす運転条件の影響を検討した
    検討の結果,運転条件の定量的評価が可能となり,さらに均染性を得るための条件について,次のような結論が得られた。
    1) 不均染は,染色操作のある段階で特に強く発生する。
    2) 均染度は,染液流動条件に関連するパラメータβに強く依存する。
    3) 一定の終端温度条件下では,染液流動を抑制する方が均染性の点からは望ましい。
    4) 上述の点から,染液流動条件の最適化に関する知見が得られた。
    5) 染浴温度上昇速度は,均染性に非常に強い影響を与える。
    6) 昇温速度を一定にするなら,終端温度を低くすることが望ましい。
  • 広瀬 重雄, 畠山 立子, 畠山 兵衛
    1982 年 38 巻 11 号 p. T507-T511
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
    バニリンとペンタエリスリトールを原料として,スピロジオキサン環を有する3.9-ビス(4-ヒドロキシー3-メトキシフェニル)-2, 4, 8, 10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(I)を合成した。さらに,ビスフェノール(I)からポリテレフタレート(PTS)及びポリセバケート(PSS)を合成した。
    X線回折測定によりPTSは結晶性であり, PSSは無定形であることがわかった。さらに,熱重量分析の結果, PTSおよびPSSの熱分解温度は,それぞれ, 568Kおよび527Kであり, PTSの方が熱的に安定であった。
    また,示差走査熱量計による分析では, PTSは昇温測定により相転移は認められなかったが, PSSは363Kにガラス転移(Tg)が認められた。PSSのTgと,すでに知られている9, 9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フセオレンあるいは9.9-ビス(4-ヒドロキシフェール)9, 10-ジヒドロアントラセンのポリセバケートのTgと比較を行い,スピロジオキサン環の剛直性を推定した。
    さらに, PTSとPSSの熱容量(Cp)の352Kから386Kの温度範囲で測定し, PTSのCpが低いことから,その熱的安定性のよいことを明らかにした。
  • 松井 亨景
    1982 年 38 巻 11 号 p. P508-P513
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
  • 安田 浩
    1982 年 38 巻 11 号 p. P514-P520
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
  • 長谷川 勝美
    1982 年 38 巻 11 号 p. P521-P527
    発行日: 1982/11/10
    公開日: 2008/11/28
    ジャーナル フリー
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