一連の高速紡糸フィラメントおよび一連の化学的あるいは物理的修飾スフを含むポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の水分収着特牲を, 15, 30および45°Cにおける等温収着曲線および30°Cにおける収着熱の測定,解析を通じ検討した。
化学修飾スフを除くすべてのPET繊維に対し, 30°Cにおける等温収着曲線は, Henry則に従う溶解成分とほぼ25mmHg以上の飽和蒸気圧の範囲に出現する急上昇成分との二成分よりなること,他方,化学的修飾(高吸湿性)スフに対し,溶解成分とB. E. T.あるいはLangmuir吸着に従う吸着成分とさらに凝集成分とも称すべき三成分よりなることが判明した。
大半のPET繊維に対し,溶解度係数
KDはX線的に決定された非結晶度(1-
Xx)と良好な直線関係を示し,結晶度
Xxが高い程
KD値は小さく,例えば一連の高速紡糸フィラメントでは紡速7000m/min近傍で
Xxは最大,
KDは最小を示す。
溶解度係数
KDの温度依存性は, 15~45°Cの温度範囲でよくvan't Hoff則に従い,それより溶解水の水蒸気に対するエンタルピー差は約-9.6kcal/moleと見積もられる。さらに乾燥試料のぬれ熱測定に際する熱曲線は,少くとも定性的に急激な吸熱過程と緩慢な発熱過程が同時に発生していることを示す。
これらの結果より, PET繊維に収着された水分については液相水に比較して相互作用性の若干低い状態にある溶解水,相互作用性のかなり高い状態にある吸着水,さらに若干高い状態にある凝集水(急上昇成分を含める)の三成分が存在することを結論した。
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