典型的な光応答性基であるアゾベンゼン部を置換度(DS) 2.2~2.9の範囲で導入したセルロース(ABセルロース)をセルロース粉末と
p-フェニルアゾベンゾイルクロリドとの反応を繰返すことによって調製した。このABセルロースはいくつかの有機溶媒に可溶であり,ある濃度(臨界濃度)以上の濃度においてリオトロピックな液晶相を形成した。臨界濃度はクロロホルム中よりテトラヒドロフラン中において高く,またそれはABセルロースのDSの増加に従って減少した。これらの臨界濃度はUV光の照射により3~5%高くなった。この臨界濃度よりわずかに高い濃度で一度形成された規則構造はUV光の照射によって消失し,その後放置するとそれは再び回復した。ただし,完全ではなかった。UV光照射による臨界濃度の変化およびそれによる規則構造の消失はABセルロース中のアゾベンゼン部のトランス型からより極性のシス型への異性化によって説明された。ABセルロースを短時間UV光照射したときには,その規則構造は照射を中断した後にも減少し続け,完全に消失するにはさらに時間を必要とした。照射中断後の規則構造の消失に必要な時間はUV光照射時間の増加に従って減少し,ある時間でゼロとなった。この完全消失に要する照射時間はABセルロースの濃度の増加に従って増加した。
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