インドネシアのメダン市は、北スマトラ州にあるインドネシア第三の都市である。本稿は、2007年1月8日〜22日に東京大学都市再生COEの活動の一環として、メダン市の建築ストックの性能劣化実態調査および現地生コンクリート製造企業に対して実施したヒアリング調査に基づき、一般的な建築ストック寿命から試算した場合の建設系資材(とくに、セメントとコンクリート系廃棄物)の需給バランスについてシミュレーションによる予測試算を実施し、これを報告するものである。現地建築ストック劣化調査については、(1)都心部のRCレンガ壁式住宅の新築について、材料・施工方法の観点から施工品質調査を実施し(2)都心部街区の一区画を選定し、建物群の劣化調査を実施した。その結果、発展途上国都心部の建築ストックによくみられる脆弱な構造のみならず、それ以前に、現地の気象の影響によって、通常はそれほど管理するのが高度ではない施工品質が要因となり、経年劣化・脆弱化していると考えられる箇所が頻繁に見られることが明らかになった。次に、現地の代表的な生コンクリート製造企業に対して、現地生コンの消費量および材料調達の方法、価格などについてヒアリングし、メダン市の人口増加状況から、今後のセメントの需要、建築ストック解体ラッシュのピーク時期とコンクリート系廃棄物について都市計画的観点からシミュレーションを実施し、考察を行った。今後数年間、現在のペースで成長を続けることによって、メダン市だけで、ピーク期には現在の東京都の約8.0倍程度のコンクリート系廃棄物が年間排出される勢いになると予測された。
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