福島医学雑誌
Online ISSN : 2436-7826
Print ISSN : 0016-2582
72 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特別企画 福島県近代医学教育150年顕彰記念シンポジウム総説
  • ── 高齢者心不全の治療戦略 ──
    竹石 恭知
    2022 年 72 巻 3 号 p. 103-108
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    要旨:高齢化に伴い,心不全患者が増加している。治療の進歩にもかかわらず死亡率は高く,また医療コストは高額である。心不全の原疾患は様々であるが,高齢者に多い心臓弁膜症と心アミロイドーシスを中心に最新の治療について概説する。大動脈弁狭窄症に対して,経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)が行われている。身体への負担が少ないため,開胸外科手術のリスクが高い症例にも治療可能で,入院期間は短く,早期に社会復帰できる。僧帽弁閉鎖不全症もカテーテルで治療できるようになった。心アミロイドーシスも高齢者に多く,極めて予後が不良な疾患である。近年,トランスサイレチン型に対する核酸医薬を含む新しい治療法が開発され,大規模臨床試験で効果が示された。難治性心疾患に対する先進医療を広く普及させ,心疾患死亡率の低下を目指したい。

  • ── 地域に根ざした先進医療の実践 ──
    鈴木 弘行
    2022 年 72 巻 3 号 p. 109-113
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    要旨:がん死亡数は年々増加傾向にある。なかでも肺がんの死亡数はがん死亡の第一位を占めており,さらなる治療法の改善が望まれている。近年のがん治療において最大のトピックスは外科治療におけるロボット手術の普及と,免疫療法の登場である。当院でも2021年に最新のロボット手術支援機器(Da Vinci Xi, Xシステム)を導入し2台体制で診療を開始している。また2015年以降免疫抑制状態の解除を目的とした免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が上市され,これまで治癒が見込めなかった進行肺がんにおいて長期生存が期待されるようになった。このような大きな治療法の変化によって治療成績の改善が期待されるようになった一方で,高度医療に伴う有害事象対策の重要性も増している。当院では医療安全改革に取り組み2019年よりアクションプランを制定し多方面から医療安全の向上に取り組んできた。その他,高度医療の安全性の向上のため,2022年4月に先端的低侵襲手術センターを設置し,診療科横断的な情報共有と診療内容の相互レビューができる体制を整備した。加えて,ICIの有害事象対策チームとして2020年9月にACiST Fukushimaを立ち上げ,有害事象対策を共有し安全な治療の遂行をサポートする体制を進めている。本稿では肺がん治療を中心にこれまでの治療の変遷と当院での取り組みを紹介する。

  • ── 福島県で安心して生み育てるために ──
    藤森 敬也
    2022 年 72 巻 3 号 p. 115-119
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    要旨:前置癒着胎盤は,時に母体生命を脅かす大量出血を引き起こす代表的な産科合併症の一つである。リスク因子として,帝王切開術の既往や前置胎盤が知られている。当科では,リスク因子に加え画像診断で癒着胎盤が強く疑われる症例に対して,自己血貯血し,術中超音波により胎盤を避けた部位での帝王切開(子宮底部横切開),大動脈血管内バルーン閉鎖術(REBOA:resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta)といった対応を行い,原則的に一期的に手術を行っている。2003年から2022年の子宮摘出術を必要とした前置癒着胎盤症例37例について検討したところ,REBOAは,手術時間を増加させることなく,帝王切開子宮全摘術の出血量を減少させ,その安全性と有効性を確認できた。今後も福島県で安心して生み育てるために,産科専門医を中心とした多職種の関与により,難治分娩へ対応していく。

症例報告
  • 鈴木 健悟, 木暮 敦子, 持丸 友昭, 佐藤 俊, 大島 康嘉, 坂 充, 近藤 祐一郎
    2022 年 72 巻 3 号 p. 121-125
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    要旨:アセトアミノフェン(acetaminophen:AAP)は,一般に非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)と比較して副作用が少ない解熱鎮痛薬として,高齢者や肝腎機能障害を有する患者にも頻用されている。一方で肝障害の副作用が知られ,肝疾患のある患者では1,500 mg/日以下とすべきであると記載されている。今回,常用量AAPによる昏睡型肝不全の一例を経験したので報告する。症例は意識障害を主訴に当院へ救急搬送された73歳の女性。左変形性膝関節症に対して,左膝関節全置換術施行後もAAP 1,200 mg/日の内服を2カ月間継続していた。搬送時にJapan Coma Score (JCS) 200の意識障害と黄疸,全身性浮腫を認めた。高度の肝機能障害と凝固障害,肝萎縮があり,昏睡型急性肝不全と診断し加療を開始した。集学的に加療を行ったものの,第7病日に痙攣が出現し呼吸状態悪化に伴い亡くなった。本症例はAAPによる薬物性肝障害(drug-induced liver injury:DILI) であったと判断した。以前より指摘されていた非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)と高齢により,DILIのリスクが高かったと考えた。本症例のようにDILIの危険性のある症例では,定期的な肝機能検査の施行や,症状改善に伴う頓服への変更または減量が推奨される。

  • ── WHO分類による診断の変遷と本邦の症例の検討 ──
    東 孝泰, 木暮 道彦
    2022 年 72 巻 3 号 p. 127-133
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    要旨:症例は58歳男性,繰り返す右下腹部痛を主訴に当科を受診し,CTで認めた虫垂内部の糞石による症状と考え,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術後病理検査で虫垂神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumor:以下,NET)を認めたが,再発や転移のリスク因子はなく経過観察の方針とした。虫垂NETは稀な腫瘍で,後病理検査で偶発的に発見されることが多い。虫垂に発生する神経内分泌腫瘍は,本邦の取扱い規約においては組織学的異型度によって分類されるが,WHO分類では細胞増殖能による分類がなされており,本邦で発刊されている神経内分泌腫瘍のガイドラインではWHO分類に則った推奨術式のプロトコルが提示されている。今症例の検討にあたり, WHO分類の変遷に関して最新版のWHO第5版も参照して振り返りつつ,本邦での報告例について検討したため,ここに報告する。

第18回会津血液研究会抄録
第35回福島県輸血懇話会抄録
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