日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
38 巻, 2 号
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  • 西川 純, 上田 穣, 三崎 隆
    1997 年38 巻2 号 p. 113-119
    発行日: 1997年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,EFTテストによって生徒を場独立型と場依存型に分類した。場独立型の生徒2人の組の群(独立群)と,場依存の生徒2人の組の群(依存群)と,場独立型の生徒と場依存型の生徒の組の群(混合群)を構成した。各組は校庭で自由に観察し,気づいたことを記録することを求められた。彼らの記録から各組の観察得点を算出した。その結果,微視的観察得点において混合群は依存群を上回った。巨視的観察得点において混合群は独立群を上回った。場独立型の生徒と場依存型の生徒を組み合わせることによって,互いの弱い観察を補い合うことが明らかになった。

  • 林 秀雄, 安藤 雅夫, 石原 敏秀, 尾崎 浩巳
    1997 年38 巻2 号 p. 121-134
    発行日: 1997年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    Clement, J., Brown, D.E.等が提案したブリッジングアナロジー方略が日本の中学生の理科の学習にとって有効であるのか,またどのような問題点が存在するのかを検証し明らかにすることが本研究の目的である。中学校第3学年の生徒92名を対象に,作用・反作用に関する教材を取り上げブリッジングアナロジー方略を用いた学習を実施した。その結果,①「机の上に置かれた本に机から上向きの力が働くか」という問題に対して,半数以上の生徒は「上向きの力は働かない」というミスコンセプションを持っていた。②学習を行った後には,これらの生徒の約8割が「上向きの力が働く」と答えられるようになった。③学習が進むにしたがって日常的・直観的な説明をする生徒は減少し,物体の弾性に視点をおいた説明をする生徒が多くなっていった。力の相互作用性,物体のバネ的性質に注目することは力概念の形成にとって大切であり,説明の最終段階ではこのような視点を持った生徒は,正答者の3割強にまでなった。④この学習の半年後に行ったポストテストおよび類似問題テストでも,学習直後の正答率とほぽ変わらない結果を得ることができた。しかし,⑤力概念形成にとって大切なバネ的性質という視点を持って回答する生徒が半年後では半減し,逆に日常的・直観的な説明をする生徒の割合が3倍に増加した。このようなことから,ブリッジングアナロジーによる学習はミスコンセプションを持った生徒に対して,概念の変容を促すことが十分にできる方略であるといえる。しかし,学習後半年を経過した段階で力概念に関する視点に揺り戻しがみられた。このように問題戌はあるものの,理科の学習にとってブリッジングアナロジー方略を用いることは非常に有効であることが明らかになった。

  • 稲垣 成哲, 山口 悦司
    1997 年38 巻2 号 p. 135-146
    発行日: 1997年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    理科を教えることや学ぶことについて,それらの営みを協同的なものとして議論することの重要性が指摘されてきている。けれども,実際の授業で繰り広げられている教えることや学ぶことの過程は,さほど実証的には検討されていない。本研究の目的は,教えることや学ぶことの過程としての教師と子どもたちの会話に着目し,それを1REの視点から分析することであった。分析の対象とされた理科授業は,同一の教師が行う二つの授業であった。一つは普段から行われている授業であり,もう一つは,表現のリソースとしてのコンセプトマップが導入された授業であった。VTRとテープレコーダーを使用して,二つの理科授業の会話が記録された。授業の会話のあり方を明らかにするために,カテゴリー分析とエピソード分析が行われた。分析の結果より,普段の授業がIREのシークエンスで支配的に構成されているのに対して,コンセプトマップの授業が必ずしもそうではないことが明らかになった。これらの結果を考察することから,コンセプトマップの授業においては,教師や子どもたちは,それぞれの「教える」役割と「教えられる」役割を部分的にではあるが交替させていたことが示唆された。そのとき,表現のために使用されたコンセプトマップは,「教師―子ども」の関係性を変容させるリソースとして機能していたと考えることができた。

  • 溝辺 和成, 野上 智行, 山口 悦司, 稲垣 成哲
    1997 年38 巻2 号 p. 147-161
    発行日: 1997年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    コンセプトマップ法をベースとした「知識ウェブ」を開発し,実際の授業でその利用のされ方を事例的に検討した。知識ウェブの特徴の一点目は,子どもたちが表現した知識を彼ら自身がタイプ分けする活動を取り入れることであった。二点目は,ラベル間の関係に対する自信度を表記させることであった。三点目は,作成の手続きに対話の要素を取り入れることであった。単元「電流のはたらき」の導入部において,第6学年1クラス36名を対象に知識ウェブを導入した授業が実施された。命題だけではなく,ストリング,イメージやエピソード,自信度などの多様な知識を簡単に表現することができ,知識ウェブの授業における利用可能性が事例的に示された。

  • 栢野 彰秀
    1997 年38 巻2 号 p. 163-171
    発行日: 1997年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,アメリカ14州の教育局または,教育委員会から発行されている,州科学カリキュラム基準におけるSTS教育を取りあげ,その目的及び内容,方法を分析し,その特徴を明らかにしたものである。その結果,アメリカ州科学カリキュラム基準におけるSTS教育は次のような特徴を持っていることが明らかになった。1. STS教育と,従来の科学教育が融合され,現在の科学教育の目的,内容,方法が構成されている。しかし,STS教育と従来の科学教育との関連性については,アメリカ14州の科学カリキュラム基準でそれぞれ異なっている。2. STS教育の州科学カリキュラム基準における構成は州によって異なる。アメリカ14州の州科学カリキュラム基準を類型化すると,以下の3類型となる。①ペンシルベニア型(中等教育段階において独立した科目「STS」を設けている。)②ウイスコンシン型(初等・中等教育の全課程を通じてSTS教育を強く主張している。)③アラバマ型(従来の科学教育の単元内容に,一部STSに関する記述を加えている。)3. STS教育の学習内容は,12領域に分類できるが,これらは1領域ごとに独立して学習されているのではない。これらの領域が相互に関連づけられながら教授・学習される。すなわち,単元の学習の中で,1領域だけが取り扱われるのではなく,複数の領域が取り扱われる。それらの領域が,各学年の教科及び,科目にスパイラルに適用される。4. STS教育は,多様な方法をもって行われている。

  • 三崎 隆, 西川 純
    1997 年38 巻2 号 p. 173-179
    発行日: 1997年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    中学校理科では,巨視的な時間概念が扱われる。地球の歴史や地殻変動及び生物の進化を認識する上で欠かせないからである。ところが,巨視的な時間に関するイメージは正しく理解されていない実情となっており,有効な指導法の確立が待たれている。そこで,本研究では,中学校第3学年「生物の進化」において,場所法によって巨視的時間概念の指導を行った実験群と,講義で板書することによって指導を行った統制群との間で,巨視的な時間に関するイメージ変容を比較検討した。その結果,人類とピラミッドに対する時間イメージは平常授業においても改善することができるが,魚類,両生類,恐竜,哺乳類に対する時間イメージは,平常授業では改善できず,場所法を利用することによって改善することができることが明らかになった。

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