日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
最新号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 三崎 隆
    1999 年 39 巻 3 号 p. 95-103
    発行日: 1999年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    本研究では,科学的な内容としての情報を与えたときの場独立型―場依存型の認知型の影響を明らかにすることを目的とした。中学3年生74人を対象に,EFT検査(Embedded Figure Test)を実施し,場独立型の認知型のタイプを38人,場依存型の認知型のタイプを36人選んだ。その後,提示されだ情報への着目傾向を調べるために,2つの調査を実施した。文字で情報を提示した調査と図で情報を提示した調査である。いずれも,20題の設問から成り,類似した内容の設間を対応させて提示した。一方の調査の4週間後に,他方の調査を実施した。そして,タイプ分けした場独立型群と場依存型群との間で,文字の調査結果と図の調査結果を比較した。その結果,場独立型―場依存型の認知型の影響が表れた。文字を提示したときには場独立型群の着目が促され,図を提示したときには場依存型群の着目が促される傾向にあった。

  • 堀 哲夫, 市川 直貴, 鈴木 富美子, 松本 孝
    1999 年 39 巻 3 号 p. 105-116
    発行日: 1999年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    コンセプトマップを用いて児童・生徒に自己評価をさせる方法は,これまでにも報告されてきた。学習前・後にコンセプトマップを書かせることは行われていても,生徒にその変容を意識化させ同一紙面内に書かせることは,これまでに行われてきていない。本研究は,学習前・後に書いたコンセプトマップを生徒自身に比較させ,同一紙面内で意識化する簡便な方法を開発し,その有効性を検討した。その結果,以下の二点が明らかになった。第一に,この方法は認知的及び情意的両側面を自己評価させるのに有効であること。第二に,学習前・後の変容を自分の目で確認できるため,たとえイオン概念のような理解が難しい内容であっても,学習後の生徒の印象はきわめて好意的であること。上記の結果を踏まえて,以下の二点を提案した。第一に,この方法によって書かせた内容を見ながら,生徒に対して教師が個別指導に利用できること。第二に,学習が学習者自身のために行われるものであることを重視すれば,生徒が自己評価した内容を生徒自身に採点させるのに利用できること。

  • 出野 務, 木本 素美子, 芝崎 眞光, 森 一夫
    1999 年 39 巻 3 号 p. 117-125
    発行日: 1999年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    理科教育における誤った科学史利用の一つに,質量保存の法則,定比例の法則,倍数比例の法則に基づいてドルトンの原子説が提唱されたという見解がある。高校化学の教科書においても同様の取り扱いがなされているが,原子論は,質量保存の法則,定比例の法則,倍数比例の法則に基づく実験事実を順に帰納していった結果として認識されるものではない。原子に関する類的な自然認識の発展過程(科学史)に基づけば,原子論を認識するためには,物質不滅の原理とそれに裏付けられた粒子観が前提となっている。それをマクロな現象である物質の化学変化に演繹したときに,原子論の有効性に生徒は気づきながら,質量保存の法則,定比例の法則,倍数比例の法則の意味が明確になり,原子の実在が確証される。そこで本研究では,高校生を被験者として,高校化学の教科書のように質量保存の法則,定比例の法則,倍数比例の法則という順に,帰納的に原子論を獲得させる展開よりも,科学史が明らかにしてきた原子論の認識過程に基づいて,演繹的に原子論を獲得させる展開の方が,原子論が容易に理解されること実証的に明らかにした。以上の結果は,法則の発見された“順序”をそのまま認識の順序性として取り違えた高校化学の教科書にみられる指導法の誤りを指摘するのみならず,理科教育が科学史から類としての認識の順序性を正しく学ぶ必要のあることを示した一例といえる。

feedback
Top