日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
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149 巻 , 4 号
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特集 中枢作用薬の開発効率化を目指した製薬企業各社の取り組みについて
  • 勝又 清至
    149 巻 (2017) 4 号 p. 148-153
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    医薬品の研究開発費が年々増加しているにもかかわらず,中枢神経系に作用する医薬品候補化合物が上市に至る確率は未だ低い.中枢疾患の病態を正確に反映する動物モデルはほとんど存在しない.このためヒトで本当に有効であるのかは,大規模な後期臨床試験による検証までわからない.前臨床段階において臨床開発に値する化合物を選択した後,早期臨床試験段階において,作用機序から有効性が見込まれる適切な被験者集団を選定し,標的を十分に占有する投与条件で,真のエンドポイントに対する効果が予測可能な指標を用いて有効性を確認できれば,現在の状況は改善され,後期臨床試験における成功確率は向上すると期待される.バイオマーカー,なかでもポジトロン断層撮影(PET)を活用することにより,これらの課題を克服できる可能性があることを,アルツハイマー型認知症に対する医薬品候補化合物の治験,新規トランスロケータータンパク質18 kDa(TSPO)拮抗薬であるONO-2952,及びニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬の例を挙げて述べる.中枢疾患の患者において生きたままの状態でPETにより得られる脳内変化の情報は,病態生理の理解に貢献するだけでなく,新規創製標的の同定にも非常に有用であることから,リバーストランスレーションという観点からも益々有効活用されることを期待する.

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  • 檜杖 昌則
    149 巻 (2017) 4 号 p. 154-159
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    社会的背景や現在の治療薬の状況から,精神神経疾患に対する治療薬のメディカルニーズは高いが,これらの薬剤が開発途上で中止に至る割合は,他の疾患と比較して依然として高い.開発の成功のためには,創薬標的が薬として疾患に対する正しい標的かどうか(right target),開発候補品が標的に相応する最適の分子・化合物かどうか(right molecule),臨床試験において治療対象となる患者の正しい選択がなされているかどうか(right patient)が重要となる.これらに関して,精神神経疾患では疾患の場となる脳の高次性・複雑さゆえ動物での疾患モデルを用いた検討には限界があり,ヒトでの遺伝学的解析と病因に関する生物学的検討に基づいた創薬を展開する必要がある.本稿では,ヒトでの遺伝学的解析と生物学的検討に基づいた創薬について,30年にわたるアルツハイマー型認知症に関する研究で得られた知見をもとに,創薬開発の根拠としてのアミロイドβ仮説とそれに基づく開発について述べる.さらに,パーキンソン病治療薬の例として,創薬標的の一つであるleucin-rich repeat kinase 2に関しても,ヒトでの知見とそれに基づく開発について示す.また,神経生物学的検討に基づいたトランスレーショナルリサーチとして,神経機能ドメインに着目した検討について概説する.

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  • 木村 温英
    149 巻 (2017) 4 号 p. 160-166
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    中枢作用薬の成功確率は残念ながら非常に低く,これを高めうるありとあらゆる手段を講じる必要がある.そのためには遺伝子変異や臨床知見に着目した創薬ターゲットの選択が鍵といえるが,残念ながら統合失調症治療においては未だにドパミンD2受容体拮抗作用以外に確立された創薬ターゲットはない.線条体では中型有棘細胞がドパミンD1受容体を発現する直接路とドパミンD2受容体を発現する間接路を構成している.抗精神病薬はそのドパミンD2受容体拮抗作用によって,間接路中型有棘細胞内のcAMP濃度を高め神経回路を活性化することで薬理作用を発揮すると考えられている.ホスホジエステラーゼ10A(PDE10A)は,直接路と間接路を構成する両方の中型有棘細胞に発現する酵素で,cAMPとcGMPの分解活性により,これら神経細胞の活性化制御に関わっている.従ってPDE10A阻害薬では,間接路の活性化とこれに基づく抗精神病作用に加え,直接路の活性化による錐体外路症状の軽減や認知機能の向上が期待でき,比較的成功確率の高いターゲットと考えられてきた.しかし期待に反して,これまでに臨床試験で有効性と安全性が立証されたPDE10A阻害薬はない.非常に興味深いことに我々は,PDE10A阻害薬の解離速度が直接路と間接路の活性化パターンを規定し,これが薬理プロファイルに強く影響することを見出した.本総説ではPDE10A選択的阻害薬TAK-063の研究開発を例に,中枢作用薬の成功確率向上における創薬コンセプトの明確化とこれに基づく薬剤探索戦略の重要性について述べる.さらに,positron emission tomographyトレーサーやelectroencephalogram,pharmacological magnetic resonance imagingなどを駆使したトランスレーショナルリサーチの取り組みについても簡単に紹介する.

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受賞講演総説
  • 佐々木 拓哉
    149 巻 (2017) 4 号 p. 167-172
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    脳と末梢の各臓器は単独で活動するものではなく,互いに密接な連絡を取り,影響を及ぼし合っている.こうした中枢と末梢の相互作用を追究するには,双方の臓器活動を同時に計測し,行動や病態との表現型を参照しながら,時間変化を解析していく必要がある.この技術的課題に向けて,著者らは,自由行動中の齧歯類動物から脳波,心電図,筋電図,呼吸リズムといった生理活動信号を多チャンネルデータ取得システムとして同時に記録するための計測技術の開発に取り組んできた.これらの信号は,いずれも数ミリボルトの大きさで,数ミリ秒の時間スケールで変動していく生体電気信号であるため,同一の記録・解析システムで,多現象の時間的相関や現象間の相互作用を定量的に高精度で評価することが可能である.具体的には,動物の頭部に電気基板を設置し,各生体組織に埋め込んだ数十本の電極と接続する.基板に集約された信号は,通信用ケーブルを介して記録装置に取り込まれる.大脳新皮質からの表面脳波,海馬領域からの局所場電位を計測することによって代表的な脳活動の指標とし,心電図計測によって得られる心拍数変動を用いて自律神経の活動状態の指標とする.また,背側頸部筋電図は覚醒/睡眠状態の指標となる.さらに,呼吸リズムを嗅球表面から電位記録することで,探索行動を反映したスニフィングなど呼吸頻度の素早い変化を他の現象と同一時間軸で解析できる電気的シグナルとして検出できる.このような網羅的計測法を用いれば,中枢末梢連関を介した生体応答が,いつ,どこで,どのように生じるか,より直接的に解析し,定量的に評価することができる.得られた知見からは,中枢と末梢臓器の相対関係によって成り立つ全身システムを俯瞰的に解釈し,これまでの解剖学的,生化学的知見との比較照合をすることによって,それらの機能的意味付けが可能となるものと期待される.

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実験技術
  • 日置 寛之, 濱 裕, 孫 在隣, 黄 晶媛, 並木 香奈, 星田 哲志, 黒川 裕, 宮脇 敦史
    149 巻 (2017) 4 号 p. 173-179
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    脳が,認知・思考・記憶・感情といった高次機能を実現する仕組みを解き明かすには,その構造的基盤である神経回路網の理解が必要不可欠である.「構造無き機能は無い」からである.国内外で続々と開発されている脳透明化技術は,高速かつ大規模な三次元構造解析を可能にする革新的技術であり,神経回路解析に新たなブレイクスルーをもたらすと期待される.透明化技術を比較する上で重要なポイントが「clearing-preservation spectrum」である.透明化能力(clearing capability)の向上は散乱光の抑制につながり,深部まで安定して高精細な画像を取得するために大事である.一方で,透明化処理の影響によって組織の構築や標識シグナルの保持が悪くなるというトレードオフが厳存する.標識された構造物を再現よく定量的に観察するためには,構造や各種シグナルを適切に保存・維持する能力(preservation capability)が重要である.このトレードオフ問題に真正面から取り組み,両者を高い次元で両立することに成功したのが,筆者らが開発した透明化技術ScaleS法である.透明化能力の向上はもちろんのこと,①蛍光タンパク質の蛍光の保持,②抗原性の保持,③超微細構造の保持,など標識シグナルの保持に優れている.特に,超微細構造が保持されることで,光学顕微鏡と電子顕微鏡とを繋ぐ「ズームイン」技術の発展が期待される.「かたちをよくみる」バイオイメージングは,生命現象の真理を理解する上で非常に重要なステップであり,「標識」「観察」「解析」といった各要素において様々な技術が要求される.遺伝子工学技術等の発展により,「標識」技術は目覚ましい進展を遂げてきた.そして透明化技術の台頭により「観察」「解析」が大きく進展すると期待され,バイオイメージングは今まさに新たな時代を迎えようとしている.

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創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(12)
  • 山野邊 進, 川元 博, 大嶽 憲一
    149 巻 (2017) 4 号 p. 180-185
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    多くの製薬企業では,過去の創薬研究で合成した化合物や外部から入手した化合物をデータベース化し,各種試験に素早く使用できるよう保管庫に管理している.このような化合物コレクションを「化合物ライブラリー」と呼ぶ.化合物ライブラリーのスクリーニング試験から見出されたヒット化合物は,薬理活性・物性・薬物動態・安全性の観点から最適化され,膨大な試験を繰り返しながら前臨床候補化合物となる.当然,ヒット化合物に物性・薬物動態・安全性の問題があれば,その克服には多くの試験や期間が費やされてしまう.このため化合物ライブラリーには,創薬の出発点として相応しい物性・薬物動態・安全性の懸念の少ない化合物が求められる.本稿では,このような要求に応える高質な化合物ライブラリーを設計するための考え方や技術を解説し,最後に化合物ライブラリーを取り巻く最新動向を紹介する.

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